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血小板の構造

ドキュメント内 著者 東郷 好美 (ページ 40-51)

第 1 章 緒言

1.10.2.2 血小板の構造

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血液透析と血小板の活性化のメカニズム

体外循環と凝固のメカニズム

通常、生体内において、血管内を流れている血液は凝固しない [40]。血管壁に損傷が起 こった場合、血管外に血液が出た場合、異物と血液が接触した場合などには血液は凝固する [40]。血液が凝固する際には、凝固因子が活性化し、最終的にフィブリンが形成されること で、血液は凝固する [40]。

血液は、気泡を含めたすべての非内皮細胞表面において反応する。血液透析中に患者の血 液は、穿刺針、血液透析回路、透析膜と接触する [40]。これらの表面はいずれも血液凝固 を引き起こして、血液回路の閉塞をおこす可能性がある [40]。そこで、体外循環時にはヘ パリンを代表とする凝固を予防する抗凝固剤を使用するが、血液適合性に劣る医療材料の 場合、血液は一次止血、二次止血へと進み、最終的には凝固する。一次止血には血小板が、

二次止血には凝固因子が関与する。血液適合性の改良は透析治療に関連した合併症の予防 につながり、微小炎症の緩和により疾病の進行を遅らせることが期待できる。微小炎症は、

動脈硬化症、血管石灰化、アミロイドーシスなどの透析に関連した合併症を発生させる可能 性があり、これらは予後を短くする因子でもある [41]。血液非適合性は、栄養失調、アテ ローム性動脈硬化症の促進、血栓などの合併症の原因となる [42]。

血小板

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透析患者の血小板

透析患者の血小板数は、健常人よりも減少していることが多い。その理由は、ヘパリン(抗 凝固剤)の投与、尿毒素、敗血症、除水による血液減少、骨髄抑制などによる [44]。血小板 の寿命が短くなると、骨髄での血小板産生が増加し、未成熟および巨大血小板の分泌が増加 する。過剰反応性の血小板は冠状動脈内血栓の形成を促進し、急性冠症候群のような一連の 臨床事象をもたらす [45]。巨大血小板は血栓形成促進性のサイトカインを含み、周囲の細 胞に影響を与える可能性がある [46]。

血小板の活性化

中空糸膜と血液を繰り返し接触させると、白血球、血小板、赤血球などの血球を直接活性 化するか、あるいは血小板を含む炎症性カスケードを活性化することに加えて、凝固カスケ ードおよび補体経路を活性化する。補体の活性の結果、血小板の活性化がおこり、血小板凝 集をもたらす。血小板の凝集は、透析開始直後における血小板数の潜在的な減少に関係する。

さらには、好中球が活性化すると、血小板活性化因子を放出する [47]。これらの生物学的 応答は互いに影響を与えるだけでなく、血流条件および濾過速度、ならびに血液中への透析 液の流れの量によっても変化する。従って、生物学的応答は血液透析中に様々な要因によっ て影響を受ける。

透析膜との接触により血小板が活性化し、透析膜や血液回路表面に粘着・凝集し血栓を形 成する。血小板の活性化は、β-TG、PF4、血小板由来増殖因子(platelet-derived growth factor, PDGF)などの産生および放出を促す [48]。血小板は陰性荷電を帯びているために、

陽性荷電膜において血小板の活性化は強く表れる。また透析膜との接触により血小板が活 性化し、顆粒球内の P-セレクチンが血小板の表面に移動することによって発現し、好中球

表面のP-セレクチンリガンドと結合する [48]。こうして、血小板-好中球複合体が形成さ

れ、この複合体が活性酸素やサイトカインなどを誘導する [48]。

血球は活性化および阻害を介して互いに調節する。血小板は透析膜表面で活性化され、血 小板同士で凝集塊を作る場合や、顆粒球や単球などと凝集塊を作ることがある [49]。一方 で、血小板と白血球は互いに活性化または阻害する。活性化した血小板は白血球に結合し、

それによって白血球を活性化することがある。血液透析療法中に形成される血小板-白血 球微小凝集塊は、活性酸素の産生を含む好中球活性化を引き起こすことも示されている [50]。これによって、血小板数が一過性に減少する [49]。一方、活性化白血球から放出され た活性酸素種も血小板を活性化する [51]。活性酸素の生成は、トロンビンを活性化し、血 小板の凝集を誘発する [52]。長期にわたる反復血液透析療法中の活性酸素による血管内皮 へのわずかな損傷の蓄積は、血液透析関連合併症を引き起こし得る [50]。

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血小板の粘着

血液は体外循環によって、血球成分は損傷を受ける。血球が損傷する原因は、血液回路内 の高い圧力、ローラポンプによって生じるずり応力、血液回路表面などの異物との接触など がある [53]。血液透析膜などの人工材料表面への血液の曝露により(図1.15)、血漿タンパ ク質はほぼ瞬間的に層を形成する(図1.16) [42]。この血漿タンパク質はvWF も含まれ るが、多くはフィブリノーゲンである。

図 1.15 血中に含まれる血小板と異物の接触

図 1.16 異物へフィブリノーゲンが付着

フィブリノーゲンと血小板が接触することにより、血小板は形状を変化させ、偽足を出す

(図1.17)。

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図 1.17 フィブリノーゲンと血小板の接触および血小板の形状変化

活性化した血小板はGPⅠb(図1.18)を介して異物に付着したフィブリノーゲンと結合 する。

図 1.18 血小板の受容体GPⅠbの発現

そして、血流により生じる力で血小板はフィブリノーゲンの上を揺れるようにローリン グ(rolling)する。血小板のローリングが続くとさらに強固な粘着が起こり、GPⅡb/Ⅲaが 関与する(図1.19)。このとき、血小板は平たく広がった形状に変化する(スプレッティン グ、spreading)。

