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自動制御のみの制御手法

人の入力を考慮しない自動制御のみによる操作性と安定性について述べる.Table 7.1に用いた ゲインの値を示す.

Fig.7-8に自動制御のみの場合の走行軌道の結果を示し,Fig.7-9にキャンバ角応答の結果を示

す.Fig.7-9の結果から,キャンバ角の変動は外乱に対して0.5度以内に収まっていることがわか

る.人が右に旋回しようハンドルに力をかけ続けているにも関わらず,これだけキャンバ角の変 動を抑えられるている.つまり,自動制御のみによる姿勢安定化制御は外乱に対する安定性はと ても高い.

しかし,Fig.7-8の結果から,全く曲がれていないことが確認できる.この理由は,人が目標軌

道に沿った走行をしようとハンドルに力を加えても,その力も外乱として認識し,DOBが排除し

第7章 3Dシミュレータ検証実験

Table 7.1: 自動制御のみで用いたゲイン

キャンバ角の固有振動数 ωn 2.5 キャンバ角の減衰比 ζ 0.7 キャンバ角に関するゲイン Kϕ 91.4 キャンバ角速度に関するゲイン Kϕ˙ 51.2

バックステッピングのゲイン Kz˙

θ 20.0

外乱オブザーバのカットオフ周波数 Kg 50.0 CADOのカットオフ周波数 Kca 50.0 自転車ハンドル角度に関するゲイン Kh 1600.0 自転車ハンドル角速度に関するゲイン Dh 80.0

Fig. 7-6: 自動制御のみの場合の走行軌道

第7章 3Dシミュレータ検証実験

Fig. 7-7: 自動制御のみの場合のキャンバ角応答

てしまうためだと考えられる.

このことから,RTOBによる人の入力推定をハンドルにフィードバックしない制御系では,人 の意思は自転車に全く反映されないことがわかる.

つまり,自動制御のみの制御手法は安定性は高いものの,操作性に欠ける制御系であることが 確認された.

人の入力を全く受け付けないため,自動制御のみによる検証実験は複数回行った上で平均をと る必要はないと判断した.

操作性を示す評価指標Rxyは9.60であった.また,安定性を示す評価指標ϕηは0.101であった.

第7章 3Dシミュレータ検証実験

Table 7.2: 従来手法で用いたゲイン キャンバ角の固有振動数 ωn 5.0

キャンバ角の減衰比 ζ 0.7 キャンバ角に関するゲイン Kp 4.4 キャンバ角速度に関するゲイン Kv -0.39 外乱オブザーバのカットオフ周波数 Kg 50.0

RTOBのカットオフ周波数 grt 5.0 質量インピーダンスゲイン Jm 30.0 粘性インピーダンスゲイン Dm 30.0 弾性インピーダンスゲイン Km 7.5 マスタハンドル角度に関するゲイン K1 900.0 マスタハンドル角速度に関するゲイン K2 60.0

自転車ハンドル角度に関するゲイン Kh 1600.0 自転車ハンドル角速度に関するゲイン Dh 80.0

従来手法

制御系設計で説明した従来手法による操作性と安定性について述べる.Table 7.2に従来手法で 用いたゲインの値を示す.

Fig.7-8に従来手法の走行軌道の結果の一例を示し,Fig.7-9に操舵角,キャンバ角応答の結果

の一例を示す. Table 7.3に10回繰り返した結果を示し,評価指標の値を示す.

Table 7.3の8,9回目においては,x = 5を越えた際に与えられる外乱により転倒してしまっ

た.そのため,このときの値は除外して評価指標は求めている.

転倒の理由としては,線形制御では外乱に対するロバスト性が低いことが挙げられる.また,ゲ イン調整の段階では人の入力によりすぐ倒れてしまったため,Table 7.2に示されるように,イン ピーダンスゲインを高く設計した.こうすることにより,人の入力の影響を抑えることで安定化 指令値と人の入力を組み合わせることができた.

