連続関数であっても、その変動は極めて大きいことがある。例えばf(x) =x2はxが大き くなると接線が限りなく急勾配となり、大きな変動を持つ。これに対しf(x) =x+ sinx は接線の傾きが一定値以下なので、より穏やかに変動する。7.6節では、「穏やかな変動 を持つ連続関数」である「一様連続関数」について述べ、コンパクト集合上の連続関数 が一様連続であること(定理7.6.3)を示す。7.6節を通じ、D⊂Rd,f, g, ... は Dを定 義域とする関数とする。
定義 7.6.1 次の2条件を考える:
(UC1) D 内の点列(an), (bn) についてan−bn−→0 ならf(an)−f(bn)−→0.
(UC2) 任意の ε >0 に対し次のようなδ >0 が存在する:
x, y∈D,|x−y|< δ =⇒ |f(x)−f(y)|< ε. (7.21)
• 後で示すように、条件 (UC1),(UC2)は同値である。そこで、その一方(従って両方)
が成り立つとき、f は一様連続 (uniformly continuous)と言う。
•集合Dで定義された実数値関数で、D上一様連続なもの全体の集合をCu(D)と記す。
定義 7.6.1 の (UC1),(UC2) が同値であることの証明はひとまず後回し(7.6節の後半)
にしよう。
注:(「連続」と「一様連続」の違い) Dで定義された関数 f が連続であるとは、次の 条件 (C1)または (C2)と同値である:
(C1) a, an∈D(n= 1,2, ...) についてan−→aならf(an)−→f(a).
(C2) 任意の ε >0 とx∈D に対し次のようなδ >0が存在する:
y∈D,|x−y|< δ =⇒ |f(x)−f(y)|< ε. (7.22) (C1) と (UC1) の比較: (UC1) で特にbn≡a∈D とすると(C1)が得られるから、
D 上一様連続なら、D 上連続である。
だが、逆は正しくない。例えばf(x) =x2 で定められるf :R→Rは連続 (f ∈C(R)) だが一様連続でない(f 6∈Cu(R))。実際、an=n+1n,bn=nとすると、an−bn= 1n →0 だが、
f(an)−f(bn) = 2 + 1
n2 6−→0.
(C2)と (UC2)の比較: 両者の差は一見すると微妙だが、この違いを理解することも重
要なので説明する。(C2)は ε,x 両方に応じて δ を選べば、(7.22) が成り立つことを意 味する(εが同じでもx が違えば、それに応じてδ を取り替える必要があるかも知れな い)。これに対し、(UC2)はεだけに応じて δ を選べば、xの位置に無関係に (7.21)が 成り立つことを意味する(εさえ決まっていれば、x 毎に δ をとり換える必要がない)。
一様連続関数と、そうでない連続関数の違いについては、これから述べる例と問で感 覚を掴むといいだろう。
例 7.6.2 f がヘルダー連続(例4.2.3) なら f ∈Cu(D). このことは、例えば定義 7.6.1
の条件 (UC1)から明らかである。
問 7.6.1 ε >0, 0 ≤p ≤1 なら f(x) = logx, f(x) =xp は[ε,∞) 上リプシッツ連続、
従って一様連続であることを示せ。
問 7.6.2 D1, D2 ⊂ Rd に対し以下を示せ:(i) Cu(D1∪D2) ⊂ Cu(D1)∩Cu(D2). (ii) Cu(D1∪D2)6=Cu(D1)∩Cu(D2) となる例がある。(iii) 次のようなδ0 >0 が存在する と仮定する:「x, y∈D1∪D2,|x−y|< δ0 ならx, y∈D1 またはx, y∈D2」.このとき、
Cu(D1∪D2) =Cu(D1)∩Cu(D2).
問 7.6.3 (連続だが一様連続でない例) 次の各例でf ∈C(D) かつ f 6∈Cu(D)を示せ:
(i) D = [0,∞), f(x) = xp (p > 1) (ii) D = (0,1], f(x) = 1/x. (iii) D = (0,1], f(x) = logx. (iv)D= (0,1],x∈(n+11 ,n1] (n∈N)ならf(x) = (n+1)(2n+1)|x−2n+12 |. この例では、D,f ともに有界。
問 7.6.4 −8≤a <∞,f ∈ D1((a,∞)), f0 が正値、非減少かつlimx→∞f0(x) = ∞ の とき、f 6∈Cu((a,∞))を示せ。
問 7.6.5 D⊂Rdが有界かつf ∈Cu(D)ならf は有界であることを示せ。一方、D⊂Rd が有界かつf ∈ C(D) も有界でも f ∈Cu(D) とは限らない(問 7.6.3)。ヒント:定理 5.5.4.
