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親子関係 と幼児の 自己抑制行動の発達

ドキュメント内 幼児の運動調整に関する発達心理学的研究 (ページ 118-129)

3章

では、図形描画課題 を使用 した応用研究 として、図形描画課題 で測定す る運動調 整 と日常生活 にお ける自己抑制行動や活動性 との関連性 を検討 した。 その結果 、図形描画 課題 で測定す る手 の運動調整 の高い幼児 は幼稚 園教諭や母親 が短縮版 自己抑制尺度で評価 す る幼児 の 自己抑制行動 も高い ことが明 らか に され た。 また、 日常生活 において活動的 な 幼児 の方が図形描画課題 において逸脱 回数 が少 な く、手の運動調整 が優れ てい ることも明 らかに され た。次 に、社会的スキル と短縮版 自己抑制尺度 と運動調整 の関連性 を検討す る ために、図形描画課題 の衝動性得点で分 けた衝動群 と熟慮群 の社会的スキル尺度 と短縮版 自己抑制尺度 の得点 に関 して比較 した ところ、社会的 スキル尺度 については、両群間の得 点 に有意 な差が認 め られ なかったが、短縮版 自己抑制尺度 の得点 については衝動群 の得点 が低 く、 自己抑制行動 の選択ができない ことが明 らかに された。 さらに、本研 究で使用 し た課題や尺度 の全指標 に関 して相 関分析 を行 つた ところ、主張スキル の得点の高い幼児 は 図形描画課題 において抑制教示 が行われ ない試行 において効率的 に課題 を行 うこ と、また 彼 らは図形描画課題 の非効率性得点が低 く、課題 を行 う際に効率的な方法 を選択す ること も明 らかに され た。 したがって、第

3章

の結果 をま とめる と、①図形描画課題 で測定す る 手の運動調整 は幼稚 園教諭や母親 が 日常生活 において幼児 と接す る場合 において評価 され る 自己抑制行動 との関連性 が高 く、その中で も、 日常生活 において遅延行動ができるか否 か とい う点 と最 も関連性 が高い ことと、②万歩計で測定 された 日常生活 にお ける活動性 の 高い幼児 の方が手 の運動調整 の発達 してい ること、③幼児期 の手 の運動調整 と社会的スキ ル との間には青年期 の よ うな強い関連性 の認 め られ ない ことが示 された。 しか しなが ら、

社会的 スキル の一側 面 として測定 され た主張スキル は図形描画課題 の所要時間 との間に有 意 な相 関が認 め られ 、主張スキル の得点 の高い幼児 は非効率性得点が低 く、課題 を行 う際 に効率的な方法 を選択す ることが明 らかに された。

次 に、第

4章

では、幼児の手の運動調整 を含む 自己抑制行動 の獲得 に影響 を及 ぼす であ ろ う要因 を検討す るための研 究 を行 つた。幼児 の行動や性格 を規定す る外的な要因 として 最 も代表的な ものは親子 関係 である と考 え られ る。 この中で も親 の しつ け態度 と子 どもの 性 格 や 気 質 、 自己抑 制 行 動 との 関連 性 につ い て は多 くの研 究 で検 討 され て い る(eog"

Baumrind,1967;Feldman&Wentzel,1990;Kopp,1982;Lewis,1981;西

野,1990;笹,

1982)。

Feldman&Wentzel(1990)は

、敵意 のある親子間の相互作用や親 の不適切 な統制

によつて、子 どもの教室内での行動が制限のない もとになることを示 し、単な る親 の統制 ではな く、「適切 な」統制 の必要性 を指摘 した。Si市

erman&Ragusa(1990)は

2歳

児 の 衝動的行動 の統制 とその先行要因 としての親 の しつ け態度 との関連性 を検討 した。その結 果 、 自分でや るよ うに励 ます母親 の子 どもは、見通 しが可能で、遅延行動 を選択できるこ とが示 され た。つ ま り、母親 が子 どもに対 して、過剰 に干渉す るのではな く、 自立 を促 し 励 ます ことに よって、子 どもは将来への予測 とそれ による自立が可能 となることが明 らか

に され た。 また、柏木(1988)は、母親 の しつ け態度 と、幼稚 園教諭 に よる幼児 の 自己抑制 行動 の評価 との関連性 を検討 した。その結果、母親 による介入・過保護 が高い子 どもは 自 己抑制行動全般 の低い ことが明 らかに された。 これ らの先行研究の結果 をま とめると、母 親 の子 どもに対す る過剰 な統制や干渉 は、子 どもの 自己抑制行動 の獲得 を妨 げる可能性 の あることが分か る。そ こで、研究

