階乗記法は、基数が2から順に増加するもので、0と1の間の実数を表現す るのに使われる。従って階乗数記法では、数は、
x= a1 2 + a2
2·3+ a3
2·3·4 +. . .+ an
(n+ 1)! +. . .
と表現される。ただし、a1, a2, . . . , an, . . . は、それぞれ添字以下である、す なわち、
a1 ≤1 , a2 ≤2 , ... , an ≤n . もしも、ある桁から先で
an=n, となっているときは、
n
(n+ 1)! + (n+ 1)
(n+ 2)! +. . .+ n+k
(n+k+ 1)! +. . .= 1 n!
が成り立つ。実際、
1
n! − n
(n+ 1)! = n+ 1
(n+ 1)! − n
(n+ 1)! = 1 (n+ 1)!,
であることに注意すれば、左辺の部分和の項数を十分多くすれば、右辺との 差はいくらでも小さくできるのである。
従って、上の数xを
x= 0, a1a2, . . . , an. . . , と略記すると、もしも、an−1がn−1ではないとき、
0, a1a2, . . . , an−1n(n+ 1)(n+ 2)(n+ 3). . .= 0, a1a2, . . . ,(an−1+ 1)
となる。従って、ある桁から先がan = nであるならば、有理数となる。逆
に、an < nとなるnが無数にあるとき、その数は無理数となる。
十進法では、有限小数で表されると同時に、有限個の桁以外は9である ような無限小数でも表現できるのは、十進分数、すなわち自然数を10のべ きで割った分数、だけである。実際、
0.247 = 0.24699999· · · ·
十進分数ではない有理数の十進小数表示は、単純な循環小数か混合した 循環小数で、ただ一通りの方法でしか表わされない。
このことは、基数が10以外の単純数記法でも全く同様である。
階乗数記法の場合は、この規則は、すべての有理数について成り立つ。す なわち、どの有理数も、有限展開と、an6=nとなるnが有限個の無限展開に より二通りに表示される。このことは、最初のn個の基数の積n!は、nが十 分に大きくなると、予め与えられた有限個の数すべてで割り切れる、という ことからわかる。
以上より、階乗数記法は、次の点で、以下の節で取りあげる 正規ユニタ リ展開や連分数展開にはない利点がある。その利点とは、この記法により有 理数と無理数とを簡単に識別できることであるーー有理数は、有限展開と無 限展開の二通りの表示ができるのに対し、無理数は無限展開による表示しか できない。
それに対し、10進法のような単純数記法では、一部の有理数だけが、有 限と無限の二通りに表示することができ、他の有理数は無限循環表示として 一通りに表示できるだけである。
ここで、どのような数が階乗数記法で循環するかを誰でも問いたくなる だろう。すぐわかることだが、こういった数は、eω の線型結合となる、ただ し、ω は1 のn乗根を表わす。しかし、こういう数は特に興味深いというわ けではない。これとは対照的に、自然対数の基e は階乗記法では特別単純な 表記を持つ、というのは、どの桁an も1となるからである。もっとも、そ うだからこそ、階乗数記法や、次節で取りあげる正規ユニタリ展開が着想さ れたに違いない。
階乗数記法では、小数点以下第n+ 1位の数an は0,1,· · ·, n のいずれか となるのでn+ 1個の値のいずれかをとる可能性がある。したがって、もし も、先に定義したような確率を定めるとき、anは、これらの値のいずれとな るかは同じ確率を持つことになる。
anが与えられた数k と一致する確率は、n < k のときゼロであり、n ≥k のとき、 1
n+ 1 である。級数 1
k+ 1 + 1
k+ 2 +. . .+ 1
k+h +. . .
は発散するので、整数kが与えられたとき、an =k となるnが無数にある確 率は1となる。k, h がとても大きいとき、ほぼ
1
k+ 1 + 1
k+ 2 +. . .+ 1 k+h =
∫ k+h k
dx
x = logk+h k
となるので、k+h=ek のとき、この和は1となる。
上のことから、kより小さい数が一つ与えられたとき、nがkとek の間 の数を動くとき、つまり、長さ(e−1)k の区間を動くとき、平均的には、少 なくとも一つのanはその数と一致する。この区間の数の中に、平均的には、
1からkまでのどの数も現われなければならないので、特に (e−2)k はkと ekの間の(e−1)k個の自然数のどれかと同じになる14。
このことから次のことがわかる:二つの自然数k, hを勝手に選ぶとき、h がkと比べて遥かに大きいとしても、最初のn個のanの中に、それぞれが現 われる頻度の比率は、nが限りなく大きくなるとき1に近づく。こうして、こ れまで試みたができなかったことーーどの数にも同じ確率を与えることが、
階乗数記法により可能となると考えることができる。もっとも、それは漸近 的な確率でしかないことはわきまえておく必要がある、すなわち、k, hが現 れる頻度が等確率となるのは、k, hが大きい数になるにつれ、nをより大き くするときだけ正しい。従って、到達不能でない数が出現するのはn自身が 到達不能な数でない間だけである。
15 どの整数k の相対的な頻度も、より先のanを考えるにつれ、零に近づ くが、零に近づく速度は次第に遅くなる。kが与えられたとき、aとeaの間 にあるk以上のn の中では、平均して一個のanがkと一致するので、aと aebの間にあるn については平均b個がkと一致する。
もしも
aeb =c
14 訳註:(e−2)k < kだから。
15訳注: 以上のことをもう少し詳しく説明しよう。
とおくと、
b = logc−loga となる。
nはk以上でなければならないので、aをkととることにし、nがkとc の間を動くとき、anがkと一致するnの個数の平均は
b= logc−logk となるので、an =kとなるnの個数の平均は
d= logc−logk c
となる。この数cがkと比べて極めて大きくなるとき、この値は、次で定義 されるkによらない数d0とほとんど違わなくなる:
d0 = logc c .
従って、どの数の密度もcが限りなく大きくなるとき零になるが、互いに同 じ値になりつつ零に近づく。しかし、値cを固定すると、kがcと比較した ときに無視できなくなった時は、d0を定める式ではなくdを定める式を用い ねばならず、kがcを超えたときは、密度は零となる。
16Sirling の公式によれば n! = nn
en
√2πn(1 +εn),
ただし、εnはnが増加するときnに収束する。従って、階乗数記法で最初の n項による近似、あるいは、第n項のあとの桁を省くことによる誤差は、
(e n
)n
の大きさである一方、十進法やa進法では、
1
10n または 1 an
である。従って10進法と比較すると、nがeaつまり27を超えるとき, 階乗 記法の方が近似は良い。従って、階乗記法の方が他の単純記法より好ましい のは、非常に大きな精度を得たいときだけある。
16訳注: 最後に近似の度合を評価しよう。