第 5 章 評価的表現との関係
5.2. 評価的表現
5.3.2. 評価的表現との共起関係の有無
本節では、ラレル形・ラ抜き形がそれぞれ評価的表現と共起しやすい場合はそれぞれ 文のどこにある場合なのか、ラレル形・ラ抜き形に後続する文法形式及び評価的表現を めぐる何らかの偏り、特徴がないか、調査する。これらの調査結果によって、ラレル形 とラ抜き形の使用傾向の差に両形式の構文中の位置や評価的表現との共起関係の有無 が関わっているか否かを検討する。
(ⅰ)インターネット上のクチコミデータ(データAとデータB)
まず、データ A に基づいて調査する。ラレル形とラ抜き形とでは、どちらが評価的 表現と共起しやすいのか、また、評価的表現と共起する関係が見られた場合は両形式が それぞれ文のどこに出現しているのか、を考察した。その結果を以下の表5-5に示す。
表5-5では、文中・文末において用いられているラレル形とラ抜き形の中で、評価的 表現との共起関係が見られた用例数、見られなかった用例数、及びそれぞれの出現比率 を示している。
表5-5 評価的表現との共起の有無(データA)
ラレル形66 ラ抜き形
文中 文末 合計 文中 文末 合計 合計
共 起 す る 例
148
(39.3)
4
(1.1)
152
(40.3)
92
(47.4)
7
(3.6)
99
(51.0)
251
(44.0)
共 起 し な い例
139
(36.9)
86
(22.8)
225
(59.7)
65
(33.5)
30
(15.5)
95
(49.0)
320
(56.0)
合計 287 90 377 157 37 194 571
評価的表現との共起関係が見られた用例は、いずれもそれぞれの文中用法に集中して
66 括弧の中の比率は当該項目の出現用例数がそれぞれのラレル形とラ抜き形の総用例数に 占める割合である。
145
いる。ラレル形においては、文中用法において評価的表現が伴う例が148例でラレル形 総用例数中 39.3%であり、評価的表現が伴わない例は 139 例でラレル形総用例数中
36.9%であるため、ラレル形は文中用法において、評価的表現が伴う例が伴わない例よ
り多いということが言える。ラ抜き形においても、文中用法において評価的表現が伴う 例は 92 例でラ抜き形総用例数中 47.4%で、伴わない例は 65 例でラ抜き形総用例数中
33.5%であるため、評価的表現が伴う例のほうが伴わない例より多い。
また、文中用法と文末用法を合計して評価的表現が伴う例の比率を比較すると、ラ抜 き形の評価的表現が伴う例は99例で、ラ抜き形総用例数中51.0%であり、5割以上であ る。ラレル形の評価的表現が伴う例は152例で、ラレル形総用例数中40.3%である。ラ 抜き形の評価的表現が伴う比率はラレル形よりも高い。評価的表現が伴うか否かをめぐ ってラレル形とラ抜き形の間には有意な差があるか否か、それを確認するために、カイ 二乗検定を行った。検定の結果を表5-6と表5-7に示す。
表5-6 評価的表現のカイ二乗検定(データA) Value df
Asymp. Sig.
(2-sided)
Exact Sig.
(2-sided)
Exact Sig.
(1-sided)
Pearson Chi-Square 5.967a 1 .015
Continuity Correctionb 5.540 1 .019
Likelihood Ratio 5.949 1 .015
Fisher's Exact Test .016 .009
Linear-by-Linear
Association 5.956 1 .015
N of Valid Casesb 571
a. 0 cells (.0%) have expected count less than 5. The minimum expected count is 85.28.
