本節では建築外皮に用いられる製品について製造時の品質保証の実態について整理 する。まず全社の製造プロセスおよび製造中の試験実施状況について整理する。試験実 施状況については実施内容および試験時に参照される基準を調査することで、製品の 性能が担保されているか明らかにする。
5.3.1 製品製造プロセス
本節では各社の製品製造プロセスについての結果を整理する。
本論文における製品の製造プロセスに関する調査は、十分な結果が得られた日本・タ イ・ベトナムの3国について分析を行う。
まず各国の製造プロセスに関する概要を述べる。
日本ではガラス製造から加工を一つのプロセス、フレーム製造~加工~CW 加工までを 一つのプロセスとして、一つの企業が担うプロセスが多い。
タイおよびベトナムでは、ガラス製造・ガラス加工・フレーム製造・フレーム加工・CW 加工とそれぞれのプロセスを別の企業が担うことが多い。特にガラス製造から加工につ いては、タイではガラス製造会社3社、ガラス加工会社30~40社に対して、ガラスの製 造から加工を1社で担う企業は2社にとどまり、ベトナムではガラス製造会社 8社、ガ ラス加工会社200社に対して、ガラスの製造から加工を1社で担う企業は20~30社にと どまっている。
日本企業とアジア蒸暑地域の企業では一つの企業が担うプロセスが異なるため、日系 企業が現地にて業務を拡大するためには、地元企業と協力して分業することが必要なの ではないかと考えられる。
本論文では十分な結果が得られた日本 1 社(CW 製造業者)、タイ 6 社(ガラス製造会 社:1社、ガラス加工会社:2社、ガラス製造~加工会社:1社(日系企業)、フレーム加 工会社:1社、CW加工会社:1社)、ベトナム3社(ガラス製造~加工会社:1社、ガラス 加工~CW加工会社:1社、フレーム組立会社:1社)についての結果を整理する。
5章 アジア蒸暑地域における建築外皮性能担保の実態
133 図5.3-1 製造プロセス
5章 アジア蒸暑地域における建築外皮性能担保の実態
5.3.2 試験実施状況
本節では各社の製品性能担保のための試験実施状況についての結果を整理する。
本論文における製品の試験実施状況に関する調査は、十分な結果が得られた日本・タ イ・香港・ベトナム・シンガポールの5国について分析を行う。
まず各社の試験実施状況を表5.3-1にて整理する。日本・タイ・香港・ベトナム・シン ガポールについて分析を行うこととする。しかしベトナムの10社は未回答であったため 分析には除くこととする。
試験内容に関して、実施しているが詳細不明の場合は○、目視試験は Visual、寸法な どの測定は Measuring、重量など数値の確認は Value、性能試験はPerformance、用いる 原材料に関する試験は Material、用いる原材料に関して工場からの試験レポート確認の
場合はReport、規格に沿った試験(詳細不明)の場合はStandard、試験未実施の場合は
×にて示す。またグレー部分は未回答であった企業である。
表5.3-1に示す通り、すべての企業において加工後の製品試験は行われていた。すべて
の企業で国内規格もしくは国際規格に沿って試験が実施されていることが、各企業への ヒアリングにより分かった。規格等に関しては表5.3-2にて示すこととする。
試験内容としては日本、香港(日系企業)、シンガポール(日系企業)の3国では加工 後に目視及び寸法試験に加え、性能試験も行われていることが分かった。加工中にも目視 や寸法などの測定をしながら、品質を保つ制度が整っていた。
シンガポールにおいて窓の試験については E-value とU-value は認証をシンガポール 政府認定機関に提出しなければならないため、特にすべての企業で提示する必要がある。
(政府認定機関はシンガポール/マレーシア/ベトナムにあり、国際機関と相互認定も行 っている)
タイおよびベトナムにおいては、企業によって行う試験の内容や手順は異なるが、加工 後に加え、加工前もしくは加工中に試験を行うことが多い。特に加工前に行う試験に関し ては、原材料の重さなどの数値の確認や、原材料を製造した企業からの試験レポートの確 認を行うなどであった。
上記の結果から、日本、タイ、香港、ベトナム、シンガポールの調査を行った企業にお いて、建築外皮に用いる製品に関しては、品質が保証されているといえる。
しかし調査を行った企業はいずれも、大規模な工場であり、地元の小規模工場について
5章 アジア蒸暑地域における建築外皮性能担保の実態
135
表5.3-1 各社における試験実施状況
JP TH
1 2 3 4 5 6 7
試 験 内 容
加工前
全製品 × ×
× 〇 〇 VS, MS RP
サンプル × VL
加工中
全製品 VS, MS VS, MS
VS, MS × × ×
サンプル × VL
加工後
全製品 VS, MS
VS PF VS, ST ST ST PF
サンプル PF, MT
HK VN SG
8 9 10 11 12
試 験 内 容
加工前
全製品
× × ×
×
サンプル ×
加工中
全製品 VS, MS
○ ST
×
サンプル × ×
加工後
全製品 VS, MS
○ ST
VS, MS サンプル VS, MS,
PF
VS, MS, PF
凡例 試験実施
○:詳細不明、VS:目視、MS:寸法など測定、VL:重さなど数値確認、
PF:性能試験、MT:用いる原材料の試験、
RP:用いる原材料の製造工場からの試験レポート確認、ST:規格に沿う(詳細不明)
