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6. 液状化を含む軟弱地盤が木造建物に与える影響

6.2 液状化を含む軟弱地盤が建物応答に大きな影響を与えるメカニズムの考察

6.2.1 軟弱地盤

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図6-5 ベースシア係数Cy=0.6,最大塑性率μ

つぎに,図 6-5からベースシア係数Cy0=0.6の建物モデルについて,サイト2 におけ る各最大塑性率は,他のサイトにおける各最大塑性率よりも,大きな値であることが確認 できる.これは,先述したように3章の検討からサイト2は,両全応力解析結果ともに短 周期側で,加速度を大きく増幅したことに起因するものと考えられる.

つぎに,サイト 4,5,6の各最大塑性率に着目すると,サイト5において等価有効応力 解析波形を入力した場合で最大塑性率が最も大きな値となり,このことから,液状化が必 ずしも変形を抑止するとは言えず,ベースシア係数Cy0が0.6程度の建物についても,液 状化を建物の応答低減要因とすることは,危険であると考えられる.

6.2液状化を含む軟弱地盤が建物応答に大きな影響を与えるメカニズムの考察

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図6-6 減衰の与え方の違いによる最大塑性率μ(全応力非線形解析波形入力)

図6-6から,減衰を初期剛性比例型で与えたケースは,最大塑性率μが小さい値であるこ とが確認できる.瞬間剛性比例型は,剛性マトリクス[K]を各ステップにおいて評価し直す 方法であるため,剛性が低下すると減衰を小さく評価する.このことから,必ずではない が,初期剛性比例型と比較して応答は大きくなる場合が多いと考えられる.しかし,図6-6 から分かるようにCy0=0.4 の建物モデルの最大塑性率に着目すると,そうでない場合が あることが分かる.初期剛性比例型減衰を与え解析した場合に,耐力を失った原因につい て,同じ建物モデルに瞬間剛性比例型減衰を与えた解析結果の考察を行い,これを参考に する.

図6-7(a)(b)(c)に瞬間剛性比例減衰を与えた解析結果における,建物モデル1階の時刻歴

相対変位,加速度波形および地表面加速度波形を示す.図 6-7(c)から地表面最大加速度は,

時刻42.65sで最大値を示し,この近傍の卓越した加速度によって,建物モデルは塑性域に

入っていることが,図6-7(a)から確認できる.その後,地盤の非線形化に伴い長周期側で増 幅した加速度は,塑性域に入り長周期化した建物に対して,更に大きな影響を与える.こ のことは,図6-7(b)(c)の地表最大加速度発生時刻42.65sから,建物1階最大加速度発生時

刻52.58sまでの約10s間の両加速度波形図の比較からも確認できる.つまり,建物が塑性

域に入ると1階応答加速度が急激に増幅し始めていることが分かる.

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図6-7 時刻歴の地表面加速度波形,建物モデル1階加速度波形および最大相対変位

図6-8 建物モデル(1F)のせん断力-変位関係の履歴ループ

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ここで,建物の固有周期と変動と地盤の固有周期の関係について考察を行う.建物の固 有周期Tは,質量m及び剛性kにより次式により表わされる.

k m

T  2 

(6.12)

式の剛性Kは,図6-8から分かるように,地震力が加わることによって,時々刻々変化し,

塑性域において固有周期は,長周期化することが分かる.本検討に用いたソフトの制約上,

時刻歴で変化する瞬間剛性を,剛性マトリクス

  K

に与えて固有値解析を行うことができな い.そこで,簡卖のため除荷時剛性やスリップ剛性等については考慮せず,図 6-1 の第 1 折れ点,及び第2折れ点以降の剛性をそれぞれK1,K2とし,それぞれ1,2階について求 め,この剛性を用いて固有値解析を行った.また,塑性域において 2 次モード的な挙動に よる影響も無視できないと考え,2次固有周期についても求め,これらを表6-2に示す.た だし,非減衰自由振動の方程式における固有値解析である.ここで,1自由度系1質点の減 衰自由振動をする建物モデル考える.ただし,減衰力,復元力について一定の場合を仮定 し,次式(6.13)に示す.

 0

c x kx x

m   

(6.13)

ここに,第1項

mx

は慣性力,第2項

c x

は減衰力,第3項

kx

は復元力である.式(6.13)を 質量

m

で除して整理する.

x2h

x

2x0 (6.14) ここに,

m

m

h c

2 1

2 

m

k

h

は減衰定数であり,

は減衰のない系の固有円振動数である.(6.14)式の変位変数

x

は,

時間tの関数x(t)であり,この変位関数

x

e

関数を用いて解く.

xGest (6.15)

誘導過程における途中式ついて割愛するが,(6.15)式を用いて2つの特殊解を求め,重ね合 わせの原理によって,2つの特殊解を重ね合わせると(6.14)式の一般解が得られる.更に三 角関数を用いて表わすと次式を得る.

xCehtcos

dt

(6.16)

ここに,C

は積分定数であり,これも同じ条件から定まる.

( b

0

a

0

h )

2

a

02

C

d

 

 

(6.17)

a

d

h a b

 

0 0

tan

0

(6.18)

54 (6.16)式により,変位

x

・振幅:Ceht (6.19)

・減衰固有円振動数:

d  1h2

(6.20)

・減衰固有周期:Td 2

 

d 2

1h2

(6.21)

の周期関数となる.ここで,建物モデルに用いた初期剛性比例型減衰について次式に示す.