問 7.6.6 (?) I ⊂ R が区間、f ∈ Cu(I) とする。任意の ε > 0 に対し次のような K ∈[0,∞) の存在を示せ:∀x, y∈I に対し|f(x)−f(y)| ≤K|x−y|+ε.
次に、コンパクト集合上では全ての連続関数が一様連続であることを述べる:
定理 7.6.3 (コンパクト集合上の連続関数は一様連続)K⊂RdがコンパクトならCu(K) = C(K).
証明は後回しにする(7.6 節末尾)。定理7.6.3は、例えば、有界閉区間上の連続関数の リーマン可積分性(定理7.5.1)を示す際にも用いられる。実際、コーシーは連続関数の 定積分を定義する際(1823年)、「暗黙のうちに」この事実を用いた。定理 7.6.3 は現在
「ハイネの定理」と呼ばれることもある45。
問 7.6.7 f ∈C([0,∞))かつf ∈Cu([1,∞))ならf ∈Cu([0,∞))であることを示せ。特 に、0< p ≤1, f(x) = xp は[0,∞) 上で一様連続である(問 7.6.1参照)。ヒント:問 7.6.2(iii)を D1 = [0,2], D2 = [1,∞)として用いる。
問 7.6.8 (?) f :R→ R とする。次のような p >0 が存在するとき、f を周期関数、p をf の周期という:全ての x∈Rに対しf(x+p) =f(x). 以下を示せ:(i) 周期関数f の周期全体の集合が最小値 p0 >0 を持つとき、任意の周期はnp0 (n∈N\{0}) と書け る。(ii)f が連続かつ、任意に小さな周期を持てば、f は定数である。(iii)連続な周期関 数f が定数でなければ、周期全体の集合は最小値 p0 >0 を持つ。
定義 7.6.1で (UC1) ⇔ (UC2) の証明: (UC1) =⇒(UC2): 対偶を示す。(UC2)を否 定すると、ε >0 が存在し、任意のδ >0 に対し
Cδ,εdef.= {(x, y)∈D×D; |x−y|< δ, |f(x)−f(y)| ≥ε} 6=∅.
45Eduard Heine (1821–81)ハイネは1872年の論文で、一様連続性の概念を提示し、定理 7.6.3(K が 有界閉区間の場合)を示している。だが実は、これらの事実はハイネの師、 ディリクレが1852年に行った 講義で既に述べている(発表は1904年)。
そこで、集合 C1/n,ε から点(an, bn)を選ぶ。このとき |an−bn|<1/n より an−bn−→0.
一方、全ての n≥1に対し|f(an)−f(bn)| ≥εより f(an)−f(bn)6−→0.
以上より(UC1) は不成立。
(UC1)⇐= (UC2): ε >0に対し (7.21)を満たすδ >0を選ぶ。an−bn−→0よりこの δ に対し、n0 ∈N が存在し
n≥n0 =⇒ |an−bn|< δ.
すると (7.21)より
n≥n0 =⇒ |f(an)−f(bn)|< ε.
よって f(an)−f(bn)−→0. 2
次に定理7.6.3を示す。そのために次の補題を用いる:
補題 7.6.4 (部分列による収束判定 II)a, an∈Rd (n∈N)に対し、次は同値である:
(a) an−→a.
(b) (an)n≥0 の任意の部分列(ak(n))n≥0 は、更なる部分列(a`(n))n≥0 で、a`(n)−→aな るものを含む。
補題 7.6.4の証明: (a) ⇒(b): (ak(n))n≥0 は(an) の部分列なのでak(n) −→ a. 従って
`(n) =k(n) とすればよい。
(b)⇒ (a): 背理法による。条件(a)を否定すると、ある部分列(ak(n))n≥0 のいかなる部 分列も aに収束しない。特に、(ak(n))n≥0 は aに収束しない。従って(an)はaに収束 しない部分列を持つので、(an) 自身が aに収束しない。 2 定理 7.6.3 の証明: K 内の点列(an), (bn) で、an−bn−→0 なるものを任意に選び、
cn
def.= f(an)−f(bn)−→0
を言う。そのためには、(cn)の任意の部分列(ck(n))が、更なる 部分列(c`(n))でc`(n) −→0 なるものを含めばよい(補題7.6.4)。
さて、(ak(n)) は コンパクト集合 K の点列なのでa∈K に収束する部分列(a`(n)) を 含む。更に、an−bn−→0より b`(n)−→a. 従って、f の連続性から
c`(n)=f(a`(n))−f(b`(n))−→f(a)−f(a) = 0.
