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5.2 提案手法 1

5.2.1 非線形制御による姿勢安定化

ここでは,提案手法1における姿勢安定化制御について説明する.従来の線形制御による安定

化では,(5.11)式で示したようにある速度以下では自転車は不安定になる.そこで,運動方程式

を線形化せずリアプノフの安定定理により制御入力を決定する手法を用いる.

リアプノフの安定判別法

ここでは,非線形システムの安定性の判断基準として有効なリアプノフの安定判別法について 説明する.

まずリアプノフの安定定理とは,(5.24)式で表される非線形システムの平衡点x=0の安定性 に関するものを例に挙げると,以下のように示される.ただし,V(x)はスカラ値関数である.

˙

x = f(x) (5.24)

(a) V(x)>0, V(xe) =0

(b) V(x)は時間微分可能で,V˙(x)<0(x̸=xe)

上記のような条件を満たす関数V(x)をリアプノフ関数という.リアプノフの安定定理を用いるこ とで,微分方程式を解くことなく安定性を議論することができる.

第5章 制御系設計

しかし,V˙(x) = 0を満たす(x)が存在する場合,リアプノフ関数の候補がリアプノフ関数にな

らない場合がある.そこで,以下に示すラ・サールの定理を用いてリアプノフの安定定理を拡張 する.

˙

x=f(x), f(xe),x(0) =x0 のシステムにおいて,以下の条件を満たすスカラ関数V(x)がxe

の近傍で存在すれば,xeは局所漸近安定である.

(a) V(x)>0, V(xe) =0

(b) V(x)は時間微分可能で,V˙(x)0(x̸=xe)

(c) ˙V(x) = 0を仮定したときに,微分方程式の解がx(t) =xeのみである

ラ・サールの定理を用いることによって,V˙(x) = 0を満たすxが存在する場合においてもリアプ ノフの安定定理を用いて安定制御入力を決定することが可能となる.

リアプノフの安定定理に基づいた漸近安定化制御

非線形制御による姿勢安定化にCADOを組み合わせた制御方法について述べる.

リアプノフ関数の候補V1 を(5.25)式のように定める.姿勢を一定に保つことを考えているた め,平衡点はϕ=ϕcmdϕ˙= 0とした.

V1 = 1

2˙2+1 2Kϕ

(

ϕ−ϕcmd )2

(5.25) ただし,Kϕは正のゲインである.V1の時間微分V˙1は,前章の(4.28)式を用いると(5.26)式のよ うになる.

V˙1 = ˙ϕ¨+Kϕ (

ϕ−ϕcmd )ϕ˙ 

= ϕ˙{Bsinϕ−Cθ˙−Dsinθ+Kϕ(ϕ−ϕcmd)−T˜dis} (5.26) ここで,入力はθ˙で与えられるとし,(5.27)式を満たしているとする.ここでKϕ˙は正のゲインで あるとする.

θ˙cmd = 1 C

{

Bsinϕ−Dsinθ+Kϕ (

ϕ−ϕcmd )

+Kϕ˙ϕ˙−T˜dis }

(5.27)

第5章 制御系設計

ただし,T˜disはCADOを用いて前章の(4.29)式で推定可能である.

(5.27)式を用いると(5.26)式は以下のように計算できる.

V˙1 = −Kϕ˙ϕ˙20 (5.28)

ここで,Tˆdis = ˜Tdisならば(5.28)式は準負定であるが,V˙3 = 0を満たすのはϕ=ϕcmdϕ= 0 の時のみである.よってラ・サールの定理により平衡点において漸近安定である.

このように非線形制御の場合,リアプノフの安定定理の中に直接CADOによる外乱推定値を取 り入れることが可能である.このθcmd˙ を指令操舵角速度とし,微分したものを姿勢安定化のため の指令操舵角速度とする.また積分したものを指令操舵角とする.

フィードバックゲインの決定法

ここではフィードバックゲインKϕKϕ˙の決定法について述べる.操舵角速度θ˙が(5.27)式を 満たしているとすると,(2.20)式は以下のように計算できる.

¨+Kϕ˙ϕ˙+Kϕ (

ϕ−ϕcmd )

= 0 (5.29)

ϕcmdからϕまでの伝達関数を求めると(5.30)式が得られる.

ϕ

ϕcmd = Kϕ

As2+Kϕ˙s+Kϕ (5.30)

(5.30)式より,固有振動数ωnと減衰比ζは以下の式により決まる.

ωn =

Kϕ

A (5.31)

ζ = Kϕ˙

nA (5.32)

よって,所望の固有振動数ωnと減衰比ζを定めれば,以下の式によりゲインKϕKϕ˙が決まる.

Kϕ = n2 (5.33)

Kϕ˙ = 2ζωnA (5.34)

提案手法1における姿勢安定化部分のブロック線図をFig.5-7に示す.

第5章 制御系設計

Fig. 5-7: 提案手法1の姿勢安定化