第 3 章 巨大分子イオンの生成テスト 43
4.3 溶媒の変更
2
1
0
counts
1600 1400
1200 1000
800 600
400 200
mass / u
n=24
n=4 MB
+図4.5 メチレンブルーの質量スペクトル(室温)
4.3 溶媒の変更
MB+ への水分子付加のメカニズムを調べるため,溶媒を変更して測定を行った.もし 溶媒を変更しても水分子が付加したなら,水分子はMB+の生成後に大気中またはチャン バー内部に付着した水分子が付加した可能性が高い.また新たな溶媒が付加したり,何も 付加しない場合,イオン化の際に既に水分子が付加しているものだと考えられる.
4.3.1 メタノールのみ
溶媒をメタノールのみに変更し,質量スペクトル測定を行った.試料濃度や調製方法は 前回と同じである.
結果,MB+にメタノール分子が付加したイオン(MB+(CH3OH)n)の生成が確認され た(図4.6).さらに,MB+からメチル基(-CH3)が解離したイオンに複数個のメタノー ルが付加したイオンも観測された.水分子が付加しないことから,イオン生成した時点で 溶媒が付加しているのか,または水よりもメタノールの方が付加しやすいことが考えら れる.
counts
mass / amu 100
101 102 103 104
700 600
500 400
300 200
n = 0 5
MB+(CH3OH)n
図4.6 溶媒:メタノール
4.3.2 水:メタノール= 3 : 7
溶媒を水:メタノール=3:7に変更し,質量スペクトル測定を行った.試料濃度や調 製方法は前回と同じである.
結果,MB+に水分子が付加したイオン(MB+(H2O)n)やメタノール分子が付加したイ オン(MB+(CH3OH)m)に加え,両方の分子が付加したイオン(MB+(CH3OH)m(H2O)n) の生成が確認された(図4.7).メタノールが5個以上付加したイオンが観測された.
4.3.3 水:メタノール= 7 : 3
水とエタノールの比率を変更し,溶媒を水:メタノール=7:3とし,質量スペクトル 測定を行った.試料濃度や調製方法は前回と同じである.
結 果 ,水:メ タ ノ ー ル = 3:7 の 場 合 と 同 様 に ,MB+(H2O)n,MB+(CH3OH)m, MB+(CH3OH)m(H2O)n の生成が確認された(図 4.8).水:メタノール= 3:7 の場 合と比較すると,付加したメタノールの数は3個と減少し,溶媒の比率によってスペクト ルの強度の比率も変化したのだと考えられる.また,イオンの強度が安定しているように 見える.これは,有機溶媒であるエタノールを多く含んでいることにより,安定したテイ ラーコーンが形成されているためだと考えられる.
4.3 溶媒の変更 67
300
200
100
0
counts
600 500
400 300
mass / u
-14 MB+
-28
+30
+16 MB+(CH3OH)(H2O)n
MB+(CH3OH)2(H2O)n
MB+(CH3OH)3(H2O)n
MB+(CH3OH)4(H2O)n
MB+(CH3OH)5(H2O)n
MB+(H2O)n n = 0 n = 0
n = 0 n = 0
n = 0 n = 0
5 10 15
5 10 15
5 10
5 10
5 10
5
図4.7 水:メタノール=3:7
4.3.4 重水:アセトニトリル= 3 : 7
次に,溶媒を重水(分子量20):アセトニトリル=3:7に変更し,質量スペクトル測定 を行った.試料濃度や調製方法は前回と同じである.
結果,重水ではなく水分子の付加が観測された.これは,溶媒ではなく大気やチャン バー内部に付着した水分子が付加しているのだと考えられる.重水も同様にチャンバー内 部などに付加していると思われるが,重水よりも水の方が付加しやすいためだと考えら れる.
4.3.5 重水のみ
次に,重水ははじめからイオン化しにくいのではないかと考え,溶媒を重水のみにして 測定を行った.結果,分子量が20 u間隔の3個のピークが観測された(図4.9).しかし 重水のクラスターイオン(D3O+(D2O)n)だとすると,分子量の値が全体的に4 uほど 小さい.電圧などのパラメータ調整を行っても,これ以上大きい分子量のピークは現れな
1000
800
600
400
200
0
counts
600 500
400 300
mass / u
MB+(CH3OH)(H2O)n MB+(CH3OH)2(H2O)n
MB+(CH3OH)3(H2O)n
MB+(H2O)n n = 0 n = 0
n = 0 n = 0
5 10 15
5 10
5 10
5 10
15
-14 MB+
-30
+45 +16 +14
+24
図4.8 水:メタノール=3:7
かった.よって,現時点でこのピークのイオンを特定することはできない.
また,分子イオンが針とヒートキャピラリーの間を通る際に,重水素が大気中の水素と 置換してしまっているのではないかと考え,流量を100 µl/minまで上げてヒートキャピ ラリー入り口に吹き付けるように噴霧したが,質量スペクトルに変化はなかった.他に も,注射針でヒートキャピラリーに直接重水を水いこませたり,針とキャピラリー間を 囲って重水を含ませた紙を内側にたくさん張り付けるなどして,なんとか重水をつけよう としたが結果は同じだった.
4.3 溶媒の変更 69
1 10 100
coun ts
400 390
380 370
360 350
mass / u
n = 4 5 6
図4.9 重水