第134条【電力保安通信設備に係る用語の定義】
〔解 説〕 本条は第4章で用いられる主要な用語の定義を掲げたものである。
第一号は、添架通信線の定義である。添架通信線には、添架する電線路の使用電圧により、低圧添架通信線、高圧添 架通信線、特別高圧添架通信線がある。
第二号は、給電所の定義である。給電所は、電力系統を構成する発変電所、送配電線路等の電力施設を経済的かつ合 理的に総合運用するための指令、すなわち、発変電所の運転、周波数及び電圧の調整、電力需給の調整、送電系統の変 更並びに系統事故の際の復旧操作等の指示を行うところである。
第135条【電力保安通信用電話設備の施設】
〔解 説〕 電力系統を構成している事業用電気工作物(発電所、変電所、電線路等の電力設備)を最も安全に合理的 かつ経済的に総合運用するため、これらの設備、機器の運転操作は全て給電所(→第134条第ニ号)から発せられる給 電指令によって行われる。したがって、給電所とこれらの電力設備との間には「専用」の通信設備が必要である。ここ でいう「専用」とは、原則として電力保安通信用電話のみのために施設されたものをいう。
発電所から変電所への送電は、この通信設備によって予めその旨を給電所から発・変電所に連絡するなど、両者間の 緊密な連絡のもとに行われる。
事故等で発電、送電、変電等の機能が停止した場合や、設備の点検、保守などの場合にも、給電所からこれら電力設 備に対して適切な指示が与えられて、事故の復旧操作や電気工作物の使用、停止等が行われるが、これらの指令伝達に もこの専用の通信設備が使用される。このように電力設備の保安上及び運用上欠かせない通信設備を電力保安通信設備 と呼んでいる。
この電力保安通信設備には、重要な区間に用いられている多重無線設備と有線設備等があり、電話の他にテレメータ、
キャリアリレー、フォルトロケーター、テレコントロール等の信号伝送に利用されている。本条では、このうち電話設 備の施設について規定している。
第1項第一号は、一つの給電所とその給電所の指令によって運転されている発電所、変電所(特別高圧の電気を受電 している自家用電気工作物の受電所等を含む。)、発電制御所、変電制御所、開閉所、電線路の技術員駐在所(いわゆる 保線所、保線区等)との間に電力保安通信用電話設備を施設するよう規定している。
○43基準で、発電制御所、変電制御所が新たに追加されたが、従来これらの制御するところは当然発電所であり、変電 所であると解釈されていたが、発電所や変電所の中にない独立した制御所も将来は考えられるということから、本条に おいて全面的にこれらが追加された。なお、○57基準で、35kV以下の特高需要家が、スポットネットワーク供給方式又は 本線予備線供給方式のような機器の操作が極めて簡単で、かつ、系統に影響を及ぼすおそれがない方式で受電する場合、
電力会社の給電所と当該需要家との間に公衆電話等による通常の連絡手段が確保されていれば、保安上及び供給上特に 問題がないので、電力保安通信用電話設備は省略できることとした。
また、○61基準で、遠隔監視制御されない発電所であって、電気の供給に支障を及ぼさず、かつ、給電所との間で常時 連絡をとる必要のない発電所は、保安上及び供給上特に問題がないので、電力保安通信用電話設備は省略できることと した。なお、ここでいう「電気の供給に支障を及ぼさず」とは、イ(イ)から(ハ)の条件を全て満足することをいう。
(ハ)の「給電所との間で保安上、緊急連絡の必要がない」とは、連系する電力系統や当該発電所の主回路の構成が 簡単であること等により、当該発電所の運転、操作等が簡略であり、平常時、事故時の処置をあらかじめ給電所との間 で取り決めておき、支障なく対処できるように措置されていることをいう。
無人発・変電所は、これを制御する親発電所等や発・変電制御所等と給電所との間に通信設備を施設してあれば、通 常の運転、操作に関しては目的が達せられることから、遠隔監視制御される無人発・変電所を除いている。ただし、親 発・変電所と無人発電所(ただし書の発電所を除く。)又は無人変電所との間においては、事故時などに保安上の連絡が 必要であり、常設又は移動用の電話設備を準備することが望ましい。また、ヘのかっこ書きは、開閉所において、その 場所に保安員が赴いた場合に給電所と連絡をとれる設備があれば、当該開閉所と給電所との間に電話設備を常設する必 要はないことを規定している。
第二号は、電力系統の連系が大きくなったため、給電所(例えば支店給電所)とその総合運用を行う上位給電所(例 えば中央給電所)との間に電話設備を完備していなければ、平常運転にも支障を生じ、また、事故の波及が広範囲にわ たるおそれがあるので、両者間に電話設備を設けるよう規定している。
第三号は、多くの電力系統が連系されて電力の融通が行われている今日では(各電力会社相互間で電力融通が行われ ている。)、他の電力系統の必要箇所と連絡がとれなければ、平常時の系統運用にも支障をきたすばかりでなく、事故が 広範囲に波及するおそれがあるので、これらの給電所間に電話設備を設けるよう規定している。
第四号は、発電用の貯水池、調整池及びダム水路等の水力設備と水力発電所との間並びにこれら水力設備の保安と直 接関係のある量水所及び降水量観測所と水力発電所との間に電話設備を施設するよう規定している。
