S :臨界径間(m)
第5節 屋側電線路、屋上電線路、架空引込線及び連接引込線
第110条【低圧屋側電線路の施設】
〔解 説〕 本条は、屋側に施設される低圧電線路の要件及びその施設方法を示している。
第1項では、屋側に電線路を施設することができる条件を示している。
屋側電線路は、電気使用場所において電気の使用を目的として施設する屋側配線(→第1条第十二号)と類似しては いるが、電気使用場所等に安全かつ確実に電気を送るべき電線路であるので、この種の形態の電線路は第1項の施設範囲 以外のものは本来好ましくないものであり、本条では原則としてその施設をしないこととしている。つまり、特殊な場 合であって、技術上やむを得ない場合、例えば、工場、作業場のような構内で電線路の支持物を施設する余裕のない場 合や電線が錯そうして、かえって危険を伴うような場合において施設が可能であることを示している。
第一号の「1構内又は同一基礎構造物及びこれに構築された複数の建物並びに構造的に一体化した1つの建物(以下こ の条において「1構内等」という。)に施設する電線路の全部又は一部」とは解説110.1図 (a) のような場合をいう。
「同一基礎構造物及びこれに構築された複数の建物並びに構造的に一体化した1つの建物」については、⑨解釈で、1 構内の定義に追加したものである。近年、同一の開発者により、共有の人工地盤(地下駐車場に使用される場合が多い。) 上に複数の建物が設置され、受電のために、その建物の屋側スペースを電線路が通過せざるを得ない場合がある。また、
テナントビル等に代表されるとおり、1つの建物の中に複数の受電者が存在する場合においても、同一建物内の屋側スペ ースを電線路が通過せざるを得ない場合がある。よって、「同一基礎構造物に構築された複数の建物」及び「構造的に一 体化した1つの建物」を合わせて「1構内等」としている(→第132条解説)。
第二号の「1構内等専用の電線路中その構内等に施設する部分の全部又は一部」とは、解説110.1図 (b) のような場合 であって、解説110.1図 (c) のような場合は、いずれも第1項の規定に適合しないため、施設しないこととしている。
(a) (b) (c)
解説110.1図
第2項は、低圧屋側電線路の工事の種類及びその方法について示している。
第2項各号において工事方法を規定しているが、木造造営物の屋側部分は、電気工事の完了後、しばらくたってから木 造造営物にメタルラス張り等が施工されるケースがあり、このようなケースで漏電火災事故につながる事例が多かった ため、過去の漏電火災事故の分析をもとに、○47基準で木造造営物には金属管工事、バスダクト工事、金属被覆を有する ケーブル工事をしないこととした。
第一号は、がいし引き工事について示しており、ハで使用電線について定めている。電線の太さ及び強さは、低圧引 込線の屋側部分(→第116条)と同じく直径2.0mm以上の軟銅線を基準としている。電路の絶縁のほとんどは電線を支持 するがいしが負担しているが、屋側電線路の高さが十分でなく、人が触れる危険性も考慮して、電線には絶縁電線を使 用することとしている。
ニは、電線相互及び電線と造営材との離隔距離を、使用電線の種類と施設場所の区分ごとに示している。雨露にさら されない場所と、雨露にさらされる場所との関係については、第1条第二十六号の解説を参照されたい。なお、110-1表 の電線支持点間の距離は、電線が緩んで造営材に触れることなどがないように示されたものであり、また、110-2表に 示した値は、中ノッブがいし及び低圧ピンがいしの標準寸法が基準となっている(→解説110.2図)。
解説110.2図
ここでは、屋側配線に類似した屋側電線路(→解説110.3図(a))に対するものだけでなく、架空電線路の支持物の代 わりに造営物の一部を使用したような状態の屋側電線路(→解説110.3図(b))の施設方法についても規定している。例 えば、低圧架空電線路の電線として直径2mm以上の硬銅線を使用し、造営材に適当な腕木を取り付け電線相互の間隔を 20cm以上、電線と造営材との離隔距離を30cm以上とする場合は、電線の機械的強度も強く、電線の緩みによる造営材と の接触、電線相互の接触等の危険が少ないので、屋外用ビニル絶縁電線も使用できることにしており、支持点の距離も 15mまでとることができる。
解説110.3図
