5.2.1 調査方法
本章では実際の建築外皮性能担保の実態を明らかにすることを目的とする。そのため に建築外皮に用いられる製品の性能が担保されているのかと、施工精度が担保されてい るのか明らかにするために2017年~2019年にヒアリング調査を行った。
調査対象地域は図5.2-1に示す、日本(2017年6・7月注1)および2019年7月)、タイ
(2018年3・9月)、ベトナム(2017年9月・2018年1月注1)2019年10月)、シンガポー ル(2019年10月)、香港(2019年8月)を対象とした。
注1)「ベトナムにおいて建築外皮に用いるガラス ・フレーム の生産プロセスに関する研究」5-1)を参照して作成
図5.2-1 調査対象国<建築外皮性能担保について>
次に調査概要について製品の性能担保の実態調査を表5.2-1、施工段階の性能担保実態
調査を表5.2-2にて示す。
製品の性能担保については各国のガラス製造・加工工場およびフレーム製造・加工工場、
ガラスとフレームを組み立てるCW製造工場(もしくは窓製造工場)に調査を行った。調 査対象企業は、日本1社、タイ6社(日系企業1社)、香港1社(日系企業1社)、ベトナ ム3社、シンガポール1社(日系企業1社)であった。
施工段階の性能担保については各国の建築施工者もしくはファサード施工者、製造業 者に調査を行った。調査対象企業は、施工業者はタイ 5社(日系企業2社)、ベトナム1 社、シンガポール1社、製造業者は日本1社、香港1社(日系企業1社)、シンガポール 1社(日系企業1社)であった。
5章 アジア蒸暑地域における建築外皮性能担保の実態 表5.2-1 基準等の概要
1 2 3 4 5 6 7
調査国 JP TH
企業の
資本国 日系 地元 地元 地元 日系 地元 地元
調査日 2017/7/10 2018/3/26 2018/3/28 2018/4/2 2018/4/3 2018/9/25 2018/9/26
設立年 1934年 1990 1992 1998 1963 1973/1999 2005
主要業務 CW
製造、加工 ガラス製造 フレーム
製造 ガラス加工 ガラス
製造、加工 ガラス加工 窓、CW 加工 従業員数 44250人 300 850 1000 800 200/246人 230人
8 9 10 11 12
調査国 HK VN SG
企業の
資本国 日系 地元 地元 地元 日系
調査日 2019/8/22 2017/9/14 2017/9/15 2018/1/11 2019/7/2
設立年 1999 不明 2002 2017
主要業務 CW
製造、加工 窓枠組立 窓製造 ガラス製造 CW 製造、加工 従業員数 54人
凡例 CW:カーテンウォール
表5.2-2 基準等の概要
A E F G H I
調査国 JP TH
企業の
資本国 日系 地元 地元 地元 日系 日系
調査日 2017/6/26、
2019/7/2 2018/4/4 2018/9/26 2018/9/27 2018/9/24 2018/9/25
職種 CW製造業者 外皮施工者 外皮施工者 外皮施工者 建築施工者 建築施工者
設立年 1934年 1969 2000 2001 1964 1964
従業員数 44250 600 150 20 28
J O P R
調査国 HK VN SG
企業の
資本国 日系 地元 日系 地元
調査日 2019/8/22 2019/10/9 2019/7/2 2019/10/30
職種 CW製造業者 外皮施工者 CW製造業者 建築施工者
5章 アジア蒸暑地域における建築外皮性能担保の実態
115
5.2.2 用語の定義
本章で使用する用語について定義を整理する。
<製造段階>
・ガラスの種類5-2):
強化ガラス(Tempered glass) ガラス表面に恒久的な圧縮応力層を設けて、機械的・熱的強度 を向上させた製品。
合 わ せ ガ ラ ス (Laminated glass)
2 枚以上のガラスの間に透明で接着力の強いポリビニルブチラ ールの中間膜を加熱圧着させた飛散防止性とタイ貫通性に優 れた安全性の高いガラスである。
複層ガラス(Insulated glass) 2 枚の板ガラスをスペーサーで一定の間隔に保ち、その周囲を 封着材で密封したガラス。
Low-Eガラス 低放射ガラスのこと
倍強度ガラス 強化ガラスと基本的に同じ熱処理加工をしているものだが、強 度を通常のフロート板ガラスの2倍にしている。
<施工段階>
・QCリスト(Quality Check List):
品質保証のために会社もしくは政府が発行する確認事項が記載されたリスト。
5章 アジア蒸暑地域における建築外皮性能担保の実態
