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観測値のサンプル数補正

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マニピュレータと対象物の輪郭ボケ幅と奥行距離を観測値とし,最小二乗法を用いて奥 行距離推定式を導出している.しかし,輪郭ボケ幅の測定可能な範囲が限られており,観 測値のサンプル数不足が最小二乗法に影響を与える.サンプル数不足の問題を解決するた めに,統計的にサンプル数を補正する.サンプル数補正の手法として,マハラノビス距離 による判別分析[56]を用いる.サンプル数補正を輪郭ボケ幅を用いた奥行距離推定に適用 して,本手法の有効性を示す.

3.4.1 奥行距離推定式導出の成否及び課題

奥行距離推定式導出の成否は推定式の定数cnの符号から判断することができる.マク ローリン展開した定数cnを表した式を以下に示す.

cn= (

(−2Lo(Lo−f)

Df Bmax

)n

(3.20)

式3.20において,レンズから微小物体までの距離Lo,レンズパラメータDf は未知数 であるが,bmaxを含めた全ての定数の符号が正である.そのため,式3.19の定数c1,c2, c3の符号は2通りに限られる.全ての符号が負の場合と定数c1とc3の符号が正,定数c2

の符号は負の場合である.全ての定数が負である場合,rが大きくなるにつれて式3.19 減少する.また,ボケ比r0< r < 1の範囲で式3.19は負である.0 < r <1の範囲で 式3.19が正となるため,全ての定数の符号が負の場合は輪郭ボケ幅と奥行距離の関係が成 り立たない.そのため,定数c1,c3の符号が正,定数c2の符号は負の場合は,輪郭ボケ と奥行距離の関係が成立する.そこで,定数c1,c3の符号が正,定数c2の符号は負の場 合を奥行距離推定式導出の成功条件とする.成功条件を満たさない場合,輪郭ボケと奥行 距離の関係を満たさないため,マイクロマニピュレーションで用いることができない.

エンドエフェクタが被写界深度から離れるほど,輪郭ボケ幅は大きくなるため背景と輪 郭ボケの境界が曖昧になり,正確な計測が困難である.そこで,輪郭ボケ幅が観測可能な 範囲が制限され,観測値のサンプル数不足の問題が起こる.実際のサンプル数は約20 50個である.観測値のサンプル数不足は最小二乗法に影響し,推定式導出の失敗の原因と なる.

3.4.2 マハラノビス距離によるサンプル数補正

輪郭ボケ幅を用いた奥行距離推定の観測値のサンプル数不足を解決するために,マハラ ノビス距離による統計的判別分析を用いる.マハラノビス距離とは変数の相関性を考慮し た多次元距離であり,ある集合に属するかどうかの信頼性を表すことができる.

D2= 1

1−ρ2xy

(x−µx

σx

)2+ (y−µy σy

)2−2σxy(x−µx)(y−µy) σxσy

(3.21)

ρxy =

P(xi−µx)(yi−µy) pP(xi−µx)2pP

(yi−µy)2 (3.22)

Dはマハラノビス距離であり,ρxyはxyの相関係数,µxµy xyの平均値,

ρxとρyはxyの標準偏差である.式3.22は相関係数を求めるための式であり,xiとyi

はi番目の観測値である.式3.21はマハラノビス距離によって大きさが決定する等確率楕 円を表す.図3.23はマハラノビス距離の等確率楕円の例である.サンプルの座標(xy)

Fig. 3.23 Mahalanobis distance

式3.21に代入することでそのサンプルにおけるマハラノビス距離を算出可能であり,マハ ラノビス距離からサンプルが観測値の集合に属するかを判断する.判断の基準としてマハ ラノビス距離Dの閾値を設定し,各サンプルが集合に属するか判別分析できる.つまり,

図3.23におけるマハラノビス距離の等確率楕円に含まれるサンプルを観測値の集合に属す るものと判断し,等確率楕円の外のサンプルは観測値の集合に適さないサンプルと判断で きる.

式3.21および式3.22を奥行距離推定に用いる場合,xry∆z(r)とおく.また,相 関係数と平均値,標準偏差は実際の奥行距離推定式導出失敗時の観測値から算出する.次 に,サンプル数補正のため,マハラノビス距離を用いて判別するサンプルを用意する.用 意するサンプルの範囲は,ボケ比r0 ∼ 1の範囲で100分割し,奥行距離∆z(r)0

∼100µmの範囲で100分割して合計1万点サンプリングする.サンプリングする奥行距

離∆z(r)の範囲は,輪郭ボケ幅を正確に測定できる範囲と仮定して設定したものである.