b. Computed only for a 2x2 table
146
表5-7 評価的表現* ラレル/ラ抜き Crosstabulation(データA) ラレル/ラ抜き
Total 1ラレル 2ラ抜き
伴う/伴わない 0 伴う
Count 152 99 251
% within 伴う,伴わない 60.6% 39.4% 100.0%
Adjusted Residual -2.4 2.4 1
伴わな い
Count 225 95 320
% within 伴う,伴わない 70.3% 29.7% 100.0%
Adjusted Residual 2.4 -2.4
Total Count 377 194 571
% within 伴う,伴わない 66.0% 34.0% 100.0%
表5-6の結果では、有意確率(Asymp. Sig. (2-sided))が0.015で、p<0.05なので、有 意な差が見られた[χ2=5.967, df =1, P<.05]。すなわち、評価的表現が伴うか否かをめ ぐってラレル形とラ抜き形の間に有意な差が認められる。表5-7の網掛のところに注目 すると、ラレル形の列にある網掛のセルはラレル形がラ抜き形より評価的表現が伴わな い例でより多く用いられるということを意味する。ラ抜き形の列にある網掛のセルは、
ラ抜き形がラレル形より評価的表現が伴う例の比率が高いということを意味する。
以上、データ A に限って言えば、ラレル形とラ抜き形はいずれも文中用法において 評価的表現が伴わない例より伴う例で多く用いられている。また、ラ抜き形のほうがラ レル形より評価的表現が伴う例の比率が高い傾向があると言える。
次にデータBに基づいて調査する。データBにおいても、ラレル形・ラ抜き形それ ぞれの評価的表現と共起する例と共起しない例を集計し、その結果を表5-8に示す。
147
表5-8 評価的表現を伴う例の有無(データB)
ラレル形67 ラ抜き形
文中 文末 合計 文中 文末 合計 合計
共起 する 例
401
(19.1)
113
(5.4)
514
(24.5)
479
(21.9)
120
(5.5)
599
(27.3)
1113
共起 しな い例
492
(23.4)
1096
(52.1)
1588
(75.6)
587
(26.8)
1005
(45.9)
1592
(72.7)
3180
合計 893 1209 2102 1066 1125 2191 4293
ラレル形とラ抜き形の評価的表現との共起関係が見られた用例はいずれもそれぞれ の文中用法に集中している。ラレル形においては、文中用法において評価的表現を伴う 例は401例でラレル形総用例数中19.1%である。それに対して、文末用法においては評 価的表現を伴う例は113 例でラレル形総用例数中 5.4%である。ラレル形は文末用法よ り文中用法において評価的表現を伴う例の出現率が高い。一方、ラ抜き形においては、
文中用法において評価的表現を伴う例は 479例で、ラ抜き形総用例数中 21.9%である。
それに対し、文末用法において評価的表現を伴う例は120例でラ抜き形総用例数中5.5%
である。ラ抜き形においても、文末用法より文中用法において評価的表現を伴う例の出 現率が高い。
また、文中用法と文末用法を合計してそれぞれの評価的表現を伴う例の比率を比較す ると、ラ抜き形の評価的表現を伴う例は 599例でラ抜き形総用例数中 27.3%であり、3 割近くを占めている。これに対し、ラレル形の評価的表現を伴う例は514例でラレル形 総用例数中24.5%である。従って、ラ抜き形の評価的表現を伴う比率はラレル形よりも 高い。また、文中用法においても、ラ抜き形の評価的表現を伴う例の比率(21.9%)は ラレル形の比率(19.1%)よりも高い。
次に評価的表現を伴うか否かをめぐってラレル形とラ抜き形の間には有意な差があ るか否か、それを確認するために、カイ二乗検定を行った。検定の結果を表5-9と表5-10 に示す。
67 括弧の中の比率は当該項目の出現用例数がそれぞれのラレル形とラ抜き形の総用例数に 占める割合である。
148
表5-9 評価的表現のカイ二乗検定(データB) Value df
Asymp. Sig.
(2-sided)
Exact Sig.
(2-sided)
Exact Sig.
(1-sided)
Pearson Chi-Square 4.653a 1 .031
Continuity Correctionb 4.504 1 .034
Likelihood Ratio 4.658 1 .031
Fisher's Exact Test .034 .017
Linear-by-Linear
Association 4.652 1 .031
N of Valid Casesb 4293
a. 0 cells (.0%) have expected count less than 5. The minimum expected count is 544.96.