しかし,質量インピーダンスゲインを高くしてしまったために,人が操作した際に感じた印象 は とても重いハンドル であった.操作性の観点からすると,重いハンドルは操作に適したイ ンターフェイスであるとはいえない.

また,2.0m/sで走っている自転車を操作するのは難しいと感じた.姿勢安定化のため線形制御

第7章 3Dシミュレータ検証実験

0 5 10 15 20 25 30

0 5 10 15 20 25

x [m]

y [m]

trajectory points

Fig. 7-8: 従来手法による走行軌道の一例

-30 -20 -10 0 10 20 30

0 10 20 30

angle [degree]

time [sec]

handle camber

Fig. 7-9: 従来手法による操舵・キャンバ角応答の一例

第7章 3Dシミュレータ検証実験

Table 7.3: 従来手法の評価指標結果 回数 Rxy ϕη

1 0.388 3.65 2 0.689 4.12 3 0.719 3.89 4 1.008 4.18 5 0.576 4.28 6 0.496 4.39

7 16.43 転倒

8 15.42 転倒

9 0.453 4.15 10 0.410 3.78 平均 0.592 4.06

では1.63m/s以上で走行しなければいけないためやむを得ないが,重いハンドルに倒れやすい自

転車でかつ速度が速いということで,従来手法の操作性は決して高いとはいえないと感じた.

数値を考察すると,操作性を示す評価指標Rxyの平均は0.592 であった.これは自動制御のみ に比べると,目標軌道に沿った走行ができていることがわかる.

しかし,安定性を示す評価指標ϕη の平均は4.06であった.これは,自動制御のみの場合の40 倍の値を示す.自動制御のみの場合は,そもそも自転車が旋回運動をしていないため,評価基準の ϕの値の変動が小さい.したがって比較するのは適切ではないかもしれないが,ϕηの平均が4.06 というのは大きな値である.

地面からの高さhが0.634mとしているため,キャンバ角変動の平均が4.06度のとき,重心は

4.5cmずれていると計算できる.平均で4.5cmずれているということは,左右のふらつきを考え

ればその不安定性がうかがえる.

Fig.7-9のキャンバ角の最大値を見ると,8度付近であることがわかる.このとき重心は約9cm

の右方向にずれている.自転車において重心が9cmずれるというのは,速度が速くない限り,転 倒しまう恐れが高い状況である.

第7章 3Dシミュレータ検証実験

Table 7.4: 提案手法1で用いたゲイン キャンバ角の固有振動数 ωn 2.5

キャンバ角の減衰比 ζ 0.7 キャンバ角に関するゲイン Kϕ 91.4 キャンバ角速度に関するゲイン Kϕ˙ 51.2 外乱オブザーバのカットオフ周波数 Kg 50.0 RTOBのカットオフ周波数 grt 5.0

質量インピーダンスゲイン Jm 15.0 粘性インピーダンスゲイン Dm 0.0 弾性インピーダンスゲイン Km 0.0 CADOのカットオフ周波数 Kca 50.0 マスタハンドル角度に関するゲイン K1 900.0 マスタハンドル角速度に関するゲイン K2 60.0

自転車ハンドル角度に関するゲイン Kh 1600.0 自転車ハンドル角速度に関するゲイン Dh 80.0

提案手法1

提案手法1による操作性と安定性について述べる.Table 7.4に提案手法1で用いたゲインの値 を示す.

Fig.7-10に提案手法1の走行軌道の結果の一例を示し,Fig.7-11に操舵角,キャンバ角応答の

結果の一例を示す.Table 7.5に10回繰り返した結果から得られた評価指標の値および自転車速 度の平均Vaを示す.

したがって,操作性を示す評価指標Rxy の平均は0.288であった.また,安定性を示す評価指 標ϕηの平均は0.698であった.更に,自転車速度の平均Vaは0.555であった.