ホは、引込用ビニル絶縁電線を屋側電線路のがいし引き工事に使用する場合について示している。引込用ビニル絶縁 電線(→第5条解説)は、線心に600Vビニル絶縁電線と同等のものをより合せ又は平型に接合したものであり、電線相互 の間隔をとれないので、この規定により施設することとしている。
(ハ)は、電線をバインド線によりがいしに取り付ける場合、バインド部分の絶縁劣化により線間に短絡を生じるお それがあるので、バインド部分の電線をがいしの異なるみぞに入れ、それぞれ異なるバインド線により心線相互及びバ インド線相互が接触しないように施設する必要があることを示している。なお、3心の引込用ビニル電線でそのうちの1 本をバインドしないような場合は、他の2心についてのみ本号により施工することとする。
(ニ)も、接続点の絶縁劣化により線間短絡が発生することを防止するためのものである。110-1表において電線と造 営材との離隔距離を3cmとしているのは、○47基準で追加された規定で、一般の場合の2.5cmを3cmとしている。したがって、
離隔に注意して使用するがいしを選定する必要がある。
また、引込用ビニル絶縁電線を用いた場合について、屋外用ビニル絶縁電線の規定に相当する施設方法(→解説110.3 図(c))を④基準で追加した。これは、2階屋根等の高い架空引込線の取付け点からの引下げ部分(→解説116.5図)に引 込用ビニル絶縁電線を用いることができるようにするためであり、引込線の施設に関する事項なので第116条で規定すべ き事項とも考えた。しかし、従来、同項は低圧引込線の屋側部分と屋上部分の施設に、本条第2項及び第3項の規定を準 用することにしてきたので、造営材との離隔距離、支持点間距離を屋外用ビニル絶縁電線に準じることとし、本条で低 圧屋側電線路の規定を追加することにした。したがって、多くは低圧引込線の屋上部分の施設に準用されるものである。
ヘは使用するがいしの仕様について示したものであるが、陶器若しくはガラス製のもの又はポリカーボネイト若しく はエボナイト等樹脂系のもの等は、この条件を満足する。
トの他の工作物との離隔距離については、低圧架空電線路の場合に比べて若干緩和している点があるが、条項の趣旨 は同様であるため、第78条の解説を参照されたい。「当該低圧屋側電線路を施設する造営材」については、第2項第一号 ニにおいて示され、「架空電線、屋側に施設される他の高圧又は特別高圧の電線及び屋上電線」については、それぞれ架 空電線、高圧屋側電線、特別高圧屋側電線及び屋上電線の方で示されているので、他の工作物から除いている。
チの植物との離隔については、架空電線の場合(→第79条)と同様、接触しなければよい。
第二号、第三号及び第四号は、それぞれ合成樹脂管工事、金属管工事及びバスダクト工事についての規定で、屋内配 線工事のそれぞれの条項に準じることとしている。
第五号は、ケーブル工事についての規定で、ケーブルを造営材に沿わせて施設する場合は、屋内配線のケーブル工事 の規定に準じて施設し、ケーブルをちょう架用線にちょう架して施設する場合は、架空ケーブル工事の規定に準じて施 設することとしている。
第3項については第167条の準用であるので、詳細については第167条の解説を参照されたい。
第111条【高圧屋側電線路の施設】
〔解 説〕 本条は、屋側に施設される高圧電線路の要件及びその施設方法を示している。
第1項では、屋側に電線路を施設することを容認している場合を示している。高圧屋側電線路は、低圧屋側電線路より 更に保安上の考慮が必要な電線路であるから、低圧屋側電線路の場合と同様、その施設範囲を限定し(→第110.1図)、
技術上やむを得ない場合にのみ施設できる。したがって、ケーブル工事のみとし、隠ぺい場所の工事はできないことと している。
また、都市過密地域において、地中化を推進しているが、事故時における復旧時間の問題などから、複数の電線路か ら受送電するように需要場所に開閉器箱を設け、開閉器箱から需要家に引込む方式をとることがある。この開閉器箱は 地上に設置することが原則であるが、既設のビル等でスペースがなく、やむを得ない場合に開閉器箱を屋上に施設する 場合がある(→第132条解説)。
開閉器箱は、事故時に開閉器を切り替える必要があることから、一般的に電力会社の保守員等がいつでも現地に行く ことができる状態になっており、それが難しい場合には電力会社の営業所等において遠隔制御できる施設となっている。
