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第 4 章 モンゴル産フライアッシュを用いたセメント硬化体の物理的特性試験による考察

2 実験の概要

2.5 フライアッシュの組成分析

2.5.1 強熱減量

に記述した。

117 laser diffraction particle size analyzer。測定した試料の粒度分布等を求めることができる。レーザー回折粒 度分布装置の原理は「粒子群にレーザ光を照射し、そこから発せられる回折・散乱光の強度分布パター ン か ら 計 算 に よ っ て 粒 度 分 布 を 求 め る 方 法 」SHIMADZU ホ ー ム ペ ー ジ, 入 手 先

〈http://www.an.shimadzu.co.jp/powder/lecture/middle/m01.htm〉, 参照 2016-02-06 より引用した。

118 powder X‐ray diffraction。測定した試料の結晶構造等が明らかになる。粉末エックス線装置の原理は「試

料にX 線を照射した際、X線が原子の周りにある電子によって散乱、干渉した結果起こる回折を解析 することを測定原理としています。」一般財団法人 日本分析機器工業会ホームページ, 入手先

〈http://www.jaima.or.jp/jp/basic/xray/xrd.html〉, 参照 2016-02-06 より引用した。

119 鉱物名称。化学式で表した場合,NFA Quartz (SiO2), Mullite ()。

120 鉱物名称。化学式で表した場合,Baganuur 1 Quartz (SiO2), Mullite (), Lime (CaO)。

121 鉱物名称。化学式で表した場合,Shivee ovoo 2,3 は Quartz (SiO2), Anhydrite (CaSO4), Lime (CaO), Hematite (Fe2O3), Periclase (MgO)。

50

2.19と合わせて考察した場合,Baganuur 1 には Shivee ovoo 2, 3に存在が確認された MgO, Fe2O3といった単体の酸化物のピークの存在が認められないことから,様々な金属酸化物が 結合した非結晶質の複合体を形成しているのではないかと考えられる。一方,Shivee ovoo 1,

2 には単体の酸化物が多く含有されていると考えられる。

2.24 フライアッシュの粉末エックス線回折結果

0 500 1000 1500 2000 2500

0 500 1000 1500 2000 2500

0 500 1000 1500 2000 2500

0 500 1000 1500 2000 2500

10 20 30 40 50 60

Quartz (SiO2)

Anhydrite (CaSO

4

) Lime (CaO)

Mullite (3Al

2

O

3

・2SiO

2

) Hematite (α-Fe

2

O

3

) Periclase (MgO)

NFA

Shivee Ovoo 3 Shivee Ovoo 2

Baganuur 1

51

図2.25 に Shivee ovoo 3 の SEM 122 写真の結果を示した。Shivee ovoo 3 は様々な粒径

の粒子が存在し,かつ,きれいな球形であることがわかる。一方で,粒子の表面に結晶が析 出しているフライアッシュの存在も確認できる。

図2.26 は 図2.25 のフライアッシュ (A) を拡大した SEM 写真である。

図2.27 に EDX 分析 123 の結果を示した。EDX 分析は Shivee ovoo 3 の粒子の表面に析出

した結晶の化学組成を明らかにすることを目的として実施した。この結果から,表面に析出 していた結晶の大部分はカルシウムの酸化物で構成されていると推測でき,その他にマグ ネシウムやアルミニウム酸化物の複合体であると考えられる。ここで,炭素量も多く検出さ れているが,これは表面をカーボンコーティングしているためである。

図 2.28 に EDX マッピング分析の結果を示した。図 2.27 ではフライアッシュ粒子に一

点の電子線を照射した際の結果であったが,EDX マッピング分析では粒子全体に電子線を 照射しているため,それぞれの成分の分布状況がわかる。この結果からも,カルシウムと酸 素が多く存在していることから,カルシウムの酸化物を多く含有していることが推測でき る。また図2.27 の結果と同様に,アルミニウム,マグネシウムも多く分布し,さらに硫黄 やケイ素も全体に分布していることから,図2.24 のフライアッシュの粉末エックス線回折 結果とも合わせて考察した場合,カルシウムは多くがカルシウムの酸化物又は,アルミニウ ム酸化物との複合体を形成しており,ケイ素は SiO2 ,硫黄はCaSO4として,マグネシウム

