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図形描画課題 を使用 した応用研究

ドキュメント内 幼児の運動調整に関する発達心理学的研究 (ページ 84-106)

2章

では、図形描画課題 の信頼性 と妥 当性 の検討 、そ して運動調整 を測定す る図形描 画課題 と他 の調整 との関連性 を検討 した。 その結果 、図形描画課題 の信頼性 と妥 当性 が明 らか に された。 また、運動調整 を測定す る図形描画課題 と、認知調整 を測定す る

MFFテ

ス トとの間に有意な相関が認 め られ、運動調整のできる子 どもは認知調整 もできることが 示 され た。 しか しなが ら、運動調整 を測定す る図形描画課題 と対人関係調整 を測定す るフ ラス トレー シ ョンテス トとの間には関連性 のある傾 向が認 め られ ただけで、運動調整 と認 知調整 に共通す る衝動性傾 向の効果 は認 め られ なかつた。

次 に、第

3章

では第

2章

で信頼性 と妥 当性 の明 らかに され た図形描画課題 を使用 して、

他 の測度 との関連性 を検討す るために4つ の研究が行 われ た。まず、研究4では、柏木(1988) で作成 された 自己抑制尺度 の短縮版 を作成 し(研4a)、 幼稚 園教諭 に よる幼児 の 自己抑制 尺度 の評価 と幼児 の運動調整 との関連性 を検討 した(研4b)。 研 究

5で

は、幼児 の幼稚園 教諭 と養育者 に同時期 に 自己抑制尺度 を配布 し、幼児 の 自己抑制行動 について評価 をお願 い し、彼 らの評価 と幼児 の図形描画課題 で測定す る手の運動調整 との関連性 を検討 した。

研 究 4と 研 究5を行 うことに よつて、図形描 画課題 で測定す る幼児 の手の運動調整 と、 自 己抑制尺度 を用いて評価す る幼児 の 日常生活 にお ける自己抑制行動 との関連性 を明 らかに で きる。次 に、研 究

6で

は、近年指摘 されてい る子 どもの運動不足 と自己抑制行動 との関 連性(篠

,2008;寺

沢 ら,2000)を 検討す るために、幼児 の 日常の活動性 と図形描画課題 で 測定 した運動調整 との関連性 について検討す る。 さらに、研 究

7で

は、幼児期 の認知調整 が青年 期 の社 会性 を予測 す る もので あ る こ とが先行研 究 に よつて確認 され てい る こ と 飩ischel et al。,1988;Shoda et al。,1990)を 背景 に、幼児期 において も両者 に関連性 が ある のではないか とい う仮説 を立て、幼稚園教諭 の評価 した幼児 の社会的 スキル と幼児 の図形 描画課題 で測定す る運動調整 との関連性 を検討す る。

3‑1 

研 究

4: 

幼児 を対象 と した 自己抑制尺度 の作成 と、それ と運動調 整 との 関連 性 につ いて5

3…

la 

研究

4a:幼

児の 自己抑制行動を測定する質問紙の作成

3‑la‑1 

目的

柏木(1988)は、幼児 の 自己調整機 能 を、「集団場面で 自分 の欲求や行動 を抑制 、制止 しな けれ ばな らない とき、それ を抑制す る」とい う自己抑制行動 と、「自分の欲求や意志 を明確 に持 ち、これ を他人や集団の前で表現 し主張す る」とい う自己主張行動 の

2つ

に分類 した。

そ して、幼稚園教諭 を対象 に、 日常の保育場面や集 団生活 の中で これ ら

2つ

に該 当す る項 目を具体的に挙 げ させ、合計

71項

目の質問紙 を作成 した。 この うち、 自己抑制行動 を測 定す る項 目が

46項

目と、自己主張行動 を測定す る項 目が

25項

目あつた。各項 目の回答方 法 は、「きわめて多い(5)」 か ら 「ほ とん どない(1)」

5件

法で あつた。 さらに、 自己抑制 行動 は「遅延 可能」、「制止 0ルールヘの従順」、「フラス トレー シ ョン耐性」、「持続的対処・

根気」とい う

4因

子 で構成 され 、自己主張行動 は「拒否・強い 自己主張」、「遊びへの参加」、

「独 自性・能動性」 とい う

3因

子 で構成 されていた。

本研 究において も、柏木(1988)で作成 された 自己調整 尺度 の 自己抑制行動 の項 目を使用 して、幼稚園教諭 を対象 に幼児 の 自己抑制行動 について測定 したかったが、幼稚園教諭 よ り 「幼児 1名あた り

