Fig. 5.5 Region for success of pickup and release atn= 0.1 andµs= 0.5, Γ = 1
Fig. 5.6 Region for success of pickup and release atn= 0.25 and µs= 0.75, Γ = 1
微小物体は球状のみではなく様々な形状をしているため,提案手法が異なる形状のもの に対しても対応できるかを検証するために形状がやや複雑で楕円体に近い胡桃の花粉を用 いて同様の実験を行った.花粉は胡桃でガラスビーズと同程度の大きさのものを用いた.
20個の花粉に対して把持解放実験を行った.花粉の実験時の湿度は52%,温度は25℃程 度であった.
5.2.2 ガラスビーズの結果および考察
各アプローチ角度での把持解放の成功率を表5.2に示し,図5.8に把持解放の成功の様子 を示す.20度では20個中17個把持し,そのうち14個解放し,30度では20個中19個把 持し,そのうち17個解放し,40度では20個中17個把持し,そのうち7個解放に成功し た.各角度での解放に成功したガラスビーズの位置決め精度とどの程度ずれたかの度数分
布を図5.9(a)および図5.9(b)に示す.解放位置は解放前後のガラスビーズの重心で決定し
ている.高い割合で5µmの範囲内で解放に成功できた.
Fig. 5.7 Micro Manipulation System
Table 5.1 Micro manipulation spec Computer
CPU Core i7(3.6 GHz)
Memory Size 4.0 GByte
OS Windows 8.1 64bit
Microscope
Magnification ratio 1400 Field of view [µm] 260 Depth of field [µm] 12 Input Image
Size [pixel] 800×600
Pixel size [µm/Pixel] 0.325 End Effector
Diameter of point [µm] 5 Micro Manipulator and Stage
Resolution [µm] 1 Movement speed [µm/s] 100
Table 5.2 Success Rate of Pickup and Release Glass beads θ [deg] Pickup Release
20 85% (17/20) 82.4% (14/17) 30 95% (19/20) 89.5% (17/19) 40 85% (17/20) 41.2% (7/17)
Fig.5.8SuccessonPickupandRelaseaglassbead
図5.10に同じガラスビーズに対する各角度で把持のときの様子を示す.(a)-(b)は20度,
(c)-(d)は30度,(e)-(f)は40度での把持前後の様子である.30度では把持に成功してい るが,20度と40度では把持に失敗している.20度ではアプローチ角度が浅いため,エン ドエフェクタ先端の間の隙間からガラスビーズがこぼれ落ちているのが確認できる.一方,
40度ではアプローチ角度が深いため,エンドエフェクタ先端から転がり落ちている.30 度においても40度と同様に1回だけ把持の際にエンドエフェクタから転がり落ちている.
実験結果からアプローチ角度が浅い場合,エンドエフェクタの間から抜け落ちやすくなり,
角度が深くなるほどエンドエフェクタから転がり落ちやすくなる傾向にあることがわかる.
図5.11に各角度での解放失敗の様子を示す.(a)は20度,(b)は30度,(c)は40度での 失敗の様子である.30度と40度ではエンドエフェクタ先端に乗ってしまっているが,20 度ではあまり乗っていないことが確認できる.40度では解放に失敗したすべてのガラス ビーズにおいて,エンドエフェクタ先端が隠れる程度まで乗ってしまっているのが確認さ れた.40度における解放の成功率が他に比べ低い原因はアプローチ角度が急なため,解放 時に図5.5におけるIIIの範囲に入り,幾何的に床面と接地しづらい状態になったためと考 えられる.30度においても40度と同様にエンドエフェクタに乗り,図5.5におけるIIIの 範囲に入りやすくなり,解放に2回失敗したと考えられる.一方,20度では30度と40度 の失敗と異なり,図5.11(a)に示すようにエンドエフェクタに乗る部分は少なく,床面と 接地していると考えられるが,解放に失敗する様子が確認される.この原因として,アプ ローチ角度が浅いことが挙げられる.図5.5におけるIの範囲に入り,式(5.5)の解放条件 を満たすことができなかったため,微小物体とエンドエフェクタとが付着したままとなっ たと考えられる.このことからアプローチ角度を浅くするほどIIの範囲に入りづらくなり,
把持および解放に失敗しやすくなる.
