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ある種の非線形拡散方程式は,爆発解(Blow-up Solution)を持つことが知られている.ここでは,そ のような特徴的な解が差分法で捉えられるかどうかを調べる.これは,数値解析からもとの連続問題の 解析的理論が構築されたひとつの例になっており,その意味で数値計算がただ単なる計算で終わらない ことの一つの示唆になっている.一方で,爆発解を差分法で捉えるには,多少技巧的な操作が必要であ り,それについても説明する18

爆発解を持つことが解析的にわかっている方程式として次のものを考える.(この差分法による数値解 析によって示唆され,それに基づいて数学的な解析的理論ができたようである.)

∂u

∂t = 2u

∂x2 +u1+a (t, x)(0,)×(0,1)

∂u

∂x(t,0) = ∂u

∂x(t,1) = 0 t∈(0, inf ty) u(0, x) = f(x) x∈(0,1)

これを差分化する.tについては前進差分,xについては通常の2階差分商をとる.

uk+1j −ukj

∆t = ukj+12ukj +ukJ1

(∆x)2 + (ukj)1+a となる.これをuk+1j について解いて,

uk+1j = [

1 + 2∆t

(∆x)2 + (ukj)a ]

ukj + ∆t

(∆x)2ukj+1+ukj1 ∆t (∆x)2 なる差分方程式を得る.

いま境界条件から,

uk1 −uk0

∆x = 0, ukN −ukN1

∆x = 0

であることからuk1 =uk0, ukN =ukN1とする.メカニズムを図式的に表すことはもうしないが,初期関数 によって1段目の各格子点での値が決定されると,差分方程式によって2段目の両端を除いた格子点で の値が決定され,両端での値は,隣の格子点の値をそのまま使うというわけである.

この差分スキームに基づいて数値計算を行うと次図のような爆発解が現れる.

18これは『数学セミナー』19952月号特集『微分方程式』の中の陳蘊剛の文章による.なお,本文中の図の一部は,爆 発解の様子についてやや誤解を与えかねない図版である.本文中の別図を参照された方が良い.

しかし,実は上の差分スキームをそのまま実行しても,このような爆発解は得られない.というより も,あっと言う間に,中央部の突起が無限大に発散していって画面から飛び出してしまう.この非常に 早い爆発を捉えるためには,時間間隔∆tをうまく可変にしてやらなければならない.ここでは例えば,

∆tk=min (

1, 1 maxj|ukj|a

)

なる可変長を用いて時間間隔を決めている.簡単に言えば,解の最大値が大きくなればなるほど,それ に応じて時間間隔を短くしているのである.このような方法を用いると爆発解も捉えることができる.

この爆発解には注意が必要である.差分解の安定性には抵触しているのであるが,これは厳密解なの である.このことの意味は重要である.爆発解が厳密解なのか,それとも数値的安定性がなく,誤差が 累積しているだけなのかを知らなければならないのである.非線形偏微分方程式の数値解析は難しい.

4.9 2 波相互作用方程式

2波相互作用方程式には「波」という言葉がついているが,これも数理生態学におけるひとつのモデル と理解すると良い.これは,ある生物集団と別の生物集団が,例えば「食う/食われる」という相互作用 する場合の方程式であると言える.そこには,かなり特徴的な解が現れる.それが捉えられるかどうか を調べるのが目標である.

2波相互作用方程式は次で与えられる.

∂u

∂t +c1∂u

∂x =−uv

∂v

∂t +c2∂v

∂x =uv

これもごく簡単な方法で差分化しよう.すなわち,t, x双方について前進差分によって差分化するので ある19

uk+1j −ukj

∆t +c1

ukj+1−ukj

∆x =−ukjvjk vjk+1−vjk

∆t +c2

vj+1k −vjk

∆x =ukjvjk となる.これをuk+1j , vk+1j について解けば,

uk+1j =ukj −c1∆t

∆x(ukj+1−ukj)∆tukjvjk vjk+1 =vjk−c2∆t

∆x(vkj+1−vkj) + ∆tukjvkj

となる.これを用いて,2波相互作用方程式を数値的に解くと,次のような結果が得られた.すなわち,

下図のような初期関数を与えたとき,一方から猛進してくる片方の生物種が,もう片方の生物種を食い 散らして,増殖する様が見られるのである20

c1, c2をうまく調節して,片方の生物種を止めておき,

もう片方を比較的ゆっくり衝突させると,双方の変化率が大きく現れる.

19いろいろな差分スキームは考えられるし,[広田]には,2波相互作用方程式を変数変換することによって,扱い易い偏微 分方程式系に変換し,その差分化を行っている形跡が見受けられるが,筆者には良くわからなかった.

20うわっ,宣伝しかしてないな・・.