第 2 章 モンゴル国の現状と問題の把握
4 モンゴル国の石炭火力発電所
4.3 石炭火力発電所の環境対策
37
は電気集塵機,脱硝・脱硫装置が設けられているが,モンゴル第四火力発電所では電気集塵 機のみである。図2.16 に第四火力発電所の電気集塵機の外観を示した。電気集塵機により 収集されたフライアッシュは一時的にサイロに保管され,必要に応じて各コンクリート会 社等に提供される。余剰なフライアッシュは水と混合しスラリー 91 とした後,発電所付近 の灰捨て場に配管を通じて送られ,廃棄されている。その際に使用した水はポンプによりく み上げ,再利用される。
38
表2.16 現行及び今後新設される火力発電所の排出基準値
対象物質
現在 今後新設の発電所
MNS 5919-2008 MNS 6298-2011
石炭供給能力
(ton / h) 濃度*2
(mg / Nm3) 人口密度
(人 / km2) 濃度*2 (mg / Nm3) (mg / mCO 3)
221 - 420 180 10 - 1000 180
76 - 220 300 10 300
SO2
(mg / m3)
221 - 420 1200 10 - 1000 400
76 - 220 1485 10 600
(mg / m煤塵 3)
221 - 420 200 10 - 1000 50
76 - 220 10800 10 200
NOx (mg / m3)
221 - 420 715 Vdaf<10 % *1 1100
76 - 220 1100 10% < Vda f<
20% *1 650
*1 V daf : Dry Ash Free Basis の略語であり,無水無灰ベース。
*2 Nm3 : 標準状態 (0℃, 1 atm) に換算した1 m3 のガス量。
出典) 独立行政法人 国際協力機構,「モンゴル国石炭開発利用マスタープラン調査」
より著者作成。
図2.16 第四火力発電所の電気集塵機の外観
39
と,SO2,NOx,煤塵の排出量は基準値を満たしている 93 。
今後新設される火力発電所の排出規制はより厳しい値が設定されているが,第四火力発 電所は脱硝装置,脱硫装置が設置されていない状態であってもSO2 ,NOxの排出規制値を 満たしているため,少なくともそれぞれの排出量は 1200 mg / Nm3 ,715 mg / Nm3 であると 予想できる。
新たに建設された火力発電所が基準値を満たすためには,脱硫装置の場合,脱硫率 70 % 程度の技術が必要になる。だがこの値を満たすことは,乾式脱硫装置の導入により達成でき る 94 。同様に脱硝装置の場合,脱硝率 40 % 程度の技術が必要になるが,炉内燃焼等の改 善又は炉内無触媒脱硝法によって達成可能である 95 。煤塵は電気集塵機の設置により達成 可能であり,CO に関しては特別な技術の導入は不要である 96 。
図2.17 に第四火力発電所の写真を示した。日本の火力発電所とは異なり,第四火力発電
93 独立行政法人 国際協力機構, 前掲載書, p.221
94 同上書, p.222
95 同上書
96 同上書
写真の提供者: Dinil Pushpalal, Professor, Tohoku University
図2.17 第四火力発電所
40
所の煙突からは煙が大量に排出されていることが確認できる。JICA の報告書では排出規制 は満たしていると報告されているが,脱硫,脱硝装置が設置されていないため基準以下では あるが,SO2 ,NOx 等の環境汚染物質は排出され続けていると考えられる。以上のことか ら,第四火力発電所にも脱硫,脱硝装置の設置を行う必要がある。
また表 2.17 に第四火力発電所が取り組んでいる他の環境保全対策について示した 97 。 環境対策として様々な取り組みを行っていることがわかる。今後は各取り組みのマニュア ルや規制等も詳細に決め,実行していくことが必要である。
97 独立行政法人 国際協力機構, 前掲載書,, pp.282-285
表2.17 第四火力発電所が取り組んでいる他の環境保全対策
取り組み 内容
煙突からの煤塵の飛散や SO2,NOx 等 の 排 出 ガ ス に関する問題
・2010 年から燃焼ガス中の SO2, NOx 等の有害ガス,フラ イアッシュの測定を実施している。
・2009年,大気庁により実施された燃焼ガスの成分分析の 結果,基準値を満たした。
貯炭場における問題に
対する取り組み ・炭塵飛散の防止のため,貯炭場の東側に苗木 200 本の植 林を実施した。
フライアッシュの処理に 関する取り組み
・年間約 30 万トンのフライアッシュが発生し,うち 1 万
トンを各企業に販売している。
・有効利用されなかったフライアッシュは第四火力発電所 近傍の灰捨て場に廃棄している。
・満杯となった灰捨て場は飛散防止のため土壌で多い,
2009 年から 2011 年にかけて 3,000 本の植林を実施し
た。
水資源の再利用等に関す る取り組み
・発電所から約 20 km 離れた場所に設置した12 箇所の井 戸から年間約 1,000 万トンの地下水をくみ上げ利用し ている。
土壌汚染に関する取り組 み
・発電所敷地内の数か所で土壌汚染の測定を実施してい る。
・灰捨て場の灰を毎月サンプルとして採取し,分析を実施 している。
操業で発生するゴミ の処分に関する取り組み
・生活廃棄物が発生するが,指定のゴミ捨て場に廃棄して いる。
従業員の健康に関する取
り組み ・定期的に健康診断を実施している。
国の関係機関への報告
監視員からの指摘事項 ・監視員により 2011 年度環境保全計画に対する実績調査 が行われたが,指摘事項はなかった。
出典) 独立行政法人 国際協力機構,「モンゴル国石炭開発利用マスタープラン調査」より 著者作成。
41