本実験ではn= 0.25程度であり,大気中のガラス同士の摩擦係数を0.7程度と想定し,
図5.6の場合で考えると,各角度における成功率の結果とそれぞれの範囲の傾向を示して いる.
5.2.3 花粉の結果および考察
各アプローチ角度での把持解放の成功率を表5.3に示し,図5.12に把持解放の成功の様 子を示す.20度では20個中14個把持し,そのうち8個解放し,30度では20個中19個 把持し,そのうち15個解放し,40度では20個中20個把持し,そのうち14個解放に成 功した.各角度での解放に成功した花粉の位置決め精度とどの程度ずれたかの度数分布を
図5.13(a)および図5.13(b)に示す.解放位置は解放前後の花粉の重心で決定している.ガラ
スビーズに比べ位置決め精度は劣っているが,高い割合で5µmの範囲内で解放に成功でき
た.図5.9(b)と図5.13(b)と比較するとガラスビーズでは5µm以内に解放できているのに
対し,花粉では解放精度が悪くなっている.これはエンドエフェクタからなかなか離れな
かったためであり,ガラスビーズよりも花粉のほうが付着が強く働いたと考えられる.図 5.14に把持に失敗したときの様子を示す.(a)-(b)は20度,(c)-(d)は30度での把持に失 敗する前後の様子である.20度のおいて,ガラスビーズよりも把持の成功率が低くなって いるが,角度が浅い場合,花粉が半球状であるため,持ち上げる際に左右のエンドエフェ クタの隙間から転がり落ちると考えられる.40度においてすべて把持できた要因として付 着力がガラスビーズよりも強いことがあげられる.アプローチ角度が急であるほど,エン ドエフェクタ先端から転がりやすいが,付着が強いため,エンドエフェクタから転がり落 ちずに把持できていたと推察される.
(a) Position of release glass beads
(b) Histogram of release glass beads
Fig. 5.9 Position and histogram of release glass beads
(a) Pre-pickup a glass bead at 20deg (b) Pickup a glass bead at 20deg
(c) Pre-pickup a glass bead at 30deg (d) Pickup a glass bead at 30deg
(e) Pre-pickup a glass bead at 40deg (f) Pickup a glass bead at 40deg
Fig. 5.10 Pickup a glass bead at each angle
(a) Not release a glass bead at 20deg
(b) Not release a glass bead at 30deg
(c) Not release a glass bead at 40deg
Fig. 5.11 Not release a glass bead at each angle
Fig.5.12SuccessonPickupandRelaseapollen
Table 5.3 Success rate of pickup and release pollens
θ [deg] Pickup Release
20 70% (14/20) 57.1% (8/14) 30 95% (19/20) 78.9% (15/19) 40 100% (20/20) 70% (14/20)
図5.15に各角度での解放失敗の様子を示す.(a)は20度,(b)は30度,(c)は40度での 失敗の様子である.ガラスビーズと同様にエンドエフェクタ先端に20度では乗る部分は 少なく,30度と40度では乗る部分が多いことが確認できた.20度における解放成功率が ガラスビーズのときよりも低いが,花粉の付着力がガラスビーズよりも強く働いたと考え られる.
図5.9(b)と図5.13(b)の比較によってガラスビーズと花粉の付着性が異なることがわかる.
このことからΓがガラスビーズの場合よりも大きくなる.また,花粉の表面構造は孔や溝 を伴い網目状をしているため,花粉の摩擦係数がガラスビーズよりも小さくなると考えら れる.そこで,図5.6における右上がりの曲線は解放条件の境界である式(5.6)の示してい るが,付着性と摩擦係数の影響から図5.16に示すようにこの境界が右にシフトした.その ため,図5.6に比べIIの範囲が狭くなってしまい,20度では,IIの範囲から外れ,Iの範囲 に入ったといえる.提案手法では理想的にはΓおよびµsを知っておく必要があるが,複 数のアプローチ角度で試験し,IIの範囲を大まかに推定し,アプローチ角度を決定するこ とで形状が歪な微小物体であった場合でも把持解放の成功率を高められると考える.
微小物体の配置実験に関して,本手法を用いて配置する箇所は図5.17(a)に示すようなU 字状であり,実験結果を図5.17(b)に示す.大きさの異なる数十µm程度のガラスビーズが 狙った位置に置けていることがわかる.このように,本手法を用いることで,微小物体を 把持し,特定の場所への精密な配置が可能となる.