また,奥行距離∆z(r)の範囲を100分割したのは,本研究で用いているマイクロマニピュ レータの移動精度が1µmのためである.ボケ比rについては,比の範囲と奥行距離に合わ せた分割を行う設定とする.実際に,サンプリングしたサンプルを判別分析するために,

マハラノビス距離の閾値に一般的な信頼区間95%の値を用い,サンプル数を補正する.補 正したサンプルを元々の観測値に加えて最小二乗法を行い,奥行距離推定式を導出する.

3.4.3 実験

輪郭ボケ幅を用いた奥行距離推定において,マハラノビス距離を用いて観測値のサンプ ル数を補正し,奥行距離推定式の評価を目的とする.

実験方法は,奥行距離推定式導出に失敗した5回分の観測値に対し,サンプル数補正を 行う.失敗した観測値から平均値と標準偏差,相関係数を求め,サンプリングと判別分析,

奥行距離推定式導出を行う.微小物体上方からエンドエフェクタを下げていき,エンドエ フェクタと対象物の輪郭ボケ幅が一致するまでそれぞれの輪郭ボケ幅を計測した.元の観 測値と補正後の実験結果に対し,最小二乗法を行ったときの誤差平均と誤差の偏差を比較 して評価する.ここでの誤差は,エンドエフェクタの移動量と奥行距離の推定値の差であ る.また,奥行距離推定式の定数cnの符号を基にした成功条件から,推定式導出の成否 を評価する.成功条件はc1とc3の符号が正,c2の符号は負の場合である.

ボケ幅による

定法の評価および拡張3.4観測値のサンプル数補正

Table 3.9 Results of correction

Before correction After correction

Number of Samples Avg. [µm] Std. [µm] success/failure Number of Samples Avg. [µm] Std. [µm]

34 -0.221 1.300 Success 1560 0.514 3.297

28 -0.167 1.734 Success 1081 0.186 2.826

24 -0.052 1.054 failure 712 -0.046 1.880

32 -0.150 1.547 Success 1514 0.768 2.761

21 -0.070 1.130 failure 504 0.031 1.310

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実験結果を表3.9に示す.成否において,5回中3回失敗から成功に変わる結果となっ た.マハラノビス距離を用いたことにより,変数の相関を考慮したサンプルを補正できた ためと考える.サンプル数においても,サンプル数の補正後は大きく増加していることが わかる.判別分析のためにサンプリングしたサンプルが1万点であることから,統計的に 適切ではないと判断したサンプルは除かれている.しかし,サンプル数の補正後の結果の 中において,2回失敗している.これは,奥行距離推定式を導出する際,エンドエフェク タの初期位置を設定していないためである.エンドエフェクタの初期位置が設定されてい ない場合,観測値のサンプル数は一定ではないため少ないことがある.観測値のサンプル 数が少ない場合,得られる変数の相関の範囲が小さくなり,失敗の原因となっている.そ こで,相関の範囲を大きくするために,エンドエフェクタの初期位置設定が必要となる.

しかし,エンドエフェクタの初期位置を被写界深度から離す程,最大の輪郭ボケ幅は大き くなり,正確に計測することが難しい.そこで,輪郭ボケ幅から初期位置を設定する前処 理を加えることで改善する.また,表3.9において元の観測値と補正後を比べ,誤差平均 と偏差が大きくなる結果となった.これは,補正したサンプルがマハラノビスの楕円状に 従った誤差を含むためである.そこで,サンプルの誤差に対する補正が必要である.誤差 の補正には,重みを加える手法や閾値を設けて大きな誤差を含むサンプルを除く手法があ る.サンプル数を補正した本手法においては,重みを加える手法が望ましい.

3.5 まとめ

本章では,まず,これまでの輪郭ボケによる奥行距離推定法の原理について述べるとと もにその課題を明らかにした.その課題の下,輪郭ボケ幅を用いた奥行距離推定において,

有効な精度の範囲の検証を行い,同じ種類の微小物体の別個体や別種類の微小物体,媒質 が異なる場合に対する奥行距離の推定精度を検証した.さらに最小二乗法の他にLMedS LTSを当てはめ,それぞれの精度評価を行い,十分に精度をもつが,輪郭ボケによる奥行 距離推定式における近似式導出の際に失敗することが課題として挙がった.そこで,観測 データ数のサンプル数不足が原因で導出に失敗すると考え,マハラノビス距離を用いて統 計学的サンプル数補正を行った.実験結果より,奥行距離推定式導出の成功率を向上する ことができた.

マイクロ視野での幾何的情報推定

本章では,まず,3章に述べた輪郭ボケによる奥行き距離推定手法における焦点一致面 およびボケの関係性について述べ,問題点を明確にする.次に,波長の違いによる光の分 散で生じる色にじみである色収差の原理について述べる.そして,それを利用した焦点一 致面方向の推定方法を提案し,判定実験により顕微鏡での焦点一致面の位置推定の有用性 を示す.さらに,その方法を応用して微小物体がどのような姿勢なのか判定する方法を提 案し,有用性に検討するために実験を行う.

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