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親子間の恥意識の相違と非行抑制要因

第5章  恥意識の形成と親子関係

第1節  親子間の恥意識の相違と非行抑制要因

3.結果

 調査対象者である中学生男了・女f一およびその親で

ある父親と母親それぞれにおける恥意識、非行許容 性・道徳意識の平均評定値を表5−1に示した。高得

点者ほど、恥意識は高い恥の意識をもっており、道徳 性も高いほど高い道徳意識があり、非行許容性は、得 点が高いほど非行への許容性が低く、いわば非行に厳 しい態度であることをあらわしている。分散分析と Tukey HSDによる多重比較の結果、恥意1識の強さは、

高得点順に、母親、父親、中学女r、中学男子であっ

た(有意水準P<.001,多重比較はP<.05)。そして、』

行許容性は、親が子供(中学ノヒ) よりも得点が高かっ たが、中学男子・女子問においては有意差がなく、道 徳意識も、親の方が子供よりも得点が高かったが、父 親・母親問については有意差がみられなかった。

表5−1恥意識と非行許容性・道徳意識の平均値と標準偏差および分散分析結果

父親 母親 中学男子   中学女子

M  SD  M  SD  M  SD  M  SD  F値 有意確率

恥意識 52.87 (5.92)55.60 (5.39)47.23 (9」4)49.60 (8.26)165.44 ***

    (N=598)  (N=739)  (N=561)  (N=524) 母〉父〉女子〉男子*

非行許容性32.80 (5.51)34.30 (4.91)27.71 (7.02)28.26 (6、77)186.18 ***

    (N=606)   (N=751)  (N=567)   (N=525)  母〉父〉女子・男子*

道徳意識 25.49 (3.59)25.19 (3.23)22.15 (4.51)22.90 (4・39)113・08 ***

    (N=628)  (N=778)  (N=588)  (N=539) 母・父〉女子〉男子*

有意確率***P〈.OOI 多重比較(*pぐ05)

 また、親子の恥意識構造であるが、親と子、両群それぞれにおいて恥意 識項目を主因子法・プロマックス斜交回転で因子分析した結果、4因了構造 がみられ、ともに第1因子に大きな寄与率がみられた。直交回転であるバ

リマックス法においても同様の4因子解が得られたが、各因fや質問項目の 内容を考慮して斜交因子分析結果を採用した。分析結果を表5−2に、因f 相関行列を表5−3に示した。そして、恥意識と非行許容性・道徳意識との 相関係数は、表5−4に示した。 親・子ともに、恥意識は、非行許容性や 道徳意識と高い相関にあった。この調査での親の非行許容性や道徳意識とは、

「自分の子どもと同世代の中学生がやるとしたらどれだけ悪いことだと思 うか」、といったあくまでも子どもと同世代の中学生の行いに対する態度で はあるが、親としての子ども世代に対する非行や道徳的行為への態度ともい

える。

表5−2 親子間の恥意識因子構造の違い

中学生男女 両親

恥因子名 固有値分散%α係数  恥因子名 固有値分散%α係数 F1 自己内省  4.43 26.07.781

F2 同調不全  1.35 7.g3 .686 F3 視線感知  0.62 3.68 .680 F4社会規律違反 0.62 3.68 .677

同調不全  3.55 20.9 .698  自己内省  1.68 9.93 .541

視線感知  O.63 3.75 .635 社会規律違反 0.62 3.68 .629

F全体   累積%=40.68   .839   累積%=38.27   .794

F1(n=6),F2(nニ5),F3(n=4),F4(n=2)   F1(nニ6),F2(n=4),F3(n=4),F4(nニ3)

表5−3親子の恥意識因子相関行列

中学生男女 両親

因子 Fl F2 F3 F4 因子 Fl F2 F3 F4 FI l

F2 .286 1

F3 .608 .289   1 F4 .551 .459 .553 1

Fl  l F2 .144 1

F3  .272 .495   1 F4  .322 .486 .457  1 因子抽出法:主因子法・プロマックス回転

表5−4恥意識と非行許容性・道徳意識の相関係数

非行許容性道徳意識

恥意識  父親   .274**

      母親   .261**

    中学生男子 .429**

    中学生女子 .436**

.290**

.382**

.462**

.479**

一**〈Ol

 すべてにおいて正の相関(p<.01)を示したが、親世代よりfどもIU;代の恥 意識の方が、非行許容性や道徳意識と高いil三の相関を示した。また、 rの世代 においては、中学男子よりも中学女子の方が高い11三の相関を示し、他方、親の 世代においては、母親の恥意識の方が、父親より高い道徳意識との相関関係に あるという結果であった。

4、考 察

 まず、恥意識の平均値(表5−1)だが、子より親の方が高い恥意識である のは、子より成人である親の方が規範意識、いわば社会性も高く、規範を決定 づける準拠集団もより広い範囲であることが予想され、当然の結果であろう。

