4.7 粘性・非粘性 Burgers 方程式
4.7.2 非線形性による波の崩壊
非線形偏微分方程式の差分スキームを論じるのはそれほど簡単ではない.ひとまずそのことを,非粘
性Burgers方程式を差分法によって解くことで考えてみよう.すでに,粘性Burgers方程式の初期境界値
問題を定式化しておいたが,ここでは,動粘性率が十分小さい場合の方程式
∂u
∂t +cu∂u
∂x = 0 を考えるのである.ここでは,3つの差分スキームを考える.
全体を通して共通なのは,tについて前進,xについて後退差分を適用することである.xについて後 退差分を適用するのは,1階波動方程式のところで安定な差分スキームを得ることが出来たのは,c > 0 の場合,後退差分を適用した場合だったからである.
3つの方法で異なるのは,非線形項cu∂u/∂xの部分のuの部分をどうするかである.
:uをそのままukj とした場合.
これは,
u(x, t+ ∆t)−u(t, x)
∆t +cu(x, t)u(x, t)−u(x−∆x, t)
∆x = 0
となり,差分方程式の形にすると,
uk+1j −ukj
∆t +cukjukj −ukj−1
∆x = 0 となる.これを整理すると,
:uk+1j =ukj [
1−c· ∆t
∆x(ukj −ukj−1) ]
となる.
:ukj の部分をuk+1j とした場合.
この場合は,
uk+1j −ukj
∆t +cuk+1j ukj −ukj−1
∆x = 0 なる差分方程式を得る.これを整理すると,
:uk+1j = ukj
1 +c·∆x∆t(ukj −ukj−1)
となる.
:ukj を(ukj +ukj−1)/2とした場合.
この場合は,
uk+1j −ukj
∆t +c· ukj +ukj−1
2 ·ukj −ukj−1
∆x = 0 なる差分方程式を得る.これを整理すると,
:uk+1j =ukj − c 2·
(∆t
∆x )
·(ukj +ukj−1)·(ukj −ukj−1) となる.
以下,ひとまず,この3つのスキームについて,数値結果を紹介してみる16.
そもそも非粘性Burgers方程式を解析的に考察してみると,微分可能な初期関数に対して,有限時間 で波が崩れ,微分不可能になってしまうことが証明できる.その詳細は付録にまわす.その波の崩れる 瞬間とその後の様子を差分法で捉えるのは,無理な相談である.
初期関数としてsin波を考えると, 〜 のどれも,最も振幅の高い部分が右側にずれていく.
本来ならばこの先,波の形は次のようなものになることが経験的に予想される.(図はあくまでもイメー ジ図で少し誇張して書いてある.)そしてやがてはがしゃがしゃと(ばしゃっと?)崩れてしまうのであ る.(砂浜に打ち寄せる波を想像して欲しい.)
関数が多価になってしまう.
しかし,多価となってしまう現象を差分法で捉えるのは無理である.実際には, ・ の場合,三角 形状の解が出現する.
16実は,[金子]の記述とは若干相違がある.
初期関数sinx
三角形状の解がだんだんと小さくなっていく.
しかし,この場合も,そのままでは済まず,三角形状の解がだんだん小さくなるにつれて,わずかだが,
解の台が右にずれるのである17. 初期関数sinx
三角形状の解がだんだんと小さくなっていく.
解の台がやや右へずれる.
一方, の差分スキームでは,本来崩れるはずの時間以降も波が右方向へ広がってしまう.
もちろんこれは真の解の姿ではないが,,多価になった解の中でも波高の一番大きな解(最大の分枝)
の良い近似であると見ることも出来る.
17[金子]では, では,この種の右ずれが観測されるが, では起こらないと書いてある.しかし,筆者の実験結果だと,
も も観測され,しかもむしろ の方が右にずれ出す時間が早かった.