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:資本主義確立期におけるヨーマンの位置づけとプロテスタンティズム 1.ヨーマンの位置づけ

第4章 「定常状態」への移行に際してエネルギーおよび食料の果たす役割

第3節 :資本主義確立期におけるヨーマンの位置づけとプロテスタンティズム 1.ヨーマンの位置づけ

ヴェーバーが「資本主義の精神」の主たる担い手とした中小市民層は、産業的中産階級

213)マックス・ヴェーバー『前掲書』P115

214)浜林正夫『イギリス市民革命史』未來社、1959年、P119

215)小林良彰『前掲書』P208 216)小林良彰『同上書』PP243-244 217)小林良彰『同上書』P244

218)秦玄龍『イギリス・ヨーマンの研究』未來社、1955年、P147

219)秦玄龍『同上書』P153

とも表現されているが 213)、そうであるならば市民革命や産業革命期において、彼らが営 利を求めて行動し、それが資本主義の初期形成と結びついていると必然的に考えられる。

したがって、ヴェーバーの指摘する中小産業資本家が市民革命と産業革命期においてどう いった階層であったのかが重要である。

まず市民革命においてであるが、これは先に概観したように国王派とブルジョアを主と する議会派との対立である。では、まずはそれぞれがどういった階層から構成されいるの かが問われるところである。浜林氏によれば国王派は貴族やジェントリの大部分とその家 臣・召使いたちであり、議会派は貴族やジェントリの一部とヨーマン、商工業者などが指 摘されている 214)。小林氏は議会派は大商人や金融業者、中小産業資本家の大部分が属し ていたとしている215)

産業革命が起こり資本主義が確立すると、それまでの商業資本家に替わり近代的産業資 本家が社会の中心的役割を担うようになると同時に、大量の賃金労働者が形成される。さ て、資本主義の確立期における資本家と賃金労働者が、どの階層から出てきたのかが問わ れなければならない。ブレンターノら社会経済史学派によれば、中世末期の商業資本家が 自分の貯蓄した資本を産業に投じ、産業資本家へと転身したとする見解を示す一方で、イ ギリス産業革命の推進者はあらゆる階層から出ているが特にヨーマンが多いとするマント ウの説をもとに、中産的生産者層が推進者であったと規定したのが大塚史学である 216)。 イギリスにおいては中産的生産者から大工業家へ上昇する可能性が多く指摘され、後発国 ではイギリスに追いつくために最初から多くの資本を必要とするために商業資本家からの 転身が目立つことが指摘されている217)

イギリスにおいてヨーマンが重要な役割を担っているとされるが、このヨーマンに関し てはその規定も含めてあいまいな部分が多い。独立自営農民とはいいつつ、具体的にどう いった人々を指すのだろうか。秦玄龍氏は、ヨーマンの概念規定や没落の詳細を記してい る。ここでは、資本主義の確立期におけるヨーマンの位置づけを行いたい。なぜならその 数と影響力を無視できないからである。

秦氏によればヨーマンとは 15 世紀ごろから、農村のにおける一定の社会的序列および 身分を示す言葉として使用され 218)、①農奴制下の自由農民または農奴の出身、②領主の 支配のおよばない土地を分有するかマナーの本領地を分割所有するにいたったフリーホー ルダー、③農業経営のかたわら羊を飼い羊毛をうっている独立にして自由な農民であり、

「年に 40 ポンドの収入をあげる自分の土地で生活している農民」が古典的ヨーマンだと している 219)。コヴァレフスキーは、牧羊業か羊毛に従事しながら小規模な農業経営を営

220)コヴァレフスキーは「すなわちヨーマンとは牧羊業か羊毛の取引に従事しているが、しかし彼らの農業経営の規 模はきわめて小規模であり、したがってまた彼らは農業賃労働にも従事している借地人であった」と述べている。

(秦玄龍『同上書』P149)

221)「一方ではその厳密な意味での性格-自らの土地を自家労働によって耕作し、年収 40 シリングをあげる自由に

して独立なフリーホールダー-を脱して資本家的性格を帯びるにいたる。他方では、本来的なヨーマンの中から隣人 に土地を売り、次第にその生産手段から切り離されてプロレタリア化してゆく一群の人々を分出する。これらの人び とが農村工業の賃労働者と化し、あるいは都市へ流出していった。」(秦玄龍『同上書』P202)

222)秦玄龍『同上書』P206 223)秦玄龍『同上書』P154 224)秦玄龍『同上書』PP206-207 225)秦玄龍『同上書』P160

226)アーノルド・トインビー『前掲書』P53

む借地人であり 16世紀には家畜・土地購買者へと転身するとしている 220)。このように本 来的にはヨーマンとは小規模経営の独立した農民ということができる。16 世紀に入ると ヨーマンの中から富裕化するものが見られるようになるが、それはすなわちマニュファク チュアに代表されるように資本家的性格を帯びるものであり、その一方でプロレタリア化 していくヨーマン達もいた 221)。つまりヨーマンの中で階層分解が起こっていることを指 摘している。