また、父親より母親の方が、中学男子より女子の方が、恥意識得点の・p均値が 筒かったが、この女性の恥意識が高いという傾向は、第3章の若者(小学生、

中学生、高校生、大学生)を対象にした調査結果と同様である。これらの結果 から、恥意識には女性の方が高いという性差があり、同じ女性のなかでも中学

生に代表される子どもよりも母親に代表される成人の方が高いことが示唆さ

れた。

 そして、親子の恥意識構造の差異であるが、まず囚f分析の結果(表5−一一2)

から、中学生において最も高い固有値(4.43)と分散の%(26.1)を示した第 1因子は、「自分の正しいと思うことができないとき」やr自分の思っている ことをはっきり話せないとき」などの項目に示される、自分で自分の不甲斐無 さを恥じるといったいわば、「自己内省」因了であった。  方、両親の第1囚 子(固有値3.55,分散の%20.9)は、r周りの人と違うことをするとき」、[周

りの人との話題についていけないとき」などの項日のような、ただ単に他者と いっしょでないことから恥ずかしいと感じるような[同調不全、囚r であった,,

この第1因子が、他の囚子に比べて説明率がかなり高いことからも、中学牛や 親の恥意識特徴を最もあらわしていると考えられる。

 また、その他の恥意識因子であるが、第3囚fは、「電車の中で携帯電話や PHSを使用するとき」などの項目にみられるような、特に周囲の目を特に気 にする状況である「視線感知」囚子であり、第4囚fは、「約束の時川に遅刻 するなど」の項目にみられるような、社会で遵守すべきとされるルールを破っ たことで恥ずかしいといった「社会規律違反」因子であると考えられる。それ らは両親や中学生の恥意識両方にみられたことから、親にもf・にも、自分への 他者からの視線を感知して恥ずかしいという恥意識と、社会的なマナー違反を することで恥ずかしいという恥意識が共通してあることが示された。

 次に、恥意識と非行抑制要因との関係だが、表5−4にみられるように、中 学生(男・女)さらにその親(父・母)の親子ともに恥意識と非行許容性・道 徳意識とは高い相関にあった。子である中学生については、第3章での中学生 を対象にした研究でも恥意識と道徳意識にIEの相関が確認されているが、本調 査では、中学生だけでなく、その親の恥意識も非行許容性や道徳意識と同様に 非行抑制要因であることが示唆されたといえる。また、この調査での親の非行 許容性や道徳意識とは、「自分の子どもと同世代の中学生がやるとしたらどれ だけ悪いことだと思うか」、といった親としての子への非行や道徳的行為への 態度を測定している。このことから、親の恥意識の高さが r一の非行抑制につな がる可能性も示唆されたといえよう。

 そして、中学生の恥意識を因子分析した囚子相関行列(表5−3)の結果か ら、中学生の第1因子である「自己内省」が「社会規律違反」と高い因子相関 C551)にあったことからも、中学生の恥意識が、社会において規範を遵守す るといったような非行抑制要因の一つとなり得ることが示唆された。

 これらの結果から、恥意識の親子間の差異を総合的に考察すると、恥意識は、

平均値の差から、量的には子よりも親の方が高いが、質的な側面では、その大 きな特徴として、子が自己内省的な恥意識傾向が高いのに対し、親の恥意識は より他者一tt−一致の観点から恥を意識する傾向があることが明らかになった。そし て、中学生の恥意識が非行抑制要因につながるかどうかについては、非行許容 性や道徳意識との相関の高さから、その傾向が認められた。さらに、非行許容 性や道徳意識との相関関係から、親の恥意識の高さが、子の非行抑制につなが

るという可能性も支持された結果であったといえる。

第2節 恥意識と親子関係の国際比較

 日本の青少年(中学生・高校生)は、他の国に比べ「異質」であり、非行、

特に虞犯行為に対してきわめて許容的な態度であることが明らかになってい

る(中里・松井1997)。そのような非行への抑制要因として、これまで価イll 1観、

道徳意識、思いやり意識などが調査研究によって示されているが、それらの非 行抑制要囚の形成に親子関係の良否が大きな役割を果たしていることが示さ れている(中里・松井,1999)。

 本節では、恥意識が非行抑制要囚になり得るとの、㌦1場から、3力国における 中・高生の恥意識と親子関係のあり方の関連を国際比較の観点から行う。

 この研究の方法や対象者については、第4章の国際比較調査の概要を参照さ

れたい。

1.恥意識と親子間の心理的距離

恥意識、親子間の心理的距離、ともに合計点の平均値を基準に、高低・2群 に分割し、クロス表を作成した(表5−5〜表5−12)。

恥意識について

 恥意識尺度は、計15項目であり、各項目の得点を逆転し、合計点を算川し た。得点1範囲は、15点〜60点である。そして、恥傾向について、・ピ均値を基 準に、高・低の2群に分けた。範囲は、高群(38点〜60点)、低群(15点〜

37点)である。

親子間の心理的距離について

 親子間の心理的距離(中里・松井,1997,2003)とは、親子間の親密さを測 定するものであり、親子関係の良否についての5項目から成る合成尺度得点に

よって算出する。

 この親子間の心理的距離を測る尺度には、「父親」への心理的距離、「母親」