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第 2 章 方法
材料:ダイアライザ・ヘモフィルタ
以下に示す3通りに実験系を構築し、実験系ごとに検討を進めた。
中空糸膜の構造の違いによる血液適合性の検証
中空糸膜の構造の違いによる血液適合性の検証を行うために、セルローストリアセテー ト膜(CTA、ニプロ株式会社、大阪)とCTA 膜の内表面の粗面粗さが改良された ATA膜
(cellulose triacetate dialysis membranes with asymmetric structures、ATA®膜、ニプロ 株式会社、大阪)を用いて比較した。両者の化学的組成は同一であるが、膜の内側表面およ び断面の構造が異なる。以下では、本実験系を「膜構造」と略称する。表2.1に詳細を示す。
表2.1 中空糸膜の構造の違いによる血液適合性の検証に用いたダイアライザ
FA-190F eco FB-190UHβeco
製造会社 ニプロ株式会社、大阪 ニプロ株式会社、大阪 透析膜素材 ATA® CTA
断面の構造 非対称 均質
滅菌方法 γ線滅菌 γ線滅菌
膜面積 1.9 m2 1.9 m2
中空糸内径 200 μm 200 μm
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中空糸膜の滅菌方法の違いによる血液適合性の検証
中空糸膜の滅菌方法の違いによる血液適合性の検証を行うために、γ線で滅菌された
APS-11SA(旭化成メディカル、東京)と高圧蒸気で滅菌されたRENAK PS-1.0(川澄化学
工業、東京)を用いて比較した。両者に使用されている膜はどちらもポリスルホン
(polysulfone, PSf)である。化学的および物理的構造は同一であり、中空糸膜の内腔側が 緻密層(密度が高い)で、外側は支持層(密度が低い)である非対称構造となっている。以 下では、本実験系を「滅菌」と略称する。2つの維持透析用ダイアライザの詳細を表2.2に 示す。
表2.2 中空糸膜の滅菌方法の違いによる血液適合性の検証に用いたダイアライザ
APS-11SA RENAK PS-1.0
ダイアライ
ザの製造 旭化成メディカル㈱、東京 川澄化学工業㈱、東京 膜の製造 旭化成メディカル㈱、東京 旭化成メディカル㈱、東京 透析膜素材 PSf(PVP含有) PSf(PVP含有)
構造 非対称 非対称
滅菌方法 γ線滅菌 高圧蒸気滅菌
膜面積 1.1 m2 1.0 m2
中空糸内径 185 μm 185 μm
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中空糸膜の素材の違いによる血液適合性の検証
持続的腎代替療法(CRRT)では膜の透過性だけでなく、吸着能を利用した老廃物(特に、
炎症性サイトカイン)の分離が行われている。その意味で、CRRTにおける膜素材の性質は 維持透析以上に重要である。そこで、CRRT 用中空糸膜の素材の違いが血液適合性に与え る影響を検証することを目的に、物理化学的な構造が異なる2種類の PSf膜(旭化成メデ ィカル、東京;東レメディカル株式会社、東京)およびPMMA膜(東レメディカル株式会 社、東京)を比較した。以下では、本実験系を「膜素材」と略称する。詳細を表2.3に示す。
表2.3 中空糸膜の素材の違いによる血液適合性の検証に用いたヘモフィルタ
Excelflo AEF-10 Hemofeel SHG-1.0 Hemofeel CH-1.3W 製造会社 旭化成メディカル、東京 東レメディカル、東京 東レメディカル、東京 透析膜素材 PSf(PVP含有) PSf(PVP含有) PMMA
構造 非対称 非対称 均質
滅菌方法 γ線滅菌 γ線滅菌 γ線滅菌
膜面積 1.0 m2 1.0 m2 1.3 m2
中空糸内径 225 μm 200 μm 240 μm
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実験方法
ダイアライザまたはヘモフィルタと血液回路の洗浄と充填
本研究は、講道館ビルクリニックの倫理委員会の承認を得て施行した。なお、ボランティ アには、紙面と口頭による研究内容についての説明の後、同意が得られた場合に、同意書に 署名を得た。なお、血液の検査結果は匿名化して取り扱うことも同意を得た。
まず、血液回路(ニプロ株式会社)とそれぞれのダイアライザまたはヘモフィルタを接続 した。次に、添付文書に従って、血液ポンプを用いて1,000 mLの生理食塩水で中空糸膜を 十分に洗浄した。このとき、「膜構造」と「滅菌」の違いが血液適合性に及ぼす影響を検討 する際には、流量を200 mL/min、中空糸の「膜素材」の違いが血液適合性に及ぼす影響を 検討する際には、流量を100 mL/minとした(図2.1)。続いて、ダイアライザまたはヘモ フィルタの透析液側を500 mLの生理食塩水で洗浄した(図2.2)。