はMgO,鉄は Fe2O3として多くが単体の酸化物として存在しているのではないかと考えら

れる。

同様に図2.29,図2.30 に Baganuur 1 ,図2.31,図2.32 に Oyu Tolgoy の SEM 写真を

示した。Baganuur 1 は SEM の結果から明らかなようにきれいな球形をしており、大小さ

まざまな粒径の粒子が確認できる。だが,図2.25,図2.26 の Shivee ovoo 3 で認められた 表面に結晶が析出した粒子の存在を確認することはできなかった。また,Oyu Tolgoy はき れいな球形の粒子が全く存在していないことがわかる。

122 走査型電子顕微鏡,Scanning Electron Microscope の略称である。測定した試料を高倍率で観察できる。

走査型電子顕微鏡の測定原理は「電子線を用いて測定対象物の拡大像を得ることができます。電子線は 電磁波として見た場合、非常に波長の短い波ですので、光学顕微鏡などよりはるかに高い倍率での形態 観 察 が 可 能 と な り ま す 。」 一 般 財 団 法 人 日 本 分 析 機 器 工 業 会 ホ ー ム ペ ー ジ, 入 手 先

〈http://www.jaima.or.jp/jp/basic/em/〉, 参照 2016-02-06 より引用した。

123 エネルギー分散型エックス線分光法,Energy Dispersive X-ray Spectroscopy の略称である。測定した試料 の化学組成等が明らかになる。エネルギー分散型エックス線装置の原理は「物質にX線を照射すると蛍 光X線が発生し、その中には元素特有の特性X線が含まれています。その特性X線のエネルギーを強度 として計測することにより、非破壊、多元素同時かつ前処理不要で粉末、液体、固体試料中の元素分析 や元素分布を容易に測定することが可能となります。」一般財団法人 日本分析機器工業会ホームペー ジ, 入手先〈http://www.jaima.or.jp/jp/basic/xray/eds.html〉, 参照 2016-02-06 より引用した。

52

2.25 Shivee ovoo 3 SEM 写真

2.26 図2.25 のフライアッシュ (A) を拡大した SEM 写真

(A)

53

Element Wt % At %

C K 10.17 20.09

O K 24.51 36.34

MgK 6.23 6.08

AlK 7.34 6.45

SiK 1.29 1.09

S K 2.45 1.82

CaK 46.23 27.37

FeK 1.78 0.76

Total 100 100

2.27 EDX 分析の結果

54

2.28 EDX マッピング分析の結果

S K Si K O K

Na K

Mg K Fe K

Ca K Al K

C K

55

2.29 Baganuur 1 SEM 写真

2.30 Baganuur 1 SEM 写真

56

2.31 Oyu Tolgoy SEM 写真

2.32 Oyu Tolgoy の SEM 写真

57

出典) 環境技術協会,日本フライアッシュ協会,「石炭灰ハンドブック (第4版)」より 著者作成。

2.33 石炭灰の利用分野並びに利用製品の分類 セメント・コンクリート分野

セメント原料 セメント混合材 コンクリート混和材

粘土材代替

フライアッシュセメント

ハイボリュームフライアッシュセメント

土木・建築分野 道路材 盛土・埋め立て材

護岸裏込材

路盤材(クリンカアッシュ)

地盤改良材 土質改良材 海中基礎工

人工骨材(軽量骨材等)

建設材

建築材(建材,セメント製品)

農林水産分野 海洋構造物

農業用資材 肥料

土壌改良材

その他の分野 脱硫剤

吸着剤 人工ゼオライト

乾式用脱硫剤

58

59

ある。反応はポルトランドセメントの中で大部分を占める成分であるケイ酸三カルシウム とケイ酸二カルシウムが水と反応することによって CSH と水酸化カルシウムを生成する。

次にセメントとフライアッシュの反応であるポゾラン反応について説明する。ポゾラン 反応によっても様々な水和反応物が生成するが,中でも最も有名な反応は,図2.34 の Gの 反応である。セメントの水和反応は CSH と水酸化カルシウムを生成する反応であったが,

ポゾラン反応は生成した水酸化カルシウムを消費することで反応は進行する。そのため,セ メントの水和反応が進行した後に起こる反応であるため,比較的遅い反応である。その他に,