5.2.3 調査結果
本節では、高層のガラスファサードの建設実務プロジェクトにおける建築外皮性能担 保の実態調査に関する各社の現地ヒアリング調査結果を述べる。
製造段階
9社10社11社は「ベトナムにおいて建築外皮に用いるガラス ・フレームの生産プロ セスに関する研究」5-1)より参照した文献のため結果は割愛する。また1社、8社、12社 については、それぞれ仕様決定段階にて述べたA社、J社、P社と同一企業であり、会社 概要に関する調査結果は仕様決定段階に関する調査結果と重複するため、本章では省略 する。
・1社
<ガラスカーテンウォール製品の試験や検査>
1.全製品に行う製品試験や検査
① 実施事項:目視、寸法などの測定
② 特に環境性能について実施する事項があれば教えてください:なし
③ 試験や検査の実施方法:人
④ 実施段階:加工後、加工中(一部)
⑤ 試験や検査の方法として参照している基準や規格:JIS A 4706、社内規格
⑥ 参照基準を使用した理由:国内製品に一般的に使用されている規格であるため 2.一部製品(製造前のサンプルなど)に行う製品試験や検査
プロジェクトごとに建築設計者が要求する試験を実施、合否判定は施主や設計会社
① 実施事項:性能試験(仕様による)、材料検査(アルミ含む検査を一定ロットで実施)
② 特に環境性能について実施する事項があれば教えてください:
建築仕様により、結露試験・風切音試験などの特殊試験を実施の場合あり
→ルーバーなどの突起物や積雪などの性能試験の実施を求められることが多い
③ 試験や検査の実施方法:外部から購入した試験装置
④ 実施段階:製造開始前(量産開始前)、製品の加工前
⑤ 試験や検査の方法として参照している基準や規格:JIS H 4100
⑥ 参照基準を使用した理由:国内製品に一般的に使用されている規格であるため
5章 アジア蒸暑地域における建築外皮性能担保の実態
117
・2社
<工場調査 概要>
単板ガラス製造。ガラス原料はほぼ砂であり、納品時に試験実施(内容はサイズ・湿 度・重さなど、抜取試験)。
<ガラス製造工程>
材料を混ぜる※5-2:1 → Melting※5-2:2(押出ながら炉の中へ混ぜた材料を入れる)
→ Refining(混ぜながら大きさ・厚さ調節) → Working End → Tim bad(ガラスはSO2で保護)
→ Lehr(急に温度下げると壊れるため徐々に下げる)→ Washer(SO2をはがすため水で洗う)
→ Seeing(目視確認) → Cutting(指定サイズに切断)
→ Separator(湿気から守るためパウダーをかけガラス間に紙を敷く) → Packing → Tagging
→ Gloss up → Storage(倉庫温度は一定に)→ Shipping(国内に30~40%、国外60~70%出荷)
※5-2:1 制御室にてサンプル抜取試験、全材料の数値確認・重さ確認。
※5-2:2 自動制御室では温度やモニター確認・目視確認実施。
<インタビュー調査>
1) 会社概要
設立年:1990年 主要業務:ガラス製造工場 従業員数:300人 2) ガラス製造工程
製造後・出荷前に試験実施。(ISO, TIS, Australian standard, JIS等に基づき試験)
3) 製造するガラス製品
Float glass, Tended float glass(今後laminated glassも予定)。高層および低 層、すべての建築用途に使用。基本的には固定サイズの販売、要望があれば受注販売。
4) 図面作成者
建築仕様書:設計者 施工図:施工者 ガラス加工図:ガラス加工会社 ガラス製造会社は施工者から依頼を受けガラス加工会社へ販売している。
<実際の建設プロジェクトにおける技術提案について>
技術提案は行っている。提案するガラス種類はプロジェクトにより異なる。ガラス色は 設計者が提案した色に沿う。性能はEN, NFIC(American standard)に基づき、SHGC, SC, VLT, Visual Light Reflectance, UVに関して提案している。
<その他・補足情報>
タイは日本に比べ VLT が多すぎるためなるべく遮りたい(日本は少ないため遮断はそ こまで考えない)。Reflect GlassはUV,VLT,IR何でも反射するがLow-Eは反射と透過の バランスが取れている。エネルギー消費だけでなく騒音の遮断も問題となる。(合わせガ ラスが一番防音)エネルギーを考慮したときにVLT, SHGC (SC), LSG (VLT/SHGC), U-value, OTTV(タイでは特にSHGCが重要であり0.5程度が理想値)のパラメータが重要 である。
