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観劇参加という文化活動が継承された要因

第 6 章 市民の観劇参加と継続性のメカニズム

4 観劇参加という文化活動が継承された要因

保護者として人形劇フェスタに参加した人と参加していない人の、公民館活動や自治会 活動等地域および地域活動への関心や参加の実態は、表 6-18~6-21のとおりである。

公民館活動への関心および活動への参加と役員の経験、自治会活動への関心および活動 への参加とも、人形劇フェスタに参加している人の方が関心を持ち積極的に参加する人が 多い。居住する地区で人形劇フェスタの地区公演が開催され参加することが、地域の活動 や地域の人を知る機会になったと推測できる。

今回の保護者調査の回答者は、男性が回答者全体(N=2010)の 5.9%(119 人)、女性が 93.4%

(1876 人)、無回答が 0.7%(14 人)と、ほとんどが女性であり、多くは母親と考えられる。

女性の地域活動への参加は男性に比べ少なく、保護者、特に母親は、地域の活動への参加 に対し消極的である34。しかしながら、人形劇フェスタのような子ども同伴で参加できる 文化活動が地域で実施されることで、母親たちは地域の活動に参加する機会を得るのであ る。母親たちは、人形劇フェスタへの参加経験を通し、地域の公民館活動や自治会活動に 対しての関心を広げ、参加への前向きな姿勢を持つのである。

子 ど も を 持 ち 保 護 者 と な っ た こ と が 人 形 劇 フ ェ ス タ へ の 参 加 を 促 進 さ せ る 大 き な 要 因 と考えられるが、さらに観劇参加で子どもと楽しんだ保護者が地区の公民館の役員として 地区公演の運営に参加するというように経験が繋がっていくことで、ボランティアとして の運営面への参加へと形態を変えて人形劇フェスタへの参加が継続されことも考えられる。

34 内閣府平成 20年男女共同参画白書によると、女性の地域活動への参加意欲は高いもの のの、実際、地域の活動や NPOなどで役員にあたる女性は男性に比げ極端に少ない。

表 6-18 人形 劇 フェ ス タへ の参 加 ・ 不参 加 別公 民 館活 動への 関 心 単位 : %(人 )

公 民 館 活動 へ の関 心

と て も ある ま あ ま ああ る あ ま り 無い 全 く 無 い 今 年 の 人 形

劇 フ ェ スタ

参 加 し た 6.2(59) 52.9(508) 35.6(342) 5.3 (51) N=960 参 加 し ない 2.4(25) 37.0(379) 46.9(480) 13.7(140) N=1,024

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表 6-19 人形 劇 フェ ス タへ の参 加 ・ 不参 加 別公 民 館活 動への 参 加 単 位:&(人 )

公 民 館 活動 へ の参 加

と て も 積極

ま あ ま あ積 極

や や 消 極的 全 く 消 極的

今 年 の 人 形 劇 フ ェ スタ

参 加 し た 2.9(28) 36.0(345) 38.9(373) 22.2(213) N=959 参 加 し ない 1.6(16) 20.4(209) 37.4(383) 20.6(416) N=1024

表 6-20 人形 劇 フェ ス タへ の参 加 ・ 不参 加 別自 治 会へ の意識 単位: %(人 ) 自 治 会 への 意 識

と て も ある ま あ ま あ あ る あ ま り 無い 全 く 無 い 今 年 の 人形

劇 フ ェ スタ

参 加 し た 3.5(33) 47.9(458) 38.1(365) 10.6(101) N=957 参 加 し ない 0.9( 9) 20.6(312) 47.1(481) 21.4(219) N=1,021

表 6-21 人形 劇 フェ ス タへ の参 加 ・ 不参 加 別自 治 会活 動への 参 加 単位: %(人 ) 自 治 会 活動 へ の参 加

と て も 積 極 的 ま あ ま あ 積 極 的 や や 消 極的 全 く 消 極的 今 年 の 人形

劇 フ ェ スタ

参 加 し た 3.3(32) 36.2(347) 38.8(372) 21.7(208) N=959 参 加 し ない 0.6 (6) 22.3(227) 36.1(368) 41.1(419) N=1,020

小括

調査より、市民文化活動である人形劇フェスタへの市民の観劇参加の実態が把握できた。

市民は、保護者になることで、子どもたちを伴い積極的に人形劇フェスタに参加するとい える。35 年以上にわたり継続開催されている歴史的事実からは、幼少期の人形劇フェスタ への参加経験が市民の飯田市や人形劇フェスタへの愛着を育み、それが成人になってから の人形劇フェスタへの参加に影響を与えているのではないかと想定したが、調査結果から はそれを裏付けることはできなかった。市民(保護者)は、子どもが人形劇を喜んで観る と考え、人形劇を子どもに観せたいと思い、自分一人では観にいくことを考えない人形劇 フェスタに子どもを連れて参加するのである。こうした保護者と子どもの存在によって、

人形劇フェスタは、累計 45,000 人もの観客を毎年数え、35 年以上継続的に開催されて来 た。そして、保護者らの人形劇への理解を深め人形劇フェスタへの関心を広げた背景には、

飯田市内の幼稚園や保育園の存在が大きく影響していた。幼稚園や保育園が保育内容に人 形劇を積極的に取り入れることで、保護者は子どもが人形劇を楽しむことやその教育的意 義を理解する。そして、幼稚園・保育園が人形劇フェスタの情報を提供することで、積極