セメントやフライアッシュに含有されるアルミナによっても様々な水和物が生成する。

図2.35 に C3S とフライアッシュ間のポゾラン反応モデルを示した 128 。図のように,フ

ライアッシュから溶出した Na,K が粒子表面の反応性を高め,フライアッシュから溶出し

128 山本武志, 金津努, 前掲載書, p.2

出典) 山本武志,金津努,「フライアッシュのポゾラン反応性を評価するための促進化学 試験法の検討」より著者作成

2.34 ポルトランドセメントとフライアッシュの水和反応モデル 2 3CaO SiO )( 2 6H O 2

Al O3 3 SO3

Fe

x z

7 4

Al

Al

2

Al

H

Al

Al O Fe

2

Al

H

H

2

x

z

2

x Al

Al O

O

3 Al

CaO O

3CaO

O

O

O

O 3CaO

O

SO O

O

H 2CaO

O O SiO

3

3

SO

3 3

3

) )

26

3

3CaO

3CaO

SiO

10

3

2

3 2

2

3 )

3

O

3

2

( (

SiO

) 2

SO

CaO

CaO

y

O

3

SO

2

2 CaO

SO (

) SiO

3

(

3 3

3 2

H

H

3

2

2

(

2

2

4CaO

2 2

H H

O

H 2

2

H

H

y

H O

4CaO

H 2

O

CaO

2

2

O

4

3

O

2 2

2

H

CaO

3CaO

6CaO

H

2

3CaO

2

O

O

H

O

2 H

2

CaO 2

H O

18

CaO

O

O 10

2

19

O O 3

12

CaO

2

2

2

12 CaO

10

2

2

H O

) 2

H

O

2

O

32

)

(

2

H

6CaO

2

O

) 2

(

2 2

SiO

H

2

O

(

2 3CaO

H

H

2

O

2O

2

カルシウムシリケート水和物 水酸化カルシウム カルシウムシリケート

カルシウムシリケート カルシウムシリケート水和物 水酸化カルシウム

カルシウムアルミネート

カルシウムアルミネート

カルシウムアルミネート

石膏(硫酸カルシウム)

石膏(硫酸カルシウム)

エトリンガイト

モノサルファート

カルシウムアルミネート水和物

ハイドロガーネット 水酸化カルシウム

カルシウムアルミネート鉄

カルシウムシリケート水和物 シリケート

水酸化カルシウム

アルミネート 水酸化カルシウム カルシウムシリケート水和物 カオリナイト

A

B

C

D

E

F

G

H

60

たシリケート,アルミネート,カルシウムシリケートとの水和反応で遊離した水酸化カルシ ウムにより,カルシウムシリケート水和物,カルシウムアルミネート水和物を生成すること により反応は進行することが示されている。

出典) 山本武志,金津努,「フライアッシュのポゾラン反応性を評価するための促進化学 試験法の検討」より

2.35 C3S とフライアッシュのポゾラン反応モデル

61

62

使用しないコンクリートと比較し、約半分近くの二酸化炭素量を削減することが可能とな る。

5.8.2 フライアッシュを混和材として使用したコンクリートの長期強度の向上

図2.37 にフライアッシュを混和材として使用したコンクリートの長期強度を示した 130

横軸が材齢、縦軸が圧縮強度を表しており,青がフライアッシュを混和材として使用してい ないコンクリート,赤がフライアッシュを混和材として使用したコンクリートである。材齢 28 日までの初期の段階ではフライアッシュを混和材として使用したコンクリートはフラ イアッシュを混和材として使用しないコンクリートと比較し、圧縮強度は低くなる傾向を

130 日本フライアッシュ協会ホームページ, 入手先〈http://www.japan-flyash.com/images/fconcrete_06.gif〉, 照 2015-11-13

出典) 日本フライアッシュ協会 HP,入手先〈http://www.japan-flyash.com/images/fconcrete_06.gif〉より著者作成

2.37 フライアッシュを混和材として使用したコンクリートの長期強度の違い

10 20 30 40 50

0 100 200 300

Compressive strength (MPa)

Age (day)

Normal FA cement

・水セメント比(50 %)

・スランプ5cm

・水中養生

28