言及したπ4 の表現などがその例である。このような展開は、解析的性質によ り単純に定義された数と、同じように単純に定義された数項級数との間の関 係を教えてくれるもので最も重要な類のものである。というのは、解析学で 定義される数と数論的に原初的に定義される数2 の間の関係を知る問題群の 要塞ーーほとんど到達不能な要塞への入口を、これらの展開が形成するから である。以下、われわれは派生的な数論的定義を調べることにする。この定 義では、すでに知られている到達不能数を使って理論的には計算可能な、無 限数列を出発点とする。
とは面白そうである。当面、十進法しか使わない方法に限ることにする。さ らに、定義される対応が全単射であると仮定する、すなわち、すべての十進 法αに唯一の数βが対応し、逆に数βに唯一の数αが対応すると仮定する。
もっとも、有限十進数は、0が無限に続くものと9が無限に続くものとの二 通りの仕方で表されるという事情により、全単射性の仮定への例外となる場 合が多い。
そこで、0から9までの10個の数字の置換を定義することにしよう。置 換は、次のように、10個の数字を二列に異なる順序で書くことで正確に表す ことができる。たとえば
0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 2 3 5 7 6 4 1 9 8 0
のように書くとき、各数字は真下にある数字に対応する。この例では、数字 8には自分自身が対応する一方、他の数字は巡回置換をなし、
(8)(025461379)
のような表記も使える。同じように、この表記による (237)(1489)(056)
は、次の置換を定義する:
{ 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 5 4 3 7 8 6 0 2 9 1 このような置換の数は
10! = 3628800
個ある。これだけの個数の無限小数(自分自身を含めて)を、π−3のよう な数に対応させることができる。たとえば置換(P)により
0.1415926535· · · に対し
0.4846130676· · · を対応させることができる。
ところで、これらの3628800個の数は、和が1となる対に組わけできる ことがすぐわかる。しかし、この単純な関係以外にも、これらの3628800個 の数を結ぶ関係は少なくない。
無限小数は出現する数字が0か1のみであるとき単位的ということにし よう。無限小数αから、10個の単位的小数a0, a1, a2,· · ·, a8, a9を次の単純 な規則で定義することができる。すなわち、αの中に出現するnを1で置き 換え、他は0に置き換えた小数をanとする。
たとえば、
(A) π−3 = 0.1415926535· · · については
a1 = 0.1010000000· · · a5 = 0.0001000101· · · となる。どのαについても
(1) a0+a1+· · ·+a8+a9 = 0.11111111· · ·= 1 9
となる。逆に(1)を満たす10個の単位的十進小数があれば、無限十進小数α が確定する。ただし、ただ一つ例外がある。それは、
a0 =a1 =a2 =· · ·=a8 =a9 = 1
90 = 0.01111111· · ·
や、同じ等式がanに10の冪をかけた数の小数部分について成立する場合だ けである。実際、(1)を満たす10個の数a0, a1,· · ·, a9を足すために縦に並べ て書いたとき、ある列に1が2つ以上あればその桁にある10個の数はすべて 1 でなければならない。どの桁も同様である場合が(2)の場合だが、そうで なければ、ある桁(第n桁としよう)のところに0が出現する。すると、n 桁のところで繰り上がりがないので、それより左の桁では1が丁度一回だけ 現れなければいけない。この桁に1が現れないとすると、それより右にある 桁は1しか出現してはいけないが、これはanに10の適当な冪を掛けた小数 部分が1/90の無限小数展開となっている場合以外は起こりえない。
条件(1)を満たす10個の単位的十進数があり、前節のような例外的なも のものではないとき、この10個の十進数を使って、置換(P)に対し
α = 5a0+ 4a1+ 3a2+ 7a3+ 8a4+ 6a5+ 2a7+ 9a3+a9
という十進数を対応させることができるが、同様に他の置換にも十進数を対 応させることができる. αのような3 628 800個の数の間には、3 628 791個
の線形関係があるが、この中の1 814 400個の関係はたいして面白いもので はなく、すでに説明したように、これだけの個数の対について和が1となる という線形関係がある。他の線形関係を得ることは難しいことではないが、
ここでは、それを書き下すための計算は省く。
しかし、簡単かつシステマティックな方法でanから10個の数αを定義す ることができることについて触れておこう。たとえば、
x0 = a1+ 2a2+ 3a3+· · ·+ 9a9
xk = x0+k(a0−ak) (k = 1,2,· · ·,9).4
逆に、xkを使ってakを計算できるので、akの間の関係(1)は、xkの間の 線形関係を与える。一方、(3)のような関係で定義されるα (あるいはx)は すべて、xkの線形関数として表すことが容易にできる。
ところで、一対一の写像とはならないが、xkを使って別の数を同様に表 すことができる。たとえば、4,5,7をすべて0に置き換えて得られるような 数である。この数βから元の数を再構成はできないのは明らかである。とい うのは、β に出現する一つの0は、0,4,5,7のいずれにも対応し得るからで ある。しかし、βは(3)と同じようにaiの線形結合として表現できる。9個の βをうまく選べば、xkをそれの線形関数で表すことができる。選びかたは、
(3) と同様の関係式の係数と、関係(1)の係数から作られる行列の行列式が0 ではないようにすればよい。
最後に、与えられた(A)のような数から2つの数を定義し、その2数か ら元の数を再構成できるような方法について触れておこう。たとえば、奇数 番目の数をならべた数と偶数番目の数をならべた数の二数をとる方法を考え てみよう。こうすると数(A)に2つの数yとzが次の式で定義される.
{ y= 0.11963· · ·, z = 0.45255· · · .
こうして定義される(A)から(B)への対応は一意的に定まり連続である が、(A)が有限十進小数のところは例外となる。たとえば、
A= 0.325 = 0.3249999· · · のとき、
y1 = 0.35, z1 = 0.2
と
y2 = 0.34999· · ·= 0.35, z2 = 0.29999· · ·= 0.3
の2組の数に対応するが、この例を通して、有限十進小数がyまたはz の不 連続点となることが容易に確かめられる。
正方形の点をすべての通る連続曲線であるペアノ曲線を二進数で定義す るときは、これらの不連続点について簡明な結果が得られる。
二次的な算術的定義は、以上の簡単な示唆にとどめておきたい。色々な 方法で変種を数多く作れるのだが、少し考えるとわかるように、そのような 変種がどれほど豊かにあるとしても、有限を超えることはなく、ましてや可 算を超えることはありえない。従って到達不能数の濃度である連続体の濃度 より遙か手前にとどまっているままである。こうして、第三章で説明した観 点に新たに達する。その観点は、連続体は実質的には到達不能数で構成され ていて、確率論の方法によってしかこれらの数を研究できない、というもの であった。この点を念頭に入れ、連続体のある種の変換について次に調べる ことにする。その結果、これらの変換の振る舞いを、ユークリッド的視点で 分類することが出来るようになる。