5.4 提案システムの評価
5.4.1 評価実験
被験者10名の中で随意性瞬目の持続時間の平均値が最大であった例を参考に,持 続時間の平均値(約1.36秒)とその標準偏差(約0.38秒)の2倍の和を求めて2.12 秒という値を得た.一般に,随意性瞬目の持続時間はこれよりも短くなると考え られるが,さらに少しの余裕をもたせ2.5秒を誤検出判定のしきい値に採用した.
図 5.7: 提案システムの画面例[43]
と,入力用のウインドウが表示される.この入力用のウインドウの大きさは水平 約21 ×垂直約10度であり,画面の中央に配置されている.ウインドウ内の領域 は上下に2等分されており,上側は文字を入力する領域,下側は入力すべき課題 文を表示する領域とした.被験者は初めに下段の左端に 開始 として表示され る指標を選択する.この選択により,かな入力モードに遷移して文字入力を開始 する.本実験の文字入力中には,上述の入力用ウインドウに課題の内容を提示し ておき,被験者は入力中にそれを参照することができる.このときの,入力およ びかな漢字変換操作の完了までに要した指標選択回数と所要時間を計測した.
実験課題には,「いろは歌」(かな表記48字,かな漢字表記39字)を採用した.
他の先行研究では,「こんにちは」など数文字程度の実用的な単語を入力課題とし て用いることが多い[2, 12, 20].これに比べて,「いろは歌」は,一定以上の長さを もち,出現文字の重複が少ないという特徴がある.漢字変換機能を評価するため,
旧かな遣いは現代かな遣いに直して入力し,各句の区切りごとにIMEの機能を用 いて漢字変換を行なう.この実験課題は,著者らの従来システムの評価に用いた もの[22]と同様である.
本実験で入力した内容を図5.8に示す.図5.8において,(a)はかな漢字表記で あり,(b)はかな表記である.被験者は,かな表記に示した読みを入力し,かな漢
字表記のように変換操作をする.このときに必要な最少の指標選択数は128回で ある.漢字変換においては,5.3.2項の図5.5に示した制御モードの各機能を用い て任意の候補が選択可能であるが,本実験の主目的はかな文字入力にあり,漢字 変換は実行できることが確認できれば十分である.それに加えて,被験者間の実 験条件を同一にする意図もあるため,あらかじめ漢字変換の辞書を学習させてお き,変換の第一候補に課題の結果が得られるように準備した.なお,本実験にお いては,被験者の拘束時間に配慮し,図5.8の課題を1行ずつ4つのセットに分割 して実施する.
色は匂えど 散りぬるを 我が世誰ぞ 常ならむ 有為の奥山 今日越えて 浅き夢見し 酔いもせず
いろはにおえど ちりぬるを わがよだれぞ つねならむ ういのおくやま きょうこえて あさきゆめみし よいもせず (a)かな漢字表記 (b) かな表記
図 5.8: 本実験に用いた入力課題[43]
入力を誤った場合には,次の二つの方法で訂正する.文字を入力する際に図5.4 の標準画面でグループ(行)の選択を誤った場合には,文字選択画面の右上にあ る指標の 戻る を選択してグループ選択の標準画面へ戻る.また,文字を入力 した後に誤りを認めた場合は,標準画面の右上にある指標の 制御 を選択し図 5.5の制御モードに推移した後に,下段の BS (BackSpace)を選択して誤って入 力した文字を消去する.その訂正の後に右上にある指標の 戻る を選択して制 御モードから標準画面に戻り,入力を続ける.この実験の詳細な結果を,5.4.2項 で述べる.
なお,本研究においては,実用的な日本語文字入力のシステムが利用可能である ことを確かめるため,漢字変換を含めた比較的複雑な入力課題を設定したが,よ り詳細な指標の判別率や瞬目による入力決定の成功率を確かめるためには,かな 文字のみを入力する単純な実験課題を設定するとよい.