2
8 微積分の基本公式とその応用
1660年代の前半にニュートンは、現在「微積分学の基本公式」と呼ばれる微分と積分の 関係を発見した。1675年、ライプニッツもニュートンと独立に微積分学の基本定理の発 見に至った。ニュートンとライプニッツによるこれらの発見は、現在の微積分学の出発 点となった。
8.1 原始関数と不定積分
定義 8.1.1 I ⊂Rは区間、その下端、上端をそれぞれa, b(−∞ ≤a < b≤ ∞),I◦= (a, b), f :I−→◦ R,F :I −→R とする。
F ∈D1(I◦) かつ I◦ 上F0=f であるとき、F をf の原始関数(primitive function)と言う。
注:F, G∈C(I)∩D1(I◦) かつ F をf の原始関数とするとき、
Gがf の原始関数 ⇐⇒ G−F =c (定数)
証明: =⇒: (G−F)0 = f −f = 0. 従って微分による増減判定(定理 5.4.6) より G−F =c(定数)
⇐=明らか。 2
例 8.1.2 f :I −→R,及びその原始関数F の具体例を列挙する(a >0): I, f =F0, f の原始関数 F
R xp (p∈N) xp+1p+1 (0,∞) xp (p6=−1) xp+1p+1
(0,∞) 1/x logx
R ecx(c∈C\{0}) 1cecx
(0,∞) logx xlogx−x,
R chx shx
R shx chx
R cosx sinx
R sinx −cosx (−π2,π2) tanx −log|cosx|
R x2+a1 2
1
aArctan xa (−a, a), √ 1
a2−x2 Arcsin xa
(a,∞) √ 1
x2−a2 log(x+√
x2−a2) R √x21+a2 log(x+√
x2+a2)
証明:各例について F0 =f が確認出来る。 2 問 8.1.1 a, b∈R,a6= 0 とする。以下の関数の原始関数を求めよ:
(i) (x−b)12+a2. (ii) (x−b)x2+a2. (iii) x3+a1 3. (iv) x3+ax 3. (v) (x2+a2)(x1 2+b2), (b6= 0, a).
ヒント:(ii):(x−b)x2+a2 = (x−b)b2+a2 + (x−xb)−2b+a2. (iii)x3a+a3 3 = 2(x2−aax+a2) + 3(x+a)1 −
2x−a
6(x2−ax+a2). (iv):x3ax+a3 = 2(x2−aax+a2) − 3(x+a)1 + 6(x22x−ax+a−a 2). (v):(x2+ab22−)(xa22+b2) =
1
x2+a2 − x2+b1 2.
問 8.1.2 f(x) = x4+ 2bx2+a2 (a, b∈R, a >|b|) とする。1/f の原始関数を求めよ。
[ヒント]次の手順で1/f を変形する:
(i) f(x) = (x2+a)2−2(a−b)x2 = (x2+ 2cx+a)(x2−2cx+a),但し c=p
(a−b)/2.
(ii)f(x)1 = 4ac1
³ x+2c
x2+2cx+a− x2+2cx+ax−2c
´ .
定義 8.1.3 I ⊂Rは区間、その下端、上端をそれぞれa, b(−∞ ≤a < b≤ ∞),I= (a, b),◦ f :I→◦ R とする。
•
任意の[u, v]⊂I に対し f ∈R((u, v)) (8.1)
ならf はI 上局所可積分(locally integrable)であると言い、I 上の局所可積分関数全 体を Rloc(I) と記す。
• f ∈Rloc(I),x, y∈I に対し次の記号を導入する:
Z y
x
f =
R
(x,y)f, x < y,
0, x=y,
−R
(y,x)f, y < x.