最終的にヨーマンという階層は資本主義の確立とともに消滅していく。それはヨーマン がその内部において、資本家化とプロレタリア化の両極を内包すること、さらには 18 世 紀における囲込みが決定的である。18 世紀における囲込みは「共同地の収奪を強行し、

ヨーマンから最後的にその生存の拠点を奪い去ってしまったことは、ヨーマンに打撃を与 えたのであるが、しかしそのことは同時に、マニュファクチュアから工場制工業への展開 に必要な労働力の創出に欠くことのできない前提条件であった」222)のである。そしてここ で述べられるヨーマンとは本来的意味、すなわち小規模経営のヨーマンである。上昇局面 にある、資本家化していくヨーマンに対する解釈は、「拡大解釈としてのヨーマン」223)な のである。そして拡大解釈としてのヨーマンは「資本制工業の中に組み込まれ、そして資 本主義の一つのファクターとして機能し・・・工業資本の一分肢として活躍」224)していたの であり、資本家的ヨーマンと理解すべきである。

さて、当時ヨーマン(古典的・資本家的)がイギリスにどれほど存在していたのかであ るが、マコーリーは「当時 16 万人を下らざる土地所有者がおり、彼らはその家族まで合 わせると全人口の7分の1以上に達していたにちがいない」225)としている。さらにグレゴ リー・キングは 17 世紀イギリスの社会階級と所得の推計を示している。トインビーはこ の推計をもとに「18 万人の自由土地保有者があった」226)としている。トインビーが示し たこの数字には、資本家的ヨーマンも含めてのことであると思われる。キングの推計には 直接にヨーマンという言葉は出てこない。キングが分類した農民層の内訳は富裕耕作民、

中層自営農民、小作人、耕作労働者と日雇い、貧農と土地なし農民である。この中で富裕 耕作民と中層自営農民を合わせた数が 18 万である。富裕耕作民とはまさしく資本家的ヨ ーマンの性格を帯びる階級といえるだろう。なぜならヨーマンを規定する年収 40 ポンド の約2倍の所得があることから、資本の蓄積と労働者の雇用が可能と考えられるからであ

る。この階級が40,000戸である。また、17世紀はヨーマンの過度期であり中層自営農民、

つまり古典的ヨーマンが 140,000 戸であるが、彼らは資本家化とプロレタリア化していく 階級である。キングの推計をもとにすれば、この 180,000 戸はイギリス全体の約 13 %に あたる。土地なし農民まで含めた農民層全体がイギリス人口に占める割合は約 80 %であ るから、当時のイギリスにおいて大多数が農民であり、そういった中で 13 %という数字 は大きな割合を占め

るといえる。

ヨーマンの資本家化とプロレタリア化という両極への分解は、それ自体がヨーマンの消 滅を意味するものであり、その消滅時期はマルクスに代表される 18 世紀半ばまでとする 説、トインビーに代表される18世紀後半ないし19世紀初頭説がある。両者の違いは、資 本家的ヨーマンの理解に対するものであるが、ここでは立ち入らない。重要なことは、ヨ ーマンという小規模経営であった農業者の中から、その範疇を脱し資本家への道をたどる 者が多くおり、他方では賃金労働者へと転身していったことである。彼らは封建制から資 本主義の確立に向けて動いている時代に、人数的にも社会的意味においても、その原動力 のひとつとなった階層だったのである。

表1 17世紀イギリスの社会階級と所得収入

出所:ミシェル・ボー『資本主義の世界史15001995』筆宝康之・勝俣誠訳、藤原書店、1996年、P49より引用 家族数 家族の年収 この階層の総収入

(戸) (ポンド) (ポンド)

貴族 186 2,590 481,800

准男爵 800 880 704,000

騎士 600 650 390,000

平貴族 3,000 450 1,350,000

側近貴族 12,000 280 3,360,000

市町村長 5,000 240 1,200,000

国家の職員 5,000 120 600,000

海軍士官 5,000 80 400,000

陸軍士官 4,000 60 240,000

兵士 35,000 14 490,000

法学者・法律家 10,000 140 1,400,000

科学者と自由業 16,000 60 960,000

上級僧侶 2,000 60 120,000

下級僧侶 8,000 45 360,000

海運・貿易商 2,000 400 800,000

陸運・大商人 8,000 200 1,600,000 中間商人・小売商人 40,000 45 1,800,000 富裕耕作農民 40,000 84 3,360,000 中層自営農民 140,000 50 7,000,000

小作人 150,000 44 6,600,000

耕作労働者と日雇 364,000 15 5,460,000 貧農と土地なし農民 400,000 6.10s 2,600,000

職人 60,000 40 2,400,000

水夫 50,000 20 1,000,000