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図5 0さんのYG性格検査の結果
プロフィールでの判定を行うと,左下がり型のE型と判定でき,これは,情緒不安定で,
社会的不適応におちいりやすく,おとなしいことを示している.内向的で消極的であるが 情緒的に安定していることを意味している.また,各尺度で判定すると,R:「のんきさ」,
S:「社会的外向」の項目得点がそれぞれ0点と1点で,YGの評価基準の1であった.こ れは,「のんきN:「神経質」の項目が18点でY・Gの評価基準の5であった.これらはそ れぞれ,「神経質」,r劣等感が強い」,r思考的内向」であることを示していた.
4)自己効力感調査の結果
合計点が71点で,「困難に出会うのを避ける」,「非常にややこしく見えることには手を 出そうとしない」の項目が高い値を示した.
(2)0さんにおける特性不安の具体的対象の推定
0さんは,以前体重移動もでき,開脚跳びができていた.しかし,小学校6年生の 時,空中でバランスを崩したために跳び箱から落ちて腕を骨折した.そして,それ以 降は跳び箱運動に対して不安を感じていた.具体的には,両腕で体を支えること,空 中に浮くことに対して不安を感じ,それが原因で踏み切りが弱かったり両脚同時に踏 み切れなかったりして,開脚跳びができなくなった。小久保式による指導においても,
準備運動として行った馬跳びからできなかった.そして,最後まで体重移動ができず,
跳び箱の上にまたがってしまい,開脚跳びはできなかった.これらのことから0さん は跳び箱から落ちて骨折したことにより,何らかの不安を感じていると考える。これ
ら動作に関する事実と各調査の結果から,0さんの特性不安の対象を推定することを
試みた.
そこで,まず,「跳び箱から落ちた」ことによってどのような不安を感じているか検 討した.その結果,動作分析の踏み切りが弱い,前方に手を着くことができない,体 重移動ができないという結果,面接調査の跳び箱から落ちて骨折し,跳び箱に恐怖感 を持った,現在も恐怖感を持っているという結果から,0さんは跳び箱から落ちて骨 折し,痛い経験をしたことにより,跳び箱を前にした時,あるいは実施時に,再び落 ちて骨折し痛い思いをするかもしれないと感じている.
次に,「再び跳び箱から落ちて骨折するかもしれない』と感じている原因がどこにあ るのかを検討した.その結果,性格検査の神経質で心配性である,思考的内向である という結果,自己効力感調査の困難に出会うのを避けるという結果から,0さんは,
再び失敗して苦痛な体験をするかもしれないと感じていると推測した.そのことによ って現在,体重移動ができず,跳び越せない.
以上のことから,Uさんにおける特性不安の対象は次のような過程で考えることが できる.図6にその過程を示した.
跳び箱から落
ちた
→
再び跳び箱から落 ちて骨折するかも しれないと感じる
再び失敗して苦痛な 体験をするかもしれ ないと感じる
図6 0さんにおける特性不安の具体的対象への過程
Uさん,Oさんの結果をまとめると,Uさんの特性不安の具体的対象は「成功する見通
しが持てないことに対して,自分はできないと捉えてしまい新しい課題に挑戦できないこ と」,0さんの特性不安の具体的対象は,「再び失敗をして苦痛体験をするかもしれないと 感じていること」と推定した.第2項特性不安の解消結果
1.Uさんの特性不安の解消結果 (1)Uさんの指導の内容と運動結果表13にUさんの指導の内容と運動結果を示した.