図 2.2.1 ダイアライザおよびヘモフィルタと血液回路の血液側(中空糸内)の洗浄と充填
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図 2.2 ダイアライザおよびヘモフィルタと血液回路の透析液側の洗浄と充填
採血と回路への血液充填
採血時に血液が凝固しないように、抗凝固剤として40単位/mLのヘパリン(ニプロ株式 会社、大阪)をシリンジに入れ、健常人から試験血液を採取した。表2.4に健常人血のデー タを示した。次に、各回路に1名の健常人から得た血液を満たした(図2.3)。その後、回 路の脱血側と返血側をメス-メスコネクタで接続し、閉鎖回路にした。
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図 2.3 ダイアライザおよびヘモフィルタと血液回路への回路充填
図 2.4 閉鎖回路
実験手順
血液ポンプの速度は、中空糸の「膜構造」と「滅菌」の違いが血液適合性に及ぼす影響を 検討する際には流量200 mL/min、中空糸の「膜素材」の違いが血液適合性に及ぼす影響を 検討する際には、CRRTヘモフィルタを用いたため流量100 mL/minで血液を循環した。
この回路を恒温槽に浸し、実験中は37 ℃に保った。
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検査項目
実験における血液の循環時間は、中空糸の「膜構造」と「滅菌」の違いが血液適合性に及 ぼす影響を検討する際には、臨床で行われている血液透析の治療時間に基づいて 4 時間と した。血液のサンプリングポイントは、過去の検証において、透析開始から30分程度で血 小板数の一過性の低下が認められることが報告されていること [79]と、血小板数の回復の 経時的変化を観察するために、循環開始から0.5、2、4時間後とした。中空糸の「膜素材」
の違いが血液適合性に及ぼす影響を検討する際には、持続的血液浄化は一般的には24時間 程度とされているが、24時間以上同じヘモフィルタを用いることもあることから、48時間 の血液循環を行った。「膜構造」や「滅菌」の違いによる血液適合性検証と同様に、血小板 数の経時的変化を観察するため、循環開始から0.5、4、12、24、48時間後にサンプリング を行った。なお、血液サンプリング量が多くなると血液回路内の血液が不足するため、血小 板第四因子(PF4)、β-トロンボグロブリン(β-TG)、および、血小板表面マーカ(CD41
とCD42b)は実験開始時と実験終了時にのみ採取し、実験前後の比較を行った(図2.5, 2.6)。
図 2.5 中空糸膜の構造および滅菌の違いによる血液適合性の検証におけるサンプリングポ イント
図 2.6 中空糸膜の素材の違いによる血液適合性の検証におけるサンプリングポイント
血液検査
実験中に採取した血液は、それぞれの血液検査項目ごとに専用容器に注入した。その後、
血小板数の検査容器は冷蔵庫、血小板表面マーカ(CD41 とCD42b)の検査容器は常温で 保管した。血液採取前に、血小板放出因子(β-TGとPF4)の検査容器は砕氷水に浸し冷却 した。血液採取後、検査容器に血液を注入し、30 分間砕氷水中で保管した。その後、検査
容器ごと2,000 Gで30分間遠心分離を行った。遠心分離終了後、上清の表面よりやや下の
部分をマイクロピペットで採取し、ポリスピッツに注入し、冷結保存した。すべての血液検 査は株式会社SRLに委託した。
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走査型顕微鏡を用いた中空糸内部の観察手順
それぞれの実験の後、残血を除去するためにダイアライザおよびヘモフィルタを生理食 塩水で洗浄した。その後、膜表面に付着した血液成分を固定するために2%グルタールアル デヒドを満たした。冷蔵庫にて24時間保存した後、ダイアライザおよびヘモフィルタのハ ウジングをのこぎりで切断し、中空糸を収集した。次に、ペトリ皿の上でメス刃を用いて中 空糸を切断し、内側表面を露出した後、走査型電子顕微鏡(FE-SEM, SU-820 system, Hitachi, 東京)で観察した。
統計学的処理
すべてのデータは平均±標準偏差で記した。異なる構造および滅菌方法の血液適合性の 検証では、血小板数の経時的変化は反復測定分散分析、血小板表面マーカ(CD41とCD42b)、
β-TG、PF4は、各実験で同様な確からしさが予想されたため、データが正規分布している と仮定し、対応のあるt検定で分析した。異なる「素材」における血液適合性の検証では、
血小板数、CD41とCD42b、β-TG、PF4は一元配置分散分析を用い、同時に多重比較検 定(Tukey-Kramer)で分析を行った。P値は0.05未満を有意差ありとみなした。統計デー タの解析には、すべてマイクロソフトエクセルに内臓のアドインソフト(Statcel4 を用い た)。