また、 Z b
v
|(F(x)−F(b))gt0(x)|dx≤ sup
x∈[v,b)
|F(x)−F(v)|M <∞. よって ft(x) = (F(x)−F(b))0gt(x) の部分積分(命題 9.3.4)より、Rb
v ft の収束及び、
次式を得る:
Z b
v
ft部分積分= −(F(v)−F(b))gt(v)
| {z }
(1)
− Z b
v
(F(x)−F(b))g0t(x)dx
| {z }
(2)
更に v→bのとき、
|(1)| ≤M|F(b)−F(v)| −→0, |(2)| ≤ sup
x∈[v,b)
|F(x)−F(v)|M −→0.
以上より lim
v→b v<b
sup
t∈J
¯¯¯¯Z b
v
ft¯¯
¯¯= 0を得る。Ru
a ft(u∈I)の収束及び(10.9)の他方も全く同様
に示せる。 2
項別積分(定理10.3.1)は次のような形で広義積分に一般化される:
定理 10.4.3 (項別の広義積分)I = (a, b)⊂R,fn∈Rloc(I) (n∈N∪ {∞}) とし、以下 を仮定する:
(a) lim
n fn=f∞ (I 局所一様), (b) 広義積分 Rb
a fnはn∈N∪ {∞} について一様収束する。
このとき、
limn
Z b
a
|fn−f∞|= 0, 特に、 lim
n
Z b
a
fn= Z b
a
f∞.
証明: 以下のようにして狭義積分の場合(定理 10.3.1)に帰着させる。a < u < v < b とする。Z b
a
|fn−f∞| ≤ Z b
v
|fn−f∞|+ Z v
u
|fn−f∞|+ Z u
a
|fn−f∞|
≤ 2 sup
n∈N∪{∞}
Z b
v
|fn|
| {z }
(1)
+ Z v
u
|fn−f∞|
| {z }
(2)
+2 sup
n∈N∪{∞}
Z u
a
|fn|
| {z }
(3)
ε >0 を任意とすると、仮定 (b)よりu, v を
(1)≤ε/6, (3)≤ε/6
となるようにとれる。更に [u, v]は有界閉区間だから、仮定 (a)よりfn→f∞ ([u, v]上 一様).従って、狭義の積分に対する項別積分(定理10.3.1)より、次のようなn0 ∈Nが 存在:
n≥n0 =⇒ (2)≤ε/3.
以上から、n≥n0 なら Z b
a
|fn−f∞| ≤ε.
これで、定理が示された。 2
例 10.4.4 f ∈C((0,∞)) かつR∞
0
|f(x)|
ex−1 dx <∞ なら Z ∞
0
f(x) ex−1 dx=
X∞ n=1
Z ∞
0
f(x)e−nxdx, (上式の、より具体的な例は 問 10.4.1参照).
証明:
g(x)def.= f(x)
ex−1 = f(x)e−x 1−e−x =
X∞ n=1
f(x)e−nx, gN(x)def.= XN n=1
f(x)e−nx=f(x)e−x1−e−N x 1−e−x に対し、以下を検証する:
(a) lim
N gN =g ((0,∞)上局所一様)。 (b) 広義積分
Z ∞
0
gN はN について一様収束する。
これらが分れば、項別積分(定理 10.4.3)を次のように用いて結論を得る:
Z ∞
0
g= lim
N
Z ∞
0
gN = lim
N
XN n=1
f(x)e−nx= X∞ n=1
Z ∞
0
f(x)e−nxdx
(a)の検証:ε >0を任意、I = [ε,1ε]とし、I 上の一様収束を言えばよい。f は有界閉区 間I 上で連続だから kfkI <∞. よって N → ∞ で、
kg−gNkI= sup
x∈I
µ
|f(x)|e−x e−N x 1−e−x
¶
≤ kfkI
e−N ε
1−e−ε −→0.