提案手法1では,人の操作が入りやすいインピーダンスゲインを見つけるのに苦労した.なぜ なら,粘性インピーダンスゲインと弾性インピーダンスゲインが正の値をもつとき,人の入力推 定の変動が,自転車側に大きな影響を与えてしまうからである.そのため,ゲイン調整をしてい る段階では,人がマスタハンドルを握っている力に反発し,振動的に発散することがあった.操 作をしている感覚としても,マスタハンドルを握っているだけで,勝手に右へ左へ動いてしまう という印象であった.

第7章 3Dシミュレータ検証実験

0 5 10 15 20 25 30

0 5 10 15 20 25

x [m]

y [m]

trajectory points

Fig. 7-10: 提案手法1による走行軌道の一例

-30 -20 -10 0 10 20 30

0 10 20 30 40 50 60 70

angle [degree]

time [sec]

handle camber

Fig. 7-11: 提案手法1による操舵・キャンバ角応答の一例

第7章 3Dシミュレータ検証実験

Table 7.5: 提案手法1の評価指標結果 回数 Rxy ϕη Va

1 0.479 0.566 0.676 2 0.623 0.511 0.583 3 0.315 0.718 0.477 4 0.226 0.629 0.749 5 0.092 0.852 0.503 6 0.256 0.819 0.381 7 0.252 0.724 0.591 8 0.267 0.984 0.571 9 0.219 0.632 0.396 10 0.154 0.543 0.623 平均 0.288 0.698 0.555

そこで,粘性インピーダンスゲインと弾性インピーダンスゲインをTable 7.4のように0にする ことで,人の推定入力の大きさのみが自転車ハンドルにかかるようにした.

すると操作性は増し,Fig.7-10で表されるように目標軌道に沿った走行が可能となった.

操作性と安定性の評価指標を見てみると,Rxyの平均は0.288であり評価指標ϕηの平均は0.698 である.これは従来手法に比べどちらも小さい値をとっている.つまり従来手法に比べ提案手法 は操作性と安定性が向上していることがわかる.また,自転車の平均速度Vaも0.555m/sとなっ ており,従来手法よりも低速であることがわかる.これらの結果から,本研究の目的でもある,よ り低速において安定性と操作性の向上が達成できていることがわかる.

提案手法2

提案手法2による操作性と安定性を述べる.Table 7.6に提案手法2で用いたゲインの値を示す.

Fig.7-12に提案手法2の走行軌道の結果の一例を示し,Fig.7-13に操舵角,キャンバ角応答の

結果の一例を示す.Table 7.7に10回繰り返した結果を示し,評価指標の値および自転車速度の 平均Vaを示す.

よって,操作性を示す評価指標Rxyの平均は0.247であった.また,安定性を示す評価指標ϕη

の平均は0.550であった.更に,自転車速度の平均Vaは0.538であった.

第7章 3Dシミュレータ検証実験

Table 7.6: 提案手法2で用いたゲイン キャンバ角の固有振動数 ωn 2.5

キャンバ角の減衰比 ζ 0.7 キャンバ角に関するゲイン Kϕ 91.4 キャンバ角速度に関するゲイン Kϕ˙ 51.2

バックステッピングのゲイン Kz˙

θ 20.0

外乱オブザーバのカットオフ周波数 Kg 50.0 RTOBのカットオフ周波数 grt 5.0

質量インピーダンスゲイン Jm 1.03 粘性インピーダンスゲイン Dm 2.06 弾性インピーダンスゲイン Km 2.06 CADOのカットオフ周波数 Kca 50.0 マスタハンドル角度に関するゲイン K1 900.0 マスタハンドル角速度に関するゲイン K2 60.0

0 5 10 15 20 25 30

0 5 10 15 20 25

x [m]

y [m]

trajectory points

Fig. 7-12: 提案手法2による走行軌道の一例