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操り ( 把持解放 ) の戦略

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利用した微小物体の操り

本章では,マイクロ領域における把持解放の際の微小物体に働く力をモデル化し,把持 の際のアプローチ角度と解放時の力のバランスとの影響を想定した操り方法を提案する.

第3章から第5章で述べた方法を併用して2種類の媒質の環境下(空気中,液体中)に存 在する微小物体の自動把持解放を行い,その成功率と位置決め精度から有用性を示す.

Fig.5.1PickupApproach

Fig. 5.2 Geometric max position between a micro object and a end-effector

図5.2θの幾何的な限界状態を示す.微小空間下側の空間は微小になればなるほど狭 くなるのは明白であり,エンドエフェクタ先端がアプローチできる角度は限られてくる.

ここで,微小物体を半径Rmの球とし,エンドエフェクタ先端を半径Reの球としている.

このとき,RmとReの半径比n=Re/Rmとするとθの満たす範囲は

0≤θ < θmax <90 (5.2)

θmax = sin−1 1−n

1 +n (5.3)

となり,微小物体に対し,どの程度エンドエフェクタ先端がアプローチできるかを図5.3 示す.横軸はアプローチ角度θ,縦軸は半径比nを表す.例えば,先端径が10µmのエン ドエフェクタを用いて100µmの微小物体に微細操作を行う場合,n= 0.1となり,そのと き把持できる範囲はθは約55度未満となる.また,先端径が10µm40µmの微小物体

の場合,n= 0.25となり,把持範囲はθは約37度未満となる.ここで,微小物体下側の

空間は微小なため,エンドエフェクタと微小物体の位置関係を精密に把握しなければなら ず,エンドエフェクタ先端を床面直近まで差し込む場合,数µmの精度が必要となる.そ こで我々はこれまで開発してきた高精度かつ広範囲に測定できる輪郭ボケ幅による奥行推 定手法を用いる(大澤他, 2011)

Fig. 5.3 Geometric limit by a ratio of a micro object to a tip of end-effector

5.1.2 解放

図5.19に解放の流れを示す.まず,床面に微小物体が接地するように把持した状態で 左右のエンドエフェクタを床面まで降ろす(5.19(1)).このとき,微小物体には左右の エンドエフェクタ先端からの付着力Aeと床面からの付着力Asが働き,図5.19に示すよ うな力のバランスとなる.次にエンドエフェクタ先端を微小物体から離す動作を行う(

5.19(2)-(3)).最後にエンドエフェクタを上げ,解放を完了とする.離す際に微小物体には

床面からの垂直抗力Nsを受け,摩擦力が働き,図5.19より以下に定義できる.

Ns=As+Aesinθ+M g (5.4)

ここで,Mは微小物体の質量,gは重力定数である.微小物体の解放条件は以下となる.

µsNs> Aecosθ (5.5)

µsは床面との摩擦係数であるが,マイクロ環境ではアモントン・クーロンの摩擦則(摩擦 係数が一定)は垂直荷重と付着力の和を想定すると成り立つとされいる(安藤,2009 物性や環境などが同じ条件下で,Ae,AsおよびM gが変わらないとすると解放するかど うかの条件は把持の際のアプローチ角度θに大きく影響される.このとき,第2章におけ る式(2.11)よりΓを用いて表すと,

f(θ) =µssinθ+ µs

√Γ−cosθ >0 (5.6)

となる.マイクロ環境では重力Fgと液架橋力Fca,van der WaalsFw,静電気力Feが 主な力となるが,Fearing(Fearing, 1995)によると,空気中のマイクロ環境では付着力の

中でも液架橋力とvan der Waals力が強く現れるとされている.そこでエンドエフェクタ 先端を球とみなし,球の微小物体が平面状に置かれているとして,球間および球-平面間 でのそれぞれの力関係を考える.巨視的剛体の2(半径R1,R2)間に生じる液架橋力は 付着仕事W と関連付けられ,以下で表される(Israelachvili, 2011)

Fca = 2π R1R2

R1+R2W (5.7)

また,2球間で発生するvan der Waals力によるエネルギ(van der Waals相互自由エネル ギ)は以下で表される(Israelachvili, 2011)

Ww =− A 6D

R1R2

R1+R2 (5.8)

ここで,AHamaker定数,Dは物体間の距離を表す.球-平面間の場合,R2 =∞と置 くことことで表され,球間より球‐平面間の方が液架橋力およびvan der Waals力が大き いことがわかる.このことから,付着力AeおよびAsの関係は以下の関係になりやすい.

As≥Ae (5.9)

そこで,式(5.6)において,Γ = 1As =Aeで最小の場合)とし,µs=10.70.50.3 の場合を図5.3と重ねた状態で図5.5と図5.6に示す.図5.5n= 0.1µs = 0.5Γ = 1 のときであり,例えば,先端径が10µmのエンドエフェクタを用いて100µmの微小物体 で,付着力の比が等しく,床面との摩擦係数が0.5のときに微細操作を行う場合を想定し たものである.一方,図5.640µmの微小物体で摩擦係数が0.7のときを想定したもの である.図5.5n= 0.25µs= 0.7, Γ = 1のときIIIおよびIIIの範囲では把持解放の しやすさが異なってくる.Iは解放条件から解放しづらい範囲,IIは把持解放できる有効 な範囲,IIIは幾何的条件から把持しづらく,床面と接地しないため解放しづらい範囲を表 す.例えば,図5.5と図5.6の場合での適切なアプローチ角度を考えると,図5.5の場合で は37 < θ <55,図5.6の場合では16 < θ <37となる.把持におけるアプローチ方法が 把持安定性に関わるとともに,解放安定性にもつながるのではないかというのが本手法の 基本的な考えである.図5.5と図5.6に示すように範囲Iに関して,角度が浅くすると範囲 Iに入り解放しづらくなり,角度を深くすると範囲IIに近づき解放しやすくなるのがわか る.範囲IIIに関して,角度を深すぎるとIIIに入りやすくなり幾何的に把持解放が不安定 になる.そのため,有効範囲IIに入るようにアプローチ角度θを決定することで安定した 把持解放が可能となる.

Fig.5.4ReleaseMovement

Fig. 5.5 Region for success of pickup and release atn= 0.1 andµs= 0.5, Γ = 1

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