5章 アジア蒸暑地域における建築外皮性能担保の実態
・3社
写真5.2-1 ヒアリングの様子(3社)
<工場調査 概要>
アフリカ、中東、オーストラリア、タイ、シンガポール、アメリカなど製品のおよそ 70%は海外へ輸出している。使用する材料は基本的に設計者が決めるが、技術提案は行 う。(fabricatorによる)技術提案はVisual Mockup(色や素材を検討)による確認後、
性能試験(空気・水・構造、土地による違いも確認する)を行う。
<製造工程>
アルミ製造
型の製造:サブコンが型の図面を作成し機械により型の作成を行う。
ビレット(オーストラリアなどから輸入)加熱 → 押出 → 指定長さに切断
→ 試験(表面目視・長さ測定・温度確認)
→ Anodize(水や化学製品、陽極酸化などを行い着色)もしくは
Powder coating(スプレーにより着色し乾燥する。スプレー後にプリントも可)もしくは PVDF(タイではあまり主流ではない仕上げ方法)
→ 試験(Profile projector、引張試験、Hardness Test(AAMA, ASTM)、Polishing machine等)
アルミフレームとガラスの組立
アルミ切断 → アルミへ穴あけ → フレームの形に組立 → フレームにガラスをはめ込む
<インタビュー調査>
1) 会社概要
設立年:1992年 主要業務: フレーム(アルミ)製造会社 従業員数:850人 2) フレーム製造工程
製造後・出荷前に試験実施。(Thailand standard, ISO, ASTM, JIS等に基づき試験)
3) 製造しているフレームの種類
アルミニウム。高層のすべて建物用途に使用。特にカーテンウォールとして使用され Confidential
5章 アジア蒸暑地域における建築外皮性能担保の実態
119
・4社
<工場調査 概要>
他社製の単板ガラスを購入しガラス加工を行う。顧客の多くは Glass Installer で あり、ガラス性能の技術提案も実施。(顧客が色・SC・SHGC・VLTなどを決定し、適する 商品を提案。所有者から直接依頼よりも、サブコンから依頼を受けることが多い。)
施工者は施工時にVL, Color, Leakage, Sun, Wind loadを試験。
<ガラス製造工程>
単板ガラスに施す技術(単板ガラスはほぼタイ製のものを使用(一部中国製))
倉庫セクション:単板ガラスを技術確認のため検査 → ガラスの切断 → 研磨 → 穴あけ(必要に応じて行う)→ Washing machine(風により乾かす)
ガラスの加工
各加工終了後に試験実施。ガラスごとにサンプルを作成し試験。試験レポートを政府に送り製品認 証。政府自体は試験センターを持たず各工場に試験設備が整備されているか確認。ガラスの種類によ っては1つの加工ではなく複合して加工することもある。
1)tempered glass
加熱→ 空気を吹付け冷却(強化ガラス:吹付速さ速く、Heat strengthen glass:吹付速さ遅く)
2)laminated glass
中間膜をガラス間に入れる→ オーブンで加熱→ オートクレーブに入れる 3) Coating:reflective glass/low-e glassなどの加工。バキューム加工をする。
4) insulated glass:スペーサーを入れて合わせる。ガラス→スペーサー→ガラスで合わせる。
5) 装飾ガラス:セラミックスクリーンはtempered glassと同じ熱をかける。
出荷:すべてのガラスを目視検査。品質はガラスの加工時にサンプルを試験。
<インタビュー調査>
1) 会社概要
設立年:1998年 主要業務:ガラス加工工場 従業員数:1000人 2) ガラス製造工程
加工前後・出荷前に試験実施。(ISO-TIS, JIS(JIS/TIS以上の性能を社内基準とし
ている), ASTM, IGCC(複層ガラス)を基に試験)輸出する場合はその国の規格に従う。
3) 製造しているガラス
Heat Strengthen Glass(50%)、Tempered Glass(20%:reflect glass, Low-e glass, laminated glassなど)、フロートガラス(30%:laminated glass, insulated glass など)。製品はオーダーメイドで製造される。オーナー、サブコンから製造の依頼を受 け、製品はサブコンに販売している。
4) 図面作成者
仕様書:設計者、施工者、所有者、コンサルタント 施工図:施工者 加工図:サブコン、ガラス加工工場にて詳細な図面に修正