8で

は、母親 の しつ け態度 と幼児 の運動調整 を含む 自己 抑制行動 について、 どの よ うな関連性 が認 め られ るのかを検討す るために研究 を行 うこと

とした。

4‑1 

研 究

8: 

親 子 関 係 検 査 で 測 定 す る 母 親 の しつ け態 度 と幼 児 の 自 己 抑 制 行 動 と の 関 連 性 の 検 討

4‑1‑1 

目的

多 くの先行研 究 に よつて、親 の統制的または干渉的な養 育態度 と子 どもの 自己抑制行動 の発達 との関連性 が指摘 され てい る

(Feldman&Wentzel,1990;柏

,1988;庄

司,1996;

Si市

erman&Ragusa,1990)。

そ こで、本研 究では、母親 の しつ け態度 と実験場面 において測定 された幼児 の 自己抑制 行動 との関連性 を明 らかにす るために

3つ

の 目的 を設 けた。

 1つ

目は、

TK式

幼児用親子 関係検査 を用いて、男児 と女児 で母親 の しつ け態度 に差が あるのか否 か を検討 した。

2つ

日は、運動調整 を測定す る図形描画課題 の無教示試行 の所要時間 と逸脱回数 よ り算 出 され る衝動性得点(式 1;29頁参照)を使用 して得点の高い衝動群 と、得点の低い熟慮群 の母親 の しつ け態度が異 なるか否か を検討 した。

3つ

日は、認知調整 を測定す る

MFFテ

ス トの反 応潜 時 と誤答数 よ り算 出 され る衝動性得点 を使用 して得点の高い衝動群 と、得点の低い熟 慮群 の母親 の しつ け態度が異 なるか否 かを検討 した。

4‑1‑2  方法

(1)対象児 および調査対象者

対象児 は、兵庫県宝塚市 と岡山県美作市 にある

2つ

の私立幼稚園に在籍す る

88名

の幼 児(男

45名

、女児

43名

)であつた。調査対象者 は幼児 の母親 であつた。その うち、

TK

式幼児用親子 関係検査が回収できたのは

54名

分であつた。質問紙 の回収率 は、61。

4%で

あつた。分析対象デー タは、54名(男児23名、女児 31名)で、平均年齢 は4。

86歳

(SD=。23) であつた。対象児 の平均年齢 は、

1回

目の

MFFテ

ス ト実施時 と線テス ト実施時は 5。

4歳

(SD=。 30)、2回目の

MFFテ

ス ト実施時 と図形描画課題実施時は6。1歳(SD=。 25)であつた。

1回 目の

MFFテ

ス トと線テス ト実施時においては、対象児は年 中児 クラスに在籍 し、

2回

目の

MFFテ

ス ト実施時 と図形描画課題実施時においては、対象児 は年長児 クラスに在籍 していた。 なお、実験 に先立 ち、保護者 に実験 内容 を説 明 し、参加 の同意 を得ていた。

(2)材料

TK式

幼児用親子 関係検査

 

本研究では、 田研 出版株式会社 の

TK式

幼児用親子関係検査

(品川・品川,1992)を 使用 した。 この検査 は、 田研 出版株式会社 によつて信頼性 と妥 当性 が 検証 され 、市販 され てい る検査 である。主に教育相談、研 究調査、家庭教育な どの参考資 料 として多用 され てい る(eog"井 上,2005;だ ヽ林,2007)。 本検査 は

2部

構成 で、第I部は「親 の良 くない態度」 を 自己診断す るための検査で、第 Ⅱ部は 「親 の態度の良い点」をチェ ッ クす るための検査であった。本研究では第I部を使用 したため、 ここでは第 I部のみ を説 明す る。第 I部は、

10の

領域 にわたって 「ほ とん どあてはま る(1点)」 か ら 「ほ とん どあ てはま らない(4点)」

4件

法 で回答す る。10の領域 とは、

5態

10型

に分類 され る(Table

4‐1‐1;116頁参照)。 それぞれ の型 について

8問

あ り、その問いの合計得点 を各型 で算 出す る。そ して、その得点 についてパーセ ンタイル換算表 を使用 して各合計得点が何パーセ ン タイル にな るかを調べ、その得点 を各型 の得点 とす る。この得点 においては、