(b)の検証:|gN| ≤ |g|かつ R∞
0 |g|<∞. よって 例 10.4.2(a)より、(b)が言える。 2 問 10.4.1 例10.4.4 の結果から以下の等式を導け:
(i) y∈R に対しP∞
n=1 y
y2+n2 =R∞
0 sinxy ex−1 dx.
(ii)p >1 に対しP∞
n=1 1
np = Γ(p)1 R∞
0 xp−1 ex−1 dx.
問 10.4.2 (?) 等式:P∞
n=0 xn
(n+a)b = Γ(b)1 R∞
0
e−assb−1
1−xe−s dt = Γ(b)1 R1
0
ta−1(log1t)b−1
1−xt dt を以 下の場合について示せ:(i) a >0, b >1, x= 1. (ii) a, b >0,x∈[−1,1).
問 10.4.3 (?)問10.4.2の結果から次を示せ:P∞
n=0 (−x)n
an+b =x−b/aRx1/a
0
ub−1
1+ua, (a, b >0, x ∈(0,1]) また、これを用い以下の級数の値を求めよ:P∞
n=0 (−1)n
2n+1 (ライプニッツの級 数),P∞
n=0 (−1)n 3n+1,P∞
n=0 (−1)n 3n+2.
径数付き積分の微分(定理 10.3.8)を広義積分に一般化する:
定理 10.4.5 (径数付き広義積分)I = (a, b)⊂R,J ⊂Rk,関数(x, t)7→ft(x) (I×J −→
C) は連続とする。広義積分
F(t) = Z b
a
ft(x)dx
t∈J について局所一様収束する(つまり、任意のコンパクト集合K⊂J に対し上の広 義積分が、t∈K について一様収束する)とする。このとき、
(a) (連続性)F ∈C(J).
(b) (微分) 更に、J ⊂Rが区間かつ`= 1, ..., mに対し以下を仮定する:
全ての (x, t)∈I×J で∂t`ft(x) が存在し I×J 上連続 広義積分
Z b
a
∂`tft(x)dxがt∈J について局所一様収束する このとき、F ∈Cm(J) かつ、t∈J に対し
F(`)(t) = Z b
a
∂t`ft(x)dx, `= 1, ..., m.
証明:(a):tn, t∈J,tn−→tとする。定理 10.3.8の証明と同様に limn ftn(x) =ft(x), (x∈I について局所一様) また、仮定から、広義積分Rb
aftn の収束はnについて一様。従って項別の広義積分(定 理10.4.3)より
limn
Z b
a
ftn(x)dx= Z b
a
ft(x)dx.
よってF は連続である。
(b):項別微分(定理10.3.5)を用いて狭義積分の場合(定理10.3.8)に帰着させる。u, v∈ I∪ {a, b}に対し Fu,v(t) =Rv
u ft と書く。このとき、F =Fa,c+Fc,b なので、F の替わ りにFa,c,Fc,b に対し結果を示せば十分。そこでFc,b を考える。v∈I なら仮定と径数付 き狭義積分の微分(定理 10.3.8)より、Fc,v ∈Cm(J) かつ
Fc,v(`)(t) = Z v
c
∂t`ft, `= 1, .., m.
また、全ての t∈J に対し
v→blimFc,v(t) =Fc,b(t) かつ `= 1, .., mに対し
vlim→bFc,v(`)(t) = Z b
c
∂`tft (t∈J について局所一様).
従って、項別微分(定理 10.3.5)より Fc,b∈Cm(J), Fc,b(`)(t) =
Z b
c
∂t`ft
2 例 10.4.6 f :∈C((0,∞)), R∞
0 f が収束するとする。このとき、
(a) 広義積分F(t) =R∞
0 e−txf(x)dxはt∈[0,∞)について一様収束し、lim
t→0F(t) = Z ∞
0
f,
tlim→∞F(t) = 0.
(b) F ∈C∞((0,∞)), F(`)(t) = Z ∞
0
(−x)`e−txf(x)dx.