表13 指導内容と運動結果
指導内容 指導者の働きかけ Uさんの運動結果
1.段差52cmに挑戦させた ・ロイター板の上に立った状態から体を倒 ・余裕を持って跳び越せた していく勢いを使って跳ばせた
2.段差59cmに挑戦させた ・ロイター板の上に立った状態から体を倒 ・余裕を持って跳び越せた していく勢いを使って跳ばせた
・続いて新たな課題として二歩助走を加 ・このアドバイスに悩み,跳び箱の前 え,踏み切り動作にリズムをっけた で止まったり跳び箱に手を着いたり
した,しかしなんとか跳び越せた
・チョークで着地点にその目標を示した ・チョークで示した地点まで跳べた
3.段差66cmに挑戦させた ・初めは跳び箱の上に座り,そこから跳び ・体を前に倒し,尻をぶつけずに跳び
降りる動作を行わせた 降りた
・続いてロイター板の上に立った状態から ・少しためらうが跳び越した 体を倒していく勢いを使って跳ばせた
・二歩助走を加え,踏み切り動作にリズム ・少しためらうが跳び越した をっけた
4.段差73cmに挑戦させた ・初めは跳び箱の上に座り,そこから跳び ・体を前に倒し,尻をぶつけずに跳び
降りる動作を行わせた 降りた
・次はロイター板の上に立った状態から体 ・跳び箱の上にまたがってしまった を倒していく勢いを使って跳ばせた
・続いて助走から踏み切り動作を加えて跳 ・勢いは十分だが,手でその勢いを殺
び越させた していた.跳び越せなかった
再び段差66cmに挑戦させた ・跳び越せなかった
再び段差59cmに挑戦させた ・跳び越せなかった
一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 運動ストップ
一
_ _ _ _ _ 一 一 一 一 一 一 一 一 一 『 一 一 一 一1.段差52cmに挑戦させた ・スムーズな踏み切りから勢いよく跳
び越せた
2.段差59cmに挑戦させた ・スムーズな踏み切りから勢いよく跳
び越せた
3.段差66cmに挑戦させた ・スムーズな踏み切りから勢いよく跳
び越せた
4.段差73cmに挑戦させた ・跳び箱の上にまたがってしまった,
・やはり跳び越せなかった
・助走から踏み切り動作のリズム,強 さは良くなった
・着地の目標地点にチョークで印を付けた
− 葡 一 一 蝿 一 一 囎 一 一 一 一 一 一 一 一 一 運動ストップ
一
_ _ _ 一 一 一 } 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一1.段差52cmに挑戦させた ・踏み切りはかかとから入り,脚の裏全体 ・スムーズな踏み切りから勢いよく跳 を使って行うように伝えた び越せた
・着地の目標地点を越えて跳び越した
2.段差59cmに挑戦させた ・スムーズな踏み切りから勢いよく跳
び越せた
3.段差66c mに挑戦させた ・スムーズな踏み切りから勢いよく跳 び越せた
4.段差67cmに挑戦した ・もう少し遠くを見て跳ぶようにさせた ・スムーズな踏み切りから勢いよく跳 び越せた
5.段差69cmに挑戦させた ・踏み切りをさらに強くするように伝えた ・初めは少しためらいがあったが跳び 越した
・全体の動きに流れ,リズムが必要である ・徐々にスムーズな踏み切りから勢い
ことを教えた よく跳び越せた
・ロイター板から力をもらう感じを意識さ ・スムーズな踏み切りから勢いよく跳
せた び越せた。回数を重ねるにつれて踏み
切りを合理的にできるようになった 6.段差71cmに挑戦させた ・踏み切りを強くすることを意識させた ・初め,踏み切り時にためらい何度も
動きを確認したが,跳び越した
・少しためらうが跳び越した
4.段差73cmに挑戦させた ・跳び箱の上にまたがってしまった.
・やはり跳び越せなかった
・助走から踏み切り動作のリズム,強 さは良くなった
一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 } } 一 一 一 一 一 一 運動ストップ 榊 一 q 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 } 一 一 一 一
(2)Uさんの指導における動作の改善点と未改善点
改善点:段差66cm以降は厚さ7cmのマットで作っている段差7cmよりもさらに薄 い厚さ2cmのマットを用いて,段差66cmから段差67cm,69cm,71cm,
73cmとさらに少しずっ変化させていった.すると,以前は段差66cmまで しか跳び越せなかったのが段差71cmまで跳び越せるようになった.また,
踏み切り動作もリズム良く勢いをっけてできるようになった.
未改善点:Uさんは,段差が変わるとたいていは挑戦するまでに時間がかかり,ため らっていた.いったん跳び越し,成功すると,自信を持って次の大きな段 差にも挑戦することができた.しかし,今まで成功していたのと同じ段差
であっても,失敗すると挑戦できなくなり,そこで運動がストップしてし まった.指導中Uさんは,この状態の繰り返しであった.また,Uさんが
跳び越せない段差は決まって73cmで,段差66cmまでは跳び越したが段
差73cmになると跳び越せなくなった.このような状態は指導前と変わら ないままであった.(3)Uさんの各段差における特性不安,状態不安,自己効力感の関係
図7に各段差の跳び越し前後のSTAI調査,自己効力感調査の結果を示した.
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40安 得
30点
20 10 0}マ
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脚
巨
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59Cm
後59cm
前52cm
後52cm
前前6後6 前7後7
C C C C m m m m
段差
一→一一状態不安
+特性不安
■●■自己効力感
90
71Cm
後71cm
前69Cm
後69Cm
前85
80
75
70
65
自己効力感得点
図7 各段差の跳び越し前後の特性不安,状態不安,自己効力感の得点の関係
①成功体験と自己効力感の関係
段差66cm,67cm,71cmでは,自己効力感得点が高くなった.これは,成功体験を
することによって自己効力感が高まったことを表している.つまり,成功体験と自己効 力感には,成功することによって自己効力感が高まるという関係があったことを表している.
②成功体験と状態不安,特性不安の関係