4.2.1 調査方法
本章では実際の建築外皮仕様を明らかにすることを目的とする。そのために中・高層ガ ラスファサード建築の外皮仕様に関する、使用する材料・外皮性能(性能決定時に参照さ れる基準等)・仕様決定プロセスについて、2018年~2019年にヒアリング調査を行った。
調査対象地域は図4.1.1に示す、日本(2019年7月調査)、タイ(2018年3・9月現地調 査)、香港(2019年8月テレビ電話調査)、ベトナム(2019年10月現地調査)、シンガポ ール(2019年10月現地調査)を対象とした。
図4.2-1 調査対象国<建築外皮仕様について>
次に調査概要について表4.2-1にて示す。本調査では各国の設計者および施工者に調査 を行った。設計者については、タイ3社、ベトナム4社、シンガポール2社に調査を、施 工者にはタイ5社、ベトナム1社、シンガポール2社に調査を行った。また日本と香港、
シンガポールには日系のファサード製造業者へ調査を行った。
またヒアリング事項としては、会社概要およびヒアリング対象物件のプロジェクト概 要と建築外皮仕様(特に用いられた使用や決定プロセス)を調査した。なお本章の調査時 に使用したヒアリングシートについは付録にて示す。
本調査は対象企業が携わった環境配慮建築プロジェクトにおける建築外皮仕様につい てヒアリング調査を行った。各プロジェクト概要について、建物用途・高さ・所在地・環 境認証制度取得状況を表4.2-2にて示す。
4章 アジア蒸暑地域における建築外皮仕様決定の実態
ABCDEFGHI
調査国JP
企業資本国日系地元地元地元地元地元地元日系日系
設立年1934年196819771990196920002001196419641999
従業員数442508520306001502028
KLMNOPQSR
調査国
企業資本国地元地元地元地元地元日系地元地元地元
調査日2019/10/72019/10/82019/10/112019/10/92019/10/92019/7/22019/10/292019/10/302019/10/30
設立年20062006201020192002201519741959
従業員数402025106001420456 CW製造業者 CW製 TH 調査日2018/3/282018/3/302018/4/42018/9/262018/9/272018/9/242018/9/25 2017/6/26
2019/7/2 2018/4/3、
2018/9/28 201
職種設計者設計者設計者外皮施工者外皮施工者外皮施工者建築施工者建築施工者CW製造業者
VNSG
職種設計者設計者設計者外皮施工者設計者設計者設計者建築施工者 表4.2-1ヒアリング調査<建築外皮仕様> の概要
4章 アジア蒸暑地域における建築外皮仕様決定の実態
75
ABCDEFGHIJ
JPHK
ー事務所事務所事務所事務所事務所住居ー複合複合 ー22630302072/5043326 TokyoBangkokBangkokBangkokBangkokBangkokBangkokAmatqnavionBangkokKowloon ー LEED
Platina TREESLEEDLEED GoldLEEDLEEDTREES LEED
GOLD LEED Gold
KLMNOPQSR
複合複合事務所事務所事務所複合事務所病院ー 35281518245248, 1610ー HanoiHanoiHanoiHanoiHanoiSingaporeSingaporeSingaporeー
××××× Green Mark
platinum Green Mark
platinum ○ー 調査国建物用途高さ(階)
所在地 TH
VNSG調査国
建物用途高さ(階)
所在地
環境認証制度取得状況 環境認証制度取得状況 表4.2-2プロジェクト概要
4章 アジア蒸暑地域における建築外皮仕様決定の実態
4.2.2 用語の定義
本章で使用する用語について定義を整理する。
<各種図面>
・仕様書4-1):
「材料・製品・工具・設備などについて要求する特定の形状、構造、寸法、成分、
能力、精度、性能、製造方法、試験方法などを定めたもの」とJIS Z 8101で定義。
・設計図4-1):