証明:(a): gt(x) = e−tx, ft =f gt とすれば 例10.4.2(b)の仮定が満たされ、広義積分 R∞
0 ft はt∈[0,∞) について一様収束する。また、
tlim→0ft=f, lim
t→∞ft= 0.((0,∞) 上、局所一様)
実際、任意のコンパクト集合 K ⊂(0,∞) に対し、K ⊂[ε,1/ε] となる ε >0 が存在す るからI def.= [ε,1/ε]上一様収束すればよい。ところが
kft−fkI ≤ (1−e−t/ε)kfkI −→0 (t−→0).
kftkI ≤ e−tεkfkI−→0 (t−→ ∞).
以上と、項別の広義積分(定理 10.4.3) から結果を得る。
(b): ∂`tft(x) = (−x)`ft(x) は (x, t) ∈ (−∞,∞)2 について連続だから、R∞
0 ∂t`ft が t∈(0,∞)について局所一様収束することを言えば、定理10.4.5より結論を得る。(a)と 同様に考えて、t∈J def.= [ε,1/ε]について一様収束すればよい。ところがt∈J なら
|∂t`ft(x)|=|(x)`e−txf(x)| ≤ε−`e−εxkfkI.
右辺は t ∈ J に無関係かつ x ∈ (0,∞) について広義可積分だから例 10.4.2(a) より R∞
0 ∂t`ftは t∈J について局所一様収束する。 2 問 10.4.4 ガンマ関数について、 Γ ∈ C∞((0,∞)) かつ任意の q ≥ 1 に対しΓ(q)(t) = R∞
0 xt−1(logx)qe−x dxを示せ。
例 10.4.7 1
√2πv Z ∞
−∞e−(x−2vm)2+itxdx=eimt−vt
2
2 ,m∈R,v >0, t∈R.
注:√2πv1 e−(x−m)22v は正規分布と呼ばれる確率分布の密度であり、mは平均、v >0は分
散(平均からの「ばらつき具合い」: 問10.4.6参照)を表す69。例 10.4.7は正規分布の フーリエ変換である。
証明: まず m= 0の場合を考える。m= 0 なら e−x
2
2v が偶関数だから Z ∞
−∞e−x
2
2v+itxdx= Z ∞
−∞e−x
2
2v cos(tx)dx.
そこでv > 0 を固定し、ft(x) =e−x
2
2vcos(tx) とする。ft(x), ∂tft(x) =−xe−x
2
2v sin(tx) は共に(x, t)∈R×Rについて連続。また、
|ft(x)| ≤e−x
2
2v, |∂tft(x)| ≤ |x|e−x
2 2v
より、F(t)def.= R∞
−∞ft,R∞
−∞∂tftは共にt∈Rについて一様収束する。以上と定理10.4.5 より F ∈C1(R) かつ
F0(t) =− Z ∞
−∞xe−x
2
2vsin(tx)dx部分積分=
· ve−x
2
2v sin(tx)
¸∞
| {z −∞}
=0
−vt Z ∞
−∞xe−x
2
2vcos(tx)dx
| {z }
=F(t)
.
69例えば、知能指数の分布はm= 100,√
v= 15の正規分布である。
また、F(0) =√
2πv(系9.4.4). よって 問10.4.5よりm= 0に対する結論を得る。m6= 0 の場合、
Z ∞
−∞e−(x−2vm)2+itxdx= Z ∞
−∞e−x
2
2v+it(x+m)dx=eitm Z ∞
−∞e−x
2
2v+itxdx.
よって、m= 0 の場合をeitm 倍すれば、m6= 0の場合を得る。 2 問 10.4.5 F ∈C1(R), h∈C(R) に対し「F0 =hF ⇔ F(t) =F(0) exp³Rt
0h
´
」を示 せ。⇒ のヒント: G(t) = exp³Rt
0 h
´
として、(F/G)0 ≡0 を言えばよい。あるいは 問
8.2.8に帰着させてもよい。
問 10.4.6 例10.4.7について以下を示せ:
√1 2πv
R∞
−∞xe−(x−2vm)2 dx=m, √1 2πv
R∞
−∞(x−m)2e−(x−2vm)2 dx=v.
