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本研 究は、幼児期 の 自己抑制行動 の一側面である運動調整 を測定す るための新 しい課題 の開発 を 目的 に実施 され た。新 しい課題 は描画行動 を基本 とした図形描画課題で、

4つ

の 章 に亘 ってその課題 の有効性 を検討す るために研 究が進 め られ た。第

1章

では、 自己抑制 行動 に関す る意義 を示 し、その歴史や先行研究、本研究の 目的 を示 した。 それ をもとに、

2章

では、「運動調整 を測定す る新 しい図形描画課題の信頼性 と妥 当性 の検討 と、それ と他 の調整 との関連性 の検討」 を様 々な視点か ら行 つた。次 に、第

3章

では、「図形描画 課題 を使用 した応用研 究」 として、図形描画課題 で測定す る運動調整 が、幼児 の 日常生活 にお ける どの よ うな行動 と関連性 が高いのかを検討す るために研究 を行 つた。 さらに、第

4章

では、「親子 関係 と幼児 の 自己抑制行動 の発達」 として、母親 の しつ け態度 と幼児 の 自 己抑制行動 との関連性 を検討 した。

5‑1 

本 研 究 の 結 果 の ま と め

5‑1‑1 

図 形描 画課 題 開発 の信頼 性 と妥 当性 の検 討 につ いての ま とめ

本論文の第

2章

では、筆者 が新 しく開発 した運動調整 を測定す る図形描画課題 の信頼性 と妥 当性 の検討 を行 つた。幼児 の 自己抑制行動 は運動調整、認知調整 、対人関係調整 の 3 つ の課題 を使用 して測定 した。

研 究

1で

は、従来の運動調整 を測定す る課題 である線テス トとの比較 を通 して、図形描 画課題 が運動調整 を測定す る課題 として妥 当性 が高いか否かを検討 した。その結果 、

2つ

の課題 の所要時間の間に有意 な相関が認 め られ、線テス トの抑制教示試行でゆつ くり線 を 描 ける幼児 は、図形描画課題 の抑制教示試行 において もゆつ くり線 の描 けることが示 され 、 図形描画課題 の妥 当性 が確認 され た。次 に、認知調整 を測定す る

MFFテ

ス トと運動調整 を測定す る線テス ト、図形描画課題 の

3つ

の関連性 を検討 した ところ、

MFFテ

ス トの各 指標 と図形描画課題 の各指標 との間に有意 な相 関が認 め られ 、

MFFテ

ス トにおいて衝動 的 に行動す る子 どもは図形描画課題 において も衝動的 に行動す ることが示 され 、この

2つ

の課題 は課題遂行時の衝動性傾 向を測定す るとい う点 において関連性 のあることが明 らか に され た。 しか しなが ら、線 テス トと

MFFテ

ス トの各指標 間には有意 な相 関が認 め られ ず 、

2つ

の課題 の関連性 は見出 され なかった。

研 究

2で

は、運動調整 と対人関係調整 との関連性 を検討 した。その結果、図形描画課題 において逸脱回数が少な く正確 に手の運動調整 を行 う幼児 は、フラス トレー シ ョンテ ス ト において も課題 で要求 され る反応 を選択 できる傾 向が示 され、運動調整 と対人関係調整 と の間に関連性 のある傾 向が示 された。 しか しなが ら、対人関係調整 については、 自己抑制 行動 を決定す る衝動性傾 向の効果 は認 め られ なかつた。

研 究

3で

は、図形描画課題 の信頼性 を検討す るために、縦断研究 と横断研 究の

2つ

を行 い、図形描画課題 の

2つ

の指標 が発達切日齢)にともなつて どの よ うに変化す るかが検討 さ れ た。研 究

3aで

は、被験者 内要因で

2年

間の縦断研 究 を行 つた ところ、所要時間につい ては発達 に伴 う変化が認 め られ ないが、逸脱回数 については発達 に伴 つて減少す ることが 確認 され た。 また、子 どもの衝動性傾 向を測定す る衝動性得点や子 どもの課題遂行能力 を 測定す る非効率性得点 については、発達 による変化 の確認 され ない ことが示 され た。 この 結果 は、個人の持つ衝動性傾 向や非効率性傾 向が状態依存的ではな く、特性 的 な意味 を持 つ可能性 を示唆 してい る と考 え られ る。研究

