4.5 楕円型境界値問題
4.5.1 楕円型境界値問題の難しさ
4.5.2 2次元長方形領域に対するPoisson方程式の境界値問題
ここでは,長方形領域に対して,Poisson方程式の境界値問題を考えよう.
少し一般的な設定として,次のように定式化される問題を考えることにする.
∂2u
∂x2 + ∂2u
∂y2 =−f(x, y) x∈(0,1), y ∈(0,1) u(x,0) =a(x) x∈(0,1)
u(x,1) + ∂u
∂y(x,1) = 0 x∈(0,1) u(0, y) = 0 y∈(0,1)
∂u
∂x(1, y) =b(y) y∈(0,1)
これを物理現象のモデルとして述べるならば,辺長1の正方形領域OABCの内部での平衡温度分布
u(x, y)を決定する問題であり,課されている境界条件は,辺OA,OC上では温度そのものが与えられ,
辺BC上では,温度0との外部との温度差に比例する熱の放射が起こり,辺AB上では,流れ込む熱流の 分布が指定されているわけである.
O C
A B
u(x,0) =a(x)
u(0, y) = 0 ∂u∂x(1, y) = b(y)
u(x,1) + ∂u∂y(x,1) = 0
このような楕円型境界値問題を差分化しよう.正方形領域を,x方向には∆x,y方向には∆yの間隔で 格子状に分割し,各格子点Pij = (i, j) = (i∆x, j∆y)上での値を差分方程式によって決定しようというわ けである.2階の微分項は,通常の差分近似式で差分化すると,
ui+1,j−2ui,j +ui−1,j
(∆x)2 +ui,j+1−2ui,j+ui,j−1
(∆y)2 =−f(i∆x, j∆y)
となる.ここでは,簡単のために,fのx依存性とy依存性とがそれほど大きくは異なっていないと仮定 して,∆x= ∆y=hととることにする.すると,差分スキームとして,以下が得られる.
ui+1,j+ui,j+1−4ui,j+ui−1,j+ui,j−1
h2 =−f(ih, jh) (i, j = 1,2,· · · , N −1) ui,0 =a(ih) (i= 0,1,2,· · · , N −1)
u0,j = 0 (j = 0,1,2,· · · , N−1) uN,j −uN−1,j
h =b(jh) (j = 1,2,· · · , N −1) ui,N +ui,N −ui,N−1
h = 0 (i= 1,2,· · ·, N −1) この差分スキームを図式的に考えてみる.
まず第一式では,周囲の4点から中央の1点が決まるというメカニズムになっている.
実際,ui,jの値を決定するためには,まわりの4点(i+ 1, j),(i, j+ 1),(i−1, j),(i, j −1)での値が必 要になるわけである.このことは,非定常問題の場合とは著しく異なっている.全体がどのようなメカ ニズムで決定されていくのかがまだ見えないだろう.境界条件まで含めてどのようにして全体での値が 決まるのであろうか.
直接値が与えられている格子点
ここにはしかるべき関係式が与えられている
ここにはしかるべき関係式が与えられている
各格子点での値は連立一次方程式によって決定される
直接値が指定されている境界上の格子点はそのまま値が使えるが,境界条件に微分項を含むような場 合は,境界以外の格子点とともにその値は連立一次方程式を解くことによって,一斉に値が決定される わけである.これは,1次元境界値問題の拡張版にはなっている.
このような差分スキームが与えられると,その安定性や収束性を吟味しなければならない.これに関し ては,境界の形状などもあるので,あまり確定的なことは言えないと思われるのだが,Poisson方程式の
境界値問題の場合は,∆xと∆yの比を一定に保っていれば,それがどんな値であっても∆x→0,∆y →0 で差分方程式の解はもとの微分方程式の解に収束することが保証されているようである.これは非定常 現象の偏微分方程式を解くのとは大違いである.
とは言え,問題がないわけではない.境界に,微分可能でないような点が存在すると,その点のそば での差分解の収束は悪くなったりするのである.分点の個数がすくなければ,その部分ではあまり良い 近似が得られないことがある.(下図の左側の例参照.)またすでに注意したように,境界の形状が複雑な 場合は,領域全体を正方形ないしは長方形メッシュで覆うこと自体,ナンセンスだとも言えるわけで(下 図の右の例参照),そのような意味から有限要素法や境界要素法などが考案されたわけである.
[大西・登坂]の例
この部分では差分解の収束が悪い.
非圧縮性・非粘性完全流体がL字型領域を流れる場合の例
円柱まわりのポテンシャル流れの例 何らかの意味で曲線座標系を使う必要がある.
なお,楕円型境界値問題を解く場合には,分点の個数を多くすればするほど,大規模連立一次方程式 を解かねばならなくなるが,その解法などについては,ごく基本的なことを付録にまとめるにとどめる.