第1節 概 説
人工貯水池は陸水形態から天然湖沼と妹妹関係にあるが,貯水池の性格ほ−・般に・変化に富み湖沼とは区別してこ取扱 う必要がある。とくに∵その水理,水質特性を把握するためにほ,在来の湖沼学(18219=96〉が数えるところでは不充分 であり,流入水の影響やこれに関連した密度流に・関する詳細な研究が必要となってくる。
すなわち,−・般に貯水容長の大きな湖沼では,流入河川の影響はごく−・部分に限られて降雨に.よる出水の影響を強
く受けないが,貯水容品のあまり大きくない人工貯水池でほ,その影響を強く受けることになり,河川はもとより湖 沼などとは異なった水理水賀特性を示すことになる。たとえば混濁水輸送の場合を考えると,「河川においては流れ が浮遊沈殿物を・運ぶが,貯水池においては逆に浮遊沈殿物に・よって動く」というKNAPP,BELL(197)の表現のごとく,
河川における乱流交換の代りに貯水池内の流動は,専ら密度勾配によ、つて定まり,密度流の果す役割が重要に.なって
くる。この点から著者は,かんがい用貯水池(神内上池および内場池)を対象に,沈殿滞償機構に盈要な関連をもつ 水理学特性とくに密度流問題をとりあげて検討した。なお,これら貯水池に・おける密度流問題が論議されるようにな
ったのは最近のことであり,わが国ではまだ未開拓な面が多多あると考えられるが,最近上水源貯水池を対象にして 考究された合田の論文〈26)には,この点有意義な解析がなされており,著者の研究に負うところ大なることを付記し たい。
第2節 貯水池における密度流の問題(198・199r200)
一・般に密度流density curTentとは,流体実質の密度差によって起こる流動を意味し,ある流体(液体,気体を 含む)内において低層流,上層流または内部流(中層流)として流れる蛮力洗gr・aVity flowと解されているが,
地質学老や海洋学者は,この密度流のうちで括澄な水の底部にそったsedimentを含んだ流れをとくにturbidity current とも呼んでいる。
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これらdensity currentの問題が,河口部(感潮河川)における河海水混合による水理特性,あるいは貯水池に おける流動を考究するにあたって,上水やかんがい水温,水質,河水の汚染,沈殿滞積現象などの技術的問題と関連 して,熱心に論議されるようになったのはごく叔近のことである。
さて,河口部でみ.られる密度流でほ,主として溶解物質(塩分)盈の差に・もとづき河水と海水の密度差が明瞭で・・−・・・
般に.塩水楔が形成されるが,貯水池(またほ湖沼)でみられる密度流でほ,主として水塊の温度差,浮遊物蕾または 溶解物質盈の差が主体となることもあり,一般に密度差が不安定とされている。すなわち,湖沼において春秋2期に おこる循環流は大気のdensity cur・rentに煩似しており,一頗匿上下密度差の小さい湖沼において,その表層水温 の上下によって起こる−・種の密度流であるが,人工貯水池の河川流入点付近においてほ,感潮河川の河口で起こる顔 著な密度流と類似した流動状態を示すことがある。たとえば,河川からの流入水と池水との間に顕著な湿度差または 浮遊物賀ならびに溶解物質濃度差があると,流入時にある程度の交換混合作用があっても,その影響は全体におよぷ に至らず,貯水池内における流動は専ら密度勾配によって定まり,いわゆるstratified董lowやdensity underflow が発達することになる。この際,流入した高濁高速水が潜行混濁密度流の形で大して稀釈されず,しかも浮遊物賀の 沈殿効果も充分でないまま下流側damから放出されることもあるわけで,U..SいA.のLake Meadし34201183)や,わ が国でも千苅貯水池(26202)に関する実測例が報告されている。
以下貯水池における密度流に.関する滋近の研究からその概要を把握してみよう。まず密度流の定義笹ついてほ,
U SA.のNBSは「density current とほ境界面での乱流交換によってその個性を失うことなく,流体の上下ま たは中層を通りぬけ,媒介流体とほ異なるような流体の流動をいい,その密度差ほ混度,塩分含晶およびsilt含量 の差にもとづく」と定義している(203)。またBELL(204)ほ「密度の最も大きな部分が底部に沈み,そこに傾斜がある となんらかの外力に.よってその流動が阻止されるまで運動を続け,僅かな密度差でも,このような流動を起すから,
かかる流動を密度流と呼ぶ」と説明しており,その他同様な説明にBROWN(205)のものもある。