3bで

は、幼稚園年少児か ら小学

1年

生 まで を対象 とした図形描画課題 の所要時間 と逸脱回数の分布 を示 した。その結果 、抑制教示 に 従 つた所要時間の分布 については年 中児 を境 に分布 に変化 が認 め られ 、教示 に したがつて よ りゆつ くりと線 を描 けるのは年 中児以降であることが示 され た。逸脱回数 については、

無教示試行 と抑制教示試行で年長児 を境 に分布 の変化 が認 め られ 、年長児以降は逸脱せず に星型 を一周 で きる子 ども達の多い ことが示 され た。 しか しなが ら、促進教示試行 におい ては、年長児 は逸脱回数 1回の対象児 が最 も多 く、小学

1年

生 を境 に分布 の変化が認 め ら れ 、幼稚 園児 には困難で あることが示 され た。研 究3cでは、発達的な影響 を受 ける図形描 画課題 の逸脱 回数が、

4年

間 とい う期 間において どの よ うに変化す るのか を検討 した。 そ の結果 、抑制教示下において、逸脱回数 は年少児 か ら年長児 に向かつて減少す るものの、

年長児 と小学

1年

生の間に有意 な差の認 め られ ない こ とが明 らかに された。 これ は、小学

1年

生 において も抑制教示下で手の運動調整 を行 うことがまだ困難 である子 ども達のい る ことを示 した結果であつた。小学

1年

生 において も逸脱 回数

0回

の子 どもが

60%に

止 まっ てい るため、小学

2年

生以降において も逸脱 回数分布 を測定す る必要性 があろ う。

5‑1‑2 

図形描 画 課 題 を使 用 した応 用研 究 の ま とめ

本論文 の第

3章

は、幼稚 園教諭や母親 の評価す る幼児 の 日常生活 にお ける 自己抑制行動 、 幼児 の 日常の活動性や、幼児 の社会的 スキル と、図形描画課題 で測定 され る幼児 の運動調

整 との関連性 を検討す るために実施 された。

研 究

4aで

は、柏木(1988)の 自己抑制尺度 の短縮版 を作成 しその信頼性 の検討 が行 われ た。

その結果、短縮版 自己抑制尺度は「遅延可能」、「フラス トレーシ ョン耐性」、「持続的対処・

根気」の

3因

13項

目で構成 され ることが明 らかに され た。 さらに研 究

4bで

は、短縮版 自己抑制尺度 を使用 し、幼稚園教諭 の評価す る幼児 の 自己抑制行動 と図形描画課題 の各指 標 との関連性 について検討 された。その結果、短縮版 自己抑制尺度の得点 と図形描画課題 の逸脱回数 の間に有意 な負 の相関が認 め られ、短縮版 自己抑制尺度で得点の高い 自己抑制 行動 を選択 できる幼児 は、図形描画課題 において逸脱回数の少 ない とい う結果が得 られ た。

さらに、短縮版 自己抑制尺度 を下位 因子 ごとに検討 してみ ると、図形描画課題 の逸脱回数 と、「遅延可能」因子 との関連性 が最 も高い ことが示 された。これ は、図形描画課題 で逸脱 回数 の少ない幼児 は、 日常生活 において我慢 しなけれ ばいけない場面に遭遇 した場合 に、

我慢 のできることを示す重要 な結果 である。

さらに研 究

5で

は、幼稚園教諭 と母親 に同時期 に短縮版 自己抑制尺度 の回答 を求 めた。

そ して、幼稚園教諭 と母親 が一人の幼児 の 自己抑制行動 を どの よ うに捕 らえてい るかを検 討 した。その結果 、幼稚園教諭 の評価 も母親 の評価 も類似 してお り、同 じ視点か ら一人の 幼児 の 自己抑制行動 を評価 してい ることが明 らかに された。 さらにこれ らの得点 と幼児 の 図形描画課題 の各指標 との関連性 を検討す る と、短縮版 自己抑制尺度で得点の高い 自己抑 制行動 を選択 できる幼児 は、図形描画課題 の所要時間が長い ことが示 され た。 また、短縮 版 自己抑制尺度 で得点の高い 自己抑制行動 を選択 できる幼児 は、逸脱回数 の少 ない ことも 示 され た。 この傾 向は抑制教示試行 で最 も強 く認 め られ た。

