第
2章
では、図形描画課題 の信頼性 と妥 当性 の検討 、そ して運動調整 を測定す る図形描 画課題 と他 の調整 との関連性 を検討 した。 その結果 、図形描画課題 の信頼性 と妥 当性 が明 らか に された。 また、運動調整 を測定す る図形描画課題 と、認知調整 を測定す るMFFテ
ス トとの間に有意な相関が認 め られ、運動調整のできる子 どもは認知調整 もできることが 示 され た。 しか しなが ら、運動調整 を測定す る図形描画課題 と対人関係調整 を測定す るフ ラス トレー シ ョンテス トとの間には関連性 のある傾 向が認 め られ ただけで、運動調整 と認 知調整 に共通す る衝動性傾 向の効果 は認 め られ なかつた。
次 に、第
3章
では第2章
で信頼性 と妥 当性 の明 らかに され た図形描画課題 を使用 して、他 の測度 との関連性 を検討す るために4つ の研究が行 われ た。まず、研究4では、柏木(1988) で作成 された 自己抑制尺度 の短縮版 を作成 し(研究4a)、 幼稚 園教諭 に よる幼児 の 自己抑制 尺度 の評価 と幼児 の運動調整 との関連性 を検討 した(研究4b)。 研 究
5で
は、幼児 の幼稚園 教諭 と養育者 に同時期 に 自己抑制尺度 を配布 し、幼児 の 自己抑制行動 について評価 をお願 い し、彼 らの評価 と幼児 の図形描画課題 で測定す る手の運動調整 との関連性 を検討 した。研 究 4と 研 究5を行 うことに よつて、図形描 画課題 で測定す る幼児 の手の運動調整 と、 自 己抑制尺度 を用いて評価す る幼児 の 日常生活 にお ける自己抑制行動 との関連性 を明 らかに で きる。次 に、研 究
6で
は、近年指摘 されてい る子 どもの運動不足 と自己抑制行動 との関 連性(篠原,2008;寺
沢 ら,2000)を 検討す るために、幼児 の 日常の活動性 と図形描画課題 で 測定 した運動調整 との関連性 について検討す る。 さらに、研 究7で
は、幼児期 の認知調整 が青年 期 の社 会性 を予測 す る もので あ る こ とが先行研 究 に よつて確認 され てい る こ と 飩ischel et al。,1988;Shoda et al。,1990)を 背景 に、幼児期 において も両者 に関連性 が ある のではないか とい う仮説 を立て、幼稚園教諭 の評価 した幼児 の社会的 スキル と幼児 の図形 描画課題 で測定す る運動調整 との関連性 を検討す る。3‑1
研 究4:
幼児 を対象 と した 自己抑制尺度 の作成 と、それ と運動調 整 との 関連 性 につ いて53…
la
研究4a:幼
児の 自己抑制行動を測定する質問紙の作成3‑la‑1
目的柏木(1988)は、幼児 の 自己調整機 能 を、「集団場面で 自分 の欲求や行動 を抑制 、制止 しな けれ ばな らない とき、それ を抑制す る」とい う自己抑制行動 と、「自分の欲求や意志 を明確 に持 ち、これ を他人や集団の前で表現 し主張す る」とい う自己主張行動 の
2つ
に分類 した。そ して、幼稚園教諭 を対象 に、 日常の保育場面や集 団生活 の中で これ ら
2つ
に該 当す る項 目を具体的に挙 げ させ、合計71項
目の質問紙 を作成 した。 この うち、 自己抑制行動 を測 定す る項 目が46項
目と、自己主張行動 を測定す る項 目が25項
目あつた。各項 目の回答方 法 は、「きわめて多い(5)」 か ら 「ほ とん どない(1)」 の5件
法で あつた。 さらに、 自己抑制 行動 は「遅延 可能」、「制止 0ルールヘの従順」、「フラス トレー シ ョン耐性」、「持続的対処・根気」とい う
4因
子 で構成 され 、自己主張行動 は「拒否・強い 自己主張」、「遊びへの参加」、「独 自性・能動性」 とい う
3因
子 で構成 されていた。本研 究において も、柏木(1988)で作成 された 自己調整 尺度 の 自己抑制行動 の項 目を使用 して、幼稚園教諭 を対象 に幼児 の 自己抑制行動 について測定 したかったが、幼稚園教諭 よ り 「幼児 1名あた り
46項
目は多す ぎる」 との意見が多数報告 されたため、 この尺度の短 縮版 を作成す るこ とに した。そ こで研 究4aは
、短縮版 自己抑制尺度 を作成 し、その因子 構造 の確認 と信頼性 の検討 を 目的 として実施 された。3‑la…2 ブゴ洸姜
(1)調査者 および被調査者
京都府京都市内にある私立幼稚 園に勤務す る幼稚園教諭
8名
(全員女JDを
