れる.照明のちらつきによる影響を低減するために,輝度変化を考慮した画像処理 が必要である.顕微鏡視野では背景はシャーレやスライドガラスのように色が単調 な場合が多い.そこで背景と対象物との輝度値の差を基準とすることで照明のちら つきに大きく影響されない画像処理が可能であると考える.
たとえば,照明のちらつきによる影響を低減することでステップ移動ごとに得た複 数の画像間におけるR,G,Bそれぞれの輝度値の変化具合から,オクルージョン になっていない部分に関して形状を評価することに期待できる.
(2) 結果からスコープ位置が-60∼-1µmの範囲ではエラーバーも含めRG比が0.9よりも 小さな値をとっている.また21∼60の範囲ではエラーバーを含めRG比が1.1より も大きな値をとっていることから安定して焦点位置の判定を行うことができるとい える.
0∼20µmの範囲においては光路図からRG比が1よりも大きな値をとるはずである.
しかし,小さな値をとることが多い,これはR,G,Bの値の取得が物体周りに生じる ボケ幅に依存しているため,ボケ幅が少ない範囲では十分な量の画素値が得られない ことが考えられる.また,実験に用いた胡桃花粉の大きさはおおよそ直径30∼45µm であり,球形である.ボケ幅は物体の輪郭に生じるボケを抽出しているため,ボケ 幅が最小な位置とはもっとも直径が大きいz方向に対して中心にあたる位置である ことが予測できる.そこから20µmの位置は花粉上もしくは花粉から5µm程度の位 置であることが考えられる.奥行き距離推定法を用いてマニピュレーションを行う ことを考えた場合,この位置までレンズ移動が可能であればマニピュレーションへ の有用性が十分であるといえる.
ズに対し斜めから光が照射された場合,色は波長が異なるため,焦点一致面における焦点 の位置がずれる.このような色収差を倍率色収差と呼ぶ.図4.12に可視光でのRGB波長 のそれぞれの光路図を示し,図4.12(a)は軸上色収差,図4.12(b)は倍率色収差である.光 学顕微鏡は,一般に高倍率になるほど被写界深度が浅くなる.そのため花粉のような数十 マイクロメートルの対象物を観察する際,ボケが現れる.可視光において,RGBの波長 の違いによってそれぞれに焦点ボケが発生し,フリンジが発生する.RGBの波長ではR が最も長くBが最も短いため,浅い被写界深度においてRBがフリンジが発生しやすいと 考え,RとBの比を孔または溝部の判定に用いる.以下に検出の流れを示す.
(1) 顕微鏡画像取得・グレースケール・2値化処理
(2) 2値化によって黒と判断された(花粉の位置)部分の色情報を残す(背景除去)
(3) 画像中のそれぞれの花粉について,各画素のRの画素値を累積し,Bについても同 様に画素値を累積する
(4) 累積したRの画素値Rvと累積したBの画素値Bvについて,P
Rv/Bvを計算し,
比を算出する (5) P
Rv/Bv ≤1の場合はBの累積画素値がRの累積画素値よりも大きいことで,花
粉が裏向きという判定し,逆に
PRv/Bv >1の場合はRの累積画素値がBの累積
画素値よりも大きいということで,孔または溝を検出する
4.4.1 表裏判別実験
4.4.2 実験方法
胡桃の花粉を用いて実験を行った.胡桃は半球状の形状をしており,孔と溝が複合して 一箇所に存在する.この形状から花粉は溝および孔部が上に向いた状態(表向き),溝およ び孔部が横に向いた状態(横向き),溝および孔部が下に向いた状態(下向き)の姿勢に分か れる.横向きは真円度から判別できるため,表向きおよび下向きの姿勢判断を行った.表 向きおよび下向きの花粉で行い,画像は花粉が焦点一致面に存在する場合(図4.13(a))と 焦点一致面から外れた場合(図4.14(a))を用意した.なお,同軸落射照明下で1400倍の顕 微鏡画像を用いて行った.
4.4.3 結果および考察
図4.13(b)および図4.14(b)に焦点一致面に存在する場合と外れてぼけた場合においての結
果を示す.図4.15は焦点一致面のとき,図4.16外れているときの各画素でのRGBの出力
(a) Axial case
(b) lateral case
Fig. 4.12 Chromatic Aberration
結果であり,図4.15(a)と図4.16(a)はRのみ,図4.15(b)と図4.16(b)はGのみ,図4.15(c)と
図4.16(a)はBのみを示す.表向きの場合,可視光での赤の波長は長いため,溝または孔部
に赤の焦点が当たりやすく赤色の割合が多くなっている.裏向きの場合,孔または溝がな く,半球体であるため,波長が短い青色の焦点が当たりやすくなり青色の割合が多くなっ ている.太く赤い四角が表向き,細く青い四角が裏向きの判断結果である.焦点が合って いた場合でもボケていた場合でも表向きと裏向きを確実に判断している.
4.5 まとめ
本章では,輪郭ボケによる奥行き距離推定手法において課題であった焦点一致面の方向 検出を波長の違いによって生まれる光の分散を利用して焦点一致面方向の推定方法を提案 した.色収差を補正するレンズがあるため,レンズの仕様を知っておくことが望ましいが,
色収差補正が未知であるレンズもある.そこでレンズによる色収差の補正を検証するため に予備実験を行った.予備実験の結果,本実験で使用したレンズはアクロマートレンズに 近い特性であることがわかった.色収差に基づいた焦点一致面の判定実験を行い,本手法 が有用であることの確認を行った.その結果,焦点位置の判定が可能であり,ボケ幅抽出
(a) Before
(b) After
Fig. 4.13 Distinction in Focus
法が物体の輪郭に生じるボケ幅を抽出しているため,従来の奥行き推定手法に適用ために は十分に有用であるといえる.孔や溝をもつ花粉のように形状が歪な微小物体において,
また,様々な姿勢で散らばっているため,顕微鏡による画像計測に及ぼす.そこで,光の 特性である分散を応用して,微小物体の姿勢を判定する方法を提案し,歪な形状の花粉に 対する姿勢判別実験を行った.その結果,花粉の姿勢を確実に判別することができた.
(a) Before
(b) After
Fig. 4.14 Distinction out of Focus
(a) Red Image (b) Green Image (c) Blue Image
Fig. 4.15 Processed Images on Focus
(a) Red Image (b) Green Image (c) Blue Image
Fig. 4.16 Processed Images Out of Focus
利用した微小物体の操り
本章では,マイクロ領域における把持解放の際の微小物体に働く力をモデル化し,把持 の際のアプローチ角度と解放時の力のバランスとの影響を想定した操り方法を提案する.
第3章から第5章で述べた方法を併用して2種類の媒質の環境下(空気中,液体中)に存 在する微小物体の自動把持解放を行い,その成功率と位置決め精度から有用性を示す.