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第 5 節 本章のまとめ

知的障害特別支援学校から企業における入職期全般にわたる進路指導において、個別の 教育支援計画に基づく追指導は、進路先の従業員のナチュラルサポートの発生に影響を与 えることが明らかになった。また、知的障害特別支援学校から企業への移行を完遂させる ためには、入職期に生じる課題に応じて、個別の教育支援計画を活用しながら、本人(卒 業生)を支える支援者を適宜加え、支援体制を再構築する必要性が示唆された。これらの ことから、個別の教育支援計画は、知的障害者の移行期を完遂させるための追指導におい て、有用であるといえる。

一方、知的障害特別支援学校卒業後の進路指導においては、労働分野等関係機関の支援 者との連携は不可欠である4,25)。ここでの分析では、特別支援学校と移行先である事業所 との連携が対象となっているが、関係機関との連携はこれだけに止まらない。特に追指導 においては、進路先での適応が悪く、加えて進路先の職場環境も整わず、離職にいたるケ ースも散見される1,8)。また、個別の教育支援計画が作成されていても、活用されていな い状況もまれではない4,9)。では、離職への支援を伴う追指導において、個別の教育支援 計画の活用が困難な場合、教員は、関係諸機関や支援者とどのように連携すればよいので あろうか。このような離職に対する支援を要する追指導の場合には、障害者職業センター をはじめとする労働分野の関係機関、支援者との連携は非常に重要である。そこで、次章 では、離職に対する支援を要する知的障害者に視点をあて、その追指導における知的障害 特別支援学校と地域障害者職業センターとの連携について検討する。

文 献

1)安達忠良(2008)特別支援学校の進路指導から見る就労支援の課題.障害者問題研究,

36

巻,第

2

号,136-142.

2)陳 麗婷(2004)知的障害者の一般就労に対する職場同僚の支援活動について.社会 福祉学,第

45

巻,第

2

号,pp.56-66.

3)知名青子・田中敦士・下地真希子(2005)特殊教育書学校における就業支援のための 個別移行支援計画-全国の盲・聾・養護学校に対する意識調査から-.琉球大学教育 学部障害児教育実践センター紀要,No.7,pp.85-94.

4)舟本麻衣(2010)知的障害特別支援学校における個別の教育支援計画の作成・活用に関 する調査研究.上越教育大学大学院学校教育研究科修士論文.

5)刎田文記・木村彰孝(1999)養護学校生への職業リハビリテーションにおける移行サービ スとサポートネットワークの機能.障害者職業総合センター研究紀要,No8,55-67.

68

6)原 智彦・内海 淳・緒方直彦(2002)転換期の進路指導と肯定的な自己理解の支援

-進路学習と個別移行支援計画を中心に-.発達障害研究,第

24

巻,第

3

号,pp.262

-271.

7)原 智彦(2004)移行支援-個別移行支援計画の現状と課題-,発達障害研究,第

25

巻,第

4

号,pp.217-224.

8)樋口陽子・納富恵子(2012)知的障害特別支援学校における自閉症生徒の就労支援の取 り組み.特殊教育学研究,48,(2),97-109.

9)絹見睦美・寺川志奈子(2012)特別支援学校における「個別の教育支援計画」の有効 活用 : 保護者への質問紙調査より.地域学論集 鳥取大学地域学部紀要,

9(2), 25-51.

10)三重障害者職業センター(2006)知的障害者の雇用を進めるための事業主に対する支 援の取り組み―ジョブコーチ支援事業の活用を通して―.職リハネットワーク,

No.59,

pp.27-32.

11)宮崎英憲(2004)個別の教育支援計画に基づく個別移行支援計画の展開.ジアース教 育新社.

12)内閣府(2007)平成19年版障害者白書.

13)尾形信悦(1997)学校における現場実習、進路指導、追指導の状況について.教育と 医学,45巻,12号,54-61.

14)小川 浩(2000)ジョブコーチとナチュラルサポート.職業リハビリテーション,第

13

巻,pp.25-31.

15)小川 浩(2002)ジョブコーチによる就労支援.さぽーと,

Vol.49, No.8, pp.44-50.

16)小川 浩(2006)ジョブコーチの方法と技術.松為信雄・菊池恵美子,職業リハビリテ ーション学,234-239.

17)大谷博俊(2005)企業と地域障害者職業センターの連携による知的障害児の移行支援.

職業リハビリテーション,第

18

巻(2),pp.18-24.

18)埼玉障害者職業センター(2005)ナチュラルサポートの形成:3 つのステージ、5 つの ポイント―地域障害者職業センターにおけるジョブコーチ支援事業―.職リハネット ワーク,No.57,pp.27-29.

19)篠 翰(2007)進路指導・キャリア教育の諸活動.吉田辰夫・篠 翰,進路指導・キャリア 教育の理論と実践,49-75.

20)渋沢 久(1982)学校教育における進路指導の一般的理解.石部元雄・渋沢 久,障害 児の進路指導,31-45.

21)田中康雄(2002)職業リハビリテーション研究

10

年の流れと今後の方向.日本障害者雇 用促進協会障害者職業総合センター,職業リハビリテーション研究 -10 年間の実績 と今後の方向-,7-10.

22)東京都知的障害養護学校就業促進研究協議会(2003)個別移行支援計画

Q&A

基礎編.