第2項は、高圧屋側電線路の工事方法を示している。高圧屋側電線路の施設は、ケーブル工事のみとし、隠ぺい場所に は施設できないこととしている。第四号では、ケーブルに外傷保護の点から接触防護措置(→第1条第三十六号)を施 すことを示し、第五号では、ケーブルの支持点間隔は他の場所におけるケーブル工事と同様2m(垂直に取り付ける場合 は、6m)とし、支持点では外装等の被覆を損傷しないように施設することを示している。なお、○61基準で垂直に取り付 ける場合を6mとした。これは屋内のケーブル工事と整合させたものである。第六号は、○51基準で追加されたもので、ケ ーブルをちょう架用線にちょう架して施設する場合は、架空ケーブル工事に準じて施設することを示している。第七号 は、ケーブル工事における金属製部分の接地工事を示したもので、高圧機械器具の外箱等の接地は全てA種接地工事によ ることとしている(→第29条)ことに鑑み、原則としてA種接地工事を施すべきことを示している。ただし、防食措置を 施したもの(→第123条解説)又は金属製部分の大地との抵抗が10Ω以下の場合はA種接地工事を施したものと同等とみ なして接地工事を施設しなくてもよい。メタルラス張り又はワイヤラス張りなどの木造造営物に施設する場合は、第145 条第2項に準じて施設する必要がある。
第3項及び第4項は、他の工作物との離隔距離を定めたもので、高圧屋側電線を除く他の屋側電線、弱電流電線等、水 管又はガス管が施設されている造営物に高圧屋側電線路を施設する場合は、それらと0.15m以上離す必要がある。○57基準 では高圧屋側電線を除くこととしたが、これは○51基準で、相互間の離隔距離をとらなくてもよいこととした高圧屋内ケ ーブルについて、その後の実績及び密接布設時における隣接ケーブルへの事故波及の検討を行った結果、屋側電線路に ついても支障がないことが確認されたためである。架空電線、屋上電線及び上記のもの以外との離隔距離は0.3m以上と することとしている。ただし、第5項で他の工作物との間に耐火性の堅ろうな隔壁を設け又は管に収めて施設する場合は、
離隔をとらなくてもよいことを示している。架空電線及び屋上電線との離隔距離については、それぞれ架空電線及び屋 上電線の条文で示されている。
第112条【特別高圧屋側電線路の施設】
〔解 説〕 電圧が高くなるのに比例して、その危険度や事故の波及範囲は大きくなるものであるが、特別高圧屋側電 線路は、技術上やむを得ない特殊な事情があるときには100kV以下の場合に限り、高圧屋側電線路の規定に準じて施設す ることを認めている。これは、工場構内等においては水管、ガス管又は蒸気管等のパイプスタンドが林立し、地中にお いても同様にこれらの配管が錯そうしているのが実情で、架空電線路又は地中電線路等の工事に比べて信頼性が高い場 合もあるからである。なお、特別高圧屋側電線路の施設に当たっては、高圧の場合と同じ規制がかかっている。
屋側電線路は、屋上電線路も含めて、電線を支持する造営物の規制は立法上明確にされていないが、機械的強度は設 計段階で十分チェックすべきであり、例えば、造営物が木造の場合は漏電火災の危険度も高くなるので、その保護につ いて配慮しておかなければならない。また、造営物が常時振動している場合又は間欠的に揺れるような場合は、その影 響を考慮することが必要である。
第113条【低圧屋上電線路の施設】
〔解 説〕 本条は、屋上に施設される低圧電線路の要件と施設方法を示している。
第1項では、屋上に電線路を施設することを容認している場合を示している(→解説110.1図)。
第2項では、屋上電線路の工事は、ケーブルを使用する方法、絶縁電線をがいしで固定する方法及びバスダクトによる 方法に限定している。○61基準で、絶縁電線の工事の場合とケーブル工事の場合とを分けて示した。また、⑪解釈で、バ スダクト工事による場合を新たに追加した。
第一号の絶縁電線を用いる工事方法では、屋上電線路に使用できる電線を引張強さ2.30kN以上の絶縁電線又は直径 2.6mm以上の硬銅線の絶縁電線とし、屋側電線の直径2mmの軟銅線より強度を大きくとっている(→第110条第2項)。 絶縁電線を使用する屋上電線は、通称「うま」と言われる支持柱又は支持台を設け、これにがいしを用いて電線を取 り付けるのが普通であるが、この場合、電線の支持点間の距離は電線の振れ、緩み等を考慮し15m以下とすることとし、
電線とそれを施設する造営材との離隔は2m(電線が高圧絶縁電線又は特別高圧絶縁電線の場合は、1m)以上とすればよ