問 10.4.7 例 10.3.10 で示した等式:R∞
0 e−txsinxx dx= π2 −Arctant (t∈[0,∞))を定
理10.4.5の応用として再証明せよ。
問 10.4.8 (?) 問10.3.21で示した等式を定理10.4.5の応用として再証明せよ。
問 10.4.9 (?) t, u≥0に対し以下を示せ:
(i) R∞
0 exp
³−¡
x−xt¢2´
dx=tR∞
0 exp µ
−³
y−yt´2¶
dy
y2 = √2π. (ii)R∞
0 exp
³−x2−4xt22
´
dx=√ πe−t. (iii):R∞
0
cos(tx)e−u(1+x2)
1+x2 dx= √2πR∞
u exp
³−x2−4xt22
´
dx,特にR∞
0
cos(tx)
1+x2 dx= π2e−t. ヒント:(i): 最初の等式の左辺、右辺を I1, I2 とする。まず I1 = I2 を示し、次に (I2+I2)/2 を考える。(iii):左辺を uについて微分。
11 多変数関数の微分 11.1 全微分と偏微分
第11章では多変数関数の微分について述べる。一変数関数 f を点 aで微分するとは、
aの近傍でf を 一次関数で近似 する ことでもある。つまり、微分係数 f0(a) は、x がaに近いとき、
f(x) =f(a) +f0(a)(x−a) +誤差, limx→a
x6=a
1
|x−a|誤差= 0 (11.1) となるようなものである。この考え方を多変数ベクトル値関数f :Rd→Rm まで広げる にはどうするか? まずRd から Rm への一次関数は
x7→Cx+b (C はm×d実行列、b∈Rm) である。ついでに、
C の(i, j) 成分は、x が xj 方向に変位するときの Cx+bの i 座標の変化 率を表す
ことにも注意しておこう。Rd から Rm への一次関数が何か分れば、f :Rd→ Rm に対 しては (11.1)を
f0(a)(x−a) はx−a∈Rdにm×d行列f0(a) を施して得られるm 次元ベ クトル、誤差も m次元ベクトル
と拡大解釈すればよさそうだ。また、拡大解釈した(11.1)から
f0(a)の(i, j)成分は、xがaから、xj方向に微小変位するときのfi(x)(f(x) のi座標)の微小変化率を表す
ことも読み取れるから、f0(a) の(i, j) 成分 =∂jfi(a),すなわち
f0(a) =
∂1f1(a) . . . ∂df1(a) ... . . . ...
∂1fm(a) . . . ∂dfm(a)
(11.2)
となることも想像がつく(命題 11.1.4で厳密に論じる)。
上の考え方に沿って多変数ベクトル値関数関数f の微分を定義するが、f の定義域が Rd 全体ではなく部分集合D⊂Rd の場合、a∈D での微分を考えるには、
aから少しだけずれた点 x もDに入る
という性質が欲しい((11.1)でf(x)が定義できるように)。そのために「開集合」とい う概念を導入する。実は「開集合」は「閉集合」(定義 5.5.1)の相対概念でもある(問 11.1.1):
定義 11.1.1 D⊂Rdとする。
• 次の性質をもつ点x∈Rd をD の内点(interior point)と呼ぶ: B(x, ε)⊂Dを満たす ε >0 が存在する,
但し、B(x, ε) ={y ∈Rd; |y−x|< ε}. また、D の内点全体の集合をD◦ と記す。
• D=D◦,即ち Dの全ての点が D の内点なら、D は開(open)であると言う。
問 11.1.1 定義11.1.1について以下を示せ:(i) D◦ は開集合。(ii)D⊂Rdが開⇔Rd\D は閉
