記録29:進路担当者が
E さん宅を訪問。ワークトレーニング終了後、職業カウンセラー
と一緒にハローワークへいったが、希望に合うような求人がなかったとのことであった。職業センターに電話するよう
E さんに助言した。また、ハローワークへも定期的に行き、
就職活動するようにも助言した。
記録30:進路担当者が年度当初の挨拶で訪れた H 社(製造・加工業)の求人可能性につ いて、職業センターに情報を提供した。
記録31:進路担当者が職業センターの依頼を受け、再度 H 社に求人の件を問い合わせた。
記録32:進路担当者が H 社を訪問し、E さんの雇用について相談すると、ハローワーク を通じて雇用を検討してくれることになった。進路担当者が
E さん宅に連絡すると、仕
事の内容と適性を自分で判断し、H社への就職を希望した。保護者もH
社への就職を望 んでいた。記録33:ハローワーク担当者から
E さんの H
社でのトライアル雇用が決まったと学校に 連絡があった。進路担当者がE さん宅に連絡すると、本人も保護者も喜んでいた。
記録34:進路担当者が
E さん宅を訪問。H 社の面接の練習と待ち合わせの確認をした。
面接の練習は、H社の志望理由、通勤方法や高等部在学中に経験した
H
社での実習の感 想などの質問を想定して行った。志望理由では、進路担当者が指導していないにもかか わらず、適切な理由をスムーズに答えることができた。通勤方法などの質問にもスムー ズに答えることができた。記録36:トライアル雇用開始。
記録37:進路担当者とアフターケアー担当者が
H
社を訪問。欠勤なく、真面目にがんば っており、作業スピードはまだ少し足りないが、仕事が丁寧で正確であるという担当者 からの評価を受けた。記録38:H社より
E さんがトライアル雇用から正式採用になったと連絡を受けた。
第 4 節 考 察
1 知的障害特別支援学校と職業センターとの連携について
離職直後には乱れていた基本的な労働習慣(挨拶や規則正しい生活リズム)は改善し(記 録 22,24)、進路担当者とのやりとりや面接の申し込みで見られたコミュニケーション能力 の低下についても改善した(記録 34)。さらに、進路担当者との話し合いやハローワークイ ンターネット検索だけでは仕事に対する自分の適性を判断することができなかったが(記 録 5,6,9)、仕事の適性について自分の考えを述べることができるようになった(記録 24,32)。 これらのことは、ワークトレーニング(職業準備支援事業、職務施行法を含む)の成果で あると考える。堀・松矢は、職業準備訓練と職場実習(職域開発援助事業、職務施行法)
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プログラムの効果として、対人態度能力、進路に関する自己選択、自己決定力の向上を挙 げており2)、本事例の経過は彼らの研究結果に沿うものである。
しかし、このような支援が始めからスムーズに卒業生(本人)や保護者に受け入れられ るとは限らない。Eさんの場合もそうであった(記録 7,14)。進路担当者やアフターケアー 担当者の指導だけでは、E さんの対人態度能力や進路に関する自己選択・自己決定力には 向上が見られず、職業センターの支援を受ける必要性が指摘されていた(記録 6,7,9,17)。 しかし、E さんが職業センターを利用するためには進路担当者やアフターケアー担当者の 働きかけが繰り返し必要であり、保護者の理解を得るためにも同様であった。これらのこ とは、本事例における学校と職業センターとの連携の必要性について示唆していると考え られる。
卒業生(本人)や保護者がハローワークや職業センターの利用に対して不安や戸惑いを 示す場合には、彼らと比較的接触経験の多い教師が、それらの解消のために説明や指導を 行い、本人にとって適切な就労のための支援が受けられるようにする必要があろう。一方、
職業センターの支援事業の利用後、再就職のために再び学校の支援が必要となった。学校 から職場への移行に向けた中長期的な支援には、学校とハローワークや職業センターなど の支援機間との連携は不可欠であるが6)、再就職をめざす卒業生に対するアフターケアー活 動においてもその重要性は同じであるといえる。進路担当者やアフターケアー担当者が職 業センターからの評価や卒業生(本人)の変容などを的確に把握し、事業所などで得た雇 用に関する情報を職業センターに提供することも重要であろう。
