5.3 提案手法 2
5.3.1 バックステッピング法を用いた姿勢安定化
提案手法2における姿勢安定化制御について説明する.提案手法1では操舵角速度θ˙cmdを入力 として姿勢安定化する手法を説明した.しかし,モータの加速度制御を行っているため,実際の 入力は加速度次元で与えられる.よって,θ˙cmdを所望の値に制御することができた場合において も必ず時間遅れは存在し,システムの安定性は保証されない.したがって,加速度次元のθ¨を制 御入力とする制御則を構築するため,バックステッピング法を用いる[22].
バックステッピング法
まず,バックステッピング法について説明する.(5.37)式のようなシステムを考える.xはシス テムの状態変数,vは入力である.
x˙ = f(x) +v (5.37)
入力vが規範入力α(x)であるとき,このシステムを安定化できるとする.システムの安定性を保 証するリアプノフ関数V0(x)の時間微分V˙0(x)は,v=α(x)であるとき以下のようになるとする.
V˙0(x) = ∂V0
∂xx˙
= ∂V0
∂x {f(x) +α(x)}
= −W <0 (5.38)
ここで,W は正の変数であるとする.しかし実際の入力がvではなく,(5.39)式のようなvの時 間微分の関係にあるuであった場合には,同じ制御則を適用することはできないので,新たに制 御則を構築しなければならない.
u= ˙v (5.39)
そこで,新たに変数zをvと規範入力α(x)の差を表す変数として定義する.
z = v−α(x) (5.40)
vを規範入力α(x)に一致させればシステムを安定化できるので,zを0に近づければよい.(5.40) 式の両辺を微分すると,(5.41)式が得られる.
˙
z = u−α(x)˙ (5.41)
第5章 制御系設計
そこで入力uを(5.42)式のように定めれば,(5.41)式は(5.43)式のようになり,zが0に収束する ことがわかる.cは正のゲインである.
u = α(x)˙ −cz (5.42)
˙
z = −cz (5.43)
次に,このように入力uを決定したシステムが安定であるかどうか検討する.このシステムのリ アプノフ関数の候補V を以下のように定める.
V = V0+ 1
2z2 (5.44)
すると,V の時間微分V˙ は以下のように計算できる.
V˙ = ∂V0
∂xx˙ +zz˙
= ∂V0
∂x {f(x) +v}+z{u−α(x)˙ }
= ∂V0
∂x {f(x) +z+α(x)}+z{u−α(x)˙ }
= ∂V0
∂x {f(x) +α(x)}+z {
u−α(x) +˙ ∂V0
∂x }
= −W −cz2+∂V0
∂xz (5.45)
しかし,このままでは,vは規範入力α(x)に収束するのにも関わらず,システムとして安定かど うかは不明である.しかし,(5.45)式より,(5.46)式のように入力uを定めれば,V の時間微分V˙ は(5.47)式のようになる.
u = α(x)˙ −cz−∂V0
∂x (5.46)
V˙ = −W −cz2 <0 (5.47)
(5.47)式より,システムは安定となることがわかる.
バックステッピング法の適用
提案手法1で求めた(5.27)式で示される操舵角速度指令値θ˙cmdを制御系を安定化させる規範入
力とし,実際の操舵角速度θ˙resの差をzθ˙とする.
zθ˙ = θ˙res−θ˙cmd (5.48)
第5章 制御系設計
ここでzθ˙が0ならば,操舵角速度応答θ˙resが規範入力θ˙cmdと一致しているので,システムが漸 近安定になることがわかる.そこで操舵角加速度参照値θ¨refを以下のように定める.ただしKz˙
θ
は正のゲインである.
θ¨ref = θ¨cmd−Kzθ˙zθ˙+Cϕ˙ (5.49)
また,θ¨cmdは(5.27)式を時間微分したもので,速度が可変であるため次のように計算される.
θ¨cmd= 1
C[−{M hL1
L(−ϕ˙V˙ sinϕ+ ¨V cosϕ) +M hL1
L2(−ϕV˙ 2sinϕcosθ−θV˙ 2cosϕsinθ+ 2VV˙ cosϕcosθ) +M hL2
L2(−ϕV˙ 2sinϕ+ 2VV˙ cosϕ) +4If
LrVV˙}sinθ +Bϕ˙cosϕ−Dθ˙cosθ+Kϕϕ˙+Kϕ˙ϕ]¨
− 1
C2[{M hL1
L(−ϕV˙ sinϕcosθ+ ˙V cosϕcosθ−ϕV˙ cosϕsinθ) +If r
V˙}
{Bsinϕ−Dsinθ+Kϕ(ϕ−ϕcmd) +Kϕ˙ϕ˙}] (5.50)
ここで,新たなリアプノフ関数の候補V2を(5.51)式のように定義する.
V2 = V1+1
2zθ2˙ (5.51)
すると,V2の時間微分V˙2は(5.26),(5.27),(5.28),(5.48),(5.49)式より(5.52)式のように計算 される.
V˙2 = V˙1+zθ˙z˙θ˙
= −Kϕ˙ϕ˙2−Czθ˙ϕ˙+zθ˙
(θ¨ref−θ¨cmd )
= −Kϕ˙ϕ˙2−Czθ˙ϕ˙+zθ˙(θ¨cmd−Kz˙
θzθ˙+ ˙ϕC−θ¨cmd)
= −Kϕ˙ϕ˙2−Kzθ˙zθ2˙ ≤0 (5.52)
(5.52)式は準負定であるが,V˙2 = 0を満たすのはϕ˙ = 0,zθ˙ = 0の時のみである.よってラ・サー ルの定理により平衡点において漸近安定であると言える.このようにバックステッピング法を用 いることで,操舵角加速度参照値θ¨ref を入力としたシステムの安定性を保証することができる.
提案手法2における姿勢安定化部分のブロック線図をFig.5-11に示す.
第5章 制御系設計
Fig. 5-11: 提案手法2の姿勢安定化