定義 11.1.2 D⊂Rdを集合,f :D→Rm,a∈D◦ とする。m×d行列全体の集合をRm,d と記す。
• 次のようなC∈Rm,d が存在するとき、f はaで可微分であるという:
limx→a x6=a
1
|x−a|(f(x)−f(a)−C(x−a)) = 0. (11.3) 上式で、C(x−a) は行列 C を、ベクトルx−aに施して得られるベクトルを表す。こ のとき、C をf のaにおける微分係数といい、f0(a) と記す。
• 全てのx∈Dでf が可微分なとき、関数f0 :x7→f0(x)を f の導関数という。
• f の微分係数、あるいは導関数を求めることを微分するという。
注 1:(11.3)は (11.1)の「limx→a
x6=a
|x−1a|誤差= 0」 にあたる。
注 2:定義 11.1.2の意味での微分を、(偏微分と区別するために)全微分ともいう。
注3:m= 1のとき、f のグラフ上の点(a, f(a))∈Rd+1 でf の「接空間」(d= 1の場 合の接線を拡張した概念)により、微分の幾何学的解釈が与えられる(問11.1.5参照)。
例 11.1.3 一次関数 f(x) =Cx+b (C ∈Rm,d, b ∈Rm) に対しf0(a) =C (∀a∈ Rd).
これは、f(x)−f(a) =C(x−a) と(11.3)を見比べれば分る。
問 11.1.2 記号は定義11.1.2通りとする。α >1かつ|f(x)−f(a)| ≤C|x−a|α (∀x∈D) ならf は aで可微分かつ f0(a)は零行列であることを示せ。
次に (11.2)について考える。
命題 11.1.4 (全微分と偏微分の関係) 記号は定義11.1.2通りとする。
(a) f がaで可微分なら、∂jfi(a) (1≤i≤m, 1≤j≤d)が存在し、(11.2)が成立する。
(b) D上で偏導関数∂jfi (1≤i≤m, 1≤j≤d)が存在し連続とする。このとき、f は 全ての a∈D で可微分である。従って(11.2) も成立する。
注:∂jfi(a) (1≤i≤m, 1≤j ≤d) が存在するだけでは、f はaで連続とは(従って可 微分とも)言えない。例えば 例11.1.5(p, q≥1 かつ p+q≤r の場合)を参照せよ。
証明:(a): 行列f0(a) を(cij) と書くと、cij =δi·f0(a)δj, 但しδi ∈Rd の第 i座標は 1,他の座標は0 とする。従って、06=h→0なら
¯¯¯¯fi(a+hδj)−fi(a) h −cij¯¯
¯¯ = 1
|h|¯¯δi·¡
f(a+hδj)−f(a)−hf0(a)δj¢¯¯
≤ 1
|h|¯¯f(a+hδj)−f(a)−hf0(a)δj¯¯(11.3)−→ 0.
よって、∂jfi(a) が存在し cij に等しい。
(b):f1, ..., fmそれぞれの可微分性を言えばよいから、m= 1 の場合を示せば十分である。
a, x∈D,h=x−a6= 0 とし、t∈[0,1]の関数 ϕ1, .., ϕd を次のように定める:
ϕj(t) =f(gj(t)), 但し gj(t) = (x1, .., xj−1, aj+thj, aj+1, .., ad).
(D は開だからx がaに十分近ければ ∀t∈[0,1]に対しgj(t)∈D). このとき、
ϕ1(0) = f(a), ϕd(1) =f(x),
ϕj(0) = f(x1, .., xj−1, aj, aj+1, .., ad) =ϕj−1(1).
故に、
f(x)−f(a) =ϕd(1)−ϕ1(0) = (ϕd(1)−ϕd(0)) + (ϕd−1(1)−ϕ1(0)) よって、帰納的に次を得る:
(1) f(x)−f(a) =Pd
j=1(ϕj(1)−ϕj(0)).
