0と1しか含まない二進小数で表示された数αを考えよう。
(1) α= 0.1100100111100. . . .
小数点以下の数字を0,1から当確率でランダムにあらゆる仕方で選ぶと、基 本区間[0,1]のすべての点が得られることは明らかである。
しかし、(1)を十進小数とみなすと別の数が定義される。これをβと呼び、
αに対応させることにする。もしも α = 1
2 + 1 22 + 1
25 + 1 28 + 1
29 + 1 210· · ·, ならば、
β = 1 10+ 1
102 + 1 105 + 1
108 + 1
109 + 1 1010 · · ·,
であり、10のべきをなす数列は2のべきをなす数列と同じで、自然数の勝手 な増加列でありえる。
数βは測度ゼロの集合Eに属することがわかる。しかし、0と1の間のす べての点を含む1次元集合を得るためには、Eと同じ9個の集合のベクトル 和をとらなければならないので、Eの次元が1
9 であることがわかる。実際、
Eと同じ集合を8個を加えた和は、数字0,1,2,· · ·,8のみからなり9を含ま
ない無限十進小数となり、その測度はゼロである。しかし、βのような数を 9個加えることにより、任意の十進無限小数、すなわち0,1に含まれるすべ ての点を無数の方法で得ることができる。
測度ゼロの集合の希薄性についての一般論は、この種の集合の性質が多 様なため一般論はかなり複雑になるので、ここでは展開しない5。
ここでは、次元ゼロの集合が簡単に定義できることだけ確認するのにとど めておきたい。その集合は、同じ集合をどれだけ多くベクトル和をとっても 次元1になることはないことから次元がゼロということがわかるのである。
それには、無限十進小数
α = 0.463107943. . .
に対し、第10n位の数字がαの第n位の数字で、他はゼロであるような無限 十進小数γを対応させればよい。すなわち
γ = 4
1010 + 6
10100 + 3
101000 + 1
1010000 + 7
10100000 +. . . .
明らかに、γ のような数の有限和Aは、ある桁から先はゼロが他の数字より 頻繁に現れるようになるので、Aの全体は測度ゼロとなる。このような測度 ゼロの集合は、ゼロ希薄性をもつと言ってよいだろう。しかし、ゼロ希薄性 の集合を無数のカテゴリーに分割せざるを得ないことになるので、上の言い 方は余り正確ではい。しかも、増大度についてのデュボワレーモンの定理に より、上のような分割には終わるところがないのである。
ユークリッド幾何学は1次元、2次元あるいは3次元しか考えないから、
1次元の集合から、分数次元あるいはゼロ次元の集合をもたらす変換は、劣 ユークリッド的変換と呼んでも良いだろう。
なお次の点に注意しておこう。二次元の空間において、座標x, yがいず れも、式(2)で定義された数(β)のなす集合に含まれるような集合Eを考え ると、この集合Eの9個のベクトル和は正方形全体、すなわち二次元の集合 となるので、Eの次元は 2
9であるとい言うことができる。このようにして、
同じ分数次元をもつ集合を、一次元の中でも、二次元あるいは3次元の空間 の中でも定義することができるのである。
5この理論の入り口は私の「集合論」で解説している。しかし、問題は十分には展開され ておらず更なる研究が必要である。
濃度の概念
7.1 カントールによる濃度
濃度の一般的定義は、カントールにより構築された一般論の主要部分の一つ である。この定義によれば、二つの集合は、それらの要素の間に一対一の対 応があるとき同じ濃度をもつという。
最も低い濃度は可算集合の濃度である。対角線論法を適用することで次 第に大きくなる濃度の系列が定義でき、カントールは超限数とアレフ数の理 論で同様に次第に大きくなる濃度の系列を定義した。しかし、この二つの定 義の仕方は比較することが容易ではない。われわれは、曖昧さが少ない最初 の系列のみを取り上げることにする。
よく知られていることだが、対角線論法は、cである集合の一般要素を表 すとき、cの各値に0か1を対応させる関数f(c)の全体のなす集合の濃度はc が属する集合の濃度より大きくなることを示す方法である。実際に、もしも、
関数f(x)の集合の濃度とcの集合の濃度が同じであるとすると、各cに対し、
関数f(x)の集合の要素であるただ一つの関数が対応する。それをfc(x)と書 くことにする。このとき、条件
ϕ(c)6=fc(c)
により関数ϕ(x)を定義すると、この関数ϕ(x)は、fc(x)のいずれとも異なる 関数である。従って、fc(x)の全体は、仮定に反して、関数f(c)全体の集合 とはならないことになる。
カントールのこの方法を可算濃度に適用すると、連続体の濃度が得られ、
次に連続な一変数関数全体の濃度、という具合に、以下同様に大きな濃度が 得られる。
こうしてみると濃度の概念はいかに豊かなものかがわかる。これは抽象 的な集合の最も重要な性質であると言うことができるできる。しかし、これ まで考察してきた(直線上の点や平面上の点などの)幾何学的集合のような 具体的集合については必ずしもそういうわけではない。
実際、前章で考察したゼロ測度の集合はいずれも連続濃度をもっている し、任意個数の連続体の直積だけでなく可算個数の連続体の直積も連続濃度 であることは我々の知るところである。しかし、これらの集合は、濃度の視 点では同等であるが、ユークリッド的な視点からすると、互いに極めて異な る性質をもっている。この点において、ユークリッド的な視点とカントール 的視点の間に深く探求するに値する相克がある。