(8.2)
定義より、x,y の大小に無関係に Z x
y
f =− Z y
x
f. (8.3)
注:f が「局所可積分」(つまり f ∈Rloc(I))という意味をひと口で言うと、
任意の x, y∈I に対し Ry
x f が定義できること と言えるが、もう少し詳しい注意を述べておこう。
• 定義 8.1.3 で、f の定義域は I◦ なので、(8.1)では「f ∈ R([u, v])」ではなく、「f ∈ R((u, v))」とした([u, v]⊂I に対し (u, v)⊂I◦ だが、[u, v]⊂I◦ とは限らない!)。
• I ⊂ R が有界区間、f :I−→◦ R も有界関数ならf ∈ Rloc(I) ⇐⇒ f ∈ R(I◦) (補 題 7.5.4). 一方、I が非有界区間、或いは f が I の境界で発散する場合(I = (0,∞) f(x) = 1/x , logx 等)でもf ∈Rloc(I), x, y∈I でありさえすれば、Ry
x f を定義でき る。これが、局所可積分という概念(Rloc(I) という記号)の利点のひとつである。
•a∈R,f ∈Rloc([a, b))なら、Rx
a f (x∈I) を定義できるが、f ∈Rloc((a, b))なら、一 般にはRx
a f (x∈I) を定義出来ない。(例えばf(x) = 1/xなら、f ∈Rloc((0,∞))だが R1
0 f は定義できない)。同様にb∈R,f ∈Rloc((a, b])なら、Rb
xf (x∈I)を定義できる が、f ∈Rloc((a, b)) なら、一般にはRb
xf (x∈I)を定義出来ない。
問 8.1.3 以下を示せ: (i) I が有界なら、R(I)◦ ⊂ Rloc(I). (ii) C(I) ⊂ Rloc(I). (iii) a∈Rのとき、C((a, b))6⊂Rloc([a, b)), b∈Rのとき、C((a, b))6⊂Rloc((a, b]).
記号 (8.2)の「使用上の注意」を、次の補題にまとめる。
補題 8.1.4 記号は 定義8.1.3の通り、 f ∈Rloc(I), x, y, z∈I とするとき、
(a) ¯¯
¯¯Z y
x
f¯¯
¯¯≤ Z x∨y
x∧y
|f|.
(b) Z z
x
f = Z y
x
f+ Z z
y
f (x, y, z の大小関係に関わらず). 証明:(a): J = (x∧y, x∨y) とすると、
¯¯¯¯Z y
x
f¯¯
¯¯=¯¯
¯¯Z
J
f¯¯
¯¯≤ Z
J
|f|= Z x∨y
x∧y
|f|. (b):
F(x, y) = Z y
x
f, G(x, y, z) =F(x, y) +F(y, z) +F(z, x) とおく。F(z, x) =−F(x, z) に注意すれば、示すべき事は
(∗) G(x, y, z) = 0.
今、x, y, zを大きさの順にu≤v≤wと並べ替える。このとき、(u, w)の区間分割(u, v),
(v, w) に関して区間加法性を用い、
Z w
u
f = Z v
u
f + Z w
v
f 即ちG(u, v, w) = 0.
さて、x, y, z はu, v, wの置換(6個ある)のうちどれかである。Gの定義式の対称性(変 数の巡回置換不変性)から、
G(u, v, w) =G(v, w, u) =G(w, u, v), G(w, v, u) =G(v, u, w) =G(u, w, v).
F(y, x) =−F(x, y) より
G(w, v, u) =−G(u, v, w).
これらから(∗) が判る。 2
注:¯¯Ry
x f¯¯≤Ry
x |f|は一般には正しくない(R
(x∧y,x∨y)|f| 6= 0, x > y なら右辺は負!)。
定義 8.1.5 I ⊂Rは区間、f ∈Rloc(I), F :I −→Rとし、次の2条件を考える:
(a) 任意の x, y∈I に対し Z x
y
f =F(x)−F(y). (8.4)
(上式右辺を[F]xy と書くこともある。) (b) c1 ∈I,c2 ∈Rを用い、
F(x) = Z x
c1
f +c2 (8.5)
と表せる。
これらは、同値であり、これらの一方(従って両方が)成り立つとき、F をf の不定積 分(indefinite integral)と言う。
(a) ⇔ (b) の証明:(a)⇒ (b): c1 ∈I を任意に選び、(8.4)でy=c1 とすると F(x) =
Z x
c1
f+F(c1).
(a)⇐ (b): 任意の x, y∈I に対し F(x)−F(y) =
µZ x
c1
f +c2
¶
− µZ y
c1
f+c2
¶
= Z x
y
f.
2