一方、∂jf が存在して連続だから ϕj ∈C1([0,1]). よって平均値定理より tj ∈(0,1)で (2) ϕj(1)−ϕj(0) =ϕ0j(tj) = (∂jf)(gj(tj))hj
となるものが存在する。また、 ∂jf の連続性よりだから x→aのとき、
(∂jf)(gj(tj))−→∂jf(a).
これと、|hj| ≤ |h|より (3) |hj|
|h| |(∂jf)(gj(tj))−∂jf(a)| ≤ |(∂jf)(gj(tj))−∂jf(a)| −→0.
以上より、C= (∂1f(a), ..., ∂df(a))とおくと、x→aのとき、
1
|h|(f(x)−f(a)−Ch) (1)= 1
|h| Xd j=1
(ϕj(1)−ϕj(0)−∂jf(a)hj)
(2)= 1
|h| Xd j=1
((∂jf)(gj(tj))−∂jf(a))hj
−→(3) 0.
よって、f0(a) が存在しC に等しい。 2 例 11.1.5 p, q ∈N, r >0 とする。また、R2 の点をz= (x, y) と表し、f :R2 →R を f(z) =xpyq/|z|r (z6= (0,0)), f(0,0) = 0と定める。
(a) z6= (0,0)なら70、
∂1f(z) = pxp−1yq
|z|r −rxp+1yq
|z|r+2 , ∂2f(z) = qxpyq−1
|z|r − rxpyq+1
|z|r+2 . f はz で可微分かつ f0(z) = (∂jf(z))2j=1.
(b) p+q > r+ 1 なら f は全て z ∈ R2 で可微分かつf0(z) = (∂jf(z))2j=1. 特に f0(0,0) = (0,0).
(c) p, q≥1 なら f はz= (0,0)で偏微分可能かつ∂1f(0) =∂2f(0) = 0.
(d) p+q≤r ならf はz= (0,0)で不連続、従って可微分でない。
証明:(a): ∂jf(z) の計算結果から、これらは z6= (0,0)で連続。故に 命題 11.1.4より f はx で可微分。
(b): 原点で可微分かつf0(0,0) = (0,0)ならよいが、それは 問11.1.2から分る。
(c):任意のt∈Rに対し f(t,0) =f(0, t) = 0 による。
(d): 問4.2.4による。 2
問 11.1.3 以下の f(x, y) ((x, y) ∈ R2)に対し f0(x, y) を求めよ:(i) x3 +y3 −3xy.
(ii) x4+y4−10x2+ 16xy−10y2. (iii) (x2 −y2)e−x2−y2. (iv) (2x2 +y2)ex2+y2. (v) f(x, y) =
³xcosy xsiny
´
. (vi)f(x, y) =
³x+y xy
´ .
問 11.1.4 以下の f(x, y, z) ((x, y, z)∈R3)に対しf0(x, y, z) を求めよ:
(i) 13(x3+y3+z3)−xy−yz−zx. (ii)x2+y2+z2+x−2z−xy. (iii)exy+eyz+ezx−exyz. (iv)
³ x+y+z xy+yz+zx
´
問 11.1.5 (?) D⊂Rd,f :D→R,f はa∈Dで可微分とする。このとき、次を示せ:
½µx y
¶
∈Rd+1; y=f0(a)(x−a) +f(a)
¾
=
µ a
f(a)
¶ +
Xd j=1
tj µ δj
∂jf(a)
¶
; tj ∈R
. 但し δi∈Rdの第 i座標は 1,他の座標は 0とする。上の集合(Rd+1 内の d次元部分線 形空間)をf のaにおける接空間(d= 2なら接平面)という。一変数関数の微分は、関 数のグラフ上で「接線」を求めることであるのと同様に、多変数関数の微分は、関数の グラフ上で「接空間」を求めることにもなる。
一変数関数の微分と同様に以下の命題が成立する:
命題 11.1.6 (微分可能性の言い替え) 記号は定義11.1.2の通り、C ∈Rm,d とする。次 の三条件について(a) ⇔ (b)⇒ (c)が成立する:
(a) f がa で可微分かつf0(a) =C
(b) 次のようなϕ:D−→Rm,d が存在する:
全ての x∈D に対しf(x)−f(a) =C(x−a) +ϕ(x), lim
x→a x6=a
ϕ(x)
|x−a| = 0.
