4. 分析と考察
4.1 国内電炉業界の動向に関する調査
4.1.6 鉄鋼業と地球温暖化対策
鉄鋼業と地球温暖化対策(特に高炉法と電炉法の
CO2排出量の考え方)に関して、以 下に示す
3事例の情報を収集・整理した。
事例Ⅰ:(社)日本鉄鋼連盟
・ 日本鉄鋼連盟では、地球温暖化対策における高炉・電炉業の役割について 、以下
のとおり整理している。
・ 鉄鋼業は高炉法と電炉法の連携により循環システムを構築し、循環型素材として
社会に貢献している。しかしながら、日本の鉄鋼生産について、「国内の 鉄鋼製 造プロセスを高炉から電炉に切り替えることが地球温暖化対策 」との意見が聞か れる。
・ このような考え方は、世界の鉄鋼需要を充たす ために高炉による鉄鉱石からの製
造が不可欠な中で、スクラップが元々は鉄鉱石から高炉法で製造された鉄鋼製品 のリサイクル資源であることを踏まえず、大きな循環システムの一部のプロセス のみを切り出して論じる誤った考え方であり、鉄鋼業における地球温暖化対策を ミスリードするものである。
・ ま た 国 際 的 に も 世 界 の 高 炉 、 電 炉 メ ー カ ー が 参 加 し て い る 世 界 鉄 鋼 協 会
(worldsteel)においては、鋼材の環境負荷については高炉法と電炉法を区別せ ず、高炉法・電炉法を一つの鋼材循環システムとして評価しており、この考え方 が世界鉄鋼業共通の認識となっている。
・ 上記の根拠として、
①鉄鋼業は高炉法と電炉法の連携により循環システムを構築していること ②世界の鉄鋼需要が拡大する中で高炉生産は不可欠であること
③スクラップ使用はニーズに応じた最適生産の中で決まること ④地球温暖化対策における日本鉄鋼業の役割
を挙げており、日本鉄鋼業が地球温暖化対策を進める上で重要なことは、「国内 の鉄鋼製造プロセスを高炉から電炉に切り替える」ことではなく、
1)最先端技術の最大限導入を行うとともに、革新的技術の開発を着実に進める ことにより、生産工程において、高炉、電炉のそれぞれが世界最高水準のエネル ギー効率を更に高める(エコプロセス)と同時に、
2)使用段階の
CO2削減に資する高機能鋼材の国内外への供給(エコプロダク ト)や、
3)優れた省エネ技術の世界の鉄鋼業への移転・普及(エコソリューション)
により、地球規模での
CO2削減に貢献することである と整理している。
出典:(社)日本鉄鋼連盟:地球温暖化対策における高炉・電炉業の役割について(2010 年 10 月)
を転載
事例Ⅱ:東京製鐵(株)
・ 東京製 鐵では 、高炉 法 と電炉 法にお けるプ ロ セスの 違いを 整理し た 上で、CO2
排出量について、以下のとおり考察している。
・ 2010
年
6月
18日に環境省及び経済産業省が共同で公表した事業所別
CO2排出 量調査結果によれば、2008 年度の高炉メーカーの
CO2排出量は、総計で
1.6億 トン強であり、これは日本全体の
CO2発生量の約
13%に相当する。我が国の鉄鋼業界が排出する
CO2は、そのほとんどが高炉メーカーから排出されている。
・ 高炉メーカーの粗鋼生産量の総計は、2008
年度で
79百万トン弱であるため、高 炉メーカーの粗鋼1トン当たりの
CO2排出量を計算すると、2 トンとなる。一 方、同社の
2008年度の
CO2排出量は
140万トン、2008 年度の同社の粗鋼生産 量は
299万トンであるため、粗鋼
1トン当たりの
CO2排出量は
0.5トンを下回 っている。
・ つまり、同じ 1
トンの粗鋼を生産する場合、高炉法平均と比較して、同社の
CO2発生量は
4分の
1に過ぎないということが、これまでに公表された
2006年度調
査及び
2007年度調査に引き続き、2008 年度調査でも再び確認された。
・ 我が国は、1990
年代後半以降、東アジアでは唯一の鉄スクラップ輸出国となっ ている。主原料の自給率が
100%を超える状態にありながら、電炉による生産比率が
3割を切っている状況は、世界の傾向から見ると特異であり、CO
2排出量 削減のためにも、国内での一層の鉄スクラップ利用拡大を図るべきであるとして いる。
出典:東京製鐵株式会社:地球温暖化防止への取り組みと提言(2010 年 6 月 25 日改訂)に基づき MRI作成
事例Ⅲ:(社)日本鉄リサイクル工業会(早稲田大学環境総合研究センター調査結果)
・ 早稲田大学環境総合研究センターでは、(社)日本鉄リサイクル工業会の委託を
受けて、同工業会の温暖化対策の推進に貢献するため、高炉法、電炉法の比較に 関する調査を実施している。具体的には、鉄リサイクルプロセスを含む「電炉法」
と「高炉法」における
CO2排出量を比較している。算定に用いている数値は文 献データである。
・ その結果、高炉では、884kg- CO2
/粗鋼トン、電炉では、330 kg- CO
2/粗鋼ト ン、鉄リサイクル業では、15.1 kg- CO
2/粗鋼トンであったことから、鋼材製造 プロセスに占める鉄リサイクル業の
CO2排出量の割合は極めて小さいと評価し ている。
・ なお、本調査では、CO2
排出量の算定に際して図
4.1.6-1に示されているとおり、
製造工程の一部のみを評価対象としている 。また、図
4.1.6-2の出典にあるとお り、CO
2排出量の算定にあたっては、既存文献からデータを引用しているため、
事例Ⅱと事例Ⅲの粗鋼1トン当たりの
CO2排出量には差が見られる。
図
4.1.6-1 「電炉法」と「高炉法」の評価範囲図
4.1.6-2 「電炉法」と「高炉法」の CO2排出量の比較
出典:早稲田大学環境総合 研究センター:鉄リサイク ル業における温暖化対策に 関する調査研究に基 づきMRI作成
4.2 海外電炉業界の実態に関する調査
ドキュメント内
目次
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