第1節 進路選択における障害の生成
ここまでに進路多様校における進路指導のシステムと生徒の反応に ついて、個別的な事例(2章)と学年全体の分析(3章)によりあきら かにしてきた。ここであきらかになったことは進路多様校において、
「うまく切り抜ける」方策(少ない努力で卒業すること)は、卒業後 の進路選択をおこなう過程では、希薄な学校との関係性、低い学力、
多い欠席、複雑な家庭環境、乏しい経済力といった様々な障害を生成 するということであったvさらにとくに指摘したいのは、これらの障 害は普通に卒業するだけであれば顕在化せず、高校からIE規の就職や 高額の学費を支払う進学を目指す時にのみ生徒の前に現れるのである,、
したがって、このような選択における障害は、高卒未定者を生み出 す大きな要因となると仮定されるので、本章ではこの仮説に基づいて、
教師が認識している生徒の進路選択過程における障害の影響について あきらかにするものである。
第2節 分析対象の拡大
3章までの議論の対象はA商であった。したがって、A商のデータ だけでこれまでの分析結果を進路多様校全体に対して一・般化すること ができるかは疑問の余地がある。そこで、本章では分析の対象を]校 のデータではなく、複数の高校のデータを用いて分析をおこなう,、
ここで用いるデータは、苅谷ほかが2001年から2002年にかけて、
関東地方の偏差値50以下の中堅校から進路多様校まで、約20校を対 象におこなった質問紙調査とインタビュー調査のデータである,、苅谷
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ほかはこれらのデータをもとに既に2つの報告を行なっており、筆者 も研究グルーブの一一員として…部の分析をおこなっている、,しかしな がら、ここではそれらのデータを用いて、進路選択における障害の視 点から再分析をおこなうものである。
苅谷ほかの先の報告では、研究の目的を「おもに進路多様校で実施 されている進路指導の状況と教師が認識している生徒の進路意識の関 係性についてあきらかにすることである」とし、「これまでの研究(苅
谷他2001)・Dでは生徒の自己理解を促すための進路指導(ノ)}11期化・統 合化が必ずしも効果的でないことがあきらかにされた,しかし、その 原因についての検討は十分されてはいない。っまり、単なる[ll・期化さ れた進路指導ではそれに乗り遅れる生徒の問題や、統合化によって従 来は個別的な対応を担っていた担任が進路指導部i三導の全体的な進路 指導計画に組み込まれていく可能性については指摘してきたが、そも そも指導に乗れない生徒が生じる原因や、全体的な指導では自己認識 できずに個別化した対応でしか進路を選択できない生徒が生じる原因 についての具体的な検討はなされていない司としているc,ここではお もに学校側がおこなう指導の有効性に議論の中心があり、指導論的な 分析がなされ、現行の発達心理学にもとつく進路指導の課題を指摘し
ている。
そこで、本論文では進路指導に乗らない生徒が生じる要因に焦点を あてて議論をすすめる。
第3節 進路指導担当のインタビュー
本章の調査は、前述の苅谷ほかの調査実施校のうち、進路主任また は3年担任と生徒の双方のからのインタビューが実施できた、進路多
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様校のA高校、B高校、 C高校、 D高校、 E高校の5校のデータを川 いる。この5校はいずれも関東地方の普通科全日制高校で、大手予備 校の入試偏差値は38~48の進路多様校である。調査は、2002年4月 から8月までの問におこない、進路指導状況とその効果や問題点、高 校生の進路意識について、どのように認識し何を問題視しているのか についてインタビューにより実施した.、
第4節 先を考えずに努力しない生徒
調査対象の5校が普通科進路多様校であることから、いずれの学校 でも生徒の特性として、将来のことを考えない時間展望のあまりない
「現状埋没型」の傾向が強い生徒が多いと指摘されていた,,その具体 的なイメージとしては勉強が好きでないアルバイトに熱心な生徒像と いうことだった。そのような将来のことを考えない生徒のために、表
5-1に示すように、各高校は1年時から将来の進路を考える様々な方 策をとってきた。
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表5-1 将来の進路を展望させる取り組み(2002年に実施したもの)
内容
mZ名
取り組みのおもな内容 効
