2 集落の実態調査
2.2 結果および考察
調査結果の詳細は、資料編1に記載した。
99 ①自治区画
各区は、図 5-2に示すように、それぞれの区により自治区画は異なり、構造ばかりでな く名称も一様ではない。
図 5‐2 伊賀良地区の自治区画 (筆者作成)
ただし、調査をした 3つ全ての区で一番末端は「班」といい、いわゆる回覧板を回す隣 組の 10 戸ほどで組織されている。およそ地理的な範囲で区分されるが、なかには、分家 した世帯は本家と同じ組合に配属されるケースもある。
飯田市は近年人口減少傾向にあるが、伊賀良地区はアパートの建設がすすみ、小学生・
中学生をもつ核家族を中心とした流入による人口増加がみられる数少ない地区である。そ うした流入者に対し、区の自治会であるまちづくり委員会は、自治会加入を促進するリー フレットを配布したり、借家住民に配慮した自治会費の金額設定を行うなど、流入者への 自治会(組合)加入に積極的に取り組んでいる。
地区住民にとって自治会活動へのもっとも身近な入り口となる地域集団の「班」は、お よそ 10戸ほどであるため、お互いの顔、家族構成などを把握しやすい規模である。また、
回覧板は市の広報誌が最低月 2回発行され、隣家との定期的な交流にも役立っている。
②地縁的組織の実態(水利組合、共有林、氏子)
伊賀良地区の現在の農家数は430戸、専業農家数は 106戸、このうち男子生産年齢人口 が 50人、女子生産年齢人口は41人である(農林水産省,「2010年世界農林業センサス報 告書第1館都道府県別統計書」)。北方・中村・大瀬木区とも、かつては農家がほとんどで あったが、現在は、稲作や果樹を中心に兼業農家がほとんどである。3 つの区とも現在も 水利組合が機能している。北方・中村区は自治会の一構成員として組合を組織しているが、
北方区 1900世帯 中 村区650世帯 大瀬木区 1260世帯 北方区
小区(4)
組合(22)
班(124)
中村区
平 ・ 自 治 会 ・ 自 治 組 合 ・ 平 組 合
(4)
部(7)
班(?)
大瀬木区
組合(14)
班(82)
伊賀良地区
他4区 上殿岡区 下殿岡区 三日市場区 三尋石区
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大瀬木区は水番として特定の家がその役を担っている。
表 5‐1 伝統的地域社会の実態 (筆者作成)
北方区 中村区 大瀬木区
水 利 組 合
あり
財産区伊賀良井管理委員会
あり 水利組合
あり
水番(自治会外)
共有林 あり
管理は北方森林組合
あり
管理は市の林務課
なし
以前売却した売上金あり 氏 子 集
団
あり
祭典等 のた め 氏 子中心 に寄 付 金を徴収
あり
氏子の年会費1,000円
あり
氏 子 へ の 祭 礼 の 費 用 負 担 5,000円
結婚式 班の全戸の夫婦を招待 班の全戸の代表者を招待 班の全戸の夫婦招待
講 現在も行っている。 現在は無い 現在は無い
ム ラ 仕 事
水辺の美化管理 道 造 り は自 治 会協 議 員の み 河川清掃は全戸が参加
並木整備
葬儀 班の全 戸の 夫婦 が出席 。 現 在は役割り業務はなし。
班の全 戸の 夫婦 が出 席。 現 在は役割り業務はなし。
班の全 戸の 夫婦 が出 席。 現 在は役割り業務はなし。
区 費
( 自 治 会費)
区費年間 持家4,000円 アパート3,000円 組合費 3,000円
自治会入会費 平成6年以降 なし
区加入 金( 区有 財産 共有 負 担 金)20,000円
区費持家 3,500円 借家等 3,000円
平加入金 平ごと 0~80,000 円
区加入金 15,000円 区費持家年 4,200円 借家等 2,500円 組合費 金額は組合ごと
また、地区の財産となる共有林は、北方・中村区は保有するものの、管理は森林組合や 市の林務課に委託し、住民が作業にあたることはない。大瀬木区は、すでに共有林を全て 売却し、その売上金を地区の財産として地区の予算に入れている。
集落には氏神の神社があり、氏子総代の役員によって祭事が営まれている。氏子総代は 各平・組合から年齢を基準に適任者が選出される。基本的に氏神の神社のある地域の住民 はすべて氏子になることが出来、氏子の意識がない者も、子どもがいる場合は祭礼に参加 する者が多い。氏子の年間費は中村区は 1000 円、大瀬木区は祭礼費用負担として 5,000 円を設定し、自治会費とあわせて徴収している。子どものいる世帯では、祭典への参加を 考え、奉納する家庭が多いとのことである。神社の活動に関しては、政教分離の考え方か ら、自治会との関連で実施することへの異論を持つ人もいると思われるが、若い夫婦世帯