    C a K

(6.22)

ここに,

1

2

1

ah

(6.23)

(6.22)式の剛性マトリクス

  K

の変更は行わず,初期における剛性であり,減衰項

  C

を一

定としている.これらの関係から,(6.20)式における減衰定数

h

を初期の1次固有円振動数

1に与えた値とし,減衰のない固有円振動数

について,先述した塑性域における剛性

  K

を用いて,塑性域における減衰固有円振動数

dを求め,さらに

dを用いて減衰固有周期Td を求める.ここで,本検討において(6.20)式に減衰定数

h

=0.03 を与えるため, 1h2≒1 となり減衰固有周期Tdと減衰のない固有周期T の値に大きな差異はないが,減衰固有周期

Tdの値を表6-2に示す.また,入力(工学的基盤)と地表面の加速度フーリエ振幅スペクトル 比を両対数軸表示とし,増幅率による地盤の周期特性を示し,表6-2の弾塑性時固有周期を 図6-9に対応させる.

表6-2 建物モデルの各剛性における1次,2次減衰固有周期

図6-9 地盤の入力と地表のフーリエ振幅スペクトル比による増幅率および

建物モデルの各剛性における1次,2次減衰固有周期

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図6-9から,剛性K1,K2を用いた場合における2次固有周期近傍で増幅率が卓越してい る.そして,地盤の弾性時1次固有周期について3.1.3で示してあるが,剛性K2の2次固 有周期は,地盤の弾性時 1 次固有周期近傍である.ただし,これにより共振が起こるかに ついては分からない.次に,建物塑性域における剛性K2の1次・2次固有周期の間で,地 表加速度が増幅していることが分かる.このことから,建物が塑性域に入り長周期化する と,建物の応答加速度が増幅し,損傷度が大きくなる可能性があると考えられる.

ここで,1自由度系1質点モデルの減衰強制振動で,地盤からの絶対変位による質点の運 動方程式を考える.絶対変位を次式のように仮定する.

mXcX kXcxGkxG (6.24) ここに,

X :質点の地盤基準点からの水平方向の絶対変位 xG:地動による地盤支持点の水平方向の変位

x

:質点の水平方向の相対変位

復元力

kX

について,層せん断力Qと慣性力

m

の関係を使い

は次式のように表わせる.

) (x x k

kX m

Q

  G (6.25)

x x x x x

m x X k m k

G G

G     

 ( )

2( )

(6.27)

本検討では,多自由度系運動方程式を直接積分法で解くため,復元力[K]{δ}項は,剛性マ トリクス[K]について1,2階および変位ベクトル{δ}について地動,1,2階の変位要素等が複 雑に関係する.ここでは,簡卖のため質点1(1F)における層せん断力‐変位関係のみによる 加速度αを仮定する.ベースシア係数Cy,層せん断力Qy,重量Wの関係により(6.28)式 を介して,層間変形角1/Rに対応する1階の加速度α(k-δ関係のみによる)を求め,表6-3 に示す.ここで,重力加速度gを980cm/s2として,第2折れ点以降の加速度αとする.

g mg m W

Cy Qy

(6.28)

表6-3 建物モデル1階(Cy0=0.4)のK‐δ関係による各層間変形角に対応する加速度α

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図6-10 地表加速度応答スペクトル(5%)および層間変形角に対応する加速度α

図6-10に,地表加速度応答スペクトル(5%)を示し,さらに,層間変形角に対応する表6-3 の加速度αを示す.ここで,簡卖のため1階の最大層間変形角1/120について,1,2階と もに⊿δ前の極限に対応する剛性K1を用いた固有周期とし,また,最大層間変形角1/5に ついて,剛性K2を用いた固有周期を,それぞれ加速度αに対応させ,その間の周期につい て線形補完とし,それぞれの加速度αに対応させている.図6-10から,仮に示した建物の 固有周期が変動していく過程の長周期間で,地表の加速度波形は加速度成分を多く含んで いることが確認できる.このことからも,地盤の非線形化に伴う長周期化に,建物の塑性 化に伴う長周期化が追随すると,建物モデルの応答加速度・変位が大きくなると考えられ る.このことは,先で示した解析結果にも表れており,地盤の非線形化に伴い長周期化し た地盤固有周期と,建物の塑性化に伴い長周期化した建物固有周期が近い場合に,定性的 に建物応答は大きくなると言える.なお,図6-10に示したラインは,耐力の高い建物であ れば左上に移行し,耐力の低い建物であれば,右下に移行することを参考までに確認して いる.

これまでの考察を参考に,初期剛性比例型減衰を与えた解析ケースで,建物モデルが,

耐力を失った原因について考察を行う.建物モデル1階において,時刻43.06sで最大相対

変位が1007cmを超え,耐力を失う計算結果となったが,この時刻は,図6-7(c)の地表最大

加速度発生時刻42.65sの0.59s後であり,地表最大加速度をもつ波やその時刻近傍の卓越 した加速度をもつ周期と,この時刻近傍における建物の固有周期が近くなり,共振的挙動 を示した可能性も考えられる.ここで,地表面最大加速度近傍の波形を図6-11に示すよう に波形を抽出して,それぞれの波についてフーリエ変換 25)を行う.その周期と表 6-2に示 すように仮定した建物モデルの塑性域固有周期を比較する.ただし,ここで問題とする周 期について建物モデルの仮定した塑性域固有周期近傍に着目するために,高振動数領域に ついては無視し,平滑化は行わない.図6-12に各波形のフーリエ振幅スペクトルを示す.