50パ

ーセ ン タイル以上は問題性 の少 ない「内ゾー ン」、

20か

50パ

ーセ ンタイル はやや 問題性 のある

「中間ゾー ン」、

20パ

ーセ ンタイル以下は問題性 の多い 「外 ゾー ン」 とされてい る。

次 に、各態度各型 について説 明す る。「1.拒否的態度」 とは、親 が子 どもに対 して、愛情 の乏 しい場合、また愛情があって も子 どもが愛情 を拒否 され た と勘違い しやすい態度 であ る。 ここには、「①不満型」 と 「②非難型」の項 目が含 まれ る。「2.支配的態度」 とは、親 の考 え方 を子 どもに押 し付 け、強い統制力 と権力で子 どもを支配 しよ うとす る態度で、「③ 厳格型」 と「④期待型」の項 目が含 まれ る。「3.保護 的態度」 とは、子 どもに対 して世話 を や きす ぎた り、心配 しす ぎた りして、年齢以下の幼 い扱 いをす る親 の態度である。過保護 といわれ る親 は ここに該 当す ると考え られ る。 ここには、「⑤干渉型」 と「⑥心配型」の項 目が含 まれ る。「4。服従的態度」とは、支配的態度が大人本位 であるの と逆 に子 ども本位 で、

親 は子 どもの要求 に従い、子 どもに奉仕 し、 しつ けな どがで きな くなつて しま う親 の態度 で、「⑦溺愛型」 と 「③盲従型」の項 目が含 まれ る。「5。矛盾 的態度」 とは、親 の態度 が気 ま ぐれ で一貫性 がなかった り、また、父親 と母親 の扱 いや態度 にひ どく違 いがある とい う 親 の態度で、「⑨矛盾型」 と「⑩不一致型」の項 目が含 まれ る。なお各型 の詳細 については

Table 4‐1‐1に示 した。検査 の項 目は、例 えば 「子 どもに 口や かま しいほ うですか」 とか、

「子 どもの言い分 をよく通 してや るほ うですか」な どがある。本質問紙は

10の

型、各 8

項 目で、合計

80項

目で構成 されていた。

Table 40101。

TK式

幼児用親子 関係検査(品川・ 品川,1992)の

5つ

の態度 と10の型.

1。拒 否 的態度

①不満型

②非難型

子どもとしっくりいかない、子 どもに対して不満がある。ムシが好 かない、他 の兄弟と比べてかわいくない、無 関心、他のことにと らわれ て放つておく、相手にならないなどの親の態度である。

子どもをおどかしたり、悪くいつたり、体罰 やその他 の罰を与えた り、どなりつけたりするなどの親の子どもに対する荒つぱい非難 の態度である。

2.支 配 的 態度

③厳格型

④期待型

子 どもの気 持ちにかまわ ず 、一方的 に親 の考えている枠に押 し 込もうとし、それ から逃 げることを許さない。常に子どもを監督下 におき、厳 しい命 令と禁止でしばってしまう親 の態 度である。

子 どもに対して高い期待をかけ、子どもの能 力 や気持ちにかま わず親 の 希望する方 向へ引 つ張つていく親 の態度である。

3.保 護的態度

⑤干渉型

⑥心配型

子どもに失敗させないようにと、日うるさく指 図したり、すぐに手 を 貸 してやつた りして、こまごまと世話をやき、子 どもに責任をもた せて見 守つていることのできない親 の態度である。

子 どもの健 康、安 全、成績 、交友 関係などに、無意 味と思 われる ほど心配 をし、そのため 、むやみ と手をかけ保 護する親 の態度で ある。

4.服 従 的態度

⑦溺愛型

③盲従型

俗にいう、「ね こかわいがり」で見さかいなく甘やかす親の態度で ある。子どもを手放すことができなくて、子どもをそばに置き相 手 をすることにこの上ない喜 びを感じる。

子どものいいなりになり、召使のようにサービスする親の態度で ある。

⑨矛盾型 親 が感 情 の 自己統制 ができていないため、子 どもの 同じ行 動 に 対 して、ある時はひどく叱つたり禁止 したり、また、ある時は 見逃 したり奨 励したりす る親 の態 度である。

父親と母親 の子 どもに対する考 え方や態度 に大きな差が あり、

子 どもは矛 盾する両 者の扱いに混 乱する場 合。たいていは、子 どもの立場 を考えて混乱や戸 惑いの 生じないように両親 が話 し 合つて調 整するが 、このタイプの親 はそれが できない。両 親 間に 不和や 対立のある場合が多 い。

5.矛 盾的態度

⑩不一致型

図形描画課題

 

赤尾(2008)の図形描画課題 を実施 した。課題 の手続 き、指標 、測定方法 は、

研 究 1と 同様 であつた。

柏木(1988)の

MFFテ

ス ト

 

柏木(1988)の

MFFテ

ス トを実施 した。課題 の手続 き、指標 、 測定方法 は、研 究 1と 同様 であつた。

ドキュメント内 幼児の運動調整に関する発達心理学的研究 (ページ 118-129)