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図 1.19 血小板受容体GPⅡb/Ⅲaの発現と血小板のスプレッティング

GPⅡb/Ⅲa が関与する血小板のスプレッディングは、強く粘着し、血流による剪断応力

に抗するのに重要であり、また次の血小板がさらに粘着を起こすために必要である。

血小板の凝集

活性化した血小板上に多数存在する活性化 GPⅡb/Ⅲaは、フィブリノーゲンを介して他 の血小板のGPⅡb/Ⅲaとも結合する(図1.20)。

図 1.20 血小板同士の粘着と血小板内容物の放出

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血小板凝集とは図1.15から図1.20のようなメカニズムにより、多数の血小板同士が結び 合うことである。つまり、血小板凝集においてGPⅡb/Ⅲaは中心的な役割を果たしている [54]。凝固因子であるトロンビンなどの強い凝集惹起物質により刺激を受けると、血小板は β-TG やPF4などの血小板に含まれる顆粒の放出などを伴い(図1.20)、直ちに不可逆的 な凝集に向かう(図1.21-22) [54]。最終的には崩壊し、微細粒子(マイクロパーティクル)

となる。GPⅠbやGPⅡb/Ⅲaなどの血小板表面マーカは、フローサイトメトリーのモノク ローナル抗体(1種類の細胞から作られた1種類の不純物なしの抗体)の測定によって定量 化できる。この方法は、血小板上に新たに発現した分子に対する抗体を持つ物質を蛍光色素 によって標識し、蛍光強度からそれらの分子を定量するものである [55]。フローサイトメ トリーは血小板活性化を検出するための最良の方法の1つであると考えられている [56]。

慢性透析患者においては、透析中に、血小板数は50%もしくはそれ以上、減少すると報告 されている [56]。血小板の最高値からの減少率は、生体適合性の高い膜でも7~9%と報告 されている [57]。

血小板に関連する血液検査

血小板に関連する血液検査として、血小板数だけでなく、β-TGとPF4の血漿中の濃度 測定が、血小板の活性化の指標として有用とされている [58]。これらの因子は、血小板が 活性化した際に血小板から放出されるため、血漿中の濃度が高いほど、血小板の活性が生じ たことを示す。さらに、血小板の活性が起こった際に血小板の表面に移動する GPⅡb/Ⅲa とGPⅠbについても、それぞれ、血小板表面マーカCD41とCD42bという血液検査にて、

血小板の活性を知ることができる。これらのCD41とCD42bは、血小板の活性が生じてい ない場合に100%の発現率を示すが、血小板の活性が生じるにつれて発現率は低下する。

その他の血小板活性化のバイオマーカを表 4 に示す [55, 56]。これまでのダイアライザ 及びヘモフィルタの血液適合性に関する研究は、様々な手法を用いて行われている。中でも、

ダイアライザまたはヘモフィルタの中空糸の切れ端と血液をインキュベートし、その血液 のバイオマーカを測定する実験が多い。他にも、ダイアライザのミニモジュールを作成し、

体外にてシングルパス形式で血液を循環させた後、その血液のバイオマーカを測定する手 法が用いられた研究もおこなわれている。これらの研究の手法の問題点として、まず、凝固 と血小板活性が膜表面の状態や血液流量に依存することから、流れの特性が臨床と同じ状 況を再現できていなければ、実験として成立しないことが挙げられている [59]。さらに、

膜の生体適合性を評価する際には、個々の血球とそれらの相互作用に対する膜の影響を明 らかにし、生物学的反応の全体的な相関関係を再現する実験モデルが必要である。また、実 際のダイアライザを用いて評価することも望ましいが、そのためには、流動条件だけでなく、

血球間の相互作用を調べることができる条件下でも、膜材料と血液との相互作用を評価す るのに適切な評価方法を確立することが重要である [51]。

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図 1.21 血小板の活性化から凝集反応まで

図 1.22 血小板の活性と経時的変化

34 表 1.3 血小板の活性化のバイオマーカ

測定項目 特徴

血小板数 臨床的に有意な血小板減少症(出血リスク が高い)は、約20,000 / mm3未満の場合に 起こる。

平均血小板容量 増加は新しい血小板の産生と放出を示す。

111インジウム標識血小板 血液を採取し、その中の血小板を分離した 後、111インジウムで標識する。その後、患 者の体内に標識した血液を戻し、24時間以 降に撮影する方法である。血小板の凝集し ている部位が特定できる。

PF4 血小板が活性化するとα顆粒から放出され

る。分子量は358kDa。

βTG 血小板が活性化するとα顆粒から放出され

る分子量は36kDa。

CD41 (glycoprotein, GPIIb/IIIa) 強い血小板の活性化が生じたときに血小板 の表面に発現する受容体である。フローサ イトメトリー法にて測定が可能である。

CD42b (glycoprotein, GPIb) 血小板が活性化された初期の段階で血小板

表面に発現する受容体である。フローサイ トメトリー法にて測定が可能である。

CD62P 血小板の脱顆粒を示す。PF4 やβTG など

の血小板内容物の放出とともに血小板表面 に発現する。

CD63 血小板が活性化し、内容物が放出された場

合に検出されるマーカである。

PAC-1 活性化されて立体構造が変化した血小板上

のGPIIb / IIIaを認識する抗体である。

アネキシンV陽性血小板 P-セレクチンの発現と相関する可能性があ ると言われている。血小板が活性化すると 血小板の表面にリン脂質が発現する。その リン脂質に反応する。

Platelet Derived Micro Particles

(PDMP)

血小板由来マイクロパーティクルである。

顆粒の放出を伴うような強い活性化が起こ った時に生成される。

ドキュメント内 著者 東郷 好美 (ページ 40-51)

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