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ラプラス作用素の差分化と楕円型境界値問題の安定性

4.5 楕円型境界値問題

4.5.3 ラプラス作用素の差分化と楕円型境界値問題の安定性

境界値問題の場合は,∆xと∆yの比を一定に保っていれば,それがどんな値であっても∆x0,∆y 0 で差分方程式の解はもとの微分方程式の解に収束することが保証されているようである.これは非定常 現象の偏微分方程式を解くのとは大違いである.

とは言え,問題がないわけではない.境界に,微分可能でないような点が存在すると,その点のそば での差分解の収束は悪くなったりするのである.分点の個数がすくなければ,その部分ではあまり良い 近似が得られないことがある.(下図の左側の例参照.)またすでに注意したように,境界の形状が複雑な 場合は,領域全体を正方形ないしは長方形メッシュで覆うこと自体,ナンセンスだとも言えるわけで(下 図の右の例参照),そのような意味から有限要素法や境界要素法などが考案されたわけである.

[大西・登坂]の例

この部分では差分解の収束が悪い.

非圧縮性・非粘性完全流体がL字型領域を流れる場合の例

円柱まわりのポテンシャル流れの例 何らかの意味で曲線座標系を使う必要がある.

なお,楕円型境界値問題を解く場合には,分点の個数を多くすればするほど,大規模連立一次方程式 を解かねばならなくなるが,その解法などについては,ごく基本的なことを付録にまとめるにとどめる.

であることがわかる.つまり,ラプラシアンの差分化4hは,点(x, y)から等距離にある(格子)点での 値の相加平均が,点(x, y)での値に比べてどの程度大きいか,あるいは小さいかを示していると言える.

(uに対して値の差を吐き出す演算子であるということになる.)

そこで,4u= 0なるLaplace方程式を考えてみると,それを差分化した4hu(x, y) = 0は,各格子点 での値が,その点に最も近い4つの格子点での値の相加平均に等しくなるように,決定されていくこと がわかる.

一方で,Laplace方程式の解(調和関数という)については,次のような性質が成り立つことが,数 学的に証明できる.その詳細は,付録に譲る.

Laplace方程式の解の性質

³

定理 4.2. [平均値の定理]

Laplace方程式の解,すなわち調和関数は,各点での値がその点を中心とする円周上での値の相

加平均(算術平均)に一致する.

µ ´

このことは,Laplace方程式の解の性質が,差分方程式におけるラプラス演算子の差分化に正しく反映 されていることを意味している.従って,この場合の差分解の収束性が保証されているのだと解釈でき る.

上では2次元で説明したが,これは多次元でも同様である.

すでに説明した1次元楕円型境界値問題の例では,ラプラス演算子d2u/dx2の差分化が,

2 h2

(u(x+h)−u(x−h)

2 −u(x)

)

となるので,d2u/dx2 = 0の解は,

2 h2

(u(x+h)−u(x−h)

2 −u(x)

)

=u(x)

を満たすuを求めることになるが,これは直線に他ならない.このことは,数値的にも実証できるし,ま た理論的には両辺を積分すれば直ちに検証できる.

なお,ラプラス演算子の意味がわかると,ラプラス演算子の入った偏微分方程式の解の特質を多少な りとも定性的に議論できることがある.それについて説明しておこう.

3次元拡散方程式

∂u

∂t =4u

を考える.これを一様媒質内の温度とみなすと,左辺は温度の時間変化率,右辺は,ある点の温度が回 りの温度に比べて高いか低いかを示している.それが等しいということは,ある点の温度が回りの平均 温度よりも高ければ[resp.低ければ],u−u < 0[>0]であるから,右辺が負[正]となり,結果として左 辺が負[正]となって,熱の流れが生じ,その点での温度は下降[上昇]することになる.これは熱伝導現 象の過渡的変化を定性的に記述したものだと解釈できる.さらに時間的に見ていくと,場所による温度 のむらがならされて,温度の時間変化が次第に鈍くなり,やがて定常状態,つまりLaplace方程式の解 に落ち着くであろうと予想できることになる.

同じようなことを1次元の波動方程式

2u

∂t2 = 2u

∂x2

で考えてみる.これを弦の変位u(x, t)を記述する方程式と見れば,左辺は各点の加速度を示しており,

右辺は湾曲によって弦に生じる復元力を示しているから,方程式において,力の向きと加速度の向きが そろっている.従って振動現象を生じることが予想される.

また,3次元Poisson方程式

4u=−f(x, y, z)

において,u(x, y, z)を温度分布,fを熱源の強さと考えると,f > 0[resp. <0]ならば,4u <0[>0]と なって,u−u <0[>0]と考えられるから,各点での温度分布はまわりの温度に比べて高くなり[低くな

り],解u(x, y, z)は凸[凹]関数となることが予想される.

このように,偏微分方程式の形から解の定性的な性質についてある程度のことが論じられるのは,応 用数学を志す上でも重要な態度であると言えるかもしれない13

13三村昌泰の言葉