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的に人形劇フェスタに参加することが促進されるのである。

一方、幼稚園・保育園においては、冒頭に示したように、人形劇カーニバル第 1 回目開 催の際に地区公演の運営の協力を仰いだのが保育士であったことや、地区公演の会場とし て保育所や幼稚園が使用されていることから、市内の幼稚園・保育園が人形劇カーニバル・

人形劇フェスタと一定の関係を有しているといえる。地区公演が住民を中心に運営される ようになってからも、市内の幼稚園・保育園では、保育活動に人形劇が積極的に取り入れ られ、また、保護者の人形劇フェスタへの観劇参加を促進させる役割を担っている。この ような幼稚園・保育園と人形劇フェスタとの関係を構築する要因として次の 3 点を挙げる ことが出来る。1 点目は、行政が人形劇を市の文化として育てようとする意志を持ってい たことである。行政は保育士の技術向上を目指した恒常的な支援を行っているが、その一 環として公立の保育士を対象とした人形劇研修会を毎年開催し、保育士が人形劇をつくり 演じる技能を修得するとともに、研修会で結成された人形劇団が保育園を巡演し子どもた ちに人形劇観劇の場をつくっている。また、市内の全幼稚園・保 育園に対し、人形劇観劇 のための劇団斡旋や補助金の支給を行っている。行政が人形劇を市の文化として育てよう とする意志を持っていることが背景にあり、この点が最も端的に表れているのが小中学校 への人形劇クラブ設置といえる35。2 点目に、個人的要素である。すなわち初代人形劇フェ スタ実行委員長の髙松和子の存在である。髙松は、市内の私立幼稚園の園長であり、市内 唯一の短期大学の理事長の親族であり教授も務めた。髙松は市内の幼稚園に影響力を持っ ていたと考えられ、幼稚園・保育園の保育活動への人形劇の取り入れに大きな影響を与え たと考えられる。3 点目は、35 年の歴史の中で、人形劇フェスタが年中行事として定着し ていた事実である。毎年 8 月第 1 週に開催されることが定着していたことで、幼稚園・保 育園では地域の年中行事同様、保育活動に取り入れやすくなっていたといえる。

飯田市が、人形劇という文化財をまちづくりの中軸においた要因の一つには、江戸時代 に伝播された人形浄瑠璃が 300 年を経た今も継承されているという文化的土壌の存在があ った。しかし、それだけでは人形劇フェスタが市民文化活動として市民に広く浸透し、 35 年にわたり継続開催されることは難しかった といえる。運営面への市民参加においては、

飯田市の公民館システムを活用することで、人形劇フェスタを集落=区の活動として市民 が受け入れ積極的に参加することが実現された。そして、観劇面への市民参加においては、

人形劇という芸術性だけでなく教育性を持つ文化財を中核にしたことで、保護者と子ども を中心とする市民の参加が広く得られたのである。人形劇が子どもにふさわしい文化財で

35 人形劇カーニバル第 17回となる1996(平成8)年に教育委員会の意向により、市内全 小中学校に人形劇クラブが設置された。その後、現在は、小学校では特別活動の時間数の 減少、また、小中学校を通して児童生徒数の減少による設置クラブの精査が行われ全 小中 学校に人形劇クラブが設置されているとはいえない。総合的な学習の時間が始まって以降、

クラブではなく、クラス単位で総合の学習などで人形劇に取り組む学校が増加している。

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あるという教育的価値は、誰もがその価値を認め、市民は保護者になったことで、ごく当 然のこととして子どもを連れて人形劇フェスタに参加する。つまり、飯田市に 在住し、飯 田市に人形劇フェスタがあることで、子どもとその親たちは、毎年人形劇フェスタに観劇 参加する。そして、毎年、誕生し成長した子どもたちが新たな観劇参加者として人形劇フ ェスタに参加する。この循環の中で人形劇フェスタは継続されていると考えられる。

ただし、この現状をこのままでよしとするには問題があり、人形劇フェスタをまちづく りの核としてより積極的に活用していくための思索を考えるべきである。例えば、高校生 や高校卒業後の青年たちの人形劇フェスタへの参加が極端に少ないことは、今後の課題と して採り上げるべき問題であると考える。次代を担う若い力として期待される若者たちの 地域への関心や地域活動への参加の場として、人形劇フェスタが活用できるのではないだ ろうか。飯田市では、幼稚園や保育園への人形劇観劇の補助事業や、小学校や中学校への 人形劇指導に関する事業は積極的に実施しているが、高校生に対してはほとんど行われて いない。2014(平成 26)年より、飯田市公民館が実施を始めたフィールド学習が唯一とい える。この年代への積極的な関与が求められる。

また、保護者層においては、考察より、人形劇フェスタに参加することにより公民館や 自治会等の地域に対する関心を拡げ、活動への参加を前向きに考えるようになることが明 らかとなった。こうした実態をまちづくりのシステムに生かすことで、市民参加による人 形劇フェスタの成功で終わるのではなく、市民の人形劇フェスタへの参加が、さらに市民 の主体的な地域社会の活動への参加を促進し、活発なコミュニケーションが繰り広げられ るまちづくりに結びつくと考えられる。ここまでいったときに、人形劇フェスタは、人形 劇を中軸とした飯田市のまちづくりへの核としての本来の意義を達成できることになると いえる。今後は、そうした文化活動によるまちづくりのシステムの構築を目指したい。