第 2 節 研究の方法
1 対象者
生徒の発達、指導目標や将来像をもとにグループ化した高等部の1つのグループ(以下、
「Cグループ」とする。)を対象とした。
C
グループの生徒は男子3名である。対象生徒は、中度の知的障害を有する生徒1名、軽度の知的障害を有する生徒2名(療育手帳の判定に よる)である。彼らが本報告の進路学習を学んだ時期は、高等部2年生の3学期から3年 生の3学期までである。
実態を見ると、高等部の中では、校外宿泊学習や運動会などの行事には積極的に参加し、
周りから期待された役割を果たそうと精一杯努力する生徒たちである。また、公共交通機 関を使って買い物などに出かけることもできており、地域社会での活動にも比較的慣れて きている。一方、会話については、日常的なやりとりはスムーズであるが、自分の気持ち を適切に表現したり、相手の気持ちをくみ取ったりすることは難しいことがある。また、
職業に関する希望・夢など自分の将来像について考えることや余暇、趣味など自分の生活 の充実について考えることは難しい生徒たちである。
2 授業の概要
1)教育課程と進路学習
W
特別支援学校における進路指導は、主に就業体験(産業現場等での実習)、進路相談お よび進路学習を通して行われており、互いの関連を重視しながら指導が進められている。進路学習の内容は、職業に関する知識(業種、雇用形態や就労支援機関の存在など)、自己 の理解(長所、短所や自分の適性など)及び将来設計(家庭生活や余暇など)の3領域に 大別でき、高等部1年生から段階的、系統的に学習が積み上げられていく。本学習は、週 当たり1単位時間(以下、「時間」という。)の授業であり、毎週行っている。なお、W養 護学校高等部では、1単位時間を40分と設定している。本稿で報告する授業は、Cグル ープで200X 年1月から200Y年3月までの1年2ヶ月の間に行われた進路学習であ り、指導者は1名である。
2)授業案
進路学習の授業案を
Table2-5-2-1,2
に示した。また、授業意図についてはTable2-5-2-3
に示した。授業展開に関しては、文字、イラストや画像などを使い学習内容をイメージ化 できるように支援し(Table2-5-2-1-①②⑤;Table2-5-2-2-⑨⑪⑫⑬⑮)、話し合い活動80
を行い、さらに個人に帰してワークシートや目印のシールを用いて(Table2-5-2-1-③④⑥
⑦;Table2-5-2-2-⑩⑭)自己の考えを深めるようにした。また、場合によっては、この後 重ねて話し合い活動を行った。
Table2-5-2-1 進路学習の授業案
(実践例1)先輩たちのある日,ある時 第1時 (実践例2)自分について…
卒業生の生活について考える
・高校生と社会人の生活を比べ,働く生活が中心になる ことに気づくようにする。
・卒業生の働く生活以外の生活にも目が向くようにす る。
卒業生の余暇の過ごし方につ いて知る
・卒業生の余暇の過ごし方に興味を持つようにする。
・資格を取ったり,仲間と交流したりする活動も行って いることに気づくようにする。
・プレゼンテーションソフトで作成した教材を使用し,
イメージ化のためのイラストを挿入する。①
・イラストを手がかりにして,みんなで活動を考えるよ うにする。②
自分がしてみたい余暇の過ご し方について考える
・余暇の過ごし方を考え,興味あるものを選ぶ。
自分が選んだ余暇の過ごし方 を発表する
・友だちの発表を聞き,余暇への関心を高めるようにす る。
・画面で表示した内容をプリントにして机上に並べ,提 示する。③
・自分が選ぶ活動に個別に色分けしたシールを貼る。
④
余暇の過ごし方についてのプ リントを読む
・友だちとの話し合いを通して現在の余暇の過ごし方に ついても考えるようにする。
次時の予定を聞く
得意なことについて考える
・人にはどのような得意なことがあるのかをスポーツ,
創作活動,態度など身近な例を挙げて示すようにする。
・プレゼンテーションソフトで作成した教材にはイメー ジ化しやすいようにイラストを挿入する。⑤
・友だちの得意なことを考えるときには,学習活動や特 技など一人一人の様子を思い浮かべるようにする。
・自分の得意なことを考えるときには,学校生活や家庭 生活を振り返るよう促す。考えをまとめるためにワーク シートを使用する。⑥
苦手なことについて考える
・人には苦手なこともあることを学校生活や家庭生活の 身近な例を挙げて示すようにする。
・苦手なことは決して悪いことではなく,誰にもあるも のだということを押さえる。
・自分の苦手なことを考えるときには,学校生活や家庭 生活を振り返るよう促す。考えをまとめるためにワーク シートを使用する。⑦
まとめをする
・ワークシートを基に振り返り,自分には得意なこと,
苦手なことの両面があることに気づくようにする。
・友だちの発言を聞きながら,友だちの両面についても 気づくようにする。
次時の予定を聞く
※ は活動内容を、・印は留意点を示す。
81
Table2-5-2-2 進路学習の授業案
(実践例3)現場実習報告会
第3時 (実践例4)卒業後の私 第2時 (実践例5)卒業後の私 第3時 現場実習報告会を振り返る
・VTRで報告会の様子を見る。⑧
・発表内容をしっかり聞くように促 す。
・発表内容や態度などの良い点,不 十分な点に気づくようにする。
・発表会での自分たちの役割の良く できた点,不十分な点に気づくよう にする。
・生徒の理解に応じてVTRの再生 回数を増やす。⑨
現場実習報告会の様子につい て話し合う
・友だちとの話し合いを通して,発 表内容や態度,分担した役割につい ての考えをまとめるようにする。
現場実習報告会の評価をする
・ワークシートを使用する。⑩
・評価に迷ったときには,VTRを 見直すことができることを伝える。
・評価した理由についても考えるよ うにする。
・必要に応じて話し合い活動を行 う。
次時の予定を聞く
前時の学習を振り返る
・卒業後の自分をイメージして作文 を書いたことを思い出すようにす る。
作文に書かれていた小テーマ について知る
・指導者が読みとった小テーマをプ レゼンテーションソフトで作成した 教材で示す。⑪
・作文には4つの小テーマが書かれ ていることに気づく。
・テーマが独立していることが分か るようにテーマごとに色を変えて示 す。⑫
小テーマの一つである「働く」
ことについて卒業後の姿を想 像して書く
・4つのテーマの中で「働く」こと を焦点化する。
・焦点化するというイメージを伝え るためにアニメーション機能を使用 し,他のテーマより大きくして示す。
⑬
・記入のために図と同じ色のワーク シートを使用する。⑭
前回の作文の内容と今回書い たワークシートを比べる
・書かれている内容の変化に気づく ようにする。
・友だちの書いた内容についても関 心を持つことができるようにする。
次時の予定を聞く
前時の学習を振り返る
・小テーマの中から1つを取りだし,
焦点化したこと,内容が変わってきた ことを再確認する。
働く先輩の姿を知る
・Cグループの生徒の進路先に関連す るような事例を示す。
・働く様子を画像で示す。さらに,テ キストを読み「働く」イメージを広げ るようにする。⑮
卒業後の自分をテーマにして 作文を書く
・「働く」というテーマだけでなく,
余暇や家庭生活など将来の夢や希望 についても書くように促す。
自分の作文を発表する
・発表すること,友だちの発表を聞く ことを通して,新しい生活が間近にな ってきていることに気づくようにす る。
※ は活動内容を、・印は留意点を示す。