b. Computed only for a 2x2 table
表5-10 評価的表現 * ラレル/ラ抜き Crosstabulation(データB) ラレル/ラ抜き
Total 1ラレル 2ラ抜き
伴う/伴わな い
0 伴わ ない
Count 1588 1592 3180
% within 伴う,伴わない 49.9% 50.1% 100.0%
Adjusted Residual 2.2 -2.2 1
伴う
Count 514 599 1113
% within 伴う,伴わない 46.2% 53.8% 100.0%
Adjusted Residual -2.2 2.2
Total Count 2102 2191 4293
% within 評価的表現新 49.0% 51.0% 100.0%
表5-9に見られるように、有意確率(Asymp. Sig. (2-sided))が0.031で、p<0.05なの で、有意差が見られた[χ2=4.653, df =1, p<.05]。すなわち、評価的表現を伴うか否か
149
をめぐってラレル形とラ抜き形の間には有意な差が見られたということになる。さらに、
表 5-10 の網掛のセルに注目すると、ラレル形の列にある網掛のセルはラレル形がラ抜 き形より評価的表現が伴わない例でより多く用いられるということを意味する。ラ抜き 形の列にある網掛のセルは、ラ抜き形がラレル形より評価的表現が伴う例でより多く用 いられるということを意味する。
以上、データ B でも、ラレル形とラ抜き形は文中用法で評価的表現を伴いやすい。
また、ラレル形よりラ抜き形のほうが評価的表現を伴いやすい。
(ⅱ)「Yahoo!知恵袋」
ラレル形・ラ抜き形それぞれが評価的表現を伴うか否かを調べるために、「Yahoo!知 恵袋」に基づいて、評価的表現と共起する例と共起しない例を集計し、その結果を表 5-11に示す。
クチコミデータと違って、ラレル形・ラ抜き形両形式とも文中・文末いずれにおいて も評価的表現を伴う例の方が少ない。評価的表現との共起関係が見られた用例はいずれ もそれぞれの文末用法より文中用法に集中している。ラレル形の文中用法において評価 的表現を伴う例は29例でラレル形総用例数中1.3%である。ラ抜き形の文中用法におい て評価的表現を伴う例は60例でラ抜き形総用例数中5.4%である。従って、ラレル形よ りラ抜き形のほうが文中用法における評価的表現を伴う例が多く現れている。
表5-11 評価的表現との共起の有無(「Yahoo!知恵袋」)
ラレル形68 ラ抜き形
文中 文末 合計 文中 文末 合計 合計
共起す る例
29
(1.3)
6
(0.3)
35
(1.6)
60
(5.4)
21
(1.9)
81
(7.3)
116
共起し ない例
2018
(91.0)
164
(7.4)
2182
(98.4)
516
(46.6)
511
(46.1)
1027
(92.7)
3209
合計 2047 170 2217 576 532 1108 3325
また、文中用法と文末用法を合計して評価的表現を伴う例の比率を比較すると、ラ抜 き形の評価的表現を伴う例は81例で、ラ抜き形総用例数中7.3%であり、ラレル形の評 価的表現を伴う例は35例で、ラレル形総用例数中1.6%である。したがって、ラ抜き形 の評価的表現を伴う比率はラレル形よりも高いと言える。
68 括弧の中の比率は当該項目の出現用例数がそれぞれのラレル形とラ抜き形の総用例数に 占める割合である。
150
評価的表現を伴うか否かをめぐってラレル形とラ抜き形の間には有意な差があるか 否か、確認するために、カイ二乗検定を行った。統計の結果を表5-12と表5-13に示す。
表5-12 評価的表現のカイ二乗検定(「Yahoo!知恵袋」)
Value df
Asymp. Sig.
(2-sided)
Exact Sig.
(2-sided)
Exact Sig.
(1-sided) Pearson Chi-Square 72.085a 1 .000
Continuity Correctionb 70.393 1 .000 Likelihood Ratio 66.870 1 .000
Fisher's Exact Test .000 .000
Linear-by-Linear
Association 72.063 1 .000
N of Valid Casesb 3325
a. 0 cells (.0%) have expected count less than 5. The minimum expected count is 38.66.
b. Computed only for a 2x2 table
表5-13 評価的表現 * ラレル/ラ抜き Crosstabulation(「Yahoo!知恵袋」)
ラレル/ラ抜き
Total 1ラレル 2ラ抜き
伴う/伴わない 1 伴う
Count 35 81 116
% within 伴う,伴わない 30.2% 69.8% 100.0%
Adjusted Residual -8.5 8.5 2
伴わな い
Count 2182 1027 3209
% within 伴う,伴わない 68.0% 32.0% 100.0%
Adjusted Residual 8.5 -8.5
Total Count 2217 1108 3325
% within 伴う,伴わない 66.7% 33.3% 100.0%