70∂1f,∂2f の替りにfx,fy と書くこともある。
(c) f は xで連続。
証明: d= 1 の場合(命題 5.1.4,命題 5.1.9)と全く同様である。 2 命題 11.1.7 (連鎖律)E ⊂R` は開集合、x∈E ,E −→g D−→f Rm とする。このとき、
g がx で可微分かつ f がg(x)で可微分 なら、f ◦g は xで可微分かつ
(f◦g)0(x) =f0(g(x))g0(x).
上式右辺はf0(g(x))∈Rm,d とg0(x)∈Rd,` の積である。
証明: d=`= 1の場合(命題5.1.10 )と同様である(命題5.1.9の代りに 命題 11.1.6
を用いる)。 2
例 11.1.8 (線形写像との合成) f ∈C1(Rm →R), A ∈Rm,d,g(x) = Ax(x∈ Rd) とす るとg0(x) =Aと連鎖律(命題 5.1.10)より
(f(Ax))0=f0(Ax)A.
成分で書くと、
∂j(f(Ax)) = Xm
i=1
(∂if)(Ax)aij, j= 1, ..., d.
例 11.1.9 (平面極座標)
g(r, θ) =
µrcosθ rsinθ
¶
, r≥0, θ∈R
とすると、g: [0,∞)×R→R2 は全射である。これは、R2 の点を原点からの距離 r と、
x 軸の正の向きとの角度θ の組み (r, θ) で表せることを意味する。これを R2 の点の極 座標表示と言う。京都やニューヨークのように幹線道路が格子状の街が直交座標系とす れば、パリの市街地(特に北西部)は凱旋門を中心に放射状に幹線道路が伸びているか ら、凱旋門を原点とした極座標系である。さて、
g0(r, θ) = Ã
c −rs s rc
!
(cosθ, sinθ をc, sと略記した). よって f ∈C1(R2) に対し、連鎖律より (f ◦g)0(r, θ) =f0(g(r, θ))g0(r, θ),
即ち、
(1) ((f◦g)r,(f ◦g)θ) = (fx◦g, fy◦g) Ã
c −rs s rc
! .
今、A = (0,∞)×[−π, π) とおくとg : A → R2\{0} は全単射である。その立場から、
f :R2\{0} →Rとf◦g:A→Rを区別せず(厳密には別物だが)、(f◦g)r, (f◦g)θ も それぞれfr,fθ と略す習慣がある。その習慣に従って(1)を書き直すと、A 上で
(fr, fθ) = (fx, fy) Ã
c −rs s rc
!
, 即ち fr= cfx+ sfy,
fθ=−rsfx+rcfy. (11.4) なお、上式の意味は次のように直感的にも理解できる:原点から遠ざかる方向の単位速 度ベクトルは¡c
s
¢ (従って ∂r= c∂x+ s∂y). また、原点からの距離 r の点が角速度 1 で回転するときの速度ベクトルは r¡−s
c
¢ (従って ∂θ =−rs∂x+rc∂y). さて、
e
g(r, θ, z) =
rcosθ rsinθ z
, r≥0, θ, z∈R
とすると、eg: [0,∞)×R2 →R3 は全射である。R3 の点をeg(r, θ, z) と表示することを円 柱座標表示と言う(パリの街での位置を、地図上の住所に加え建物の何階かまで指定す ると思えばよい)。定義からも分かるように、円柱座標は本質的には平面極座標である。
例えば f ∈C1(R3) に対して(11.4)にあたる式は次の通り:
(fr, fθ, fz) = (fx, fy, fz)
c −rs 0 s rc 0
0 0 1
.