対象 に 自己抑 制尺度 を配布 し記入 を求 めた。 この うち 7名 は各 クラスの担任教諭 で、残 り 1名 は補助教 員 で あった。担任教諭 は担 当クラスの幼児 の 自己抑制行動 について一人ずつ個別 に評価 し た。ネ甫助教員 については、各 クラスか ら5名ずつ ランダムに抽 出 され た幼児 につ いて 自己 抑制行動 を評価 した。 なお、本園は3学
年 8ク ラスで構成 され てお り、年少児 3ク ラス、5本
研 究 は赤尾 (2008)を 基 に してい る。年 中児 2ク ラス、年長児 3ク ラスであつた。また、各 クラスにつ き担任教諭 は 1名 であつ た。質問紙記入 は
2学
期末 とい うこともあ り、担任教諭 は質 問紙記入前 に約9ヶ月間子 ど も達 と日常生活 を ともに してお り、子 ども達 の ことを十分 に理解 している と考 えた。また、担任教諭 の幼稚園勤務平均年数は
6年
(範囲:3年
か ら10年
)であつた。調査 の対象 となった幼児 は本園に在籍す る146名であつた。その内訳は、年少児 クラス
45名
(男児23名
、女児22名
)、 年 中児 クラス40名
(男児 18名 、女児22名)、 年長児 クラ ス61名(男児31名、女児 30名)であつた。対象児 の平均年齢 は、年少児 クラスで4。37歳
(SD=。31)、 年 中児 クラスで5。
44歳
(SD=。26)、 年長児 クラスで6。47歳
(SD=。 29)であつた。調査 に先立 ち、幼児 の保護者 に内容 を説 明 し参加 の同意 を得 た。
(2)手続 き
質 問紙
柏木(1988)の 自己抑制尺度 は
4因
子42項
目で構成 され ていた。その内訳 は、「遅 延 可能(待て る)」 と命名 され た15項
目、「制止・ルールヘの従順」 と命名 され た10項
目、「フラス トレーシ ョン耐性」 と命名 された
11項
目、「持続的対処・根気」 と命名 され た6 項 目であつた。本研究では、柏木(1988)の 自己抑制行動 を測定す る42項
目の うち、柏木 (1988)が各因子 の代表的な項 目としてあげている13項
目を 自己抑制尺度 として採用 した。これ らは、柏木(1988)において因子負荷量の高かった項 目であつた。その内訳 は、「遅延可 能(待て る)」 か ら
4項
目、「制止・ルールヘ の従順」か ら3項
目、「フラス トレー シ ョン耐 性」か ら3項
目、「持続的対処・根気」か ら3項
目であつた。各項 目へ の回答 は、柏木(1988) に倣 つて、「ほ とん どない(1点)」 か ら「きわめて多い(5点)」 までの5件
法で、得点が高い ほ ど自己抑制傾 向の高い ことを示す。この尺度の最低得点は13点
で最高得点は65点
であ った。3‑la‑3
結 果 と考 察(1)因子分析
1か
ら4因
子解 を探索的に指定 した因子分析(重み付 けのない最小2乗
法、プ ロマ ックス 回転)を行 つた結果 、3因
子構造での解釈 が最 も良好 であ り、妥 当であると判断 した。Table3‐la‐1(81頁 参照)は
13項
目を各因子別 にま とめた もので ある。先 に42項
目の 自己抑制行 動 を測定す る質問紙 を対象 として因子分析 を行 つた研 究(柏木,1988)で は、4因
子 が抽 出 さ れ てい る。本研 究で得た因子 の命名 は、柏木(1988)を参考 に行 つた。まず 、第 I因 子 には、・遊びの順番や欲 しい もの、 したい ことな ど待て ることと、ルールや教示 を守れ ることに関 す る項 目の付加 が高かったため、「遅延 可能(待て る)」 として
6項
目を決定 した。第 Ⅱ因子 には、自分の欲求や意 向が通 らない場面やそれ らが他 と対立 した時、感情 を爆発 させ た り、自分 の意見だ けを押 し通そ うとせず に我慢ができることに関す る項 目の付加 が高かつたた め、「フラス トレーシ ョン耐性」 として
4項
目を決 定 した。第3因
子 には、困難 な課題や 失敗 に挫折 した り、対抗 した りせず に、積極的 に粘 り強 く対処す ることに関す る項 目の付 加 が高かったため、「持続的対処・根気」として3項
目を決定 した。柏木(1988)が 、「制止・ルールヘ の従順」 と命名 した因子 の項 目については、
2項
目が本研 究の第1因
子 に、そ し て1項
目が本研 究の第2因
子 に決定 され た。その他 の項 目については、柏木(1988)が行 つ た因子分析結果 と一致す るものであった。Table 3‐ la‐1。 短縮版 自己抑制尺度の項 目と因子分析結果.