試験未実施
×:未実施
5章 アジア蒸暑地域における建築外皮性能担保の実態
次に各社における試験実施時に参照する基準や規格について表 5.3-2 にて示す。ベト ナムにおける試験実施時に参照する基準や規格については 9、10 社において未回答であ ったため、日本・タイ・香港・シンガポールに加えてベトナムの11社について分析を行 うこととする。
基準や規格についてはヒアリング調査によって得られた基準等を○×表にて示すこと とする。
アジア蒸暑地域における国内規格としては、タイにおける規格TIS、ベトナムにおける 規格TCVN、シンガポールにおける規格SS(Singapore Standard)の3つである。
国際規格もしくは先進国における規格としては、日本の規格JIS、国際規格ISO、アメ リカの規格ASTMおよびAAMA、イギリスの規格BS(British Standard)、ヨーロッパの規 格EN、オーストラリアの規格AS/NZの7つである。
国際基準としては、国際試験所認定協力機構 ILAC(試験所・検査機関を認定する機関 だけの国際組織)、相互承認協定MRA、アジア太平洋試験所認定協力機構APLAC(APEC 域 内の試験所認定機関の協力組織)の3つ5-4)である。
またその他、公式的な基準ではないが、社内基準や他社基準(調査を行った国における 主要製造会社の基準)、物件仕様なども聞かれた。
表 5.3-2 より、すべての企業において国内規格だけでなく国際規格を用いて試験を実
施していた。その理由としては香港においては規格を持っていないためである。その他の 国に関しては 2 つの理由が考えられる。まず一つ目は国際規格もしくは先進国における 規格の方が、自国の規格より高いレベルが求められているため、さらに高い皮質を目指す ために採用していることが考えられる。二つ目は自国の規格もしくは基準では試験規格 が不足しているため、自国のみでは十分な試験が実施できないことが考えられる。
一つ目の理由、国際規格もしくは先進国の規格の方がアジア蒸暑地域における自国の 試験規格よりも高いレベルを求めている可能性がある点に関しては、実際にタイにおけ るヒアリング調査の際にタイ規格よりも国際規格の方が高い水準を求めているため採用 したという声も聞くことができた。
二つ目の理由、アジア蒸暑地域における自国の試験規格の不足については、表5-2-3に
て日本のJIS、タイのTIS、ベトナムのTCVN、シンガポールのSSについて試験規格の整
備状況の比較を示す。表 5.3-3からも読み取れるように、アジア蒸暑地域 3 国の規格は 日本のJISと比較して試験規格が不足していることがわかる。
5章 アジア蒸暑地域における建築外皮性能担保の実態
137
表5.3-2 各社における試験実施時に参照する基準や規格
JP TH HK VN SG
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12
アジア蒸暑 地域規格
TIS ○ ○ ○ ○ ○
TCVN ○
SS
国際規格・
先進国規格
JIS ○ ○ ○ ○
ISO ○ ○ ○ ○
ASTM ○ ○ ○ ○
AAMA ○
BS ○ ○
EN ○ ○
AS/NZ ○ ○ ○
国際基準
ILAC ○
MRA ○
APLAC ○
その他
社内基準 ○ ○ ○ ○ ○ 物件仕様 ○ ○ 他社基準 ○
5章 アジア蒸暑地域における建築外皮性能担保の実態 表5.3-3 各規格の試験規格の整備状況5-5),5-6),5-7),5-8),5-9)
JP VN TH SG
JIS TCVN TIS SS
ガ ラ ス
材 料
フロート板ガラス及び磨き板ガラス R 3202 7219:2002 54-2558、
880-2547 ×
型板ガラス R 3203 7527:2004
2203-2558 ×
網入板ガラス及び線入板ガラス R 3204 7456:2004 × ×
合わせガラス R 3205
7364-1:2004、
7364-2:2004、
7364-3:2004
1222-2539 ×
強化ガラス R 3206
7364-4:2004、
7368:2004
965-2537 ×
熱線吸収板ガラス R 3208 7529:2005 × × 複層ガラス R 3209 8260:2009
1231-2558 ×
熱線反射ガラス R 3221 7528:2004 × ×
倍強度ガラス R 3222 × × ×
Low-Eガラス × ×
2736-2559 ×
性 能
透過率 R 3106 7737:2007 × ×
反射率 R 3106 7737:2007 × ×
放射率 R 3106 × × ×
日射熱取得率 R 3106 7737:2007 × × 熱貫流率 R 3107 7737:2007 × ×
建 具
性 能
断熱性 A 1492 × × ×
耐風圧性 A 1515 7452-3:2004 ×
SS 381 : 1996 (2007)
気密性 A 1516 × ×
SS 381 : 1996 (2008)
水密性 A 1517
7452-1:2004、
7452-2:2004
×
SS 381 : 1996 (2009)
遮音試験 A 1520 × × ×
熱貫流率の計算
A 2102-1、A 2102-2
× × ×
日射熱取得率の計算 A 2103 × × ×
フ レ ー ム
材
料 アルミニウム H 4100 TCXDVN
330:2004 × ×