本節では建築外皮の施工時における品質保証の実態について整理する。まず各社に おける品質保証のための制度があるか調査するため、Quality Controlチェックリスト
(以下、QC チェックリスト)が各社ごとにあるか整理する。次に施工段階に実際に行 う試験について調査を行う。また実際に取り付けを行う施工者が、設計段階の要求仕様 と施工段階の実際に用いられる製品の性能に違いを感じるかについても調査を行った。
5.4.1 各社におけるQCチェックリスト整備状況
本節では各社のQCチェックリスト整備状況についての結果を整理する。
本論文におけるQCチェックリスト整備状況に関する調査は、十分な結果が得られたタ イの現地ファサード施工業者 F,G 社および日系総合建設業者 H,I社およびベトナムの現 地ファサード施工業者O社の5社について分析を行う。
表5.4-1にて建築外皮施工時におけるQCチェックリストの整備状況を整理する。
全ての調査対象企業でQCチェックリストを整備していた。
タイにおけるリストの内容としては主に自社内で実施する試験項目が多い。特に工場 レポートの確認の確認など使用する製品に関して、確認を行っていることがわかる。確認 についても、実際に施工を行うファサード施工会社内で行っているとのことでった。
ベトナムにおけるリストの内容はQCVNを参照していることから、政府発行の法律で定 められた内容について確認していることがわかる。QCVN No16の内容は、建築材料に関す る規定について記述されている。確認については、政府が認定する実験施設等で行われて いることが分かった。このため実際に施工された後にチェックされるのではなく、使用す る建築材料についての試験である可能性が考えられる。
表5.4-1 建築外皮施工時におけるQCチェックリストの整備状況
TH VN
F G H I O
QC チ ェ ッ ク リ ス ト
有無 ○ ○ ○ ○ ○
内 容
自社で 行う
工場試験レポ ート確認、目 視、測定
工場試験レポ ート確認、現 場にて構造試
験
図面の確認、
性能確認、社 内基準あり
工場試験レポ ート確認
QCVN No16:2012 他社が
行う 構造計算 × ×
ファサード施 工者による検
査
QC確認者
QC Manager, Project Manager
自社のQCマ
ネージャー façade 施工者
Laboratory, QUATEST/QU
ACERT
5章 アジア蒸暑地域における建築外皮性能担保の実態
5.4.2 施工段階における各社の試験実施状況
本節では各社の施工段階における試験実施状況についての結果を整理する。
本論文における試験実施状況に関する調査は、十分な結果が得られた、日本のCW製造 業者A社、タイの現地ファサード施工業者 F,G社および日系総合建設業者H,I社、香港 の日系CW製造業者L社、ベトナムの現地ファサード施工業者O社、シンガポールの日系 CW製造業者P社の8社について分析を行う。グレーの部分は未回答内容である。
表5.4-2にて建築外皮施工時における試験状況を整理する。
全ての会社において、施工前・施工中・施工後のいずれかの段階で試験を実施していた。
日本においては施工後に、日本建築学会発行の建築工事標準仕様書JASSに沿って試験 を行っているとのことであった。実施の確認においても、ファサード施工者およびプロジ ェクトによってはCWの製造業者が行っていた。
タイにおいては施工後に試験を行う企業は半数にとどまっており、半数の企業が施工 前に試験を行う結果となった。またH社においては試験を行わないこともあり、行うとし てもガラス性能のみとのことであった。また第三者からの確認の実施も半数にとどまる ことが分かった。
香港においては施工中及び施工後に試験を行っており、試験内容としてはAAMAやASTM、
BS、Australian Standardに沿って実施するとのことであった。このため国際レベルの試
験が行われていると考えられる。
ベトナムにおいては、工場からの試験レポートの確認や性能試験、政府が発行する基準 に沿った試験など、様々な試験が行われるものの、すべて施工前に行われることが分かっ た。このため、施工後の品質が保たれているのか疑念が残るといえる。
シンガポールにおいては香港同様、施工中及び施工後に試験を行っており、試験内容も AAMAやASTMなどの規格に沿って実施することから、国際レベルの試験が行われていると 考えられる。
これより、日本・香港・シンガポールにおいては国際レベルの規格等に沿って施工後に 試験が行われていることから、品質が比較的担保されていると考えられる。しかし、タイ やベトナムにおいては施工前に試験が行われることが多く、用いる製品に関しては水準 を超える品質が採用されているといえるが、施工後に試験が行われるとは限らないこと から、取り付け後の性能の品質確保が十分とは言えない結果となった。
5章 アジア蒸暑地域における建築外皮性能担保の実態
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表5.4-2 建築外皮施工時における試験状況
JP TH
A E F G H I
内 容
施工前 × Performanc
e
Visual、
Report △※5-4-1
×
施工中 × × ×
施工後 Standard × Visual
実施者 F施工者、
製造業者
第3社からの
確認 ○ △※5-4-2 × ×
HK VN SG
J O P R
内 容
施工前 ×
Report, Visual, Measuring, Performanc e, Standard
×
施工中 Water、
Standard
× Water、
Standard
施工後 ×
実施者 F施工者 他社 F施工者、
製造業者 第3社からの
確認 ○
凡例 試験実施
Visual:目視
Measuring:寸法など測定 Performance:性能試験
Report:用いる製品の製造工場からの試験レポート確認 Standard:規格に沿う、政府が発行する文書に沿う Water:現場散水試験
試験未実施
×:未実施
※5-4-1 ガラスに関しては試験を実施することもある
※5-4-2 コンサルタントや所有者がチェックすることはある F 施工者:ファサード施工者
5章 アジア蒸暑地域における建築外皮性能担保の実態
5.4.3 設計段階と施工段階における外皮仕様の違い
本調査では施工後試験が十分に行われていない可能性のあるタイおよびベトナム企業 に対して、設計段階の要求仕様と施工段階の実際に用いられる製品の性能に違いを感じ るかについて調査を行った。
本節では 4 章にて調査を行った設計者への調査結果を含めて分析を行う。タイの現地 設計者B, C, D社、現地ファサード施工業者E, F,G社および日系総合建設業者H,I社、
ベトナムの現地設計者社、現地ファサード施工業者O社の5社について分析を行う。
表5.4-3にてタイ企業への回答、表5.4-4にてベトナム企業の回答を整理する。
タイにおいては回答のあった半数の企業において、要求性能と実際の性能にギャップ を感じることがあるとの回答が得られた。理由として最も多く聞かれたのは、予算の変更 等によって低い性能の材料に変更になることがあるとのことであった。
ベトナムにおいては、設計者による要求性能と実際の性能にギャップを感じることが あるとの回答が目立ち、施工者は感じないとの回答であった。理由はタイと同様に予算変 更などにより、稀に低い性能の材料が採用されることがあるとのことであった。
表5.4-3 要求性能と実際の性能の違いに関する調査(タイ)
調査地域 タイ
企業の資本国 地元企業 日系企業
調査企業 B C D E F G H I
未回答 未回答 未回答 未回答 × ○ × ○
凡例 ○:感じることも稀にある、×:全く感じない
表5.4-4 要求性能と実際の性能の違いに関する調査(ベトナム)
調査地域 ベトナム
企業の資本国 地元企業
調査企業 K L M N O
○ 未回答 ○ ○ ×
凡例 ○:感じることも稀にある、×:全く感じない
5章 アジア蒸暑地域における建築外皮性能担保の実態
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