設計業務において、発注者・建築主の要求や意図を具体的にするためには、図で表 現するのが最も効果的である。
・施工図4-1):
確定した設計手法は施工段階に引き継がれ、実際の工事が進められる。設計図に示 された情報は、施工用の図面として編集される。これらの図面を施工図という。
・加工図:
製品(カーテンウォールなど)の製作のために必要な、製品の詳細図面と定義する。
<外皮仕様決定プロセス関係者>
・所有者4-2);
建築主を指す。建築物に関する工事の請負契約の注文者・請負契約によらないで自 らその工事をする者
・設計者4-2):
その者の責任において、設計図書を作成した者。
・コンサルタント:
建築コンサルティング方式で建築に関する相談に応じる専門家および専門家集団
・建築施工者4-2):
建築物、その敷地若しくは法88 条1 項から3 項までに規定する工作物の工事の 請負人又は自らこれらの工事をする。
・ファサード施工者:
主施工者から特定工種の工事(建物外皮工事) だけを請け負う専門工事業者を請 け負う下請業者のことを指すこととする。業務の一部としてファサードに関して コンサルタントの役割を行うこともある。
・プロジェクトマネージャー(PM)4-1):
プロジェクトの品質・納期・コスト・リスク等を管理する業務一般を指す。
・コンストラクション・マネージャー(CM)4-1):
施設建設に関するマネジメントを言い、特定の建設プロジェクトの計画・設計・施
4章 アジア蒸暑地域における建築外皮仕様決定の実態
77 4.2.3 調査結果
本節では、高層のガラスファサードの建設実務プロジェクトにおける外皮仕様に関す る各社の現地ヒアリング調査結果を述べる。
・B社
写真4.2-1 ヒアリングの様子(B社)
プロジェクト概要
建物用途:事務所(新築) 高さ:22階、(80,000m²)
所在地:バンコク 環境認証制度:LEED Platina 建物外皮に対する技術提案
ガラス種類:laminated glass ガラス色:clear ガラス用途:全面ガラス 参照した基準:BS(British standard), American standard
建物外皮に関する図面作成者 仕様書:設計者
会社の中に仕様書を作る部署があり。スペックやクオリティ、値段の違う 3 種程度の 候補を提案する。窓業者は試験結果や値段などを施工者や設計者に提案する。
施工図:設計者、コンサルタント 採用されたガラスについて
材料の決定者:オーナー
3種のMock upを作成して提案。設計者はあくまで助言のみでオーナーが最終決定。
採用されたガラス:laminated glass Confidential
4章 アジア蒸暑地域における建築外皮仕様決定の実態
・C社
写真4.2-2 ヒアリングの様子(C社)
プロジェクト概要
建物用途:事務所(アトリウムを設置して自然光利用:屋根で光を反射、快適性向上)
高さ:6階 所在地:バンコク 環境認証制度:LEED NC GOLD 取得 建物外皮に対する技術提案
ガラス種類:insulated glass
最初は低コストのreflect glassを提案した、所有者がGBを要望、費用計算しinsulated glassやdouble glazing glassも提案。(運用コストも計算)
フレーム種類:アルミニウム ガラス色:gray green ガラス用途:窓ガラス
提案したガラスの性能:OTTV, heat transferの計算値 参照規格:
CSI, American standard(多くのタイ人がヨーロッパよりもアメリカで教育を受けてい るため),OTTV
建物外皮に関する図面作成者
仕様書:設計者 施工図:設計者 採用されたガラスについて
材料の決定者:所有者、設計者(所有者は知識が少ないことが多いため設計者が提案)
Confidential
4章 アジア蒸暑地域における建築外皮仕様決定の実態
79
・D社(2018年4月および9月の二回にわたり調査実施)
写真4.2-3 ヒアリングの様子(D社)
<2018/4/3調査結果>
プロジェクト概要
建物用途:オフィスビル、図書館、美術館の複合施設(新築)
高さ:30階建て、120m 所在地:バンコク 環境認証制度:LEED NC GOLD 建物外皮に対する技術提案
