(1)力量、教育訓練及び自覚
初期環境調査で特定された著しい環境側面の原因となる活動に従事する従業員には、教育 訓練を行うことなどにより力量を持たせる必要があります。そのためには、どの仕事にはど のような「知識・技能・能力・経験・適格性・資格等」が必要か、ニーズをはっきりさせる ことが必要です。
これに該当する活動はトラック運送事業の場合、多くはドライバーであることは明らかで す。通常、運転免許以外に社内での資格認定基準があると思いますが、それにこの環境マネ ジメントシステムの要件を加えます。その他の認定を含め、認定基準と認定者を文書化して おくことが必要です。また力量を持たせるための教育をしっかり行うことが求められます。
この教育訓練は環境活動に限定するとわかりづらいので、「本業を進める上で必要な力量」
ととらえ、手順書として仕組み化することをお勧めします。
また、自覚(自分から進んで取組む姿勢と意欲)を持たせることがこれらの基本となりま す。対象は自社の従業員だけではなく、協力会社従業員も含みます。
(2)コミュニケーション(情報伝達)
4.4.2 力量、教育訓練及び自覚
組織は、組織によって特定された著しい環境影響の原因となる可能性をもつ作業を組織で実施 する又は組織のために実施するすべての人が、適切な教育、訓練又は経験に基づく力量をもつこ とを確実にすること。また、これに伴う記録を保持すること。
組織は、その環境側面及び環境マネジメントシステムに伴う教育訓練のニーズを明確にするこ と。組織は、そのようなニーズを満たすために、教育訓練を提供するか、又はその他の処置をと ること。また、これに伴う記録を保持すること。
組織は、組織で働く又は組織のために働く人々に次の事項を自覚させるための手順を確立し、
実施し、維持すること。
a) 環境方針及び手順並びに環境マネジメントシステムの要求事項に適合することの重要性 b) 自分の仕事に伴う著しい環境側面及び関係する顕在又は潜在の環境影響、並びに各人の作
業改善による環境上の利点
c) 環境マネジメントシステムの要求事項との適合を達成するための役割及び責任 d) 規定された手順から逸脱した際に予想される結果
( JISQ14001: 2004 )
4.4.3 コミュニケーション
組織は、環境側面及び環境マネジメントシステムに関して次の事項にかかわる手順を確立し、実 施し、維持すること。
a) 組織の種々の階層及び部門間での内部コミュニケーション
b) 外部の利害関係者からの関連するコミュニケーションについて受付け、文書化し、対応する 組織は、著しい環境側面について外部コミュニケーションを行うかどうかを決定し、その決定を 文書化すること。外部コミュニケーションを行うと決定した場合は、この外部コミュニケーション
( JISQ14001: 2004 )
a)では、内部コミュニケーションのための手順の確立と、情報交換が縦(上下)と横(部 門/事業所間)で相互にしっかりと実施されていることを求めています。わかりやすい例と しては、経営会議、定例会議、職場会議などの会議体が考えられますので、これらをいつ(期 間、間隔、回数)、どのような内容で、だれの主催で、だれを対象として開催するのかを明確 にしておきます。
b)の外部とは社外とのコミュニケーションをいいます。例えば、行政機関からの通達や、
利害関係者からの苦情など、外部から何か伝達があったときは記録を残します。
また、「著しい環境側面について外部コミュニケーションを行うかどうかを決定し」とは、
例えば「夜間に住宅地を走行せざるをえなくなった。従って、低騒音車を導入する。」という ことをその地域に公表するかどうかを決めておき、その結果を文書化しておくことが求めら れます。
(3)運用管理
特定された著しい環境側面を伴う活動について、確実に運用できるように計画し、実施す ることが求められています。事業者のリスク(危機)管理上でも大切なことです。
この規格では「文書化された手順」を求めているのは、この条項の a)の部分のみです。手 順書などでしっかりと定めておかないと、環境方針、目的、目標から逸脱する恐れのある業 務活動について文書化が必要となります。外部文書を活用することも有効です。トラック運 送事業の場合は「エコドライブ」、「トラックの管理方法(点検整備)」や「廃棄物管理方法」
などに関することが該当します。なお、エコドライブや車両整備についてはトラック協会を はじめ自動車メーカーなどから、様々なマニュアルが発行されていますので、これらを活用 してみて下さい。
b)は a)で文書化した手順書、作業指示書に運用基準を明記することを求めています。例え ば、手順書に「省エネに努めること」と規定してあっても運用基準が明確ではありません。
具体的に「エアコンの温度設定」や「昼休みの消灯」などが必要です。また、運用基準どお りに運用管理されていることを示すため、監視・測定し記録を残すことが必要になります。
「(5)監視および測定」(61 ページ)参照。
c)は購入する資材や外部に委託するサービスに関する著しい環境側面の中で、組織自身が 4.4.6 運用管理
組織は、次に示すことによって、個々の条件の下で確実に運用が行われるように、その環境方 針、目的及び目標に整合して特定された著しい環境側面に伴う運用を明確にし、計画すること。