46項

目は多す ぎる」 との意見が多数報告 されたため、 この尺度の短 縮版 を作成す るこ とに した。そ こで研 究

4aは

、短縮版 自己抑制尺度 を作成 し、その因子 構造 の確認 と信頼性 の検討 を 目的 として実施 された。

3‑la…2   ブゴ洸姜

(1)調査者 および被調査者

京都府京都市内にある私立幼稚 園に勤務す る幼稚園教諭

8名

(全員女

JDを

対象 に 自己抑 制尺度 を配布 し記入 を求 めた。 この うち 7名 は各 クラスの担任教諭 で、残 り 1名 は補助教 員 で あった。担任教諭 は担 当クラスの幼児 の 自己抑制行動 について一人ずつ個別 に評価 し た。ネ甫助教員 については、各 クラスか ら5名ずつ ランダムに抽 出 され た幼児 につ いて 自己 抑制行動 を評価 した。 なお、本園は

3学

年 8ク ラスで構成 され てお り、年少児 3ク ラス、

5本

研 究 は赤尾 (2008)を 基 に してい る。

年 中児 2ク ラス、年長児 3ク ラスであつた。また、各 クラスにつ き担任教諭 は 1名 であつ た。質問紙記入 は

2学

期末 とい うこともあ り、担任教諭 は質 問紙記入前 に約9ヶ月間子 ど も達 と日常生活 を ともに してお り、子 ども達 の ことを十分 に理解 している と考 えた。また、

担任教諭 の幼稚園勤務平均年数は

6年

(範

:3年

か ら

10年

)であつた。

調査 の対象 となった幼児 は本園に在籍す る146名であつた。その内訳は、年少児 クラス

45名

(男

23名

、女児

22名

)、 年 中児 クラス

40名

(男児 18名 、女児22名)、 年長児 クラ ス61名(男児31名、女児 30名)であつた。対象児 の平均年齢 は、年少児 クラスで4。

37歳

(SD=。31)、 年 中児 クラスで5。

44歳

(SD=。26)、 年長児 クラスで6。

47歳

(SD=。 29)であつた。

調査 に先立 ち、幼児 の保護者 に内容 を説 明 し参加 の同意 を得 た。

(2)手続 き

質 問紙

 

柏木(1988)の 自己抑制尺度 は

4因

42項

目で構成 され ていた。その内訳 は、「遅 延 可能(待て る)」 と命名 され た

15項

目、「制止・ルールヘの従順」 と命名 され た

10項

目、

「フラス トレーシ ョン耐性」 と命名 された

11項

目、「持続的対処・根気」 と命名 され た6 項 目であつた。本研究では、柏木(1988)の 自己抑制行動 を測定す る

42項

目の うち、柏木 (1988)が各因子 の代表的な項 目としてあげている

13項

目を 自己抑制尺度 として採用 した。

これ らは、柏木(1988)において因子負荷量の高かった項 目であつた。その内訳 は、「遅延可 能(待て る)」 か ら

4項

目、「制止・ルールヘ の従順」か ら

3項

目、「フラス トレー シ ョン耐 性」か ら

3項

目、「持続的対処・根気」か ら

3項

目であつた。各項 目へ の回答 は、柏木(1988) に倣 つて、「ほ とん どない(1点)」 か ら「きわめて多い(5点)」 までの

5件

法で、得点が高い ほ ど自己抑制傾 向の高い ことを示す。この尺度の最低得点は

13点

で最高得点は

65点

であ った。

3‑la‑3 

結 果 と考 察

(1)因子分析

1か

4因

子解 を探索的に指定 した因子分析(重み付 けのない最小

2乗

法、プ ロマ ックス 回転)を行 つた結果 、

3因

子構造での解釈 が最 も良好 であ り、妥 当であると判断 した。Table

3‐la‐1(81頁 参照)は

13項

目を各因子別 にま とめた もので ある。先 に

42項

目の 自己抑制行 動 を測定す る質問紙 を対象 として因子分析 を行 つた研 究(柏木,1988)で は、

4因

子 が抽 出 さ れ てい る。本研 究で得た因子 の命名 は、柏木(1988)を参考 に行 つた。まず 、第 I因 子 には、・

遊びの順番や欲 しい もの、 したい ことな ど待て ることと、ルールや教示 を守れ ることに関 す る項 目の付加 が高かったため、「遅延 可能(待て る)」 として

6項

目を決定 した。第 Ⅱ因子 には、自分の欲求や意 向が通 らない場面やそれ らが他 と対立 した時、感情 を爆発 させ た り、

自分 の意見だ けを押 し通そ うとせず に我慢ができることに関す る項 目の付加 が高かつたた め、「フラス トレーシ ョン耐性」 として

4項

目を決 定 した。第

3因

子 には、困難 な課題や 失敗 に挫折 した り、対抗 した りせず に、積極的 に粘 り強 く対処す ることに関す る項 目の付 加 が高かったため、「持続的対処・根気」として

3項

目を決定 した。柏木(1988)が 、「制止・

ルールヘ の従順」 と命名 した因子 の項 目については、

2項

目が本研 究の第

1因

子 に、そ し て

1項

目が本研 究の第

2因

子 に決定 され た。その他 の項 目については、柏木(1988)が行 つ た因子分析結果 と一致す るものであった。

Table 3‐ la‐1。 短縮版 自己抑制尺度の項 目と因子分析結果.