項目内容
10螂 に ひ
1.ブ
ランコやすべり台を何人かの友達と■緒に使える。かわり│ル慣夏きる。2.遊
びのル=ノ励時 れる。(ずるをしたり、ごまかしたりし相い。)3.ブ
ランコやすべり台などの遊びの中で、自分の│1贋番を待てる。4.教
え弗 たこと 理解し、教示どおりに実行せ る。5.他
の子の始めた遊び凱 tずら、あざけにすぐつられで¬宙=難てする。
8.叩
かれても、すぐ叩き返ざ工ヽ。 I. =石ラストレ"滋ョン薔封生6.人
の目を引こうと目立ったことや力わ たことをしてみる。・
11.悲
ししtと、くやLLtと、つらしtと4どの感備をす備 計 ず1装
えら橘 。12.仲
間とくし糧bた時は願望を抑える。13.劇
やごつこ遊びの役ぎめの時、なりたい劉=財磁Kても費慢せ る。
Ⅲ
.鍋
帥 拠・楓7.自
分のしたこと(絵や工作)を人に│力難珈ると、しょに しまう。9.ち
ょつと失敵したりうまくい力立ユヽと、すぐあきらめてしまう。10.少
囃 LLEとを世 ようとすると「で静風 」と言ったりしり込みする。.857 .057
.836 .122 .725 ■107 .724 .106 .605 .179 .376 .317
■009 .662
.085 .617
.160 .532
.221 .521
.115 ■133
.160 ■071
■518 .316
■027 .784
■060 .654 .139 .806 .047 .507
■133 .437
.086 .479
.005 .406
■123 .606
■011 .3(M .189 .433
.945 .434 .842 .751 .523 .855 ヽヽ57
(2)信頼性分析
次 に、短縮版 自己抑制尺度 の各因子 について
Cronbachの
α係数 を求 めた ところ、「遅延 可能」が。88、 「フラス トレーシ ョン耐性」が。76、 「持続的対処・根気」が.78、 といずれ も 高い値 を示 していた。以上の結果 よ り、3尺
度13項
目か らなる 自己抑制尺度 の信頼性 は十 分 に保 たれ てい る と考 え られ た。(3)学年別の 自己抑制尺度の各因子 と全項 目の平均得点
Table 3‐ la‐2(83頁参照)には、短縮版 自己抑制尺度 の各因子 と全項 目の平均得点 を学年 別 に示 した。これ よ り、「遅延可能」と「フラス トレー シ ョン耐J性」において年 中児の得点 が一番高い ことが分 る。 また、「持続的対処・根気」 と 「全項 目の平均得点」 については、
年長児 で一番得点が高い こ とが分 る。 これ について、学年 を要因 とした一要因の分散分析 を行 つた ところ、「遅延可能」、「フラス トレーシ ョン耐性」、「持続的対処・根気」、「全項 目 の平均 得 点」 の全 て に効果 が認 め られ た(ズ2/143)=6。
54,メ
。01;ズ
2/143)=4。17,メ
。01;ズ2/143)=7。
30,メ
.01;ズ2/143)=8。45,メ
。01)o「遅延 可能」についてHSD検
定 を行 つた ところ、年少児と年中児の間と、年少児と年長児の間に有意な差が認められし
s<。05)、年少
児の得点が最 も低いことが示 された。「フラス トレーシ ョン耐J性」 について
HSD検
定を 行 つた ところ、年少児 と年 中児 の間 と、年少児 と年長児 の間に有意な差が認 め られしs<。05)、 年少児の得点が最 も低いことが示 された。「持続的対処・根気」について
HSD検 定を行つたところ、年少児と年長児の間に有意な差が認められし
s<。05)、年少児の方が得
点 の低 い こ とが示 され た。「全 項 目の平均 得 点」につ い て
HSD検
定 を行 つた ところ、年少 児 と年中児の間 と、年少児 と年長児の間に有意な差が認 められOsく 。05)、 年少児の得′点が 低いことが示 された。すなわち、短縮版 自己抑制尺度の各因子、全項 目の平均得点 ともに 年少児が他の学年 と比べて得点が低 く、 自己抑制行動を取れない と評価 されていることが 明 らかにされた。以 上 をま とめ る と、短縮版 自己抑 制 尺度 の評価 で は年 少児 の得 点 が低 く、年 少児 にお い て 自己抑 制行 動 の取れ ない幼児 の多 い こ とが示 され た。 さ らに、短縮版 自己抑 制 尺度 の得 点 は必 ず しも年 長 児 が高 い わ けで はな く、年 中児 以 降 は 自己抑 制 行動 の取れ る幼児 と取れ ない幼 児 に分れ る こ とが示 され た。