a) 文書化された手順がないと環境方針並びに目的及び目標から逸脱するかもしれない状況 を管理するために、文書化された手順を確立し、実施し、維持する。
b) その手順には運用基準を明記する。
c) 組織が用いる物品及びサービスの特定された著しい環境側面に関する手順を確立し、実施 し、維持すること、並びに請負者を含めて、供給者に適用可能な手順及び要求事項を伝達 する。
( JISQ14001: 2004 )
直接管理できないが、影響力を行使できるものがあれば、それを特定して購買先や委託先に どのように管理して欲しいか明確にします。また、それを確実に伝達します。どこまで何を 伝達するかを自社でできる範囲を決めて実施することになります。
(4)緊急事態への準備及び対応
環境に影響を与える緊急事態や事故に対し、「どのようなものがあり、準備が必要なものは どれかを決める手順」と「その対応方法の手順」の「確立、実施、維持」、「予防又は緩和策 をとる」、「手順を見直す」、「定期的なテスト」が要求されています。附属書Aでは具体的な 緊急事態とその考慮すべき事項を次のように解説しています。
一般的に、トラック運送事業における緊急事態としては、以下が考えられます。
・ 火事、火災、地震
・ 地震による地下燃料タンクからの燃料漏れ、流出
・ 保管中の危険物の漏れ、流出
・ 危険物運搬車の交通事故
あまりに可能性の低いものまで特定することを求めているわけではないので、想定される 緊急事態に対して、自社ができる範囲の対応方法を決めておくことになります。
4.4.7 緊急事態への準備及び対応
組織は、環境に影響を与える可能性のある潜在的な緊急事態及び事故を特定するための、またそれ らにどのようにして対応するかの手順を確立し、実施し、維持すること。
組織は、顕在した緊急事態や事故に対応し、それらに伴う有害な環境影響を予防又は緩和すること。
組織は、緊急事態への準備及び対応手順を、定期的に、また特に事故又は緊急事態の発生の後には、
レビューし、必要に応じて改訂すること。
組織は、また、実施可能な場合には、そのような手順を定期的にテストすること。
( JISQ14001: 2004 )
A.4.7 緊急事態への準備及び対応(抜粋)
組織独自の必要性に合致した緊急事態への準備及び対応の手順を策定することは、それぞれの組織 の責任である。手順の策定に当たって、組織は、次のような事項を考慮するとよい。
a) 可燃性液体、貯蔵タンク、圧縮ガスなどの現場ハザードの性質、及び流出又は放出事故の際に とるべき方法
b) 緊急事態又は事故の最も起こりやすい種類及び規模 c) 事故又は緊急事態に対処する最適な方法
・・・・・・・・
m) 近隣組織からの相互支援の可能性
( JISQ14001: 2004附属書A)
(5)監視および測定
この条項は 著しい環境影響を与える可能性のある運用の鍵となる特性 を監視および測 定することを求めています。
著しい環境側面である「排気ガスの排出」を例にとると「排気ガスの色(有害な排出物)」 や「車の燃費(CO2の排出量)」になります。「日常点検」「定期点検」「車検」の計画と実施 状況、および燃費目標に対し「燃費管理表」や「デジタコデータ」などで実施状況を監視す ることが求められます。
また、監視および測定機器を持っている場合は確実な校正管理が必要です。
(6)順守評価
「(2)法的要求事項およびその他の要求事項調査」(40 ページ)で、適用される法令とそ の他の要求事項を特定しました。また前項「(5)監視および測定」で著しい環境側面の特性 に対する実施状況、結果も把握しました。順守評価とは、それらの結果が基準(規制)に対 し順守されているかどうかを会社として定期的に確認できる手順を定め実施することを求め ています。また、その結果の記録も残す必要があります。
以上、規格要求事項の主要部分の解説を行いました。組織の大きさなどにより、作成する 文書の種類や数はまちまちですが、通常次ページの【環境マネジメントシステム文書】が構 築時に準備されます。なお、この文書は ISO9001 と共有できるものもありますので、冒頭に も説明しました別版の「トラック運送事業者のための ISO9001 標準マニュアル」を参考に して下さい。
4.5.1 監視及び測定
組織は、著しい環境影響を与える可能性のある運用のかぎ(鍵)となる特性を定常的に監視及 び測定するための手順を確立し、実施し、維持すること。この手順には、パフォーマンス、適用 可能な運用管理、並びに組織の環境目的及び目標との適合を監視するための情報の文書化を含め ること。
組織は、校正された又は検証された監視及び測定機器が使用され、維持されていることを確実 にし、また、これに伴う記録を保持すること。
( JISQ14001: 2004 )
4.5.2 順守評価
4.5.2.1 順守に対するコミットメントと整合して、組織は、適用可能な法的要求事項の順守を 定期的に評価するための手順を確立し、実施し、維持すること。
組織は、定期的な評価の結果の記録を残すこと。
4.5.2.2 組織は、自らが同意するその他の要求事項の順守を評価すること。組織は、この評価 を 4.5.2.1 にある法的要求事項の順守評価に組み込んでもよいし、別の手順を確立して もよい。
組織は、定期的な評価の結果の記録を残すこと。
(JISQ14001: 20004 )