環境マニュアルや手順書などで示された活動が、実施された結果として生じる文書が記録 です。よって、記録は、活動が実施されたことの証拠にもなります。
社内を見渡せば、産業廃棄物管理票(マニフェスト)、燃費管理記録簿、配車表、配車依頼 書、運転日報、チャート紙、点呼簿、点検表、点検記録、車両管理台帳、車歴簿、運行証明 書、伝票、受注書など、数多くの記録があるはずです。
これらの記録類は、ISO の仕組みの中の記録でもあります。また、ISO を導入するために、
新たに作成しなけばならない記録もあります。作成を求められている記録については、「(3)
文書を作成する際の要件」(54 ページ)で説明します。
(2)文書と記録の管理
ISO の文書の構成が理解できたら、次はそれらの文書をどのように管理すれば良いかを考 えてみましょう。
1)文書の管理
まずは、規格要求事項のポイントを簡単に解説します。
環境マネジメントシステムで必要とされる文書については、統制された状態であること、
並びに管理されていることが求められます。加えて、記録については「文書」としつつも、
その管理は次ページの「4.5.4 記録の管理」に従うこととされています。
そして、以下の内容についての管理方法を定める必要があります。
a) 文書は、責任のある者が、書かれている内容の適切性を審査し、承認した上で発行 して下さい。
b) 文書は、作ればそれで終わりではありません。適切な見直しをして下さい。そして、
必要な場合には更新をして、承認も受けて下さい。
c) 文書の変更がわかるようにし、最新版がきちんと判るようにして下さい。
d) 必要とする文書の適切な版が、必要なときに、必要なところで使えるような仕組み を作って、実行して下さい。
e) 文書は、できるだけ読みやすく、劣化や紛失がないように保管して下さい。また、
簡単に検索し、探し出せるよう工夫して下さい。
f) どれが外部文書か明らかにして、配付を管理して下さい。
g) 旧版文書の撤去は求めていませんので、必要があれば古い文書の使用ができます。
ただし、これらが誤って使われないような策が施されていることが前提になります。
4.4.5 文書管理
環境マネジメントシステム及びこの規格で必要とされる文書は管理すること。記録は文書の一 種ではあるが、4.5.4 に規定する要求事項に従って管理すること。組織は、次の事項にかかわる 手順を確立し、実施し、維持すること。
a) 発行前に、適切かどうかの観点から文書を承認する。
b) 文書をレビューする。また、必要に応じて更新し、再承認する。
c) 文書の変更の識別及び現在の改訂版の識別を確実にする。
d) 該当する文書の適切な版が、必要なときに、必要なところで使用可能な状態にあることを 確実にする。
e) 文書が読みやすく、容易に識別可能な状態であることを確実にする。
f) 環境マネジメントシステムの計画及び運用のために組織が必要と決定した外部からの文書 を明確にし、その配付が管理されていることを確実にする。
g) 廃止文書が誤って使用されないようにする。また、これらを何らかの目的で保持する場合 には、適切な識別をする。
( JISQ14001: 2004 )
2)記録の管理
記録の管理は、以下の3つの内容が要求事項として記述されています。
① 活動の結果として機械的に生じている記録についても、規格の要求事項にあっている か、ISO の仕組みが効果的に運用されているかの証拠を示すものでもあります。活動 や運用のあかしであるという観点から作成し、保管して下さい。
② 記録の管理における識別、保管、検索、保管期間、廃棄などの取り決めを文書化する 必要があります。一昔前のように、記録はすべて紙ベースではありませんので、デジ タルデータや電子媒体については、識別や検索が容易である反面、保管期間や廃棄に ついてあいまいになる場合がありますので、注意してルールを決めて下さい。
③ 記録は、読みやすく、簡単に識別できて、検索ができるようにして下さい。
(3)文書を作成する際の要件
ここまでは、文書の概略の説明でしたが、特に推進体制のメンバーは、何を文書にしなけ ればならないかを知る必要があります。