貯水池の密度流の成因についてみると,水理学の分野から,流体自体の物性の差(圧力差,温度差)によるところ の定期的なものと,流体中に溶解物質や浮遊物繋が存在するために生ずるみかけ上の密度による不定期的なものが考 えられている。前者は,冷水流入の温度差にもとづいた潜行密度流となる場合が多く,その著例としてTennessee riverのWatt Bar damやFt…Loudoun r・eSerVOir・(206)における結果,Kingston河水討画(207)の例などが報 告されている。後者の場合,貯水池内の貯留水が清澄で,流入水が強雨後のsiltやcolloid状の混濁水か汚染水で あると,Figい3−5に示すように混濁貿濃度にもとづいた密度差によって,重力の作用で池床にそった庶層流として
流下し,蔵下部dam付近に沈殿滞積していわゆるden声itycurrentb占 d$を形成するに至る。このような貯水池
縦断面内の大循環の存在を始めて説明したのはKNAPP and BⅢ・L(197)であるが,この際清澄池水との接触点付近に おこる混合によっても混濁流入水との密度差は消失しないから,接触点付近に生ずる潜行流のため清澄水の1部がこ の混濁密度流に随伴することになり,そのため地面近くに上流方向の逆向流を生じて,その混濁流入水との接触部分 にFig.3−6 のように流動の停滞した境界帯demarcationlineを生じfloating debrisが集積するに至る。こ のような縦断面内における大型の密度流ほ,従来の湖沼学で説明されている鉛直面内循環況や吹送流の場合における 逆向流などとは区別されるべきものであり,わが国でも合田(26)が千苅貯水池で始めてこの種の逆向流とdemarcat・P ionlineの存在を確認しており,この種混濁密度流の沿革過程についてほ,BELL(14O)が詳細に説明している。
さて−密度流の流速をみると,・一般に流入河川のそれより緩慢とされており,HowARD(203)によるLake Meadの 浮遊物漉皮差にもとづく密度流観測結果によると,浮遊物貿のうち粗粒部分ほ流入後すぐ沈殿滞積するが,すくト沈殿
しない微細粒子が混濁密度流を起こす主因をなし,その際の速度は案外早く,5.8〜13。1cm/secに達し,その混濁 流部分の濁水分析によると流入混濁水によく似た粗成であることを認めている。またFRY,CHURCHILL and FLD・
ER(208)などほNorris damのback waterであるCherokee湖において塩素イオン投入に.よるトレ−・サ−・実 をなし,1943年秋の実測で最大の rate of travel が55cm/sec,平均4。5cm/secで,また1944年変の実測でほ さらに.早く7〜19cm/secに達したという。また合田は(26),千苅貯水池で浮子,Salt methodなどを用いて実測を なし池水の韓動速度は季節場所により相互変動するが,洪水時の瑛流三石二異常増大吋を除くと,底周密庶流やそれに伴
なう表層の逆向流がとくに早く,凪がなくても部分的に10m/minのorderに達したという。
混濁密度流の相生として,同一性を保持する能力,すなわち密度油の安定度があげられるが,これには密度流境界 面やその上層における安定度と密度流体の安定度があげられる。前者についてはKEULEGAN,IpPEN,HARLEMAN,
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LONG(209),椎貝(210)その他により考察されているが,後老の面についてほ今日なおREYNOLD′s number Re=
100,000以上の場合における底層流でほ,その流れがいかなる理由で上層部と混合しなくてより安定であるかについ ての充分な解決がなされておらない感がする。すなわち流体の中流層から庶流層にそって流入する,乱れを防くヾよう
なあるmecbanismが存在しなくてほならないわけである。
たとえば,密度流の流動法則に閲してほKuENEN(211)ほ濃度の高い密度流試験で,流速と濃度差数の平方根が正 比例すること,CHEZY係数が濃度忙伴なって変化することを立証し,RAYⅣAUD(21ク)は濁水密度流の層流と乱流領域 内における抵抗力係数とREYNOLDS numberの関係,GAZA,BALTA,BoG王CI王(213)ほ油類と水を用いた闇流および 乱流領域における試験で,開水路水流の運動法則と炉似すること,北京水利科学研究院(214)では塩水や泥水を用いた 密度流境界面抵抗力試験や密度流の孔口流出試験,さらに官庁貯水池における実測dataを通じてこ密度流による sediment放出問題に関する興味ある指針を与えている。
