第 2 章 実験装置 15
2.9 静電型イオン蓄積リング( TMU E-ring )
静電型イオン蓄積リングはイオンビームを偏向,収束,発散させながらリング状の真空 槽内に長時間イオンを蓄積する装置である [12–15].本学設置の静電型イオン蓄積リング
5.5
5.0
4.5
4.0
3.5
10-1 pressure / Pa
2nd Stage
temperature / K
10-2 10-3
10-4 10-5
10-6 10-7
図2.39 Heガス導入による2nd Stageの温度変化
(TMU E-ring)の概略図を図2.48に示す.4つの10◦ 平行平板偏向電極(10◦DEF)と 2つの160◦ 円筒型偏向電極(160◦DEF)を用いてイオンを周回させている.
ビーム入射部に設置されている10◦DEFはリング内に入射するイオンのスイッチング に用いられる.また,水平方向の収束,発散には4つの4極電極(QD)を,垂直方向の 収束,発散にも同様に4つの4極電極(QF)を使用する.イオンが数秒間,リングに蓄 積されると重力による軌道の変化が生じる.この効果を緩和するため,4箇所に垂直偏向 電極(VST)を用いている.形状はレーストラック型で周回長は7.736 mである,レー ザー合流のため,2つの直線部がある.中性化ビームについては直線部ライン延長上に設 置された検出器によって測定可能である.具体的にはMCPと蛍光板を組み合わせ,その アナログ信号の蛍光をCCDカメラによりデジタル化して読みとり,位置とビーム強度情 報を引き出す.
リング内を周回しているイオンビームをモニターするために,円筒を4分割した電極か ら構成されるビーム位置モニター(BPM)が4箇所に設置されている.リング内を周回 しているイオンパルスビームがこのを通過することで発生した誘導電荷を検出することに より,イオンパルスビームの重心や周回時間構造が導ける.この時間構造をフーリエ変換 することによってイオンビームの高精度質量分析も可能である.また,ビームの直接的測 定としてビューワーを2箇所に設置してある.
高速イオンビームを長時間蓄積するため,6台のゲッターポンプと4台のイオンポンプ
2.9 静電型イオン蓄積リング(TMU E-ring) 39
図2.40 差動排気部の全体図
図2.41 差動排気壁
図2.42 イオン加速部の全体図 図2.43 パルス加速装置の全体図
により,リング内の真空は10−9台の超高真空に保たれている.
また,本学設置の静電リングの大きな特徴として,周回ビーム周辺の環境温度を液体窒 素温度にまで冷却可能であることがあげられる.2系統に分かれてリング内に張り巡らさ れている配管に液体窒素を流入し,冷却する.リング内各電極全てを内部に取り込むよう に設計されている.
図2.44 パルス加速装置の構成図
potential 15 kV
図2.45 パルス加速装置模式図
voltage / V
0.0
-0.2
-0.4
-0.6
-0.8
-1.0
3 4 5 6 7 8×10-3
time / s
図2.46 昇圧タイミング依存性
voltage / V
0.0
-0.2
-0.4
-0.6
-0.8
-1.0
3.15 3.30×10-3
time / s
3.20 3.25
図2.47 昇圧タイミング依存性(拡大図)