ジアース教育新社.16頁.

69

23)東京都教育庁指導部・東京都知的障害養護学校就業促進研究協議会(2004)個別移行支 援計画Q&A‐応用編‐.平成 14、15 年度文部科学省委託事業「就業支援に関する実 践研究」(第 2 年次実践研究報告書).

24)中央教育審議会初等中等教育審議会(2007)教育課程部会 特別支援教育専門部会 第 4期第1回(第

11

回)議事録・配付資料.

25)八重田 淳・柴田珠里・梅永雄二(2000)学校から職場への移行‐リハビリテーショ ンサービス連携の鍵‐.職業リハビリテーション,第

13

巻,pp.32-39.

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第4章 追指導における特別支援学校と関係機関との連携の在り方

特別支援学校から社会への移行は、学校から事業所等の進路先という場の移行と、学ぶ 者から働く者という役割の移行を同時に経験することになり、障害のある生徒にとっては 負担が大きい。知的障害特別支援学校の在学中に、本人(生徒)が努力し、周りの支援を 得て事業所への就職が決まったとしても、卒業後の短期間に離職するケースは少なくない3,

7) 。このような離職者に対する支援は、進路指導における追指導の重要な教育的課題だと いえる。

一方、知的障害特別支援学校においては、多様な専門機関との連携が図られており、ハ ローワーク(公共職業安定所)や地域障害者職業センターは、その中核的な専門機関である4)。 では、離職に対する支援を要する知的障害者への追指導においては、知的障害特別支援学 校と専門機関はどのように連携することが望ましいのであろうか。本章では、知的障害特 別支援学校と地域障害者職業センターとの連携の在り方について検討する。

第 1 節 問題の設定

ここ数年、企業では事業の縮小、余剰人員のリストラや倒産などが増え、雇用情勢が悪 化している。

この厳しさは、健常者だけでなく、知的障害者にとっても同様である。また、知的障害 特別支援学校高等部入学者の障害の重度化、多様化が進み、卒業時点での就職が困難な生 徒が多くなってきており、就労しても1,2年で離職することも少なくない。一般就労を 希望する卒業生や再就職を希望する卒業生が増える中、卒業生に対するアフターケアーは、

進路指導を行う上で重要な課題であり、彼らに対する支援にはハローワークや地域障害者 職業センター(以下、職業センターとする)との連携が不可欠である。

一方、進路指導論の新しい流れとして提起されてきた進路学習が知的障害特別支援学校 において独自の授業時間として設定され、実施されるようになってきている。しかし、こ の試みに対しては、授業計画や授業内容の検討など、今後の研究に待つべき点も多い。

そこで、本稿では知的障害特別支援学校を卒業し、就職したが、半年で離職した知的障 害者に対して行った追指導(アフターケアー活動)の一事例を通し、職業センターとの連 携について考察する。また、本事例を通して知的障害特別支援学校の高等部段階で必要な 進路学習の内容についても検討し、今後の方向性を探りたい。

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第 2 節 研究の方法

1 対象者

対象者は、軽度知的障害(療育手帳の判定による)を有する18歳の男性で

E

さんであ る。Eさんは日常生活に必要な基本的な習慣や態度はほぼ身につけており、体力もあった。

また、公共交通機関を利用しての移動や日用品の買い物などもできた。一方、自分の気持 ちを表現したり、助けを求めたり、物事を説明することは苦手で、単語や文章の意味を理 解することも苦手であった。また、初めてのことに対しては、積極性に欠ける面も見られ た。高等部2年生の時、職業センターの職業評価を受けており、在学中に1度だけ職業セ ンターを訪れている。

E さんの在学中には進路学習は独自の授業として設定されておらず、

職業センターについて知る機会も職業評価の時だけであった。E さんは、知的障害養護学 校高等部を卒業後すぐに一般企業(飲食業)に就職した。

2 資料

本稿では、Eさんに対する以下の追指導(アフターケアー)の記録(200X.9~200Y.9)を 基に分析を行う。

第 3 節 結 果

ここでは追指導(アフターケアー)の全記録の中から、本稿の目的に即したものを記載 している。

記録3:E さん来校。仕事の時間が長いから辞めたいとのことであった。先週末に職場で 注意され、職場に来なくていいと言われていた。

E

さんは職場の人に来なくていいと言わ れなくても辞めていたと思うとのことであった。職場でなぜ注意されたのか、どのよう に言われたのか、なかなか説明できなかった。進路担当者がハローワークの担当者と相 談し、その後、数日して事業所に行き、退職の旨を伝えた。

記録5:進路担当者が

E さんと電話で話し合った。自分が次にどんな仕事をしたいのか、

すぐに働きたいと思っているのかなどの質問に答えることができなかった。「こんにちは」

「はい」などの挨拶も十分できず、以前に比べてコミュニケーションがとりにくくなっ ていた。もう一度学校に来て、これからのことについて相談することにした。

記録6:E さん来校。どんな仕事をしたいのか、給料はどれぐらい欲しいのかなどの条件

について

E さんと進路担当者が話し合った。希望する仕事のイメージができないようで、

考え込むことが多く、「わからない」と答えることもできなかった。仕事をしたいと思っ ているかという質問には「はい」と答えるが、自分から発言することはほとんどなかっ