第 5 章 実験室実験と分析
5.2 実験結果の分析
5.2.2 被験者個人の変数を考慮した前半と後半での比較
前半と後半におけるチームごとの個人の心理的安全値の標準偏差の結果を図
12に示す.
図 12 チームごとでの個人の心理的安全値の標準偏差結果
11.75566058 4.654030511 6.141299175 4.006938427 4.850658604
10.1807007 6.741084647 3.572425258 11.93845328 3.572425258
A チ ー ム B チ ー ム C チ ー ム D チ ー ム E チ ー ム
前半 後半
40
前半と後半で個人の心理的安全値の標準偏差の関係を見てみると, パフォー マンスの悪化が見られたB チーム及び D チームを除いて, 標準偏差が小さくな っている. また, パフォーマンスが悪化し心理的安全値が変わらなかったEチー ムにおいても, 後半の心理的安全値は分標準偏差が小さくなっている. 先行研 究で紹介した様に, 心理的安全はチームレベルの概念として提唱されており, 心理的安全はチームのメンバーが同様に抱く要素である. 前半と後半で心理的 安全値の分散が小さくなっているチームが複数存在していることから, 性格の 相互認識が個人の心理的安全の抱き方をチームで同一に近づける効果をもたら している可能性が考えられる.
一方, BチームとDチームは個人の心理的安全値の標準偏差が大きくなって
おり, 結果としてチームの心理的安全値が前半に比べて悪化している(表 15, 17, 18 参照). これは, チームのパフォーマンス低下が関係していると考えられる. そこで, 各チームの被験者の個人得点調整値の標準偏差について前半と後半で 比較を行った. 図13に示す.
図13 チームごとでの個人得点調整値の標準偏差結果
A, C, Eチームは分散幅の変化が前半と後半で比較的小さいのに対して, BとD
チームは前半よりも約2倍の標準偏差となっている. このことから, 相互認識に よる心理的安全への影響以上に課題に対する考え方の対立(考え方の違いによ る回答の違い)が影響を及ぼしている可能性が考えられる. ただし, Bチームは, 後半において A チームと一部メンバーの変更を行った為, 本観点についても考
2.803733608 2.365026099 3.237472707 2.73089691 5.836436924
3.779451906 5.150524761 4.683645705 5.669177859 4.683645705
A チ ー ム B チ ー ム C チ ー ム D チ ー ム E チ ー ム
前半 後半
41
慮する必要がある.
補足として, 各チームの被験者の個人得点調整値の分布帯域の違いについて も前半と後半で詳しく比較を行う. 図14に示す.
図14 前半と後半における各被験者の得点調整値の分布
各チームとも課題に対する得点帯が前半と後半で異っていることがわかる. 本実験の課題は各自の知識量や価値観によっても得点に差が生じ易いため, 得 点帯が前半と後半で異なることや, 前述した分散幅が前半と後半の違うことか ら, 被験者毎の課題の難易度に対する捉え方が前半と後半で異なっていると判 断できる.
以上から, 前半と後半の得点だけで単純にパフォーマンスを比較することは 分析として不適切であると結論付けた. ここで, Bチームの心理的安全値の前後 変化について, 表10~11 を参考に個人レベルで着目すると, 入れ替わった人物 間の心理的安全値は大きな差があることがわかり, この差が影響していると考 えられる. 入れ替わった人物B3, A1 の心理的安全値の変化幅は, 前半と後半で 比較すると差が大きくなく, 人物変更のなかったチームだと仮に過程すれば, 実験パターンAのAチームBチーム共に心理的安全値の前半後半の分散幅は大 きく変わらず, 標準偏差も A チームは小さく, B チームは僅かな増加で留まる.
しかし, Dチームはチームメンバーの変更がないにも関わらず心理的安全値の変 化が大きいことから, 次節では, 個人の心理的安全とパフォーマンスの相関つ いて詳しく分析し, 被験者ごとの結果について更に詳しく見ていく. また, その
過程で A, B チームのメンバー変更に関する影響についても分析を行う. なお,
前述の前半後半でのパフォーマンス比較の問題から, 以後は個人得点調整値と 平均値及びチーム得点調整値との差分量の前半と後半での比較からパフォーマ ンスの分析を行う.
.
20 25 30 35 40 45
50 前半 後半
A チーム B チーム C チーム D チーム E チーム
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5.2.3 個人得点とチーム得点との差が心理的安全値に与える影響
次に, 個人の得点とチームの得点の関係に焦点を当て心理的安全への影響を 見るために, 表 14~18 の結果を元に分析を行う. 具体的には, 個人得点調整値 と個人得点調整値平均値, チーム得点との各差異によって心理的安全にどのよ うな影響を受けているかを見るため, 心理的安全を目的変数に, 各項目を説明 変数に設定し, 各項目ごとに単回帰分析を行った. 結果を表19及び20に示す.