A高校 LHRでの人生設計、費用面からの関心喚 N。フリーターが不利な点についての指
ア
その時はB高校 学期毎の3者面談の実施。学校設定科目
ノよる週1時間の進路研究実施(必修) 生活指導
C高校 選択科目のなかに適正把握に向けてのガ
Cダンス科目を設定 未決定者
D高校 1年時からの進路指導の実施。専門学校
フ模擬授業や外部での体験学習の実施 未決定者
E高校 クラス担任や教科担任による1年時から フ個別相談や情報提供
@ 一一一一
教師の対 ェある
黶D一一一
果
未決定者は横ばい 教師の対応により差
しかし、各校ともとりくみの効果については一一一部の生徒に対する限 定的なものであったり、そのときだけの興味の喚起にとどまるもので あったりと述べており、早期からの進路指導が必ずしも有効でないこ
とを示している。このことは、そもそも将来のことをあまり考えない
「現状埋没型」に生徒が至る原因の解消の必要性を示唆している。た とえばB高校では次のような困難さが指摘されている,、
r1年で、こIZ 3っど総●的学習にもまた来年力・ら坂ク九ノ↓る、㌧目フんでナ け、ど、進路研究って授業をやっτるんでナよ、1年生で。例え〆王、求メ、禦の 読み方なん、かも勉強するし、あど」宏輩xτ話Lたりとかノ2、そラいフのもい
ろいろ遊ヲ1時肩ヲでナ〆プ8“ 6やっτ《う、んでナ丈ね,企業見学、インターンンッ フまでちkっど雇7きません〆プど、本当に∠∫場.屠学みたいな’こ(とも乙τるんで ナけど2.2 ,.動縫付けを乙てるんでナ〆プど、力か安か たから、就職ヂが五が
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つノをとc、うことぎ)/ζ’1、乙ノン∠ヲ高〆ぐ2
動機付けに向けて1年時からやれることは何でもやろうという様々 なとりくみがなされており、見学や実習などでは日頃、学習に目を向 けない生徒でも積極的に取り組む姿がみられるが、その場だけの楽し さや興味で終わってしまい、それが必ずしも本人の進路意識の向ヒに 転化されることはないというのである。就職活動の方法についての学 習や就業体験といったものは、将来は進路先として就職したいという 動機がすでにある場合に有効なのだろうが、もともと「現状埋没型」
の傾向が強い高校生にとっては、普段のつまらない授業よりはましな 暇つぶしの時間のように思えるのではないだろうか,,
一方、努力して学習するという「メリトクラシーに対する親和性」
についても、調査校のすべてにおいて努力しない生徒、あきらめきっ てしまっている生徒が多いことが指摘され、例えばそのことを「ここ に来る生徒たちは、自分たちはばかだと思っている。それを大きな声 で人に話をして、『分からない』と。逆に、それで多分、身を守ってい るんですけれども、彼らは。ですから、常に『おまえたちはできない』
とか、『そんなことも分からないのか』とかと言われ続けてきて、もう それで固まっている生徒」(D高校)と表現している。ここにもメリト クラシーから離脱する要因が存在するので、現状に埋没し、そこにか らめとられている生徒の姿をみることができる、、
それでは、進路担当者は進路多様校において生徒が「現状埋没型」
を維持し「メリトクラシーに対する親和性」を拒否する要因として何 を捉えているのであろうか,インタビューからは、保護者の教育に対 する意識と経済状況を最も大きな要因として指摘している。
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アとにかく卒業さ廿ぐれれば1、いと.目っているの.かな、一・・…亮ナ斑といった力 らば、子どものことどころじやないの.かなって、親のμうも〃グ、か4i済が菩ナー 杯で、子どもぱもちろん。だから、煤護者だから養つているのかちkつ己ぞ
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このような子どものことどころではなかったりどうしていいか困惑 したりする保護者の状況に対して、ユ年時からの保護者対象の進路説 明会の開催や奨学金制度の紹介などを対策として実施している、、しか
し、進路説明会の参加者は少数にとどまり、しかも参加した保護者は 進路意識の高い保護者であったり、奨学金については融資基準自体に 達しなかったり授業料減免の書類自体提出できなかったりする状況が あるというのである、保護者の子どもの進路に対する関心の低さと経
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