第五号は、保安上、緊急連絡の必要がある同一水系の水力発電所相互間に電話設備を施設するように規定している。
第六号は、保安上、緊急連絡の必要がある同一電力系統の発変電所等の相互間に電話設備を施設するよう規定してい る。
第七号の「技術員駐在所」とは、発電所、変電所、発電制御所、変電制御所、開閉所の運用に直接関係のある技術員 駐在所を指しており、これは、一般には発・変電所等に異常(事故等)が発生した場合、緊急出動する技術員の駐在所 が該当する。また、無人の発・変電所等の場合は、保安警報を受信する技術員駐在所(連絡補助員の駐在所は中継のみ であるため含まれない。)も当然これに該当する。なお、イ及びロのただし書の発・変電所については、緊急を要する連 絡の必要性が低いことから、携帯用又は移動用の電力保安通信用電話設備を用意してあれば、発・変電所に施設するこ とを要しない。
第八号は、水力発電所の運転上、降雨量の変化及び気象の変化による負荷の変動等を予め想定する必要から又は雷若 しくは台風等電力設備と密接な関係を有する気象の変化を予知する等の必要から気象台、測候所との間に電力保安通信 用電話を施設することを規定し、さらに、火災時に消防活動及び付近の一般大衆の保護のため罹災家屋の送電を緊急遮 断する必要があるので、消防署との間に電力保安通信用電話を施設するよう規定したものである。また、原子力発電所 にあっては、放射線監視計測施設との間に電力保安通信用電話が必要である。
第2項は、特別高圧架空電線路及びこう長5km以上の高圧架空電線路には、線路巡視に出た場合、必要に応じ、携帯用 又は移動用の電話機で随時通話できるように電力保安通信用電話設備を施設する必要があることを示している。
第136条【電力保安通信線の施設】
〔解 説〕 発・変電所は大半が無人化、自動化され、これらの制御を一括して電子計算機により前処理し、最終判断 のみを制御所又は給電所の運転員が行っているのが現状である。何らかの原因により、情報が失われ又は情報に誤りが 生じると正しい操作が困難となり、混乱を起こしかねない。したがって、本条では電力保安通信線全般の信頼性を確保 するため、その施設方法を規定している。
第1項は、重量物の圧力又は著しい機械的衝撃を受けるおそれがある場所には、適当な防護装置を設け又はこれらに耐 える保護被覆を施したもの(一般に通信ケーブルは保護被覆を施したものと解してよい。)を使用するよう規定している。
一般に「重量物の圧力又は著しい機械的衝撃を受けるおそれがある」とは、人等が通行する面上に施設される場合、通 信線の上に電力ケーブル等が施設される場合、直接地中に埋設する場合、コンクリートに直接埋設する場合又は壁等を 貫通する場合などが考えられる。
第2項では、電力保安架空通信線は、台風、集中豪雨、雪等によりビニル袋、木片等が飛散し、通信線に引っ掛かり又 は樹木等が倒壊し、通信線に寄りかかるなど外的損傷を受けやすい設備であるため、信頼性を向上させるために通信線 の強さを規定している。第一号イは、通信線をちょう架用線(メッセンジャーワイヤ等)によりちょう架するよう規定 し、ロでは、そのちょう架用線の材料を金属線とするよう規定している。光ファイバケーブルの場合に金属線以外のも のを使用できるのは、光ファイバケーブルが絶縁物であることから、ちょう架用線も金属製以外のものを使用すると誘 導電圧が生じず、作業上安全であるためである。ハは、ちょう架用線の安全率を高圧電線並みにするよう規定したもの である。光ファイバケーブル等の通信線を支持物に固定して引き下げる場合等は、通信線に張力が加わらないので、ち ょう架用線は必要ない。
第3項は、電力保安通信線に複合ケーブルを使用する場合の施設方法について規定している。水力発電所では、ダム・
水路等の取水設備のゲート操作等を発電所又は技術員の駐在所から操作するため、電力線と通信線を施設する必要があ るが、架空電線及び架空通信線では、山岳地を通過するため、保守が困難であり、また、土砂崩れ等により損壊しやす かった。そのため、導水路を利用し、電力線と通信線とを束ねた複合ケーブルを使用した施設方法が多く採用されてき た。○61基準で、これらの複合ケーブルを規格化し、基準を整備することにより、ダム・水路等の施設だけでなく、一般 的な電力保安通信設備についても使用できるようにした。複合ケーブルの通信線は、常時誘導電圧が誘起するため、他 の通信線と異なり、非常に危険である(誘導電圧は電気エネルギーを送電する目的を持たないため、電線扱いにはなら ない。)。したがって、弱電流電線を電力保安通信線に使用する場合に限り、使用が認められている。
第一号は、複合ケーブルを使用した通信線を道路に埋設して施設する場合の施設方法について規定している。これは、
複合ケーブルを使用した通信線を道路に埋設して施設する方法は、ボーリング調査、道路工事又は道路に管等を埋設す る工事のときに、ケーブルが損傷することが多く、金属製の刃等によりケーブルが損傷した場合には、通信線に電力が 侵入し、通信機等を損傷させるだけでなく、人に対し非常に危険なためである。イ及びロでは、道路に埋設しても、管 理を徹底すれば危険でないので、その施設方法について規定している。ハでは、やむを得ず道路を横断する場合には、