表19 心理的安全値との各差異に関する分析(前半:サンプル数15)
(自由度調整済み)
決定係数
係数 t p 切片
個人得点調整値と チーム得点調整値との差
0.103 0.523 1.615 0.13 87.648
個人得点調整値と 個人得点調整値平均値との差
-0.055 0.341 0.513 0.616 87.233
表20 心理的安全値との各差異に関する分析(後半:サンプル数15)
(自由度調整済み)
決定係数
係数 t p 切片
個人得点調整値と チーム得点調整値との差
0.156 0.731 1.896 0.08 85.413
個人得点調整値と 個人得点調整値平均値との差
0.119 0.887 1.702 0.112 83.728
全ての結果において, 単回帰分析の精度を表す決定係数が低いこと, 説明変 数の有意確率が大きいことから(目安となる 5%以上), 単回帰分析の結果で はパフォーマンスと心理的安全の相関は殆ど見れれなかった.
次に, 相関が見られなかったことから, 個人の得点とチームの得点との差の 傾向からパターン化による定性的な分析を行った. 具体的には, 表 14~18 を元 に, 個人得点調整値を基準値としたチーム得点調整値及び個人得点調整値平均 値との差を考え, 値が負の場合は良化を, 値が正の場合は悪化という形でパタ ーン分けを行った. 全パターンを表21, その組み合わせ結果を表22に示す.
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表 21 個人得点調整値とチーム得点調整値及び個人得点平均値との組み合わせ
パターン 内容
パターン 1 自身の個人得点調整値より個人得点平均が更に良化し, チーム得点調整 値は更に良化する
パターン 2 自身の個人得点調整値より個人得点平均が更に悪化し, チーム得点調整 値は更に悪化する
パターン 3 自身の個人得点調整値より個人得点平均が良化し, チーム得点調整値は 悪化する
パターン 4 自身の個人得点調整値より個人得点平均が悪化し, チーム得点調整値は 良化する
パターン 5 自身の個人得点調整値より個人得点平均が良化し, チーム得点調整値は 個人得点調整値と同じ
パターン 6 自身の個人得点調整値より個人得点平均が良化し, チーム得点調整値は 個人得点調整値と同じ
パターン 7 自身の個人得点調整値より個人得点平均が悪化し, チーム得点調整値は 個人得点調整値と同じ
表22各被験者のパターン組み合わせ
実験パターン A 前半 後半 前半と比較した後半の心理的安全値
A1 パターン 1 パターン 1 悪化
A2 パターン 4 パターン 1 変化なし
A3 パターン 1 パターン 1 変化なし
B1 パターン 2 パターン 2 悪化
B2 パターン 3 パターン 4 良化
B3 パターン 2 パターン 4 変化なし
実験パターン B 前半 後半 前半と比較した後半の心理的安全値
C1 パターン 1 パターン 5 良化
C2 パターン 4 パターン 1 悪化
C3 パターン 1 パターン 2 良化
D1 パターン 3 パターン 2 悪化
D2 パターン 2 パターン 2 悪化
D3 パターン 2 パターン 1 悪化
E1 パターン 1 パターン 6 変化なし
E2 パターン 2 パターン 4 悪化
E3 パターン 1 パターン 1 良化
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実験パターン A の各被験者について見てみると, 前半と後半の個人得点調整 値と個人得点調整値平均及びチーム得点調整値との差分の変化量に関わらず, 心理的安全値が変化する被験者とそうでない被験者が存在した. これは, 実験 パターンBの被験者についても見られる.
被験者A2, B3, E1は前半と後半で自身の個人得点調整値と個人得点平均及び
チーム得点調整値との傾向が全く異なるにも関わらず, 心理的安全値が変化し ない.
心理的安全値が変化する被験者で, 前半と比較して後半が良化する被験者
B2, C1,C3, E3,は, パターンの組み合わせにおいて, 共通する傾向が見られな
かった. また, 心理的安全値が変化する被験者で, 前半と比較して後半が悪化 する被験者A1, B1, C2, D1, D2, D3, E2にも, 共通する傾向が見られなかった.
次に, 自身の回答がチームにどれだけ反映されているのかという点と心理的 安全を比較するために, チーム得点調整値との差の量を同じ実験区分内で比較 する.
実験パターンAについて各被験者を前半と後半で比較すると, A3は自身の個 人得点調整量との差が前半に比べて後半が大きくなり, 心理的安全値は悪化し ている. 一方で, B2 は自身の個人得点調整量との差が前半に比べて後半が大き くなっているが, 心理的安全値は良化している. また, A2とB3は前半と後半の 変化の度合いに関わらず心理的安全が変化していない.
実験パターンBについて各被験者を前半と後半で比較すると, D1, D3, E2は 自身の個人得点調整量との差が前半に比べて後半が大きくなり, 心理的安全値 は悪化している. 一方で, C3とE3は自身の個人得点調整量との差が前半に比べ て後半が大きくなっているが, 心理的安全値は良化している. ただし, C2, D2, は自身の個人得点調整量との差が前半に比べて後半が小さくなり, 心理的安全 は悪化している. また, E1 は前半と後半の変化の度合いに関わらず心理的安全 が変化していない.
以上から, 個人得点調整値と個人得点調整値平均との差及びチーム得点との 差が, 心理的安全に影響を与えていないことが考えられる.
次に, 更なる分析の為, 次節ではチーム内における心理的安全値の変化と相 互認識で用いた性格及び認識がなかった他の項目の関係について分析を行う.
5.2.4 性格が心理的安全に与える影響
次に, チームメンバーの性格が心理的安全に影響を与えるかについて検証す るため, 各被験者の性格特性と心理的安全の関係について分析を行った. 具体