2 知的障害特別支援学校における進路学習について
E さんにとって再就職のためにハローワークや職業センターなどの支援機関を利用する
ことは大切なことであったにもかかわらず、なかなかその利用が実現しなかった(記録 7,9,14,20)。これは、学校(教師)以外の支援を求めることに対する抵抗があったためで あろう。ハローワークや職業センターがどのような支援をしてくれる所なのか、担当者(職 業カウンセラー)はどんな人なのかなどの情報を理解し、その必要性を納得するまでに時 間を要したのではないだろうか。刎田・木村は、職業リハビリテーションにおける本人・保護者への理解・啓発の必要性 を指摘している1)。彼らはその具体的内容として、現在あるいは状況が変化した場合に利用 できる社会的資源や関係機関の情報を伝えることを挙げている。
これらのことから、知的障害特別支援学校高等部における進路学習を計画するとき、ハ ローワークや職業センターに関する内容を取り上げることは重要であると考えられる。進 路学習で職業センターの存在やそこで受けられる種々の支援などを知ることによって、利 用の際の不安や抵抗を低減することができるかもしれない。また、職業カウンセラーをゲ ストティーチャーとして招く、あるいはチームティーチィングを行うことなども有効では
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ないだろうか。保護者に対しては、職業センターに関する進路学習の様子を「進路便り」
などで伝えるということも考えられよう。
第 5 節 本章のまとめ
知的障害特別支援学校と地域障害者職業センターとの連携の重要性が、離職に対する支 援を要する知的障害者の追指導において、改めて確認された。離職に対する支援を要する 知的障害者には、地域障害者職業センターが実施する職業準備支援(ワークトレーニング)
や職務施行法などの職業リハビリテーションサービスの利用へとつなげることが、特別支 援学校の教員、特に進路指導やアフターケアーの担当者には求められるといえる。
また、その際には、本人(知的障害特別支援学校の卒業生)と保護者の意思を尊重しな がらの支援が重要である。そして、そのとき、特別支援学校の教員には、卒業生に対する 直接の支援だけでなく、ハローワークの就職促進指導官や地域障害者職業センターのカウ ンセラー等の新たな支援者の、支援体制への参入を援助する役割を担う必要がでてくる。
教員と労働分野の支援者とは、専門的知識、提供可能な支援内容(例えば、教員にとって の追指導、障害者職業カウンセラーにとっての職業リハビリテーションサービス等)が異 なる。また支援の対象となる障害者(知的障害特別支援学校の卒業生)やその保護者に対 する理解度にも違いがあるだろう。このような他職種の専門家と連携するためには、特別 支援学校の教員には、互いの知識・認識を共有するための準備と、連携の過程を尊重する態 度が必要である5)。
一方、在学中の進路指導における進路学習の重要性が、改めて示された。生徒にとって、
どのような教育活動が、なぜ有用なのかに言及するためには、進路学習のさらなる分析が 必要である。
文 献
1)刎田文記・木村彰孝(1999)養護学校生への職業リハビリテーションにおける移行サ ービスとサポートネットワークの機能.障害者職業総合センター研究紀要,No8,55-67.
2)堀 宏隆・松矢勝宏(2003)知的障害児・者の「学校」から「職業」への移行支援に 関する一考察‐知的障害児・者が企業就労する際の課題、障害者職業カウンセラーが 考える養護学校の教育・今後の連携‐.日本職業リハビリテーション学会第 31 回大会 抄録集,49-52.
3)真謝 孝・平田永哲(2000)知的障害養護学校卒業生の就労状況と課題に関する一考察
-雇用企業調査を通して-.琉球大学教育学部障害児教育実践センター紀要,No.2,
139-148.
4)水谷由美・藤田和弘(2001)進路指導と個別の指導計画に関する研究.心身障害研究,
77 25,101-110.
5)大谷博俊(2011)就労支援機関の役割とその活用.大沼直樹・吉利宗久(共編著)特別 支援教育の基礎と動向[改訂版].265-275.
6)八重田 淳・柴田珠里・梅永雄二(2000)学校から職場への移行‐リハビリテーショ ンサービス連携の鍵‐.職業リハビリテーション,第 13 巻,32-39.
7)横川和男・大森正一(2007)平成