では、規格ではどのような文書を求めているか見てみましょう。
a) 「3.環境方針の決定」(31 ページ)で定めた環境方針と環境目的、目標を文書の形で 表明します。
b)
4.4.4 文書類
環境マネジメントシステムの文書には、次の事項を含めること。
a) 環境方針、目的及び目標
b) 環境マネジメントシステムの適用範囲の記述
c) 環境マネジメントシステムの主要な要素、それらの相互作用の記述、並びに関係する文書の 参照
d) この規格が要求する、記録を含む文書
e) 著しい環境側面に関係するプロセスの効果的な計画、運用及び管理を確実に実施するため に、組織が必要と決定した、記録を含む文書
( JISQ14001: 2004 ) 4.5.4 記録の管理
組織は、組織の環境マネジメントシステム及びこの規格の要求事項への適合並びに達成した結果 を実証するのに必要な記録を作成し、維持すること。
組織は、記録の識別、保管、保護、検索、保管期間及び廃棄についての手順を確立し、実施し、
維持すること。
記録は、読みやすく、識別可能で、追跡可能な状態を保つこと。
( JISQ14001: 2004 )
c) 主要な要素や相互作用の記述などは、b)とともに「① 環境マニュアル」(51 ページ)
に記述されます。
d) ISO14001 が要求する記録には、以下のものがあります。
【ISO14001:2004 規格が要求する記録の内容】
No. 規格条項 記録の内容 1 4.4.2 教育訓練の記録
2 4.4.3 外部コミュニケーションに関する決定の記録 3 4.4.3 利害関係者とのコミュニケーション記録
4 4.4.4 プロセスの運用を確実に実施するために必要と組織 が判断した記録を含む文書
5 4.5.1 検査、メンテナンス及び校正記録 6 4.5.2 法的およびその他の要求事項順守記録 7 4.5.3 とられた是正・予防処置の記録
8 4.5.4 規格への適合および達成した結果を実証するのに必 要な記録 (規格の e)項)
9 4.5.5 内部監査結果
10 4.6 マネジメントレビューの結果
上記のうち 4.4.4 と 4.5.4 の関連として以下の記録が推奨されます。
【推奨される記録の内容】
No. 規格条項 記録の内容 1 4.3.1 著しい環境側面の記録※
2 4.3.2 適用可能な法的要求事項の記録※
3 4.3.3 環境目的、目標実施計画表※ と達成記録 4 4.4.3 環境上の会議の記録
5 4.4.6 請負者及び供給者の記録 6 4.4.6、4.4.7 発生事象報告
7 4.4.6 環境パフォーマンス情報 8 4.4.6 プロセス監視記録
9 4.4.7 緊急事態への準備のためのテストの記録 10 4.5.3、4.6 苦情記録
※印は本書にサンプルを添付
e) では「組織が必要と決定した、記録を含む文書」という、解釈に幅がある表現が使われ ています。a)や b)のように具体的に内容が示された場合と異なり、ここでは自社の判断が必 要となります。
どこまでが文書として必要かという決定は、ときに悩ましい場合もありますが、自らの組
る、と考えて下さい。そして、それらの判断は、組織の外から見ても、適切と思われる水準 であることを心がけて下さい。顧客やその代表ともいえる審査員から見て、文書化やマニュ アル化がされていないことが、不自然ととられるようでは問題があります。
(4)文書の様式及び媒体
文書の様式や媒体はどのようなものでも良いとされています。
「文書」ですが文字とは限りません。図、表、絵、イラスト、写真、DVD、PDF、動 画など視覚的な伝達手段の利用により、より目的とするものが正しく、わかりやすく表現で きる場合があります。いろいろな情報機器やソフトが急速に発展し普及していますので、積 極的に活用することにより、作成の負担も軽減できる上、わかりやすい「文書」を作ること が可能です。
また、文書を維持する方法は、紙でも電子データでもかまいません。ISO が求める正しい 管理が可能で、それらの管理が実施されていることを証明することができれば、文書媒体に 特別の決まりはありません。
推進体制のメンバーは、これらのことを考慮して、文書の様式や媒体を決定します。