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眼球開口部抽出のための画像処理

3.3 瞬目波形の計測

3.3.1 眼球開口部抽出のための画像処理

本項では,瞬目過程における眼球開口部の面積変化を計測するための画像処理 について,詳細を述べる.

先行研究において,自然光下で撮影した眼球近傍の画像から,眼球開口部の領 域を抽出する手法が提案されている[94, 95].著者らは,これらの手法を参考にし

て,画像中の眼球開口部の領域と皮膚の領域とを,YCbCr表色系の色情報を用い て識別する方法をすでに開発している[91, 96].具体的な手順は,まずRGB表色 系で記録された動画像を,各フィールドごとにYCbCr表色系に変換し,各画素の YCb およびCrの値を得る.そして,各画素の色差比Cr/Cbの値を求め,それ をパラメータとして2値化処理を行なう.RGB-YCbCr変換には,ITU-R1BT.601 で規定された変換式を採用している.本研究で採用したRGB-YCbCr変換の式を,

以下に示す.

Y = 0.257R+ 0.504G+ 0.098B+ 16 (3.1) Cb =0.148R−0.291G+ 0.439B+ 128 (3.2) Cr = 0.439R−0.368G−0.071B+ 128 (3.3) 式3.1,式3.2,式3.3において,RGBはそれぞれ赤,緑,青の輝度値を表 しており,YCbCrはそれぞれ輝度,色差B−Y,色差R−Y を表している.

ただし,それぞれの式における計算結果の小数点以下は切り捨てとした.

図 3.4: 眼球近傍画像の例

図3.4に示した1枚の眼球近傍画像の全体から計測した色差比Cr/Cbを,ヒスト グラムとして図3.5に示す.図3.5から明らかなように,眼球近傍画像の色差比ヒ

1ITU-R(国際電気通信連合 無線通信部門)

ITUInternational Telecommunication Union:国際電気通信連合)の無線通信部門(

Radiocom-munication Sector)の略称であり,無線通信に関する規格や標準の策定を行なう国際機関である.

ほかの部門として,電気通信部門(Telecommunication Standardization Sector)のITU-Tなどが

0 1000 2000 3000 4000 5000 6000 7000 8000

0.8 0.9 1.0 1.1 1.2 1.3 1.4

画素数[pixel]

色差比(Cr/Cb)

眼球 皮膚 

しきい値 

図 3.5: 色差比ヒストグラムの例

ストグラムは大小2つの山をもつ.一般に日本人(アジア人)の場合,肌の領域は 色差比が1よりも大きくなり,それ以外の眼球などの領域は1に近づく.図3.5の ヒストグラムでは,大きい山は色差比が1よりも大きい位置にピークがあり,こ れが皮膚の部分を表している.小さい山は色差比が1を含む範囲に位置しており,

皮膚以外の部分(眼球など)を表している.このような傾向から,2つの山の間に ある谷の位置をしきい値として2値化処理を行なうことで,眼球開口部の形状に 近い領域が抽出できる[96].図3.4の画像に対し,このカラー情報による2値化を 適用した結果を図3.6に示す.図3.6において,黒色で表された領域が眼球開口部 として抽出された部分である.この図から,この方法で眼球開口部の大まかな形 状が抽出できることがわかる.

図 3.6: カラー情報による2値化画像

色差比を用いたカラー情報による2値化処理によって,おおまかな眼球開口部 の形状は抽出可能である.しかし,被験者によっては目頭近傍の色差比が肌色に 近くなってしまい,眼球形状が欠損して抽出される場合がある.この問題に対処 するため,本研究では前述のカラー情報による2値化とともに,輝度情報による2 値化を用いる.輝度情報による2値化では,眼球近傍画像の各画素について輝度 値を算出し,一定の輝度値(輝度のしきい値)以下の領域を抽出する.ここで抽 出の対象とするのは,瞳孔および虹彩(黒目),そして強膜(白目)の影の部分であ る.ただし,この方法で目的の領域を抽出するには,画像によってことなった輝 度のしきい値を自動決定する必要がある.

輝度のしきい値を決定するため,上述の処理で得られたカラー情報による2値 化画像と輝度情報による2値化した画像を比較することで,もっとも形状の近い 条件を探索する.比較は輝度情報による2値化のしきい値を変化させながら繰り 返し行なう.カラー情報による2値化画像と輝度情報による2値化画像との残差を 求め,残差のもっとも少ないときの輝度のしきい値を探索することによって,目 的のしきい値を決定できる[96].図3.4の画像に対し,この輝度情報による2値化 を行なった抽出結果を図3.7に黒色の領域で示す.図3.7から明らかなように,輝 度情報による2値化の手法を用いることで,目的とした瞳孔および虹彩,そして強 膜の影の部分が抽出できる.この図3.7には,カラー情報による2値化処理によっ て欠損する場合のあった目頭近傍の部分が含まれている.

図 3.7: 輝度情報による2値化画像

図 3.8: 眼球開口部形状の抽出画像

カラー情報による2値化によって求めた図3.6の領域と,輝度による2値化に よって求めた図3.7の領域を合成すると,眼球開口部の形状として図3.8に示す領 域が決定される[96].こうして求めた図3.8の領域について,その面積(画素数)を カウントすることで眼球開口部の面積を得る.