項目内容

10螂

1.ブ

ランコやすべり台を何人かの友達と■緒に使える。かわり│ル慣夏きる。

2.遊

びのル=ノ励時 れる。(ずるをしたり、ごまかしたりし相い。)

3.ブ

ランコやすべり台などの遊びの中で、自分の│1贋番を待てる。

4.教

え弗 たこと 理解し、教示どおりに実行せ る。

5.他

の子の始めた遊び凱 tずら、あざけにすぐつられで¬宙

=難てする。

8.叩

かれても、すぐ叩き返ざ工ヽ I. =石ストレ"滋ョン薔封生

6.人

の目を引こうと目立ったことや力わ たことをしてみる。

  

11.悲

ししtと、くやLLtと、つらしtと4どの感備をす備 計 ず

1装

えら橘 。

12.仲

間とくし糧bた時は願望を抑える。

13.劇

やごつこ遊びの役ぎめの時、なりたい劉

=財Kても費慢せ る。

.鍋

帥 拠・楓

7.自

分のしたこと(絵や工作)を人に│力難珈ると、しょに しまう。

9.ち

ょつと失敵したりうまくい力立ユヽと、すぐあきらめてしまう。

10.少

LLEとを世 ようとすると「で静風 」と言ったりしり込みする。

.857     .057

.836  .122 .725   ■107 .724     .106 .605     .179 .376     .317

009   .662

.085      .617

.160  .532

.221      .521

.115  ■133

.160   ■071

518   .316

027    .784

060    .654 .139      .806 .047       .507

133   .437

.086      .479

.005       .406

123    .606

011    .3(M .189      .433

.945       .434 .842      .751 .523       .855 ヽヽ57

(2)信頼性分析

次 に、短縮版 自己抑制尺度 の各因子 について

Cronbachの

α係数 を求 めた ところ、「遅延 可能」が。88、 「フラス トレーシ ョン耐性」が。76、 「持続的対処・根気」が.78、 といずれ も 高い値 を示 していた。以上の結果 よ り、

3尺

13項

目か らなる 自己抑制尺度 の信頼性 は十 分 に保 たれ てい る と考 え られ た。

(3)学年別の 自己抑制尺度の各因子 と全項 目の平均得点

Table 3‐ la‐2(83頁参照)には、短縮版 自己抑制尺度 の各因子 と全項 目の平均得点 を学年 別 に示 した。これ よ り、「遅延可能」と「フラス トレー シ ョン耐J性」において年 中児の得点 が一番高い ことが分 る。 また、「持続的対処・根気」 と 「全項 目の平均得点」 については、

年長児 で一番得点が高い こ とが分 る。 これ について、学年 を要因 とした一要因の分散分析 を行 つた ところ、「遅延可能」、「フラス トレーシ ョン耐性」、「持続的対処・根気」、「全項 目 の平均 得 点」 の全 て に効果 が認 め られ た(ズ2/143)=6。

54,メ

01;ズ

2/143)=4。

17,メ

01;

2/143)=7。

30,メ

.01;ズ2/143)=8。

45,メ

。01)o「遅延 可能」について

HSD検

定 を行 つた と

ころ、年少児と年中児の間と、年少児と年長児の間に有意な差が認められし

s<。05)、

年少

児の得点が最 も低いことが示 された。「フラス トレーシ ョン耐J性」 について

HSD検

定を 行 つた ところ、年少児 と年 中児 の間 と、年少児 と年長児 の間に有意な差が認 め られしs

<。05)、 年少児の得点が最 も低いことが示 された。「持続的対処・根気」について

HSD検 定を行つたところ、年少児と年長児の間に有意な差が認められし

s<。05)、

年少児の方が得

点 の低 い こ とが示 され た。「全 項 目の平均 得 点」につ い て

HSD検

定 を行 つた ところ、年少 児 と年中児の間 と、年少児 と年長児の間に有意な差が認 められOsく 05)、 年少児の得′点が 低いことが示 された。すなわち、短縮版 自己抑制尺度の各因子、全項 目の平均得点 ともに 年少児が他の学年 と比べて得点が低 く、 自己抑制行動を取れない と評価 されていることが 明 らかにされた。

以 上 をま とめ る と、短縮版 自己抑 制 尺度 の評価 で は年 少児 の得 点 が低 く、年 少児 にお い て 自己抑 制行 動 の取れ ない幼児 の多 い こ とが示 され た。 さ らに、短縮版 自己抑 制 尺度 の得 点 は必 ず しも年 長 児 が高 い わ けで はな く、年 中児 以 降 は 自己抑 制 行動 の取れ る幼児 と取れ ない幼 児 に分れ る こ とが示 され た。

ドキュメント内 幼児の運動調整に関する発達心理学的研究 (ページ 84-106)