5. 結論と今後の対応の方向性
5.1 結論
5.結論と今後の対応の方向性
4)海外展開の動向
共英製鋼は、ベトナムへの技術指導を端緒として、圧延の設備を現地に建設し、操業を 行ってきた。創業当初から圧倒的な供給量と日本ブランドに対する信頼の高さを活かし、
現地市場の成長に伴い、出荷量を伸ばしてきた。東南アジア諸国は、今後も建設等の需要 産業の成長が期待できることから、事業展開の有力候補と考えられる(ただし、現時点で 海外展開しているメーカーは数社である)。
5)技術動向
東京製鐵は、自動車用鋼板の製造開始等、従来は高炉の独占市場であった薄板市場での 拡販に注力している。脱ガス装置の導入や成分調整によって 、どのような品位のスクラッ プであっても利用可能な技術を開発し、
2009年から薄板専用工場を稼働している(ただし、
現時点では、こうした技術開発の動きは東京製鐵一社の動きである)。
5.1.2
海外電炉業界について
1)米国の電炉業界
米国では、ニューコア社に代表される電炉メーカー(ミニミル)が
1980年代以降急速 に成長し、現在では米国の粗鋼生産量の
6割以上を電炉が占めている。
米国における電炉メーカーは、従来は建設業界向けの製品を生産していたが、近年は技 術開発によって鋼板製品を生産できるようになり、出荷先を自動車業界に広げている。 近 年では、電炉煤塵のリサイクルなどの技術開発等も試行的に行われている。
米国で電炉業界が成長してきた背景としては、電炉の原料である鉄スクラップが豊富に 存在していることが挙げられる。近年では、鉄スクラップだけでなく、直接還元鉄なども 利用されるようになってきている。米国の場合、電炉の原料調達の状況は今後とも変わら ないと考えられており、電炉生産の柔軟性と経済性が高い評価を得ていることから、今後 も電炉の比率は高まっていくことが予想される。
2)欧州の電炉業界
欧州では、粗鋼生産量に占める電炉の比率は
4割程度であり、緩やかな上昇傾向にある。
電炉比率の上昇の背景には、東欧諸国で旧式の高炉や平炉が閉鎖されていることと、その 際に、一部、電炉工場が新設されていることが挙げられる。
欧州の電炉メーカーは、国によって生産する主要製品が異なっている。従来から電炉比
率が高いイタリアやスペインでは、主に棒鋼や線材等の建設業界向けの製品が主要製品で
れは、欧州では電炉の原料である鉄スクラップの品質が低く、電炉製品は、自動車生産に 求められる品質に到達していないと判断されているためである。
欧州では、消費電力削減といったテーマを中心に電炉技術の開発が行われているほか、
電炉煤塵のリサイクルも重要な研究開発テーマとなっている。
欧州の鉄スクラップの動向は、
EU加盟国に限ると、輸入よりも輸出が上回っているが、
EU
周辺諸国であるトルコまで含めると、輸出入のバランスがとれ、
EUの鉄スクラップが トルコで利用されていると考察することができる。電炉比率の高い
EU加盟国であるイタ リアなどでは、鉄スクラップを輸入しており、その主要輸入先はロシアであった 。しかし、
近年、ロシアでは、国内の電炉比率をあげて、鉄スクラップの輸出を抑えるとともに、直 接還元鉄の生産を拡大する傾向にある。さらに、中国による鉄スク ラップの法外な高値で の購入も行われており、EU 加盟国の原料調達の懸念となっている。
また、近年の金融危機による建設市場の需要変動が電炉メーカーに影響を与えることが 明らかになってきたため、欧州の電炉メーカーでは、今後、米国の電炉メーカーにならい、
製品の多様化に取り組んでいく可能性がある。このため、欧州では、今後とも電炉による 粗鋼生産は現状水準を維持するか、もしくは増えていくと予想される。
3)韓国の電炉業界
韓国の鉄鋼業界では、高炉メーカーのポスコと電炉メーカー・単圧メーカーが分業体制 を確立していたが、1980 年代後半以降、ポスコ、電炉メーカー、単圧メーカー がそれぞれ 事業範囲の拡大を図った。電炉メーカー、単圧メーカーによる製鉄事業への進出に対抗し て、高炉メーカーであるポスコは電炉による生産に進出した。通貨危機により電炉メーカ ーの倒産が相次いだ後、現代自動車が電炉メーカーを統合し、鉄鋼業において、ポスコと 二大鉄鋼グループ体制を確立するに至っている。
4)海外電炉業界の比較
電炉業は、第二次世界大戦後、鉄鋼業における小規模メーカーが鉄スクラップを原料と して、電炉を用いて建設市場向けの鉄鋼製品を生産したことから始まって いる。これは、
欧米だけでなく、日本、韓国にも共通しているが、その後の電炉業の発展の状況は、海外 と日本では異なっている。
最も電炉業が発展したのは、鉄スクラップを豊富に有する米国である。 経営統合、技術 開発による鋼板製品の供給開始により、生産量を増加させ、近年では、一部の自動車部品 等も供給するようになり、高炉による粗鋼生産量を上回るまでに なっている。
欧州では、国によって電炉業の粗鋼生産量に占める比率は異なっている。スペインやイ タリアでは、電炉比率は高いが、ドイツのような高炉による粗鋼 生産が中心である国では、
電炉業の比率は低い状況にある。現在、欧州の電炉業の製品は、建設市場向けが中心であ
るが、一部では鋼板等の高品位部品の生産を進める動きもあり、今後、米国のように電炉 業がより多様な製品を供給することで、生産量の増加を目指していくと考えられる。
また韓国では、高炉メーカーとの協業体制により電炉業が発展し てきたが、近年、高炉 メーカーや自動車メーカーが電炉工場を傘下におさめ、高炉と電炉を並立させる生産体制 がとられるようになっている。今後は、高炉メーカー、自動車メーカーが主導する中で、
高炉との生産バランスをとりながら、一定の市場を築いていくと考えられる。
5.1.3
まとめ
各国の電炉業界では、小規模メーカーが建設市場向けの鉄鋼製品 の生産を手始めに発展 してきた。今日、米国では電炉は高炉を凌ぐほどに成長し、欧州や韓国では高炉と電炉が 並立して鉄鋼業を支えている。我が国は、これらの国と比べると、電炉による粗鋼生産に 占める比率が低く、近年、主要製品の供給先である建設市場が落ち込む中、さらに比率が 下がる傾向にある。
我が国の電炉業の今後の発展を考える際、米国においてニューコア社が進めている製品
の多様化(自動車部品等の製造)は参考になると考えられる。欧州でも建設市場の需要変
動に対して電炉業が脆弱であることから、製品の多様化に取り組むことも方向性として考
えられている。
ドキュメント内
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