混濁密度流ほ,貯水池流入水の濃度が大なる流れにおいて存在するもので,この点EINSrEIN(215)ほ浮遊沈殿物濃 度が大きく,とくにsedimentがflocculateしているときその底層流は粘性でなく塑性状態を示すことを指摘し,
その流れの塑性はREYNOLD,s number・が大で庶流が混合しない場合ほど顕著であ,るといいSzIERMAN(109)による とLake Meadにおける浮遊沈殿物機構の叔近の解析では,地底付近で浮遊しているsedimer)tほ単粒子でなく flocculate stateで流下することを確認している。また椿(216)は,浮流砂を含む流れではK五RM還N常数Kが真水
より減少することを・認め,久宝(217)ほ純水流では乱れの粘性係数が不同に分布され易いが混濁水流でほ・−・・・‖様に分布レ て流れが整流となる傾向をおびることを指摘している。
以上のごとき密度成層ある場合の実験を行うにあたって,上下密度差を決定するための相似法則について0′B沌N
(218)などは,模型と実物との間にエm/d仇255飢==ヱp/♂p265pO5=gなる模型指標を共通に保つべきことを半実験 的に見出している。この際エは水路長,dほ水路深さ,5は上下密度差で添字研,♪ほそれぞれ模型,原型を示 す。松原(g19)は密度成層の存在する貯水池からの取水に関する実験で,この0′BRIENの相似則を適用実験し,
KE批EGANの無次元盈㊥≡(か2g−仝り‡ルを用いて解析している。
Pl
実際面において,GROVERやHOWARD(34)がLake MeadにおけるHoover dam の随追出口から放出される 混濁水に関する報告以来,貯水池の滞砂率を軽減する一・方法としてdensity underflowを利用する効果が注目さ れるようになった。たとえばDUQUENNOIS(220)ほIril−Emda damにおけるdensity currentを利用,沈殿物漢深 効果について1953年〜1954年間1.3回排砂で約1,000,000tonの沈泥を除去した報告をたし,RAUD(221)ほおなじく Iril−Emdadamで4年間に貯水池全流入siltの約与を放出できたという0中国においてもこの種siltpr・Oblems が重要視されており,候輝昌(222)などは官庁damに関する異重流(density curTent)の定性的研究を・され,また 黄河の山門峡dam計画(223)でほdensity underflowにより流入土砂の20%を放出する対策が検討されている。
以上のごとく,混濁密度流を利用した沈殿闇止率を軽減する方法を技術的に採用する場合には,洪水時のdensity underflowにより混濁肇が運ばれdam付近に達する時刻の予知や,混濁繋がdamに達した際の直接放出方法が
問題となってくる。これらについてほ,流鼻Qや孔口下線と密度流境界面間の距離ゐg,または密度流の密度P′が一・
定なる場合に,同−L高さにおいて,より多数の小型gate配置方法を採用する力が,小数の大型gate配置方法を採 用するより,より多鼠の泥砂を排出できることなとの技術的な面について興味ある報告もなされている(…)。
他方,貯水池における沈殿瀾魔物の分析結果をみると,たとえば1.ake Mead底空i全般についての単位重盗は 1.04t/m8を示し,沈殿物4い5mなる中心部では単に0.32〜0‖64t/m$なる微細粒子からなっており,このような sedimentは.,孔隙率が大きく嘩位重量は小さいという(201)。また著名のかんがい用貯水池の滞砂分布調査やden・
Sity current bedsの分析結果などによると,浮流物矧I許やdam千」近の密度流屑ほ掃蘭物賢層に・比して,−・般に 微細なd机=0.004〜0、005mm程度のsiltやco1loid状の比壷の小さい暗苛色を呈した腐植含毘の多い,いわゆる 腐泥であり,しかもcol10id粒子がよく flocculate していることがわかった。この際,dam付近のdensity Current beds−ではきわめて小さく,神内上他の例でほ平均粒径がdm=0,00092mmなる分析結果もでており,中国 の官庁貯水池の(214)dam付近沈殿滞凝物の例では平均粒径がd仇=0.004mm程度を・示し,またU.SA..のLake Meadの例(201)でHoover dam付近や密度流中のsedimentの中央粒径は=わ0=0 001mm程度のきわめて微細
なものである。このように,貯水池滞砂の中で密度流で選ばれるものは,−・般に比重の小さい微細粒子であることが わかり,もし低層襟度流を利用して,すでに沈殿滞潰しているsedimentをも洗劇潤浮遊により放出するwatar
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