研 究

6で

は、万歩計の歩数 を指標 とした幼児 の 日常生活 にお ける活動性 と、図形描画課 題 の各指標 との関連性 を検討 した。その結果、歩数 の多い幼児 は図形描画課題 の無教示試 行 の逸脱回数の少 ない ことが明 らかに され た。 さらに、図形描画課題 において衝動性得点 が高 く衝動性傾 向の高い幼児 は歩数の少ない傾 向にあること、非効率性得点が高 く非効率 な方法で課題 を遂行す る幼児 は歩数の少 ない ことが示 され た。以上 よ り、 日常生活 におい て活動性 の少 ない子 どもは手の運動調整が未熟で、課題 を行 う際に非効率な方法で行 うこ とが明 らかに され た。 この傾 向は、篠原(2008)らを支持す る結果で、抑制す る とい う行動 を獲得す るためには、「動 くことができる」 とい うことが前提 であることを示唆 してい る。

研 究

7で

は、図形描画課題 の衝動性得点 によって抽 出 された衝動群 と熟慮群 の社会的ス キル尺度で測定 され た社会的スキル と、短縮版 自己抑制尺度で測定 された 日常生活 にお け

る 自己抑制行動 との関連性 について検討 した。その結果、社会的スキル尺度 の各得点 につ いては衝動群 と熟慮群 に差が認 め られ ないが、短縮版 自己抑制尺度の得点については衝動 群 の方が低 く、 自己抑制行動 を獲得 できていない ことが明 らかに され た。次 に、図形描画 課題 の各指標 と、短縮版 自己抑制尺度 の得点 と、社会的スキル尺度 の得点 との関連性 につ いて相 関分析 を行 つた。その結果、以下の

3つ

の ことが明 らかに された。

 1つ

日は、社会

的 スキル尺度 において主張スキル の高い幼児 は、図形描画課題 の無教示試行 と促進教示試 行 において所要時間が短 く、抑制教示 が与 え られ ない場合の課題遂行 においては、効率的 に課題 を行 うことが示 され た。 また、 この結果 は、主張スキル の高い幼児 の非効率性得点 の低 い ことか らも裏付 け られてお り、主張スキル の高い幼児 は課題 を行 う際に効率的な方 法 で課題 を行 うこ とが明 らかに され た。

2つ

日は、社会的 スキル尺度 の社会的スキル領域 の 「自己統制 スキル」 と短縮版 自己抑制尺度 との間に有意な関連性 が認 め られ、

2つ

の尺 度 の構成概念妥 当性 が確認 され た こ とで あった。

3つ

目は、短縮版 自己抑制尺度 において

「遅延可能」 と評価 された幼児は、社会的スキル尺度の問題行動領域の 「不注意・多動行 動」が少 ない ことが明 らか に され た。 また、図形描画課題 の逸脱回数 も、短縮版 自己抑制 尺度 の 「遅延行動」 とは関連性 が高い ことも明 らかに され てい る。 しか しなが ら、図形描 画課題 の逸脱 回数 と社会的スキル尺度の問題行動領域 の 「不注意 0多 動行動」の間には有 意 な関連性 は見出せ なかった。 したがって、幼児期 にお ける手の運動調整 は、幼児期 の社 会的 スキル尺度で測定す るよ うな対人関係 を軸 とした調整 と関連性 の低い ことが示 され た。

5‑1‑3 

親 子 関係 と幼 児 の 自己抑制 行 動 の発 達 につ いての ま とめ

本論文 の第

4章

では、幼児 の 自己抑制行動 の規定因を検討す るために、親子関係検査で 測定す る母親 の しつ け態度 と幼児 の 自己抑制行動 との関連性 を検討 した。そのために研究

8で

は、母親 の しつ け態度 については

TK式

幼児用親子 関係検査(品川・品川,1992)を用い て測定 し、幼児 の 自己抑制行動 については図形描画課題 を使用 した運動調整 と

MFFテ

(柏木,1988)を 使用 した認知調整 を測定 した。その結果 、性別群 による母親 の しつ け態度 については、女児 に対 しての方が母親 が不満 な態度 で接す ることが示 された。その他 の型 については男女児 間に有意 な差 は認 め られず、性別 を越 えて母親 は同様 な態度で子 どもに 接 してい るこ とが明 らかに され た。

次 に、運動調整 を測定す る図形描画課題 の無教示試行 の所要時間 と逸脱回数 よ り算 出 さ れ る衝動性得点 を使用 して得点の高い衝動群 と、得点の低い熟慮群 の母親 の しつ け態度 に

ドキュメント内 幼児の運動調整に関する発達心理学的研究 (ページ 129-147)