ガラス種類:Low-e glass、Reflective Low-e glass
最初はreflect glass を提案した(低コスト)が、オーナーが GB を要望したため、
insulated glassのほかdouble glazing glassも提案した。(運用コストも計算)
フレーム種類:アルミニウム ガラス色:Blue gray
ガラス用途:全面ガラス
ガラス性能:ガラス会社が提案(ガラス会社が行ったシミュレーション結果を比較)
参照規格:オーナーがLEED取得を要望したためLEED 建物外皮に関する図面作成者
仕様書:設計者 施工図:施工者、Project Manager, Contraction Manager 採用されたガラスについて
材料の決定者:設計者(コンペにより採用されたプロジェクトのため設計者が決定)
Confidential
4章 アジア蒸暑地域における建築外皮仕様決定の実態
<2018/9/28調査結果>
建物外皮について
採用した外皮製品(予算に応じて決定、エネルギ消費を考慮)
ガラス種類:reflective Low-e glass ガラス色:blue gray フレーム種類:aluminum フレーム色:dark gray
外皮の形式:全面ガラス その他:Double skin, Shading, IGU 外皮性能:
façade 施工者が性能値を決定、LEED/ASTM/Thailand法規(耐風圧性)を基に作成
〇ガラス SHGC:0.4 SC:0.16 U値:1.28 VLT:19 反射率:22(out), 20(in)
〇全体 OTTV:Façade 施工者が決定 気密性:≦1L/m²・1sec 水密性:1300Pa 耐風圧性:200kg/Pa 断熱性:なし
外皮製品、性能の決定者(コンペによるプロジェクトのため仕様は設計者が決定)
ガラス種類:設計者 フレーム種類:設計者
ガラス色:設計者 フレーム色:設計者 外皮の形式:設計者 性能:設計者、コンサルタント(製造工場、Façade 施工者が提案)
外皮製品、性能の決定段階
ガラス種類:基本設計 フレーム種類:基本設計 ガラス色:基本設計 フレーム色:基本設計 外皮の形式:基本設計 性能:実施設計
各文書作成者、ガラス・フレーム製造会社決定者:オーナーが考慮する点はおもにコスト 製造会社決定者:所有者、設計者、Construction Manager
仕様書:設計者 施工図:施工者、Façade 施工者 各文書の決定段階:
仕様書:実施設計段階 施工図:施工前
4章 アジア蒸暑地域における建築外皮仕様決定の実態
81
・E社
プロジェクト概要
建物用途:オフィスビル(新築) 高さ:30階建て、230~240m
所在地:バンコク 環境認証制度:LEED GOLD (LEEDの取得は所有者からの要望)
建物外皮に対する技術提案
ガラス種類:Laminated Low-e Insulated glass フレーム種類:アルミニウム
パウダーコーティング(外側はさらにスーパードライパウダーコーティング)コスト を少なくするために片側のみコーティング。色はDark Gray、メタリックである。
ガラス色:ClearだがLow-eのせいで少し緑がかっている。
ガラス用途:全面ガラス ガラスの性能:
SHGC, SC, UVはオーナーから要望を受けた値であり細かい性能値は計算する。
参照規格:
LEED、自社基準あり(British Standard, Australian Standard, AAMAを基に)
建物外皮に関する図面作成者
仕様書:コンサルタント(特に Façade Consultant(MEINHARDT))
性能値に関して Façade Consultant へ技術提案を行う。
施工図:施工者
Project Manager → main contractor → sub-contractorと詳しい図面となる
(要求性能など)
採用されたガラス
材料の決定者:所有者、設計者…ガラス種類/色を決定
Façade 施工者…厚さ/風圧などによる構造などを決定
本プロジェクトはコンペにより採用されたプロジェクトのため設計者が決定する。