2 問 11.1.6 (楕円座標) (r, θ) ∈ (0,∞)×(−π, π] に対しg(r, θ) =
³chrcosθ shrsinθ
´
とする。
g: (0,∞)×(−π, π]→R2\{0}は全単射であることを示し、(11.4)にあたる式を求めよ。
例 11.1.10 (?)(空間極座標)
g(r, θ1, θ2) =
rcosθ1
rsinθ1cosθ2
rsinθ1sinθ2
, (r, θ1, θ2)∈[0,∞)×[0, π]×[0,2π)
とする。g: [0,∞)×[0, π]×[0,2π)→R3 は全射である(問11.1.7)。 従ってR3 の点は g(r, θ1, θ2) と表せ、これをR3 の点の極座標表示と言う。
g0(r, θ1, θ2) =
c1 −rs1 0 s1c2 rc1c2 −rs1s2
s1s2 rc1s2 rs1c2
(cosθj, sinθj をcj, sj と略記した). また、f ∈C1(R3)に対し連鎖律より (1) (f◦g)0(r, θ1, θ2) =f0(g(r, θ1, θ2))g0(r, θ1, θ2)
g はA= (0,∞)×(0, π)×[0,2π) からB ={(x, y, z)∈R3 ; (y, z)6= (0,0)} への全単射 である(問 11.1.7)。その立場から、f :B →Rと f◦g:A→ Rを区別せず(厳密には
別物だが)、(f◦g)r, (f◦g)θ1, (f◦g)θ2 もそれぞれ fr,fθ1,fθ2 と略す習慣がある。その 習慣に従って (1)を書き直すと、A上で
(fr, fθ1, fθ2) = (fx, fy, fz)
c1 −rs1 0 s1c2 rc1c2 −rs1s2 s1s2 rc1s2 rs1c2
.
2 注:空間極座標を g(r, θ1, θ2) =
rsinθ1cosθ2 rsinθ1sinθ2 rcosθ1
と定義することも多い(例 11.1.10
の定義
x y z
に対し
y z x
)が、実際に色々計算してみると(例えば 例 11.4.3)、例
11.1.10の定義の方が自然で見通しがよいことが分かる。いずれにしても、座標を入れ替
えただけの違いなので、一方で得られた結果を他方に翻訳することは容易である。
問 11.1.7 (?) 例11.1.10 のg は[0,∞)×[0, π]×[0,2π) からR3 へは全射、 Aから B へは全単射であることを示せ。
問 11.1.8 (?)d≥2, (r, θ1, ..., θd−1)∈[0,∞)×[0, π]d−2×[0,2π)に対しd次元極座標を
gd(r, θ1, ..., θd−1) =
x1 ... xd
, 但し
x1=rcosθ1,
xj =rsinθ1sinθ2· · ·sinθj−1cosθj (2≤j≤d−1) xd=rsinθ1sinθ2· · ·sinθd−2sinθd−1
.
で定める。以下を示せ:(i) gd(r, θ1, ..., θd−1) =
³ rcosθ1
gd−1(rsinθ1,θ2,...,θd−1)
´ .
(ii) gd は[0,∞)×[0, π]d−2×[0,2π) からRd へ全射、A = (0,∞)×(0, π)d−2×[0,2π) からB ={x∈R3 ; (xd−1, xd)6= (0,0)}へ全単射。(iii) d≥3 に対し
gd0(r, θ1, ..., θd−1) = Ã
1 0
0 g0d−1(rsinθ1, θ2, ..., θd−1)
! Ã
g02(θ1) 0 0 (δij)di,j=3
! . (iv) detg0(r, θ1, ..., θd−1) =rd−1sind−2θ1sind−3θ2· · ·sin2θd−3sinθd−2.
問 11.1.9 f ∈C1(R2 →R)とする。次のg にたいし(f◦g)0 を計算せよ:(i)g(x, y) =
³xcosy xsiny
´
, (ii) g(x, y) =
³x+y xy
´ .