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の流入者は子どもが祭りに参加することを考えて、また、以前からの住民は祭りを年中行 事の一つとして氏神への信仰を当然のこととして、神社の活動に参加している。
講は、かつては行われていたが、中村・大瀬木区では無くなったとのことであった。
③冠婚葬祭
結婚式の披露宴への招待は、現在は少なくなってきているものの、近年まで、班の全戸 を披露宴に招待し、招待されたものは踊りなどの出し物を披露することが一般的に行われ ていた。現在は「ジミ婚」と言われる結婚式の簡素化等の影響もあり、班を中心とした地 区住民を招待することはかなり少なくなった。一方、葬儀に関しては、出棺の見送り、葬 儀への出席など、今も行われている。
以上の実態からは、地域社会のもっとも小さな社会集団である「班」は、回覧板を回す 自治活動の末端組織として行政に関係する業務を遂行する機能以上に、地域社会における 日常的な家と家との関係の「おつきあい」が重視される地域集団として、現在も機能して いるといえる。
④自治会と分館との関係
2007(平成 19)年の地域自治組織の発足により、地区公民館は地区のまちづくり委員
会(地区によっては、まちづくり協議会という。)の一構成員として位置づけられた。これ にあわせ、区の自治会および分館組織も一体化し、分館は区全体の自治組織の一構成員と なった(区まちづくり委員会・協議会というところが多いが、伊賀良地区の区では、北方 区は「北方区」。中村区は「中村自治区中村協議会」。大瀬木区は「大瀬木自治区」といっ ている。)
自治組織は変わったが、実際に活動にあたる住民意識としては、大きな変化は感じ てい ない。伊賀良地区北方区在住で、伊賀良地区公民館および北方分館の公民館活動にも永年 携わってきた 60 代女性は、「補助金の出所が変わっただけで、今までと変わりな い。29」 と述べている。
分館財政は、地域自治組織導入前は、飯田市教育委員会から各地区公民館を通じて分館 事業補助金が支出されていた。この助成金と、各区の自治会費が分館の活動費となってい た。しかし導入後には、分館事業補助金や地区公民館事業費の一部が「パワーアップ交付 金」として各地区まちづくり委員会・協議会の予算に編入され、各区の自治会費も一旦各 地区まちづくり委員会に収められ、そのなかから各 分館の補助金が下りてくることとなっ た。(図 5-3参照)
29 2016年10 月7日、電話にてインタビューした。調査対象者の女性は、伊賀良地区で生
まれ兼業農家として夫とともにりんご栽培にあたっている。これまで地区公民館の活動に 役員として参加し、長年かかわってきている。
102 図 5‐3 分館の財政
(出典:東京大学大学院教育学研究科社会教育学・生涯学習論研究科飯田市社会教育調査チーム,2012,
「自治を支えるダイナミズムと公民館」p21)
本研究の分館長への調査結果では、北方区の北方分館の予算は、総額 1,500,000 円で、
そのうち伊賀良地区のまちづくり委員会からの分館事業補助金は 40%、北方区まちづくり 委員会から 60%。中村区の中村分館の予算は 1,380,000円で、そのうち伊賀良地区のまち づくり委員会からの分館補助金は 27%、中村自治区中村協議会から 43%、その他 30%。
大瀬木区の大瀬木分館の予算は、総額 1,300,000 円で、大瀬木自治区からの活動補助金が 100%。以上のような回答であった。以前の教育委員会から伊賀良地区公民館そして各分 館へ支給されていた社会教育活動の事業補助金として支出されていた補助金が、伊賀良ま ちづくり協議会において調整され、まちづくり協議会から各分館に支給されるようになっ た。また、各分館の予算や収入金の確保はそれぞれの分館で異なる。
活動予算に見られるように、地域自治組織導入による公民館の位置づけの変化は、公民 館の独立性といった点から、社会教育機関としての公民館の機能の大きな変化として捉え られた。実際、飯田市では、竜江地区公民館の木下陸奥をはじめとする反対派の存在もあ った(第 4章1・3参照)。しかし、多くの住民にとっては、地域自治組織導入後の実際の 活動の展開において、以前と変わらない活動が展開できているということで、問題を感じ ることはほぼ無かったといえる。
各区において、集落の自治会の活動と公民館である分館の活動は、地域自治組織が導入 以前より同じ建物で行われていた。また、行事・活動も、主催は自治会であっても分館の 役員が実働部隊として全般的に関わるなど、共同的な関係をもっていた。つまり、地域自 治組織が導入される以前から、集落の自治活動として、自治会と分館活動は連合し、住民 にとっては区別がつきにくいものであったと考えられる。地域自治組織を導入したことで、